違法性とは
藤先輩、藤先輩。
ちょっといいですか?
ん?
どったお? チビっ子。
 
チビっ子はイヤです!
変なあだ名で呼ぶのは、やめて欲しいです!
まぁまぁ。
んで、ナニ? お腹でも空いた?
言っとくけど、お金なら、あたし持ってないよ?  
いえ・・・。
私、結果無価値論行為無価値論とで、ドッチが自分に合うのか、ちょっとワカラなくなっていて・・・。
一緒に考えてもらえたらな・・・って。
ソレをあたしに聞くんだ?
いやぁ、結構な無茶ブリだけどね、ソレは。  
勉強会の際に、藤先輩もまだ決めかねている感じでしたから、ソレなら一緒に考えてもらえるかな、と思ったんです。
ダメですか?
いや、ダメじゃないよぉ。
ただ、あたしでナカたんの力になれるのかな、という漠然たる不安はあるけどね。 
ソレなら心配ないです!
藤先輩は、刑法は得意だから信頼してるです!
刑法』ねぇ・・・。   
  ・・・あ。
オケオケっ!
まぁ、ココは頼りになるオネーさんに任せてよ!
ぶっちゃけ、あたしも大してワカッテないんだけど、ソレでよければ力になるからさ! 
ありがとうです!
藤先輩なら、きっとそう言ってくれるって思ってたです!
さて、それじゃ2人で頑張ってみよっか。

まずは、いきなりドッチ? なんて話をしても仕方ないし、基本的なとこから復習がてら抑えてみよっか。

違法性とはナニか? って話は、以前の勉強会でもしたんだけどさぁ。
あのとき、クロちゃんが、いきなり結果無価値行為無価値の話をしたもんだから、正直ちょっと戸惑っちゃったんだよね。
いや、あたし、ナカたんが言ったように、実はまだドッチがあたしに合うか、よくワカッテないもんだからさぁ。

だから、もっと基本的なところから抑えて欲しかったんだよねぇ。
ぶっちゃけ、あたしにもワカルように言って欲しかったと。 
  成程、成程です。 
つまりさぁ。
違法性」っていうくらいなんだから、もうまんまの説明からして欲しかったわけ。
やったことが法に違反する」ってことでしょ? ぶっちゃけ。
違法性の概念における形式的違法論ですね。
違法』とは「法に反すること」。
つまり、実定法規に違反すること、ですよね。
そうそう。
つまり、法律に定めたことに違反するから悪いってことだよね。
だから、法的に許されない、って話なわけでしょ。
あたしも、ソコまではワカッているんだよね。 

法律に定めたこと・・・つまり、構成要件に該当すれば原則として違法
ソレで、例外的にこの前の勉強会でやった違法性阻却事由(ないしは正当化事由)があるって感じでいいんだよね?
  そうです、そうです。
んで・・・。
よくワカラナイのが、この先の話なんだお。
つまり、違法性の実質を、どう考えるのか?
って話が、結果無価値か、行為無価値か、って話になるんだよね。 
私も、ソコを一緒に考えて欲しいです!
光ちゃんから教えてもらった、あたしの理解を、ザックリ言っちゃうと・・・。

結果』に着目して判断するのが結果無価値
行為』の規範違反性、つまり倫理的にダメだって話が行為無価値ってことだよね? 
講義のレジュメには

『結果』(法益の侵害またはその危険)に着目した否定的価値判断を結果無価値。

結果と区別された意味での『行為』の規範違反性(反倫理性)を行為無価値。


とあります。
このいずれを重視するかが、両者を分かつということですね。
そうらしいよねぇ。
光ちゃんも、ドッチにより強い共感を覚えるかって観点から、自分の立場を選べって言っていたんだけどなぁ。
正直、ドッチもそれなりに納得しちゃうんだよなぁ。

ただ、ドッチを選択するかで、結論が異なることも多いから、いつまでも迷っているのもなぁって、あたしも思ってはいるんだよねぇ。
ですです。
実質的違法性の判断において、いずれを重視するかで考え方が違っていました。

違法性阻却の勉強会でも、結果無価値の立場だと、被害者の同意によって保護すべき法益が存在しなくなるから、違法性が阻却されるって話でした。
これに対して、行為無価値の立場だと、同意を得た動機・目的等も考慮して、法秩序全体の立場から社会的相当性が認められるか否かで、違法性阻却を検討するって話でした。 
そうなんだよねぇ。

結果無価値論は、物的違法観とも言われるらしいからね。
刑法の法益保護機能・裁判規範性を強調する立場から、違法性判断において法益侵害性を重視しているわけだよね。

行為無価値論は、人的違法観ってことだから。
刑法の社会秩序維持機能・行為規範性を強調する立場から、違法性判断において法益侵害性と一緒に規範違反性も重視しているわけだよね。

そりゃ、重視するもんが違うんだから、結論も変わってくるのは当たり前だろ。常識的に考えて・・・ん?
  どうしました?
いや、今、まとめていて気付いたんだけどさ。
ナカたんには、行為無価値論がシックリ来るんじゃないの?
ナカたん、ぶっちゃけ正義厨みたいなとこあるし。
不作為の勉強会のときも『道義』なんて口にしていたしね。
いや、普通言わないよ? 道義なんてさ。  
  あああっ!!
どったお?   
ホントです!
私には、行為無価値論の考え方が、より共感できる気がするです!
ほうほう。なんかスッキリした顔してんね。

ただ、光ちゃんの話だと、今の行為無価値論は、法益保護主義を出発点とする二元的行為無価値論という考え方をとっているって話だから、刑法法益保護機能を重視する結果無価値論も取り入れているってことだよね。
だから、ナカたんにも、この二元的行為無価値論の考え方を抑えて欲しいって思うかな。
  はいです!
んで・・・。
違法をどう見るか・・・って観点。つまり、違法観だよね。
その観点から、結果無価値論行為無価値論をまとめると、下の図になるわけだよね。 
 まとめ
基本的立場
違法観
違法の客観性の意味 違法性の実質 違法阻却
 の一般原理
主観的違法・
 正当化要素
結果無価値論
(物的違法観)
客観的違法性論  法益侵害説  法益性欠如・
法益衡量説 
否定
行為無価値論
(人的違法観)
新客観的違法性論 規範違反説 社会的相当性説・
目的説
肯定
 
主観的違法要素・主観的正当化要素というのは、なんですか? 
違法性の有無・程度に影響を及ぼす内心的要素を、主観的違法要素っていうらしいお。
例えば、故意・過失・目的犯の目的なんかがそうだお。

んで、違法性阻却の有無・程度に影響を及ぼす内心的要素を、主観的正当化要素っていうみたいだお。
勉強会でやった話だと、自救行為の、自救の意思とかがそうだお。
 この後学ぶ正当防衛における「防衛の意思」や、緊急避難における「避難の意思」も当たります)

まぁ、このあたりの主観的要素は、法益侵害またはその危険という「結果」に着目する結果無価値論の立場からは否定されるんだけど、行為無価値論の立場からは肯定されるってことだお。 
  メモメモです! 
あ、そだそだ。
今、主観的要素の話をしたから、ついでに言うんだけどさ。

今は『違法は客観的に、責任は主観的に』というのが基本的な考え方なんだって。
んで・・・このこととの関連で、答案を書く際にも、コレをごっちゃにせずに、キチンと分けて論じることが大事らしいんだよ。
藤先輩、スゴイです!
すっごく勉強になったです!! ありがとうです!
私の迷いも、これで解決できました。
まぁ、ここだけの話だけど、あたしも一応ロー生だかんね。  
  あ、そうでした・・・。
採点実感と言えば、
判例学習の際には、結論だけを丸暗記するのではなく、判例の事案を十分に分析した上、その判例が挙げた規範や考慮要素が刑法の体系上どこに位置付けられ、他のどのような事案や場面に当てはまるのかなどについてイメージを持つことが必要
って言ってたね。

このコメントは、判例ベースの問題を今後とも出しますよ・・・って言ってくれているってことだよね。
光ちゃん達が、判例検討大事にしているのは、そのせいじゃないのかな? 
・・・藤先輩は、そこまでワカッてて、どうして判例検討を、もっと真剣にやらないのですか? 
仕方ないじゃない。
人間だもの。
       あたし 
 
・・・。
(ダメだ、コイツ。
 なんとかしないと・・・です。) 
まぁ、それはそれとして。
なんで、勉強の質問を、ナカたんはあたしにしたわけ?
ぶっちゃけ、光ちゃんとか、クロちゃんの方が頼りになるって、あたしでも思うところなんだけど。  
私いつも勉強会にお邪魔させてもらっているので、これ以上は、御2人の勉強の邪魔をしてはいけないって思って・・・。 
ほうほう。
ソレはつまり、あたしなら邪魔しても構わないと思ったと。
そういうことだね?
  えっ!?
違うです! 違うです!
藤先輩が、一番話しかけやすかったからです!!
へぇ〜。上手いこと言い繕っちゃってぇ〜。
いやぁ、あたしなら邪魔していいってかぁ。
ナカたんも、悪いねぇ〜。 
  あーーんっ!!
ホントにホントに違うですぅ!
ホントにホントに違うですぅぅぅぅぅ。 
  真似するのはやめて下さいです!
真似するのはやめないですです!   
うぐぐぐぐぐぐぐぐ。
(せっかく優しい先輩だと思ったら、やっぱり藤先輩は意地悪です!)
 掲示板での御指摘もあったので、サルのイメージ回復を図ろうと、サルとナカちゃんのいい話を作るつもりで、結果無価値論と行為無価値論を絡めて、まとめ回を作ってみたのですが、サルはサルだということを再認識しただけでした・・・。
 ホント「ダメだ、こいつ・・・なんとかしないと」な話でしたね。

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