消滅時効の要件の2つのうち、前回は@権利の不行使について学んだわよね。 今回は、要件のA一定の事実状態の継続(=時間の経過)について学ぶんだけど、この時効期間については、原則とは別に、それぞれの個別の債権ごとに時効期間が違うのね。 だから、条文と一緒に、一つ一つ見ていくことにするわね。 債権の種類ごとに時効期間が違うってことは、条文を見てもらえれば明らかなことではあるんだけれど、まぁ、一度くらいは、しっかり確認しておくべきだと思うしね。 まぁ、そんなわけだから、まずは原則から、しっかり抑えることにしましょうか。 前回も見た、民法167条1項を再度確認することから始めましょ。 |
||
民法第167条1項。 『(債権等の消滅時効) 第167条 1項 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。』 |
||
そうね。 債権の消滅時効期間は10年。 これが、まずは一般原則。 だから、今日、今から学ぶ個別の債権の時効期間について定めた168条以下、あるいは、特別法等の規定を除けば、この一般原則は全ての場合に適用されるのね。 債権の消滅時効期間は10年。 ここは、しっかり抑えておいてね。 |
||
ニシシシシシシ。 インプット、インプットぉ〜。 |
||
また、そういう悪い顔する・・・。 あんた、この時効制度の勉強会で、一体ナニを学ぼうとしてんのよ! あ、そうだ。 間違えやすいところだから、ちょっと質問してもいいかな? 質問! 文房具屋を営む『木下商店』のサルが、ナカちゃんが営む『竹中商店』から商品を仕入れる目的で購入したの。 でも、支払代金については後日払うってことにしたわけね。 さて、このサルの商品購入の未払い代金は、サルからすれば債務。ナカちゃんからみれば債権、ということになるわけなんだけど、この債権の消滅時効期間は何年でしょうか? |
||
・・・・。 (あえて、あたしや、ナカたんを商店に設定しているあたりに意図があるんだろうなぁ。 しかも、『間違えやすい』って振りからの質問なんだから、きっと、ここで一般原則に則って10年! って答えを返すと、ドヤ顔してくんだろうなぁ。答えはワカランけど、とりあえず10年ってことはないな。うん。) |
||
『(債権等の消滅時効) 第167条 1項 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。』 とありますから、10年ということになるのではないですか? |
||
この質問のポイントは、サルもナカちゃんも商店を営んでいるってところなのね。 商店を営んでいる以上、サルも、ナカちゃんも『商人』ということになるわ。 そうである以上、商人の行う行為は、商行為となるため、その行為から生じた債権については、いわゆる商事債権として、商法の定めに従うことになるわけ。 商法522条をみてくれる? |
||
商法522条。 『(商事消滅時効) 第522条 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。』 この条文を読むと、5年間ということなんですね。 |
||
そうなるわね。 だから、質問の答えとしては、商行為から生じた債権であることから、原則として5年が消滅時効期間(商法522条)ということになるわね。 この、いわゆる商事債権は、民法の問題の中で出されると、つい見落としがちなのよね。 実際、管理人もいつぞやの期末試験で、この商事債権を見落として、時効の問題のはずなのに論点が一つも見付からない・・・と大騒ぎしたことがあるそうよ。 まぁ、そんなことにならないように、頭の片隅に入れておいて欲しいわね。 |
||
(まぁ、管理人のオツムの出来は、あたしとドッコイドッコイだかんね。 アホだから仕方ないよね。 ってか、このチビっ子、落とし穴に全く気付かずに落ちるタイプだお。普通怪しいと思うだろ、常考っ!) |
||
ちょっと光ちゃんの質問が意地が悪いように思います。 商事債権について説明せずに、質問されたら間違えるのは必然じゃないでしょうか。 |
||
間違えて覚えた方が、より記憶に残りやすいと思ってね。 管理人の期末試験と違って、気楽な勉強会だからいいかなって。 それじゃ、ここから一つ一つ、債権の種類ごとの消滅時効期間を見ていくわね。 まずは、民法168条を見てくれる? |
||
民法第168条。 『(定期金債権の消滅時効) 第168条 1項 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。 2項 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。』 |
||
ここにいう『定期金の債権』とは、年金債権のように、一定額の金銭などを定期的に給付させることを目的とする債権をいうの。 この債権から、定期的に給付する債権が生ずることになるわ。 だから、この元になる債権を「基本債権(基本権)」といって、ここから派生する定期的な債権を「支分権」っていうのね。 定期金債権は、このうち「基本債権(基本権)」に属するものなの。 定期金債権の具体例としては、年金債権の他に、恩給債権などが挙げられるわね。 |
||
正直に言いますと、私も、あまりよく把握できていないんです。 例えば、私は今、下宿なので、部屋を借りているわけですけれど、この下宿の際に支払う賃料は、大家さんの方からすれば、一定額の金銭などを定期的に給付させることを目的とする債権なのですから、『定期金の債権』という理解でいいのでしょうか? |
||
流石、つかさちゃん。 鋭い質問してくれるわね。 賃料・・・その他似たような性格を有するものだと、地代、小作料なども入るかな。 これらは、確かに、その性質は『定期金の債権』ということになるんだけれど、それぞれ、賃貸借契約、地上権設定契約、永小作権設定契約に本質的なものといえ、これらの契約が存続する限り発生するものなのだから、168条の消滅時効にはかからない、とされているのね。 だから、『定期金の債権』には該当しない、という理解になるわ。 質問にはなかったけれど、他にも『定期金の債権』に該当しない債権としては、割賦(カップ)払い債権もそうよね。 但し、この割賦払い債権が該当しない理由は、そもそも割賦払い債権は、総額が確定した債権を分割して支払うものに過ぎないのだから、『定期金の債権』ではないってことなんだけどね。 |
||
ありがとうございます。 性質から考えると、時々、本質的なことを見落としてしまうことってありますよね。 よく、わかりました。 |
||
つかさちゃんからの質問なんて嬉しいわ。 でも実は、私に答えられる質問で、正直ホッとしたんだけどね。 まあ、お互いワカラナイときは、一緒に考えるってことにしましょ。 さて。 『定期金の債権』について、その説明もしたところで、肝心の消滅時効期間の話に戻すわね。 民法第168条1項は、 『(定期金債権の消滅時効) 第168条 1項 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。』 としているわよね。 ここにいう『第一回の弁済期』についてなんだけど。 最初に数回支払われた場合は、その支払いの都度、時効の中断が生じることになる、っていうのはワカル? 時効の中断事由には、『承認』(147条3号)があったわよね。 弁済期の給付は、『承認』にあたるために、その都度、時効が中断することになるわけ。 だから、『第一回の弁済期』とあるけれど、実際、何回かの給付がなされたときには、最後に現実の支払があった時とされるわけ。つまり、その時から20年って理解ね。 それから『最後の弁済期から十年間』というのは、まあ、168条1項がなくっても、一般原則(167条1項)から10年なんだから当然の規定って言えるわよね。 じゃあ、次は民法169条を見てくれる? |
||
民法第169条。 『(定期給付債権の短期消滅時効) 第169条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。』 |
||
似たような名前の債権なんだけど。 定期給付債権は、1年以内の定期に支払われる債権のことをいうの。 168条は定期金債権。 169条は定期給付債権なのね。 168条の定期金債権で、基本権と支分権について説明したと思うんだけど、基本権が定期金債権で、支分権が定期給付債権になるわね。 具体的に言うなら、年金や恩給が定期金債権で、その毎期の年金や恩給が定期給付債権ってことになるわね。 個々の利息や、賃料、地代なども、この定期給付債権とされるわ。 ただ、定期給付債権は、定期金債権から生ずるものに限られない、というところは注意ね。 条文にあるように、消滅までの時効期間は、5年間ね(169条)。 じゃあ、お次は民法170条、あ、ついでに民法171条も一緒に見てくれる? |
||
民法第170条。 『(三年の短期消滅時効) 第170条 次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。 1号 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権 2号 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権』 民法第171条。 『(三年の短期消滅時効) 第171条 弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。』 |
||
上記の債権は、3年の消滅時効にかかる債権ね。 まぁ、正直、条文のまんまだから、特に説明することはないわね。 短期時効が設定されているのは、証拠散逸のおそれから、とされているっていうくらいかな。 ちょっと条文の説明ばかりで、退屈してる?って思うから、質問しちゃってもいいよね? 質問! 171条は、弁護士(もしくは弁護士法人)、公証人が、その職務に関して受け取った書類についての責任(例えば、書類の返還請求権や、それによる損害賠償請求権など)を、弁護士ならば時効の起算点を事件の終了時、公証人については、その職務執行時から3年間を過ぎたときには、時効消滅することを定めているわよね。 はい。 ここにサルというダメな弁護士がいました。 ナカちゃんは、このサル弁護士に、事件を依頼したのですが、事件が終了しても、サル弁護士は、その際に作成した書類を返却してくれないままに3年が過ぎてしまいました。 後日、別の用があってナカちゃんがサル弁護士の事務所に行くと、乱雑に整理整頓もされない書類の山の中に、ナカちゃんの事件の書類があったので、ナカちゃんは、サル弁護士に、その書類の返還を求めたところ、サル弁護士は民法171条があるから、返さなくっていいんだお、とムカつく顔して言って来ました。 さて、ナカちゃんは、この書類の返還を求め得るでしょうか? |
||
・・・・。 うんとね・・・例え質問の中とは言え、弁護士にしてもらっていることは嬉しいんだけどさ。 「ダメ弁護士」っていうのは、もう悪意を感じずにはいられないんだよね。 しかも、整理整頓しないのは、まぁ、あたしも自覚してるから、ともかくとして、書類を返さないとか、あまつさえムカつく顔とかは、もう言いたい放題だよね。 |
||
確かに、藤さんなら、きっと素晴らしい弁護士になるでしょうから、光ちゃんの質問の設定には、少し無理を感じますよね。 ただ、この質問の回答にあたっては、場合わけが必要なように思います。 すなわち、書類の所有権が誰に帰属しているのか? という点について明らかとなっていないので、書類作成の際の契約において、所有権をいずれのものとしたのか、という視点からの場合分けが必要だと言えます。 書類の所有権を契約で、弁護士の藤さんに移転するという契約をしたのであれば、竹中さんは書類の返還を求めることは出来ないと言えます(171条)。 他方、書類の所有権が竹中さんにあるというのであれば、所有権は時効消滅にかからない権利ですから(167条2項)、現実問題として、書類が藤さんの手元にあるのであれば、竹中さんは書類の所有権に基づく返還請求権を行使することが可能だと言えますよね。 |
||
難しいです。 ちょっと、その答えは私は出せないです。 ただ、質問の藤先輩は、正直イメージがすっごい湧いたです。 |
||
・・・・。 (こ、こ、このチビっ子っ!) |
||
つかさちゃん、流石だわ。 そこまで丁寧に回答してくれるとは思ってなかったからビックリしちゃった。 でも、回答のとおりよね。 まずは書類の所有権が問題よね。 民法171条は、書類に関して生じた責任の追求ができなくなるとしているわけなんだけど、書類の内容によっては知られたくない話なんかもあるじゃない。 だからこそ、事件が終了したら、速やかに依頼者としても返還して欲しいって考えると思うんだけど、書類作成の際の契約で、そもそも所有権移転が明記されているのならば、返還を求めることはできないってことになるわよね。 だから、まずは請求がいずれの権利に基づく主張なのか、という視点から、それが所有権に基づく主張であるとするならば、その所有権帰属主体を考えるってことが大事よね。 その上で、所有権は時効消滅しない権利であることから、3年間という時効期間を経ていても尚、事実、書類があるのだから、当該主張が可能であるという結論が導かれることになるわけよね。 |
||
・・・肝心の所有権について、まだ勉強してないんだけどね! | ||
あ、確かに藤先輩の言うとおりです。 | ||
あ、そうだったわね。 まぁまぁ。 じゃあ、次は、民法172条、あと173条を見てくれる? |
||
民法第172条。 『(二年の短期消滅時効) 第172条 1項 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。 2項 前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。』 民法第173条。 『(二年の短期消滅時効) 第173条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。 1号 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権 2号 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権 3号 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権』 |
||
これらの債権については、2年の消滅時効にかかるのね。 軽く、それぞれ概説していくと・・・ 弁護士(もしくは弁護士法人)・公証人の職務に関する債権、まぁ、つまり、弁護料や謝礼金よね。 これらの債権については、2年の消滅時効にかかるってことね(172条1項)。 そして、その時効の起算点は、事件終了時となっているわ。 なお、その事件中の各事項終了時より5年を経過したときは、2年の期間内であっても、その事項に関する債権は消滅するわ(172条2項)。 えーっと、次は173条の概説でいいかな? 1号は、生産者・卸売り商人・小売商人の売却した産物・商品の代価に関する債権について定めているわね。 あ、ちょっと、ここで質問しちゃおうかな。 |
||
答えられる質問にしてよ? | ||
間違えて覚えるって姿勢が私は大事だと思っているから、答えられない質問にだって、考えることができるのなら、それでいいと思っているけどなぁ。 まぁ、そんな話は置いておいて、っと。 質問! サル農業協同組合が、その組合の組合員に対して、優良品種の稲の苗を販売しました。 さて、このサル農業協同組合の債権は、何年で時効消滅にかかるでしょうか? シンキングタイム、スタート! |
||
農協かぁ・・・。 まぁ、あたしん家、農家だし、農協は馴染みがあるんだけど。 だから、詳しいってわけでもなんでもないからなぁ。 まぁでも、質問の趣旨はワカルよ? 農業協同組合(農協)が、173条1号にいう『生産者、卸売商人又は小売商人』に該当するのかどうかがポイントになるわけでしょ? |
||
そういうこと、そういうこと。 言えるというのであれば、173条1号から、2年の消滅時効ってことになるわけだし。 言えないというのであれば・・・どうなるんだっけ? |
||
え? え? どうなるんだっけ? |
||
ソレは勉強したばかりじゃないですか! その場合は、一般原則の話になるわけですよね。 つまり 『(債権等の消滅時効) 第167条 1項 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。』 という一般原則に従って、一般債権なんですから10年の消滅時効ってことになるわけですよね(167条1項)。 |
||
ねぇ? ちゃんと、原則の話はしたよね? サルは、文句ばっかり言うくせして、ちゃんと話したことも覚えていないんだもんね? えーっと、それじゃ質問の答えをしっかり言っておくべきよね。 最初に、サルが指摘してくれたように、農業協同組合の性格についての検討が大事よね。 この点、農業協同組合は、173条1号にいう『生産者、卸売商人又は小売商人』ではないとされているわ(判例:最判昭和37年7月6日)。 まぁ、あと優良品種の稲の苗の販売代金が債権か、という点についても検討してもいいかな、とは思うけれど、まぁ、ここは省略可かな。 でまぁ、判例の考え方をとるならば、農業協同組合は、 生産者ではないのだから、173条1号は適用されないし。 商人でもないのだから、商法522条(=商事債権・5年の消滅時効)も適用されない。 従って、一般債権として、原則の10年の消滅時効に服する、という結論になるわね(167条1項)。 |
||
まぁ、確かに農協自体がなんか作ってたわけじゃないからなぁ。 成程、成程。 |
||
民法第173条。 『(二年の短期消滅時効) 第173条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。 2号 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権 3号 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権』 それじゃ、1号については説明したから、後は2号と3号についてね。 173条2号にいう『自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作』する者とは、具体的には、靴屋さんとか建具屋さんのことね。 平成16年改正前では、『製造人』という表記にされていたわね。 まぁ、ドッチも分かりにくい言葉だとは思うんだけど。 次に同じく『自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者』とは、具体的には、理容師さんとか、裁縫師さんのことね。 173条3号にいう『学芸又は技能の教育を行う者』の中には、個人だけではなくって、法人または権利能力のない社団・財団である学校等も含まれるわ。 法人や、権利能力のない社団・財団については、もう勉強済みよね? ちゃんと覚えてる? 次に同じく『衣食又は寄宿の代価』というのは、学校の寄宿料や、賄料等のことね。学校側が生徒のために寮を設けていたりすることってあるでしょ? アレよね。 まぁ、ここは説明不要だとは思うけれど、サルや、つかさちゃんのような通常の下宿の下宿代は、ここには含まれないっていうのはワカルわよね。 |
||
10年、5年・・・ 4年を飛ばして、3年、2年と短くなってきているってことは、次は1年の時効期間がくるわけ? |
||
ピンポン、ピンポンっ! 民法174条を見てくれる? |
||
民法第174条。 『(一年の短期消滅時効) 第174条 次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。 1号 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権 2号 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権 3号 運送賃に係る債権 4号 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権 5号 動産の損料に係る債権』 |
||
うわぁ。 めっちゃきたぁ。 |
||
まぁ、特に論点のあるところでもないから、簡単な説明にとどめるつもりだから、そんな顔しないの! 174条の各債権は、1年の消滅時効にかかるのね。 まず、月、または、これより短い期間をもって定めた使用人の給料に関する債権。いわゆる家事使用人への債権と思ってくれていいわ。 月給、週給、日給などが、ここに含まれるわね(174条1号)。 ただし、労働基準法の適用のある賃金については、2年の消滅時効にかかることになるけれどね(労働基準法115条)。 次に、174条2号にいう『自己の労力の提供を業とする者』というのは、使用者と従属関係に立たず、主として肉体的労力を提供する者のことをいうの。 具体的に言うなら、例えば、大工さん、左官屋さん、植木屋さんなんかがそうね。 『演芸を業とする者』はワカルわよね? 具体的に言うなら、まぁ、俳優さん、落語家さん、手品師さん、音楽家さんのことね。 3号、4号は、条文のとおりだから割愛で大丈夫だよね? ちょっと説明がいるのは5号かしら? 『5号 動産の損料に係る債権』というのは、極めて短期の定めでなす動産の賃料を意味するの。 具体的な例を挙げると、貸本、貸衣装、レンタカー、レンタサイクルなどの日常頻繁に生ずる短期で、かつ、軽微なものに限られるわ。 |
||
債権の時効・・・という話ですと、不法行為に基づく損害賠償請求権(債権)や、債務不履行に基づく損害賠償請求権(債権)、あとは、不当利得に基づく返還請求権(債権)等もありますけど、これらの時効についても、今日の勉強会で説明されるのでしょうか? | ||
私は、またそれぞれの権利の内容についての勉強をしてからの方がいいかなぁ、と思っていたから、今日の勉強会では省くつもりだったわね。 これらの請求権は、特殊な性格ももっているし、それぞれの内容も知らずに、時効期間だけ説明しても、ちょっと分かり難いんじゃないかって思うしね。 |
||
もう、なんでもいいから終わろうよ。 あたし、完全にキャパオーバーだよ? |
||
でも、藤先輩、総則と物権との間には、もう1つ条文が残っているです。 では、この条文は、次回の勉強会ってことになるのですか? |
||
ううん。その条文は、今日やっておくべきよね。 流石、ナカちゃん。 いつも六法見ているから、いい指摘してくれるよね。 じゃあ、その条文を読んでくれる? 民法174条の2よね。 |
||
民法第174条の2。 『(判決で確定した権利の消滅時効) 第174条の2 1項 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。 2項 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。』 |
||
なんか最後によくワカラナイのがきたなぁ。 しかも、枝番じゃないの。 足すな、足すな。 条文なんか足すな。 |
||
どんな文句よ、ソレ。 まぁ、条文のまんまの説明になっちゃうんだけど。 確定判決(訴訟上の和解・調停などのように、確定判決と同一の効力を有するものを含む)により確定した権利については、その権利が、もともと10年よりも短い消滅時効期間に服していたものであったとしても、時効期間が10年に伸張されるってことね(174条の2 1項)。 ただし、判決確定の時に、まだ弁済期の到来していない債権には、適用されないわ(174条の2 2項)。 このような制度が設けられている趣旨について説明しておくわね。 制度趣旨は、次の2点とされているわ。 1つ目は、確定判決(またはそれに準ずる公権力)によって、権利の存在が確認されたことにより、その権利自体が特別な存在として捉えられるようになったこと。 2つ目は、その権利が再び短期時効にかかるということになると、権利者(=債権者)としては、時効中断のために短い期間の間に、また訴えを提起しなければならないことになってしまい煩瑣(ハンサ)であること。 等が挙げられるわね。 |
||
ワカルような、ワカラナイような・・・。 ちょっと、理解できるような質問を出してもらってもいいですか? |
||
いいわよ。 丁度、今日持ってきてた潮見先生の『民法総則講義』があるから、この基本書から質問させてもらうわね。 質問! 『次の場合、Xの債権の時効は、どうなるか。 X信用金庫が、町工場経営者Yに、事業資金として1500万円を貸し付けた。(この貸付債権は商事債権であるから、商法522条により5年の消滅時効にかかる。) Yが、貸付金を返済しないため、XがYを被告として、元利金の支払いを求めて、訴えを提起し、勝訴判決が確定した。』 (潮見佳男 『民法総則講義』303頁 有斐閣 平成17年) 今日の勉強会で習った知識があればワカルと思うんだけど、どう? |
||
『倍返しだっ!』の『半沢直樹』のお父さんがやってたような町工場をイジめるのはダメだね! 返せないのは、相応の理由があるんだから、返せるようになるまで待ってあげないとダメだお。 あのネジは画期的なネジだから、いずれ工場の経営は上向きになるはずだからね。 |
||
ナニを言い出すんですか。 全然質問の答えになっていないじゃないですか。 ・・・えーっと。 この質問のような場面で、民法174条の2が適用されることになるわけですね。 つまり、本来ならば商事債権ですから、消滅時効までの時効期間が5年であるところ、勝訴の確定判決によって、確定判決時から、10年に伸張されることになるということなんですね(174条の2 1項)。 |
||
ピンポン、ピンポンっ! ナカちゃん、大丈夫よ。 ちゃんと理解できているから自信もってね。 サル・・・あんたは家に帰ったら、六法開いて、今日勉強した条文を、もう一度しっかり読んでおきなさいよ! |
||
もう一度もナニも、あたし、一度も条文は読んでないから。 ナニ言ってるの? って感じなんだけど。 |
||
あんたこそナニ言ってるのよ! よくも、そんな台詞を抜け抜けと言えたものよね? あ! よく見たら、あんた、そもそも六法全書さえ持って来てないわけ? 一体ナニしに来てんのよ!! |
||
藤さんは、もう民法総則の条文くらいなら全部頭の中に入っているんですよね。 | ||
まぁ、そういうこと。 | ||
じゃあ、民法95条は? (※ 語呂合わせで『錯誤』と憶える人が多いという話・参照) |
||
光ちゃん・・・ その質問は、いくら何でも藤さんに失礼です。 |
||
ま、ま、全くだよね。 答える気にもなれないよ。 そ、そんな低レベルな質問には、呆れてモノも言えないってヤツだよね。 うんうん。 |
||
じゃあ、言える条文を言ってみてよ。 全部、頭の中に入っているなら簡単でしょ? ホラ、言ってみなさいよ! |
||
ああああっ! モヤシのタイムセールの時間だお! 急いで帰らないと、間に合わなくなるお!! (スタコラサッサ) |
||
あ・・・。 光ちゃんが、あまりに低レベルな質問をするから、怒って帰られてしまったじゃないですか。 |
||
・・・逃げただけです。 | ||
民法総則の勉強会は、これで最後だったから、終了の打ち上げでもしようかと思っていたって言うのに。 もうっ!! |
||
藤さん、あんなにお出来になると言うのに、何故か期末試験のことを、すごく気にされているんですよね。 なんの心配もないと思うのですけど、完璧主義なんでしょうか。 |
||
うーん。 まぁ、期末試験の結果を見れば、つかさちゃんもサルについての認識も改まると思うから。 今は特にナニも言わずにおくわね。 |
||
期末試験・・・って、今は10月ですよ? 夏休みは、藤先輩と一緒に徳川埋蔵金発掘に行くって話や、期末試験前の壮行会って話もあったのに、時間の流れはどうなっているんですか? |
||
それを言われるのでしたら、私も夏休みの皆さんとの藤さん家にお泊りでのビデオ鑑賞会を楽しみにしていましたのに。 | ||
そんなこと誰も気にしてないから、いいわよ。 | ||
言いづらいんですけど、野球の話題のせいで、妙にリアルの時間との破綻を来たすことになっているのではないかと。 つまり、野球談義さえなければ、そんな問題もなくなるのではないでしょうか。 |
||
そんなことも誰も気にしてないから、いいわよ。 | ||
(私が、野球談義だと話題に参加できないから気にしているんです!) | ||
民法総則は、これにて、御仕舞いです。 お疲れ様でした! |
||
ど、どうしたの? ナカちゃん、誰に向かって話しているの? |
||
でも、勉強会楽しかったです。 途中からしか参加できなかったのが、ホントに残念でした。 次回は、私も最初っから呼んで下さいね? |
||
え? いいの? つかさちゃんの勉強の邪魔にならないのなら、是非来て欲しいわ。 |
||
正直、光ちゃんや藤さんには、まだまだ及びませんが、私も、今のままでは足りないって思っていますので、勉強会には呼んで欲しいです。 | ||
その気持ち、今日逃げ出した、あのサルに分けて上げて欲しいわね。 | ||
でも、藤先輩、代理の勉強会では、しっかり説明されていました。 きっと、人前では見せずに、影で頑張るタイプの人なんです。 |
||
そんなタイプだったかなぁ? まぁ、私もサルとは子供時代の付き合いだけだから、ちょっとワカっていないのかなぁ? |
||
もう、御2人とも、まだまだですよね! なんだかんだ言って、藤さんのことは、私が一番分かっているんですよね! |
||
・・・・。 | ||
民法総則 終了 |