さぁ。民法総則もそろそろラストスパートね。 最後の論点は、消滅時効ね。 消滅時効というのは、権利の不行使という事実状態の継続によって、権利自体が消滅する制度をいうの。 まぁ、これまでの勉強会で、今更、定義を言わなくっても、大体ワカッているとは思うけど、一応念のためにね。 |
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事実状態の継続によって、権利自体が消滅する・・・って、『援用があって、はじめて』消滅するの間違いじゃない? | ||
いい指摘してくれるじゃない。 そうね。 確かに、サルのいうとおりよね。 今述べた私の定義には、『援用によって』という意が隠れているわ。 でも、そのことをパッと指摘するあたり、しっかり復習できているみたいね。 |
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ウキっ! (時効は、色々知っておくといいと思って、ちゃんと聞いていたせいか、なんだか理解でけてる気がすゆ。) |
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それじゃ、消滅時効にかかる権利には、ナニがあるのか。 条文を見て確認することにしましょう。 民法167条をみてくれる? |
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民法167条。 『(債権等の消滅時効) 第167条 1項 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。 2項 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。』 |
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そうね。 消滅時効にかかる権利は債権(167条1項)。 および、債権・所有権以外の財産権(167条2項)よね。 債権が消滅時効にかかるのは167条1項にあるとおりとして、債権・所有権以外の財産権って、具体的にナニ? って思うと思うんだけど。 消滅時効にかかる財産権としては、地上権、地役権などが挙げられるわね。まぁ、これらの権利の内容については、また物権で・・・って話になるんだけど。 |
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具体的にナニ? ってフっておいて、結局言わないのなら黙っとればいいのに。 |
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地上権、地役権って、ちゃんと具体的に例示してるじゃないの。 動物ってナニ? って聞かれて、例えば、象さんとか、キリンさんよ。 って答えたのに、象さんや、キリンさんってナニ? って聞いてるみたいなものよね。 |
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だって仕方ないじゃん! 知らないんだもん。 |
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だから、物権で勉強するって言ってるじゃないのよ。 もう、今は総則の勉強なんだから、時効の話を進めるからね! えーっと、どこまで説明したんだっけ? そうそう。 消滅時効にかかる財産権を説明したのよね。 ということは、次は消滅時効にかからない財産権よね。 まぁ、代表例としては所有権よね。 所有権は、消滅時効にかからないわ。 他にもあるわよ。 例えば、身分権もそうよね。 親が子供に対して有する親権とか、夫婦が配偶者に対して有する同居請求権等は、時効消滅にかからないわ。 但し、身分権であっても財産的色彩の強いものについては、時効にかかるから注意してね。 この具体例としては、相続回復請求権(884条)や、相続の承認・放棄の取消権(912条2項)等があるわね。 |
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相続回復請求権とか、同居請求権とかは名前からして、なんとなく想像つくんだよなぁ。 いっそ、長くてもいいから名前聞いたら、すぐにワカルようなネーミングにしちゃえばいいんだよねぇ。 |
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立法者だって、馴染みやすいような名前をつけたいって思っているとは思うわよ? あんた、ホント文句しか言わないのね。 えーっと、それじゃ次は、消滅時効の要件ね。 この要件は、条文からもワカルように・・・ 『(債権等の消滅時効) 第167条 1項 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。 2項 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。』 とあることから @権利の不行使 A一定の事実状態の継続(=時間の経過) という2要件ね。 今日は、この要件のうち、@権利の不行使を抑えることにするわ。 |
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こくこく(相槌) |
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それじゃ、要件の@権利の不行使からね。 民法166条1項は 『消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。』 と定めているわよね。 ここにいう『権利を行使することができる時』というのは、一般に、期限付き・条件付き債権の場合に、期限の到来または条件成就の時をいうとされているわ。 |
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『権利を行使できる時』ってあるんだから、できない事情がある場合は、『権利を行使できる時』にならないって考えちゃダメなの? 例えば、あたしが光ちゃんにお金を貸していた(=債権)として、その取立てに行こうと思った日は、風邪のせいで、すごい高熱だったから行けなかった・・・みたいな事情があったら、ソレは『権利を行使できる時』とは言えないって思うんだけど。 |
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質問で聞いてくれるのは嬉しいんだけど、もう少しイメージの湧きやすい話にして欲しかったかなぁ。 あんたが、私にお金貸すなんて全然イメージ湧かないんだけど。 まぁ、いいわ。 権利行使についての事実上の障害(サルの質問のような例)や、法律上の障害(例えば、債権が差押えや、仮差押えを受けている場合、または同時履行の抗弁等の抗弁権が付着している場合など)があっても、それは『権利を行使することができる時』ではないとはされないわね。 これは、権利消滅の効果発生は、あくまでも明確かつ画一的に定める必要があるからなの。 ただし! この『権利を行使することができる時』というのが具体的に何時か(=消滅時効の起算点)というのは、権利の種類によって異なるわ。 少し、権利の種類が多いから、今日の勉強会では、この権利の種類ごとの違いを抑えておくことにしましょう。 |
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(考えたら、物がもらえちゃう取得時効にばっか気がいっていたけど、現実問題として、お金のないあたしは借金することも十分考えられるんだから、むしろ、この消滅時効こそ大事な話なんじゃないの? 沖縄の別荘ゲットなんてことよりも、まずは借りたお金を返さなくっていい消滅時効こそ、勉強すべきだよね! よぉ〜し! しっかり勉強して、光ちゃんからお金借りて踏み倒してやるんだお!) |
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ひぃぃぃぃっ!! なんか、とてつもなく悪いことを考えている人が近くにいるです! 時効制度を、完全に取り違えている人がいるです! |
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あんた、変なこと考えているとタダじゃおかないわよ!? 権利の種類多いんだから、下らないこと考えていないで、ちゃんと整理して理解しておきなさいよ! まずは、期限付き、または、条件付きの債権の場合だけど、これはさっきから言っているように、確定期限の到来、または、条件の成就の時ってことね。 不確定期限付きの債権(例えば、出世払い)も、期限到来の時から、消滅時効が進行するって抑えておいてくれていいわ。 じゃあ、期限の定めのない債権だったら、どうなるの? ってことなんだけど。 期限の定めのない債権については、債権者はいつでも請求できるのね。だから、債権の成立した時から、消滅時効が進行することになるわ。 |
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お金を貸すって一口に言っても、色々な貸し方があるんだなぁ。 いっそ『返さなくっていい債権』っていうのが、あればいいのに。 |
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返さなくっていいお金は、最早、貸し金(=債権)ではなくって、贈与になってしまいます。 | ||
そっか。 クロちゃんはいいこと言うねぇ。 借りたんじゃなくって、貰ったって思えばいいんだ! |
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どんな解釈したら、借りたお金を貰ったなんて思い込めるのよ! あんた、いくら債権を勉強してないからって、一般常識として、借りたお金は返すことを前提にしないと、貸した方だって、たまったもんじゃないわよ? もう! どうでもいいこと言って、話の腰折るのをやめてよね! その他の債権についての説明を続けるわね。 期限の利益喪失約款(ヤッカン)付の債権というものがあるわ。 具体的に言うと、例えば、割賦(カップ)払い債務のような場合に、『1回分の支払を怠ると残額につき期限の利益を失う。』という約款が付いたものが、期限の利益喪失約款の付いた債権ってことになるわ。 このような期限の利益喪失約款付の債権には、さらに2つの場合があるの。 つまり、当然に期限の利益を失うという約定のもの(当然喪失型)と、債権者がいつでも残額債権全額を請求できるという約定のものの2つね。 前者の場合は、残債権については、債務不履行と同時に、消滅時効が進行することととなるわ。 問題なのは後者の場合ね。 この場合の消滅時効の進行については、判例は、債権者の請求があった時から、時効が進行し始めるとしているわ。 最判昭和42年6月23日では、最高裁は次のように述べているの。 『割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定が存する場合には、一回の不履行があっても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合に限り、その時から右金額について消滅時効が進行するものと解すべきである。』 とね。 この判例の考え方は、債権者請求時説と呼ばれる考え方なの。 この考えをとる理由としては、期限の利益喪失約款が、債権者のためにあることが挙げられるわね。 |
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うわぁ〜。 1回、返済が遅れただけで、期限の利益奪うなんてヒドくない? そんなの許されるわけ? |
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銀行とかは、普通にこういった期限の利益喪失約款を付けていることが多いわね。 返済が滞るような事態が生じた場合には、債権回収を速やかになすべきというリスク回避からの措置なんでしょうね。 |
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うーん、厳しい世の中だなぁ。 | ||
あとは、債権ではないけれど、起算点の特則が定められている権利もあるわね。 例えば、取消権。 民法126条をみてくれる? |
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民法第126条。 『(取消権の期間の制限) 第126条 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。』 |
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条文に定められているように、取消権の消滅時効の起算点(=消滅時効の進行の始まる時)は、『追認をすることができる時』とされているわ。 あとは、まだ勉強していない権利になるんだけれど、他には、例えば、詐害行為取消権や、相続回復請求権などもあるわ。 一応条文と、その起算点だけ見ておくことにしましょうか。 民法426条と、884条を見てくれる? |
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民法第426条。 『(詐害行為取消権の期間の制限) 第426条 第424条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。』 民法第884条。 『(相続回復請求権) 第884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。』 |
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詐害行為取消権の起算点は、『債権者が取消の原因を知った時』からとされているわ(民法426条)。 相続回復請求権の起算点は、『相続権を侵害された事実を知った時』からとされているわね(民法884条)。 と、まぁ、消滅時効は権利を行使できる時から進行する、と一口に言っても、その権利の種類によって、権利を行使できる時(=消滅時効の起算点)が異なるわけなのね。 流石に、今日の勉強会で一度やって全部把握しろってのは無理があると思うから、権利の種類ごとに違うんだってことくらいは、抑えておくようにしてね。 |
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権利が多すぎんのが悪いんだお! 沢山あって複雑なんだお! もう、いっそ、あたし以外権利なしってことにしちゃえばいいと思った、とマヂレス。 |
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多すぎるって文句言うのなら、当の本人が全ての権利を放棄しちゃえばいいんじゃなくって? | ||
あたし、自分にどんな権利があるのかなんて全部は把握できていないよ? | ||
全て放棄するんだから、把握する必要なんかないじゃないの。 とりあえず生存権から放棄してみたら? |
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・・・ソレ、とりあえずになってないよね? でも、マヂでいいの? 放棄しちゃっていいの? |
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藤先輩、ナニを考えているですか? | ||
『おれは人間をやめるぞ!ジョジョーッ!』 | ||
ひぃぃぃぃぃぃっ!! ディオが現れたですっ! 石仮面被って、人間やめます宣言ですっ! |
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ジョジョって誰? | ||
今、丁度アニメでやっているです。 私も大好きな作品なので、よかったら明智先輩も見て欲しいです。 |
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うーん、サルが余計に暴走しそうだし自重しとこうかなぁ。 やたら、そういうネタでチャチャ入れてくるもんねぇ。 |
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『UREEYYY(ウリリイイイイイイ)』 | ||
サルなんだから、『ウキィィィィィィ』って言えば? |