それじゃ今日からは、民法総則第5章・第2節。 「意思表示」についての勉強をするわね。 「意思表示」っていうのは、「この服を買う」、「あの本を贈与する」ってな感じの、私法上、一定の法律効果を意図してなされる表現的行為をいうのね。 |
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なんか、今日の勉強はわかりやすそうだね。 前回まではキツかったからなぁ。 |
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意思表示の成立までの心理過程を、わかりやすく表してみるわね。 私が、左馬之助の服を買うっていう前提で表現するから、そのつもりで見てみてね。 意思表示の成立には 動機→効果意思→(表示意思)→表示行為という心理過程を経るの。 表示意思っていうのは、効果意思を相手方に伝えようとする意思をいうんだけど、ここはあまり問題にならないから、今回は省いて説明するわね。 一応、下の図の中に入れて、説明するとするなら、「あの店員さんに言おう」ってなくらいの意思って位置づけでいいけどね。 |
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動機 ⇒ | 効果意思 ⇒ | 表示行為 | |
左馬之助の服汚れてきたなぁ。 新しい服買ってあげよっかな。 |
この服がいいわね。 この服を買いましょ。 |
『すみません。 この服を下さい。』 |
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意思表示の成立要素ではないが、動機の不法や、錯誤においては重要な意味をもつ。 | ある動機に基づいて決定された一定の法律効果を欲する意思 | 効果意思の外部への表現行動 | |
この過程を意思表示という。 | |||
おいおいっ! ちょっと待てお! サラっと、ぶち込んできとるけど、左馬之助って誰だお? |
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誰だっていいじゃない。 少なくとも、あんたには関係ないわよ。 |
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ま、ま、まさか男なのか!? 男なのか!? お父さんは、許しませんお!! |
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残念でした。 ウチのお父様は、公認してくれてます。 大体、なんであんたの許しがいるのよ! |
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光ちゃん、お綺麗ですし、知的ですし、お洒落ですし・・・ 正直、同性の私から見ても憧れちゃうくらいなので、彼氏が居ても不思議はないですよね。 |
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ぶっちゃけ、ソイツ金目当てだお。 犯罪者面したゴスロリ趣味のいてぇ女の相手なんて、そうでもなきゃしねぇお。 |
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誰が犯罪者面ですって!? 言っとくけど、左馬之助は、あんたが思っているような人じゃないんだからね! |
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でも実際、服買ったりして、貢がされとるじゃまいか。 ヒモだお。ヒモだお!! |
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ソレは仕方ないわよ。 だって、左馬之助は自分では服は買えないんだもん。 |
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そんなに貧しい方なんですか? |
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違う、違う。 金満女に貢がせるヒモ野郎ってだけだって。 ニシシシシシシシ! |
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いい加減にしてよね! さっきから、私の左馬之助のことを、知りもしないくせに悪く言って! |
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でも、きっと藤さんはご心配されてみえるのではないでしょうか。 私も、左馬之助さんのことは存じ上げないのですけど、藤さんは私と違って、経験もおありでしょうから、老婆心から仰ってくださっているんですよ。 |
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え? け、け、経験? ま、ま、まぁね。 あ、あのさ、まぁ、あたしの豊富な経験上、言わせてもらうけど、ソイツ、100パー、ヒモだね。うんうん。 そういうのって、あたしくらいになると、わかっちゃうんだよね。 |
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へぇ〜。 豊富な経験がおありなんですねぇ。じゃあ、木下さんのイメージされる左馬之助って、どんな男なのか、うかがいたいですわ? |
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茶髪でピアスとかしてて、チャラい感じのするスカした感じのギャル男。 あと、胸元開いたシャツ着てて、鎖骨を露骨にアピってきてるイメージ。その癖、文無しで女にたかってくるヒモ野郎。 |
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まぁ、凄い!! ナニ1つ当たっていませんことよ? よろしければ、左馬之助の写真をご覧になります? |
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あ、是非、是非っ! | |||
あ・・・コレなんだけど。 なんか恥ずかしいわね・・・。 |
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っ!!!! | |||
藤さん、藤さんっ! 左馬之助、すっごい可愛いですよ! |
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・・・え? マヂで? ・・・くぅぅぅ。 まさか、光ちゃんに彼氏がいたなんて・・・。 み、み、見せてもらってもいい? |
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もぉ、仕方ないなぁ。 ほら、見て見てぇ。 |
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・・・コレ、あたし、ヌコに見えるんだけど・・・。 | |||
そうよ? 毛色がルディーの雄のアビシニアンだもの。 |
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すっごく可愛いですね? 今度、是非、左馬之助・・・いえ、左馬之助ちゃんに会いに行ってもいいでしょうか? |
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いいわよ。 左馬之助、すっごく遊ぶの大好きだから、きっと、つかさちゃんが来てくれれば喜ぶと思うわ。 |
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・・・勉強しようか。 | |||
ナニよ・・・そのテンションは? | |||
う・・・うん。 なんだか疲れたよ・・・ パトラッシュ・・・疲れたろ・・・。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ。パトラッシュ・・・。 |
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あうあうあうあう。 ネロが・・・ネロが・・・。 『フランダースの犬』の最終話再びです・・・。 |
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ナニよ! 自分から中断させておいて、その態度はっ!! じゃあ、少し間を置き過ぎちゃったから、もう1回同じことだけど言うわね。 意思表示の成立には 動機→効果意思→(表示意思)→表示行為という心理過程を経るの。 表示意思っていうのは、効果意思を相手方に伝えようとする意思をいうんだけど、ここはあまり問題にならないから、省いて説明するからね。 |
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動機 ⇒ | 効果意思 ⇒ | 表示行為 | |
左馬之助の服汚れてきたなぁ。 新しい服買ってあげよっかな。 |
この服がいいわね。 この服を買いましょ。 |
『すみません。 この服を下さい。』 |
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意思表示の成立要素ではないが、動機の不法や、錯誤においては重要な意味をもつ。 | ある動機に基づいて決定された一定の法律効果を欲する意思 | 効果意思の外部への表現行動 | |
この過程を意思表示という。 | |||
意思表示の成立には、最小限、表示行為が必要になるの。 動機や、内心的効果意思は、内部的側面よね。 これに対して、表示行為は、外部的側面になるわよね。 内部的側面は、相手方や第三者にとっては容易にわからないけれど、外部的側面は、わかるわよね。 だから、意思表示が成立したと言えるためには、最小限、表示行為が存在していることが必要なのよ。 |
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こくこく(相槌) | |||
法律行為に求められる 主体(権利能力・行為能力) 目的内容(確定性・実現可能性・適法性・社会的妥当性) を、これまでに勉強してきたわよね。 今回は、法律行為に求められる3つ目として、意思表示を学ぶってわけ。 |
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ほうほう。 あたしは、なんか疲れたんで、短めの説明ヨロ。 |
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始めたばっかで、なんで、そんなテンションなのよ!! もう少し前向きにやりなさいよね! 普通は、表示行為と効果意思とは一致しているものなんだけど、ときには食い違うことがあるわよね。 例えば・・・ サルが、チョコレートが欲しいなぁ、って思ってお菓子屋さんに行ったとしてよ? お菓子屋さんで、ちょっとしたはずみで、うっかりビスケットを指して「このお菓子を下さい」って言っちゃったのよね。 この場合、内心の効果意思は「チョコレートを買う」なんだけど、実際の表示行為は「ビスケットを下さい」よね。 このような食い違いを、どう考えるのか、っていうのが、今日から学ぶ問題なの。 |
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別に、あたしビスケットでも構わないお。 ドッチも美味しく頂くから問題ないお。 |
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そんなことを問題にしているんじゃないわよ! あんたの嗜好なんて、どうだっていいわよ!! 今のような不一致の場合の法的処理については、意思主義と表示主義とがあるの。 意思主義では、意思表示の最も重要な要素は、効果意思であると考えるの。 この意思主義によれば、サルは「チョコレートを買おう」って思っていた以上、ビスケットの売買は、サルの意思ではないわけだから、当該売買契約については無効とすべきと言えるわね。 この意思主義の考え方は、表意者に有利な考え方と言えるわ。 表意者保護、ないしは、静的安全の保護からの考え方ね。 これに対して、表示主義は、意思表示の最も重要な要素は、表示行為であると考えるの。 サルは「このお菓子を下さい」ってビスケットを指して言ったのだから、お店の店員さんは、この人はビスケットを買いに来たんだなって思って、ビスケットを売るわけでしょ? 表示主義からは、この相手方の保護、すなわち動的安全の保護の見地から、当該売買契約を有効とすべきと考えるわけ。 ただ、民法の立場は、意思と表示の不一致の各形態ごとに、表意者と相手方との事情を比較して、意思主義、表示主義のいずれを採るかを決めるという折衷主義をとっているのよね。 つまり、場合分けを行って、意思主義と表示主義とを使い分けているわけ。 |
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だからさぁ。 あたし、ビスケットでもチョコレートでも、ドッチでも構わないって。そこまでチョコレートに固執する理由もないし、ビスケットだって好きだもん。 |
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・・・。 (藤先輩の脳みそが、完全に考えることを放棄してしまっているです。 一体、なんでこんなに疲労困憊になってみえるのでしょう?) |
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私の、例え方が悪かったのかなぁ・・・ チョコレートやビスケットみたいな物ならば、そこまで気にしなくっていいかも知れないけれど、コレがもっと高額な商品だったりしたら、そんな悠長なことは言ってられないわけでしょ? じゃあ、次回から学ぶ意思表示の不一致の類型について、ガイドラインを言うわね。 不完全な意思表示の形態には、大別して2種、合計5種あるの。 @意思の欠缺(または、意思の不存在) あ、「欠缺」は「ケンケツ」って読むんだけど「欠けていること」っていう意味ね。 これは、内心の効果意思はなく、表示行為だけがなされた場合をいうの。 この@の場合としては 心裡留保(民法93条) 通謀虚偽表示(民法94条) 錯誤(民法95条) の3類型があるわ。 A瑕疵ある意思表示 これは、厳密には、内心の効果意思と表示行為との不一致はないんだけれど、内心の効果意思を形成するときに、外部から不当な影響を受けたために、その意思表示が、本人の正常な意思に基づかずになされた場合をいうの。 このAの場合としては 詐欺による意思表示(民法96条1項) 脅迫による意思表示(民法96条2項) の2類型があるわ。 次回からは、これらの意思表示の不一致の類型について、1つずつ勉強していくことにするわね。 |
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終わり? | |||
ええ。 今日の勉強会は、第2節・意思表示のイントロのつもりだったからね。 |
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なんだか藤さん、顔色も優れないみたいです。 大丈夫ですか? |
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うん、平気、平気。 じゃあ、勉強会も終わったみたいだし、あたし帰るね。 |
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・・・。 (おかしいです。 いつもの藤先輩なら、何かドス黒いこと考えていそうなものなのに、何にも伝わってこないです。) |