抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲

さて。
今日の勉強会では、抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲について学ぶことにするわね。
あ、ソレって、抵当権最初の勉強会で後でやるって言ってた話だよね?
そうね。

あの勉強会では、抵当権が設定される目的物は原則、不動産369条1項)、この他に、地上権と永小作権同条2項)ってことを伝えたわよね。

ただ不動産といっても、土地であれば、その土地には石垣があったり、庭木が植えられていたり、庭石や、石灯籠なんかもあるわけだし、土地と建物は別個の不動産だから、土地上の抵当権は、その土地の上にある建物には及ばないことになるけれど、建物自体は、独立の不動産として、また別個に抵当権の目的物になるわけよね。
でも、その建物だって、屋根には瓦が葺かれているだろうし、雨戸や網戸、室内には建具や、畳があったりするわけよね。

これらの物に、抵当権の効力がどこまで及ぶのか、という問題が、抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲の問題ってことになるわ。
・・・なんか、すっごい面倒そうだね。
もう全部抵当権が及ぶってことにしとこうか。
抵当権が及ぶっていう結論をとること自体は、いいとして、その理由付けが
「すっごい面倒そうだから」
なんて言ったら、0点よ?
アホなの?
そんなの言うわけないじゃないの。
ソコはソレ、うまいこと言い繕うっての。
そんな下手な言い訳を試験の現場で考えるくらいなら、この機会にしっかり勉強しておけばいいじゃないのよ。
アホは、ドッチよ!
  お前だお。
まぁまぁ、御二人共・・・。
せっかくの勉強会なんですから、喧嘩は止めて下さいな。
そ、そうね・・・。

抵当権の効力が及ばない、とされるものについては、各自で勉強しておいてもらうってことにして、ここでは、抵当権の効力が及ぶかが問題となる物についての理解にテーマを絞って勉強することにするわね。

先ずは、今日の勉強の中心になる条文の確認からね。
六法で、民法370条を見てくれる?
民法第370条

『(抵当権の効力の及ぶ範囲) 第370条
 抵当権は、抵当権の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下、「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
そうね。

条文上は『抵当権は』『その目的である不動産』『に付加して一体となっている物に及ぶ』(=いわゆる付加一体物)としているけれど、ソレって、具体的にどういう物をいうの?
って疑問は湧くところじゃないかしら。

土地上の石垣や、立木、建物の屋根や、壁。室内の建具や畳、さらには、タンスやテーブル・・・。
これらの物と、本体である土地・建物とは、その結びつきが極めて強い物から、そうでない物まで、その結合の仕方において様々な段階があるわけだものね。
ふむ。
アホなりに、なかなかワカリやすい説明をしようとしているお。
好印象だお。
藤先輩、余計なこと言わないで下さいです!
ナカちゃんの言うとおりだよぉ。
オネーちゃんは、光おねーちゃんを怒らせるようなこと言っちゃダメだよぉ。
褒めてんのに、余計なこと呼ばわりとはビックリだお!
あんた、ソレで褒めてるつもりだったの?
その認識にビックリよ!

えーっと、結合の仕方においての様々な段階を具体的にすると・・・。
ここではつに分けることが出来ると思うわ。

①独立の物ではなく、その本体たる不動産(土地・建物)の一部と観念される物

②物としての独立性を失ってはいないが、社会的・経済的には本体たる不動産(土地・建物)と強い結合関係にあり、取引上も一体の物として取り扱われることの多い物

③独立の物であって、取引上も一体とは見られない物

パターンね。
ぐ、具体的に、あてはめて欲しいです。
了解っ!

①独立の物ではなく、その本体たる不動産(土地・建物)の一部と観念される物
の具体例としては、土地における石垣の石、立木、建物なら屋根、壁、柱が、このに該当するわね。

②物としての独立性を失ってはいないが、社会的・経済的には本体たる不動産(土地・建物)と強い結合関係にあり、取引上も一体の物として取り扱われることの多い物
の具体例としては、畳や建具なんかがそうと言えるわね。

③独立の物であって、取引上も一体とは見られない物
としては、机やタンスなんかの家具は、このの具体例として挙げることが出来ると思うわ。

この3パターンのうち、に属する物は、以前の勉強会で学んだ付合物」ってことになるわよね。
これらの物(=「付合物」)は、不動産の一部(=構成部分であることから、抵当権の効力が及ぶということには問題がないという結論になるわ。

逆に、に属する物である机やタンスには、抵当権が及ばないということも自明と言えるわよね。
  こくこく(相づち)。
ということは、ここで問題になるのはのパターンに属する物ということになるわよね。

こののパターンに属する物を、民法上、どのように呼ぶのか、ってことについては勉強済みなんだけど、大丈夫かしら?
はいです!
民法総則で勉強した従物」(民法87条)です!
そうね。

抵当権の効力が、その目的物のどの範囲まで及ぶのか
という問題は、抵当権に基づいて、土地又は建物が競売される場合に、競売される物件の範囲、つまり、競売の結果、抵当物件の所有権を取得する買受人が取得するのは、どこまでか
という形で問題になるところなのね。

少し問題の所在がワカリにくいかも知れないから、換言すると、370条にいう「付加一体物」という言葉がナニを意味するのか、具体的には、先の分類にいう②のパターンの物(=従物)を、含むのか、含まないのかの解釈が問題になるってことね。
面倒くさいから及ぶってことで、いいお。
ふ、藤さんは、十二分に理解されてみえますから、今更かも知れませんが、大事なところですから、竹中さん達には、ソレでは不十分かと思いますよ?
だから、つかさちゃんもサルのフォローなんてしなくっていいわよ。

370条にいう付加一体物との関連で問題になるのは、242条本文と、87条よね。
それぞれ確認していくことにしましょうか。

ナカちゃん、それじゃ先ずは、242条を見てくれる?
民法第242条

『(不動産の付合) 第242条
 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
ありがとうね。

これは、添付のうち付合と呼ばれるものだったわよね。
この付合については、以前の勉強会で学んだから、ここでの説明は割愛するわ。

不動産に、ある物(通常は動産)が「付合」したことによって、その物が、不動産の一部(構成部分)になり、その物の上の独立の所有権は、もはや存続しえなくなる(不動産の所有権に吸収される)ってことを学んだわけよね。
ここから、抵当権設定の前後を問わず、付合物について抵当権の効力が及ぶことには問題がないってことになるわけよね。

つまり、370条にいう「付加一体物という概念は、付合物を含む概念という理解になるわ。
・・・ソレ、さっきのパターンの物(=付合物には及ぶって言うてたやないの。
2回も同じこと言ってんじゃないお。
・・・条文を示して、丁寧に説明しただけじゃないのよ。
それじゃ、ここからが大事な話になるわね。

87条との関連で、どう考えるべきか、って話になるからね。

六法で、民法87条を確認してくれる?
民法第87条

『(主物及び従物) 第87条
1項 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。

2項 従物は、主物の処分に従う。
民法87条は、いわゆる主物・従物についての規定よね。

独立した物としての存在を失ってはいないが、ある物の常用に供するため、所有者が、その物に附属させた物(さっきの例でいうところの、畳や建具を従物といい、その元の物(さっきの例でいうと建物を主物というわけね。

そして、87条2項
従物は、主物の処分に従う。
と定めているわけよね。

確かに、従物は、物としての独立性を保持している点で、先の付合物とは異なるわ。
でも、従物は、主物との客観的な結合状態から、経済的には一体の物として取引の対象とされることが多いのね。
例えば、建物(主物)について売買があったときには、特にナニも決めてなければ、畳や建具(従物)も売買の対象になるってことになるわ。
  こくこく(相づち)。
この点、通常の売買であれば、契約に際して当事者間で、コレは売買の対象にする、コレは売買の対象にはしない、といったことを取り決めると思うわ。

でも、建物に抵当権が設定され、ソレが競売に付され、売却されるということになると、売主買主間で、そのような合意をするということも困難になるわけよね。

ここに、従物に抵当権の効力が及ぶか、及ばないのか、ということが重要な問題として登場するわけね。

ただ、370条にいう「付加一体物従物が含まれるにせよ、含まれないにせよ、抵当権設定当時、抵当不動産に従物として附属していた物については、抵当権の効力が及ぶことには問題がないとされているのね。

付加一体物従物が含まれるとするのであれば、抵当権の効力は、当然に及ぶという結論になるわけだし、含まない、と捉えるとしても87条2項から従物主物の処分に従うのであるから(特約があれば別になる)、主物についての抵当権設定という処分は、当然「従物を伴って、なされたものと解することが当事者の合理的意思にも合致するといえるからよね。
じゃあ、結局問題ないってことじゃないかお。
抵当権設定」(=当時を含む従物」についてはね。

問題は、抵当権設定に、その抵当目的物に附属せしめられた従物」なのよね。

もちろん、この問題を簡単に処理することも出来るわ。

370条にいう「付加一体物」とは「経済的・価値的に一体性を有する物」と解釈することで、「従物」を「付加一体物」として捉えれば、抵当権の設定「前」・「後」を問題とせず370条の「付加一体物」である以上、抵当権の効力は及ぶ、という結論が導けるわ。
チイは、光おねーちゃんとは、ちょっと考え方が違うけれど、抵当権の実行を、87条2項にいう処分』って捉えることで、「従物」が「付加一体物」じゃなくっても87条2項から従物は、主物の処分に従う。』んだから、抵当権の設定の前後は問題なく、抵当権の効力は及ぶって理解しているよぉ。
 結論的には同じになります。法律構成の違いだけです。)
そうね。
試験戦略上は、私や、チイちゃんの理解でいいと思うわ。

ただ、個人的には、その帰結でいいのかしら、って迷うところもあるのよね・・・。
その問題を一緒に考えて欲しかったかな、って思っていたんだけど。
私は、いつも明智先輩には、一杯教えてもらっているので、一緒に考えることが出来るのなら考えてみたいです!
チイも、光おねーちゃんと一緒に考えたいよぉ!!
わ、私も及ばずながら、一緒に考えてみたいですね。
藤さんも、同じ気持ちですよね?
  ん?
・・・めんどい。
・・・例によって、1人・・・救えない方がいるわね。
せっかくの勉強会なんだから、みんなで考えてみたいなって気持ちには応えてはくれないのかしら。
  なんか奢ってくれお。
・・・欲求にストレートな要求です。
はいはい。
わかりました。
サルが、ソレで一緒に勉強してくれるのなら、喜んで御馳走させてもらうわよ。
言うとくけど、このゴチは、この前の柴田さんの声の悪戯の一件で、要求したゴチとは別勘定だかんね!!
・・・はいはい。  
・・・オネーちゃん、セコいよぉ。
チイは、そんなオネーちゃんは恥ずかしいよぉ。
  チイちゃん。
同情するです。
 次回の勉強会は、抵当権の及ぶ範囲従物の場合)についての補足的検討になります。
 抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲における「従物の理解としては、今回の勉強会の光ちゃんの理解で足りるものと思います。
 つまり、370条にいう「付加一体物」とは「経済的・価値的に一体性を有する物」と解釈することで、「従物」を「付加一体物」として捉え、抵当権の設定「前」・「後」を問題とせず370条の「付加一体物」である以上、抵当権の効力は及ぶ、という通説的理解が、一番簡便な理解かと思います。
 370条一本での解釈論なので、わかりやすいかな、と。

新着情報