刑罰の目的、刑の種類・内容、刑法の保護目的 | ||
刑法は、総論と各論とに分かれているの。 まずは、総論から勉強するわね! |
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あたし、ドラマの「相棒」シリーズとか、「ガリレオ」シリーズ好きだから刑法強いと思うんだお。 | ||
自信をもつことはいいことよ! ・・・根拠薄弱でもね。 それじゃ、質問! 刑罰は、なぜ存在して、どういう理由で正当化できると思う? |
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悪いことしたら、お仕置きだべー って理由で刑罰があるんじゃないのかな? |
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その考え方もあるわね。 「目には目を」、「歯には歯を」ってスローガンから導かれる応報刑論って考え方ね。 この考え方の背景には、自由な人間像がいるの。 人は、本来皆自由という考えに立脚し、自由であるということは、犯罪を犯す自由もあれば、犯さない自由もある。 その自由の中で、犯罪を犯した以上、当然、その犯罪に相応しい刑罰が与えられるべきであるとする考え方ね。 |
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いきなり正解っ!? あたし、刑法得意っぽくない? |
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応報刑論だけで説明できるわけじゃないわよ。 他にも、経済合理的な人間像を背景とした一般予防論って考え方もあるわ。 この考え方は、一般人が罪を犯さないように、罪を犯したら、このような刑罰が与えられますよって予告することで、罪を犯すことで与えられる害悪を考えて、人が罪を犯さないようにしようとしているって考えるの。 その他には、特別予防論って考え方もあるわよ。 この考え方の背景には、宿命的な人間像がいるの。 つまり、人は自由な意思で犯罪を犯しているわけではなく、その人のおかれた環境などが、その人に犯罪を犯させているって考えるのね。 でも、そのような環境のために犯罪を犯した人であっても、再び罪を犯さないようにするために刑罰はある・・・って考えるの。 |
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なんか、どれも正解っぽい・・・ |
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現在有力なのは、今、私が言った3つの考え方全てを考える、相対的応報刑論って考え方ね。 応報刑の限度で、一般予防論、特別予防論を考慮した刑罰を科すっていう考え方なのよ。 |
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どれも正解っぽいって直観的に思った、あたしも間違ってないってことだね! 光ちゃん! | ||
サルの答えは、すっごいモヤっとしてたじゃない。 じゃあ、次の質問は、そんなモヤっとした答えは出来ないのいくわよ。 刑の種類を、主刑の6つを挙げてみて。 あ、六法見たら、答えすぐわかっちゃうから見ずに答えるのよ。 |
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・・・。 んーとね。死刑と懲役と・・・罰金も入る? あとは、磔、獄門、市中引き回し、流罪? あ、7つになっちゃった。 |
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いつの時代の刑罰まであげてんのよ! はい。六法の刑法9条見る! |
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刑法9条は・・・っと。 『(刑の種類)第9条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。』 答え全部書いてあるじゃん! |
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あんたが予習してこなかったのが、すぐに分かったわ・・・ 条文一本でわかるような問題も答えられないなんて、市中引き回しで磔もんよ、ホント! 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料が主刑。 これぐらいは、即答して欲しかったわよ。 因みに、主刑に対して、付加刑は任意なのよ。 じゃあ、付加刑である没収が書いてある刑法19条をひいてみて。 |
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刑法19条ね・・・。 『(没収)第19条第1項 次に掲げる物は、没収することができる。』・・・ |
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ストップっ! 『できる』ってあるでしょ? その文言から、19条は任意処分ってことがわかるの。 没収は、物に対して課せられる付加刑だから、利益に対しては、追徴(第19条の2)があるのよ。追徴は、没収の関係処分とされるわ。 各論との絡みになっちゃうんだけど、第197条の5、賄賂に対しては、『犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。』となっていて、こっちは任意処分じゃないので注意してね。短答でも聞かれるところよ。 |
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各論なんてまだやってないとこの話されてもチンプンカンプンだお・・・ | ||
じゃあ、予習してきたはずの総論の問題出してあげるわ。 質問。 懲役と禁錮の違いはなに? |
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名前っ! | ||
小学生かっ!!! 早く六法ひきなさいよっ! |
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懲役は、刑法12条か・・・。 『(懲役)第12条第1項 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。 第2項 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。』 禁錮は、その隣で刑法13条で・・・。 『(禁錮)第13条第1項 禁錮は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。 第2項 禁錮は、刑事施設に拘置する。』 懲役も禁錮も拘置期間は同じなんだ。 違うのは第2項だけかぁ。 っことは、所定の作業をするか、しないか・・・ってこと? |
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そうよ! 懲役と禁錮は、刑務作業(所定の作業)の有無が最大の違いなのよ。 ただ、禁錮の場合でも、志願すれば刑務作業に就くことは可能なの。 また、実際に志願されて刑務作業に就く方も少なくないそうよ。 ちょっとサルっ! あんた全然予習してきてないじゃない! |
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光ちゃん・・・ その顔怖いよ・・・ 瞳孔ずっと開いちゃってるよ? |
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誰のせいよ! もう! これくらいなら答えてくれるわよね? 質問。 罰金と科料の違いはなに? |
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なま・・・ | ||
名前なんて言ったら、獄門よ!? 斬首の上、晒し首にするからねっ! |
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(あわわわ・・・ あ、六法さっきのとこ開けたまんまだ・・・ コッソリ見ちゃおっと) どれどれ・・・罰金は、刑法15条ね。 『(罰金)第15条 罰金は、1万円以上とする。ただし、これを軽減する場合においては、1万円未満に下げることができる。』 科料は、刑法17条か。 『(科料)第17条 科料は、千円以上1万円未満とする。』 (ふむふむ。成程ね!) 光ちゃん、金額が違うよ! |
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そうよ! 罰金と科料は、金額が違うのよ。 因みに、懲役・禁錮と拘留とでは、拘置期間が違うのよ。 拘留は、拘置期間が1日以上30日未満なのよ。 |
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科料って言えば、あたしのお父さん、歩き煙草してて2000円とられたことあったっけ・・・ | ||
歩きタバコはダメだけど、それは科料じゃないわよ。 科料は刑罰だけど、サルのお父さんが受けたのは、過料っていうの。 過料は行政罰だから、刑罰とは違うのよ。 混同しないように、「科料」は「トガリョウ」、「過料」は「アヤマチリョウ」って言うこともあるわね。 似たような間違えをする言葉として、刑罰の「拘留」と「勾留」もあるわね。 「勾留」は、刑事手続において身柄を留め置かれることを言うのよ。 筆記では間違えないように気を付けてね。 |
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大丈夫! あたし、過料も勾留も知らないから出てこないもん! |
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ナニが大丈夫なのかワカラナイんだけど・・・ もっとちゃんと勉強しないとダメよ! うーん、サルには、ちょっと早いかもだけど、ここで一緒に教えておくわね。 刑法第5章の執行猶予(25条)に、枝番が刑法改正で出来たの。 第27条の2って条文ね。 刑の全部に対して行われていた執行猶予が、刑の一部に対して行われるようになったのよ。 新しい六法なら載っていると思うから今ひいてみちゃって。 |
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光ちゃん。 載ってない! |
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あら・・・去年の六法使っていたの? | ||
ううん。 先輩から貰った5年前の六法。 ポケット六法2009! |
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捨てなさいっ! そして、すぐに新しい六法買いなさいっ! 新しい条文は、短答でもよく狙われるから、ちゃんと見ておくのよ! |
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・・・。 (またお財布からお金が出ていくんだ・・・) |
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六法はいつも新しいのを買うってのは法律を勉強する上で必須よ。 もう、サルがあんまりにも予習してこないから質問するのが面倒になっちゃったじゃない・・・ まとめちゃうと、9条にあがっている法定刑に、68条以下の加重軽減をすることが処断刑、その処断刑の作業後、被告に対して下されるべき宣告刑が決定されるのよ。 処断刑の順序(72条)は、頭文字をとって「再・法・併・酌」って言われるわね。まぁ、見たまんまなんだけど。 |
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(なんか怒りから呆れに変わっていくのを目の当たりにしてる気がすゆ・・・) | ||
最後に、すっごい大事なとこ、まとめるわよ! 刑法は、その保護目的から行為無価値論と、結果無価値論とに大きく分かれるの。 いずれの立場をとるかは、どっちの説明、考え方が自分にシックリ来るかで決めるべきだと思うから、それはサルが自分で勉強していく中で、決めればいいと思うわ。 ザックリした説明しちゃうと、人を殺すな、物を盗むな、という規範(ルール)に対する違反、その違反こそが違法と捉える考え方が行為無価値論。ルール違反を咎めるから、その行いが違法と見る考え方ね。 これに対して、法の保護に値する利益を守るべき、と考え、その法益を侵すことこそが違法と捉える考え方が結果無価値論。法益侵害を咎めるから結果中心に見る考え方ね。 行いを中心に評価するのか、結果を中心に評価するのかという違いから、主観面を重視するのか、客観面を重視するのか、はたまた、社会的相当性を考慮するのか、法益衡量を考慮するのか、というそれぞれの説の違いが出てくることになるのよ。 ただ今の行為無価値論は、法益保護主義を出発点とする二元的行為無価値論という考え方をとっているわ。受験生にも人気のあるのは、この二元的行為無価値論じゃないかしら。 こればっかりは、コッチの説にしたらなんて私が言うことじゃないと思うから、サルが自分にあう考え方を見つけてね。 |
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・・・投げられちゃった? ひ、ひ、光ちゃん。 あたし、ちゃんと勉強するから見捨てないでよ・・・ |
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大丈夫、投げてなんかいないから! サルはやればデキる子だって私信じてるから。 |
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光ちゃんっ!!! (ぱぁ〜っ!) |
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だから、そんな六法はすぐに捨てて、新しいの買って、今度はしっかり勉強してきなさいよ! |