・・・あれ? クロちゃん家は、このあたりのはずなんだけどなぁ。 見付からないなぁ。 |
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言いたくないけど、さっきから、この辺り何度か廻っちゃってるわよ? あんた、ホントに、つかさちゃん家知ってるの? |
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せっかくのカタラーナなので、程よい塩梅で、黒田先輩に食べて欲しいです。 早く黒田先輩の家に案内して下さい。 |
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・・・。 (メガネをダシに、お土産買わせたかっただけだから、家なんて知らねぇお。 しかし、なんだかホントのこと言い出しにくい空気になっとるお) |
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藤先輩・・・。 ソレ、ホントですか? |
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んみゅ? ナニが? |
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黒田先輩のお宅の場所をご存じないということです。 | ||
ちょっと、あんたっ! ナニ、いい加減なこと言って、私達を連れまわしてくれちゃってんのよ!? |
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携帯電話っ! そうだよ! 携帯電話つかって場所聞けばよかったんじゃないの! |
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場所聞かないと・・・ってことは、やっぱり、あんた、つかさちゃん家知らなかったわけね? | ||
一度行ったくらいじゃ覚えられないことはあるでしょ? ソレを、知らないって言われちゃうと、あたしも心外かなぁ。 |
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ゴメン・・・。 ちょっと言いすぎだったね。 |
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とりあえず、クロちゃんに電話して家の場所聞いてみるね。 (まぁ、ぶっちゃけ行ったことなんて一度もないんで、今の一般論は、あたしとは無縁の話なわけだけど!) |
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とおるるるるるん とおるるるるるん |
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あ・・・ドッピオの真似してるです。 | ||
あ・・・ボス あ・・・はい あ・・・わかりました |
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ちょっと! 誰に電話してんのよ! ボスって誰よ? |
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光ちゃんっ! クロちゃん家、わかった! すぐそばまで来てたみたい! そこのマンションの2階だって! |
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藤さんっ!! まさか、お電話頂けるなんて嬉しいです!! |
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っ!!! なんで、クロちゃんが、急に沸いたんだお!? |
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いえ・・・実は、部屋の窓開けて本を読んでいたら、何故か、藤さんの声が聞こえてくるような気がして・・・。 それで窓から外を見たら、藤さんの姿が見えるじゃないですか! だから嬉しくなっちゃって、部屋から出てきてしまってたんです! そしたら、その藤さんから私にお電話が・・・ |
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・・・ってことは、クロちゃんが、も少し早く、あたしに声かけてくれていたら、あたしは通話料を使わずに済んだってことか。 | ||
申し訳ありません。 私のせいで、余計な出費を藤さんに出させてしまって・・・。 |
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自分の非を、人に責任転嫁するなんて、どういう神経してんのよ! そんな態度なら、あんたの分の、お土産のカタラーナは、私が取り上げるわよ? つかさちゃんに謝りなさいよ! |
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じゃあ、本当に謝ったら、取り上げるの許してくれるの? | ||
もちろんよ。 | ||
だが断る。 | ||
こ、こ、ここで岸辺露伴はダメ過ぎですぅぅぅっ!! | ||
つかさちゃん。 ハイ。 コレ、私達からのお土産のカタラーナ。 それぞれの味毎に、1つずつあるから美味しく頂いてね。 |
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あ・・・あの・・・。 今のやり取りを聞く限りですと、コレ、藤さんのお土産を私が頂くことになっていないでしょうか? |
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まぁまぁ。 気にしないで、くれるって言ってんだから貰っとけばいいお。 それより、せっかくクロちゃん家の近所まで来たんだから、クロちゃんの部屋が見たいお。 |
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あ、ハイっ! 是非是非っ! 光ちゃんと、竹中さんも、宜しければ、ご一緒に来て下さい。 |
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いきなりお部屋に行って、お邪魔じゃない? お土産届けに来ただけだから、お部屋に行くのは、また今度ってことで、いいわよ? |
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そんなこと言わないで下さい。 せっかく、私にお土産を届けに来て下さったんですから、部屋まで来て下さい。 |
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(・・・おかしいです。 黒田先輩の頭に、黒い猫の耳のようなモノが見えている気がします。) |
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ところで、今日は、なんの集まりの帰りなんですか? | ||
民法の勉強会の帰りなの。 今日は、総論の法人のところを勉強していたのよね。 |
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それは奇遇ですね。 私も、総論の法人のところで、権利能力なき社団について、まとめていたんです。 |
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んみゅ? あんまり奇遇でもなくね? あたし達、まだ、その権利能力なき社団? ソレは、やっていないよ? |
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あんたが、もう少し真面目に勉強会に参加していれば、やる予定だったのよ! じゃあ、せっかくだし、つかさちゃん家で勉強会の続きをさせてもらっちゃいましょうか。 権利能力なき社団って言うと、ナニそれ? って気持ちになるかもだけれど、例をあげてしまうと、身近な存在なのよね。 例えば、自治会とか、同窓会なんかが、よく例えに出されるわね。 |
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へぇ〜。 具体的な例え聞くと、ソレがそうなんだ・・・って思うんだけど、ぶっちゃけ、「権利能力なき社団」ってナニ? |
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団体設立自由の原則があるので、私達は誰でも団体を設立することは自由ですよね。 ただ、団体として存在しているからと言って、法人格を有しているかどうかは、また別の問題ですよね。 つまり、法人格を有していない以上、権利義務の帰属点としては認められないことになるけれど、社会的には存在するわけなんだから、そのような団体を、法的にどのように扱うべきか、という問題なんですよね。 あ、ココが私の部屋です。狭いですけど、どうぞ。 |
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お邪魔します。 (大学入ってから、大学関係の他人様のお宅にお邪魔するのは、藤先輩に次いで2軒目です・・・ちょっとドキドキするです。) |
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へぇ〜。 クロちゃん、部屋綺麗だねぇ。 |
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ホント、すっごく整理整頓されてて、つかさちゃんの真面目な性格が感じられるお部屋ね! | ||
やややっ! こ、こ、コレは、今年の5月(2014年5月24日)に発売された広島アスリートマガジンっ! あたしも、まだ読んでいない名著じゃないの! |
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あ、見付かっちゃいましたね。 藤さんが、広島大好きだから、私も一緒に応援したいなって思ったんです。 でも、私、野球は全然知らないから、この機会に勉強しようかと思いまして。 |
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・・・表紙飾っているの、ウチ(巨人)から強奪された一岡じゃないのよ。 可愛そうに・・・こんな赤い本の表紙で晒し者にされちゃって。 |
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一岡本人は、『人的補償で広島に行かされたなんて思っていません、チャンスを頂いたと思っています。』って言ってたよ? | ||
言わされているに決まっているじゃないのよ・・・可愛そうに。 | ||
言っとくけど、一岡は、いまやオールスターにも選出されるくらい広島の顔の1人となっているんだからね! | ||
オールスターと言えば、今年は広島から、なんと8名も選出されていますもんね! 流石、藤さんが応援されるチームは違いますよね! |
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・・・ぐっ。 (私の愛する巨人からは慎之助しか出ていない・・・) |
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あうあうあう。 この話題には、横浜ファンの私は参加できないです。悲しいです、切ないです。 |
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あ、インスタントで申し訳ないんですけど、コーヒーをどうぞ。 せっかくなので、お土産食べながら勉強にしませんか? |
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ありがとうございます。 | ||
いやいやいや。 せっかくだから、お土産食べながらの野球談義にしようよ! オールスター選出された選手の話題を中心に盛り上がろうよ! |
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その話題なら、勉強したいです! | ||
そうね。 ナカちゃんも勉強したいって言ってくれてるし、権利能力なき社団について勉強済ませておきたいしね。そうしましょ、そうしましょ。 それじゃ、まずは、「権利能力なき社団」(「法人格のない社団」)の定義からね。 「権利能力なき社団」とは、社団としての実体を有しながら、法人格を得ていない団体をいうのね。 さっき、つかさちゃんも説明してくれていたけれど、このような法人格を有していない団体については、法人格がない以上、権利義務の帰属点としての地位は認められないことになるわ。 だって、法人格付与の最大の意義は、権利義務の帰属点としての地位を認めることなんだから、法人格を有していない団体に、それを認めてしまっては、法人制度が破綻することになってしまうわけだもんね。 ただ、社会的実態がある以上、法人制度を破綻させない限りにおいて、法人にできるだけ近づけた処理をすることが、現実に即した措置であると言えるわよね。 この考え方が、権利能力なき社団の法理と呼ばれるものなのね。 |
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この女・・・問答無用で勉強会MODEに入りよったで。 よっぽど、金満球団からの選出選手が少ねぇことが気にいらんと見えるお。 あのさぁ、光ちゃん。 ちょっと前の勉強会で、光ちゃんが、「法律勉強会」って団体作るみたいな例え話したじゃないの。 そんな風に、あたし達が軽い気持ちで作った団体も、「権利能力なき社団」として、社会的実態があるものとして扱われるわけ? |
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珍しくいい質問するじゃない。 「権利能力なき社団」については、民法上の明文規定があるわけじゃないから、どのような団体を、「権利能力なき社団」といえるか、という点については、判例法理に基づいているのよね。 「権利能力なき社団」といえるには、次の4要件が必要であるとされているわ。 @団体としての組織を備えていること A多数決の原則が行われていること B構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続すること C代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること の4要件ね。 (最判昭和39年10月15日 百選T 9事件) だから私達が、仮に「法律勉強会」って団体を、今設立したとしても、これらの要件を充足していない以上、それは「権利能力なき社団」とはいえない、ってことになるわね。 |
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お土産頂いても宜しいですか? なんだかガッツいているみたいで、はしたないですけど、丁度、何か食べたいなって思っていたんですよね。 |
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うんうん! それじゃ、食べながら勉強会ってことで、ええよね! |
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もちろんよ。 そのカタラーナ、結構美味しいから、つかさちゃんの口にも合うと思うわ。 さて。 「権利能力なき社団」は、権利義務の帰属点としては認められないって話はしたわよね。 つまり、法人格を付与された法人であれば、当該法人名義での財産を所有できたわけなんだけど、「権利能力なき社団」は、当該社団名義での財産を所有することはできないっていうことになるのはワカル? |
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こくこく(相槌) | ||
そこで問題となるのが、権利能力なき社団の財産の帰属っていう論点なんですよね。 | ||
財産の所有形態については、まだ勉強していないから、質問で聞いちゃうのは、ちょっと厳しいかなって思うから、ココは説明しちゃうわね。 権利能力なき社団の財産については、判例は『権利能力のない社団の資産は構成員に総有的に帰属する』と述べているわね(最判昭和39年10月15日 百選T 9事件)。 |
||
ふ〜ん。 そうゆうことね。 ・・・んで。 「総有」ってナニ? |
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ちょっと先取りの予習の話になっちゃうんだけど、財産の共同所有の形態には、共有(民法249条)、合有(民法668条)という所有形態があるのよね。 共有の例としては、親の遺産なんかが挙げられるわね。 合有の例としては、組合財産なんかが、そうね。ナカちゃんだと、大学にもあるし、生協って言えばイメージしやすいんじゃないかな? で・・・総有っていうのは、民法の条文にはない特殊な所有形態なのよね。例としては、入会権(山林・原野等の上に成立する権利・民法物権で勉強します)が、この総有という所有形態なのよね。 この総有というのは、数人が一つの物を共同所有しているんだけれど、その各人には持分を観念することができない所有形態をいうの(逆に、観念できる所有形態が共有)。 |
||
総有の例としては、大学のサークルがよく使われますよね。 例えば、大学のテニスサークルのボールが、総有という所有形態にあたるわけですよね。 サークル員みんなでテニスボールを共同所有しているわけですが、だからと言って、そのボールに対して、あるサークル員が自分の物だから、コレはサークル辞めるときには持っていくよっていう主張は認められないことになるんですよね。 |
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こくこく(相槌) | ||
そうゆうことかぁ。 | ||
藤さんったら、すっごいウィットに富んだこと言われるんですね! 私、コーヒーこぼしそうになっちゃったじゃないですか! |
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・・・(完全にスルーしていいレベルの駄洒落じゃない、しかも相手してもらえなかったら2回言ってるよ?)。 権利能力なき社団の財産が、構成員に総有的に帰属するということから、社団の債務についても、同じように構成員全員に総有的に帰属することとなるのよね。 この点については、判例もあるわね。 『権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わないと解するのが相当である。』ってね。 (最判昭和48年10月9日 百選T 10事件) |
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でも、そんなことでは取引の相手方は、困ってしまうことにになりませんか? 例えば、サークルの部長さんが、勝手にサークルの名前でユニフォームとかを作っておいて、お金は払えません、サークル員も責任負いません、では問題だと思います。 |
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そうね。そういう問題はあるわよね。 その問題については、権利能力なき社団の性格、つまり、公益目的なのか、営利目的なのかによって責任の範囲を違うものとすべきではないか、という指摘もあるわね。 それと、取引の相手方は、取引相手となった代表者、ナカちゃんの質問で言うならば、そのサークルの部長さんを、保証人や、物上保証人(内容については、民法債権総論にて勉強)にする等して、債権回収手段を講じておくことで保護されることとなるから、大丈夫じゃないかな。 |
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それなら安心です。 | ||
クロちゃん! カタラーナ、お替りしてもいい? |
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あ、どうぞ。どうぞ。 このカタラーナ・・・っていうんですか? このお菓子、私初めて食べたんですけど、冷たくって今の季節にピッタリですね。 |
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あたしが、クロちゃんにお土産にしようって言ったんだよ! 感謝してよね!! |
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は、はいっ!! ありがとうございます! |
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どうして、そう恩着せがましいこと言うかなぁ。 それじゃ、今日の最後の論点まとめちゃうわね。 権利能力なき社団の財産が不動産の場合の話ね。 権利能力なき社団の財産は、当該社団の構成員に総有的に帰属するわけなんだけど、不動産には第三者対抗要件として、また、登記制度の要請として登記が求められるのよね。 そこで、権利能力なき社団が不動産を有している場合に、その社団の名義での登記ができるかが問題となるわけ。 |
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権利能力なき社団は、法人格がない以上、権利義務の帰属点としての地位がないんですから、その社団名義での登記はできないです! | ||
うんうん。 判例も、権利能力なき社団名義での登記については否定しているわね(最判昭和47年6月2日)。 だから、登記の必要がある場合は、不動産の登記名義は、代表者個人か、当該団体の構成員全員の共有での登記という形で行わなければならないってことになるわけね。 |
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いやぁ、満足、満足。 カタラーナ一杯食べれたなぁ。 |
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一杯・・・って、あんたの分は1個だけだったでしょ? | ||
クロちゃんからカタラーナ貰ったんだお。 | ||
まさか、あんた、つかさちゃんのお土産取り上げたわけ? | ||
やだなぁ。 クロちゃん、あんなに貰っても食べられないじゃないの。 あたしは手伝ってあげたんだお。 |
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そうなんです。 カタラーナ、とっても美味しいんですけど、流石にこんなに一杯は食べられないので。 あ、でも私も2つも頂きましたよ。 |
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私が、あんたの分取り上げたときから、この算段だったってわけね? | ||
『当たり前だぜッ! この、あたしは何から何まで計算づくだぜーッ!』 |
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JOJO屈指の名言を、こんな形で言うなんて、JOJOファンとして許すまじです・・・。 |