権利義務の客体となる「物」の種類についての勉強の続きをするわね。 前回の「物」の種類のうち、「不動産」と「動産」という区分について勉強したわよね。 今回は、「物」の種類のうち、「主物」と「従物」という区分について勉強するわよ。 まずは、六法で民法87条をひいてみて。 |
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民法第87条 『(主物及び従物) 第87条 1項 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。 2項 従物は、主物の処分に従う。』 |
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主人と従者みたいな関係が、「物」にも適用されるってこと? 2項なんて、従者は主人の命令に従うって感じだもんね。 |
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その例えはどうなのかなぁ?って気がするんだけどなぁ。 「従物」とは、法律的に独立性を失わないものの、経済的・客観的には他の物(「主物」)に付属(従属)し、その物(「主物」)の経済的効用を高めている「物」(付属物)をいうって定義されるわ。 このような「従物」については、「主物」の法律的運命に従わせることが望ましいといえるので、87条2項の規定があるのよね。 「主物」の法律的運命に従う・・・って言われると、なんか物々しい印象受けるかも知れないけれど、簡単に言っちゃうと、「主物」が売られたら、「従物」も一緒に売られるってことね。 |
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「主物」、「従物」って言われてもピンと来ないよ! 具体的に例をあげて説明してよぉ。 |
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「従物」は、「動産」であることが一般的なんだけど、「不動産」だって「従物」になりうるわね。 具体例を挙げると、「不動産」である「建物」を「主物」とした場合における「動産」である畳、エアコンなんかは「従物」の関係にあるわ。 でも、同じように「不動産」である「建物」を「主物」とした場合に、「不動産」であるプレハブ物置や、納屋なども、母屋である「建物」との関係においては、「従物」になるわけだから、「不動産」であっても、「従物」になりうるってことになるわね。 |
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つまり、「動産」か「不動産」かで「従物」となるかどうかが決まるわけじゃなくって、あくまでも、「主物」に対して、その効用を補っているという関係にあると言える場合に、その物は「主物」に対して「従物」って言えるってことだね? | ||
藤先輩、いいまとめだと思います。 わかりやすいです。 |
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まぁまぁ。 光ちゃん、説明うまくないからさぁ。あたしがフォロってやんないとね。 |
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それは、それはお気遣い痛み入ります。 「従物」と言えるかどうか、という点の判断は、それでいいんだけれど、「従物」の要件があるから、ソレを説明するつもりだったのよね。 従物の要件は、87条1項から、次の4要件ね。 @主物の『常用に供するため』 A『付属させ』られること B主物から独立した物であること C主物・従物が同一の所有権者に属すること の4点ね。黒太文字部分は、87条1項の条文から導かれる要件であることを示したものよ。 要件について、それぞれ確認していきましょうか。 |
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私も藤先輩に負けていられないです。 いいまとめが出来るように、理解に努めるです。 |
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@主物の『常用に供するため』というのは、継続的に「主物」の経済的効用を高めることをいうのね。 さっき具体例として挙げた「建物」に対する畳なんかが、そうよね。 A『付属させ』られることというのは、「主物」に付属すると認められる程度の場所的関係にあることが必要となるってことね。 |
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ふむふむ・・・。 まぁ、特にあたしがフォロってやる程、ヘタな説明でもないかな。 |
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・・・。 (あぁぁ。 私が、藤先輩を褒めたせいで、なんかとんでもなく増長されてしまっています・・・。 コレは、やっぱり私が悪いのでしょうか。) |
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ヘタな説明で、どうもすみませんねっ!! B主物から独立した物であることという要件は、大事な要件なのよね。 まだ勉強していないから知らなくっても仕方ないんだけど、「付合」(民法242条)っていう物権で、学ぶ論点があるのよ。 「従物」が「主物」から独立していないと、その「物」は「主物」に吸収されて(「付合」)、「主物」の構成部分となってしまうのよね。 具体的な例を挙げると、家(「建物」)の内装工事で、壁紙とかの張替えをした場合、この壁紙は「付合物」として、建物の一部となってしまっているため、「従物」とは言えないこととなるわね。 |
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そうそう。 まぁ、アレだね。 コーヒーに牛乳を入れると、牛乳はコーヒーと一緒になっちゃうでしょ? コレが、付合ってことなんだよね。 |
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ちょっと、ソコの知ったかしている人? ソレは、付合の例えとしては間違っていますことよ? ソレは、混和(民法245条)の説明でなくって? |
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混和? ナニそれ? |
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「付合」も「混和」も、物権の条文だから、まだ知らなくっても仕方ないって言ってあげたじゃないの。 総則の勉強だから、必要最小限でしか、それぞれの分野の話には立ち入らないでおこうってしているんだから、自分から勝手に話進めて、勝手に迷うのは、やめてよね! もうっ! 混和が気になるなら、サルが自分で物権を予習して勉強しとけばいいんじゃない? 今、付合や、混和の説明しちゃうと、今日の勉強会終わらなくなっちゃうからね。 それじゃ、次は、「従物」の効果について、まとめるわね。 |
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ねぇねぇ。 混和が気になってんだけど! |
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混和についての質問なんて聞こえてコンワ!! なんてね! |
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・・・・。 (口に出しては言えませんが、ヒドいセンスです・・・) |
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従物の効果は、87条2項の『従物は、主物の処分に従う。』ってことになるわね。 さっきも説明したと思うけれど、主物が処分されれば、その処分行為の効力は、従物にも及ぶこととなるわ。 因みに、主物・従物の関係は、権利と権利の関係でも生じうるわね。この場合は、主たる権利、従たる権利って言葉で説明されたりするわね。 但し、権利は「物」ではないわけだから、「物」について規定している87条2項を直接適用することはできないから、類推適用ってことになるんだけどね。 まぁ、この「従たる権利」については、物権の抵当権の論点だから、また、その時に、しっかり勉強することにしましょ。 あと、他の効果については・・・ そうそう。従物には、独自の対抗要件は必要とされないわ。 主物に対抗要件が具備されれば、従物にも対抗力が生じることとなるからね。 最後にもう一つ。 この87条2項の定めは、任意規定であるため、当事者の反対の意思表示があれば、それによることになるからね。 |
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うぐぅ。 混和やら、抵当権やら、知らない用語が多過ぎるよ・・・ |
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混和は、あんたが勝手に言ったんじゃないの! | ||
藤先輩、大丈夫です。 民法物権の勉強の際に、理解できるようにされればいいです。 |
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そういうことっ! それじゃ、物の種類の3つ目の区分として、元物と果実について、まとめて「物」の勉強を終えることにするわね。 |
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果実って、前回言ってた、リンゴとかブドウの話? | ||
ソレは、あんたが勝手に言い出した話でしょ? 私が言うのは、民法上の「果実」の話よ! 元物と果実の定義を言うから、ちゃんと聞いてね。 物から生じる収益上の利益(経済的利益)を「果実」といい、それを生み出す元の物を「元物」っていうのよ。 そして、果実には、天然果実と、法定果実とがあるのよね。 確認するために、六法で民法88条をみてくれる? |
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民法第88条 『(天然果実及び法定果実) 第88条 1項 物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。 2項 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。』 |
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まずは、天然果実から説明するわね。 天然果実には、サルが言っていたリンゴや、ブドウみたいな植物の果実も、勿論含まれることになるわ。 ただ、それだけじゃないのよね。 牛の乳もそうだし、牛が産んだ子牛も天然果実になるわ。 羊の毛だって、天然果実だし、畑のお野菜も天然果実なのよね。 まだまだあるわよ? 伐採される材木も天然果実、鉱区から採掘される鉱物も天然果実なの。 つまり、『物の用法に従い収取する産出物を天然果実』と言うわけなんだから、有機的な産出物であれ、無機的な産出物であれ、天然果実となるってことなのね。 |
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成るほどねぇ。 で・・・天然果実の対義語が、養殖果実ってことだね。 |
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話、聞いてた? 天然果実と、法定果実っ!! 一言も、「養殖」なんて単語出てきてないじゃないの!! |
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なんか「天然」とか「養殖」なんて話してたら、猛烈にお寿司が食べたくなっちゃったお! 光ちゃん! お寿司オゴッて、オゴッて! |
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「天然」は、ともかく、「養殖」は、あんたが勝手に言い出したんだけどね! | ||
じゃあ、あたしが言い出した「養殖」は引っ込めるよ! というわけで、「天然」モノだけを出してくれるお寿司屋さんに連れてって! |
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うーん、じゃあ、今日の勉強会の最後の確認の質問に正解できたら・・・って条件付で、連れてってあげるわよ。 | ||
きたぁぁぁぁぁぁっ!! |
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藤先輩、落ち着いてください。 まだ、来てません! 質問に正解してから、喜ばれたほうがいいですよ? |
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やれやれ・・・ お子様は、弱気だねぇ。 大人のあたしには、ちゃんと必勝の策があるんだよね! |
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必勝の策? 昨日、しっかりと天然果実と法定果実についての予習はされてきたってことでしょうか? |
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手の内は、まだ秘中の策だけに明かせないんだけどね。 まぁ、安心して見ててよ。 |
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は、はい・・・。 (なんででしょう。 イヤな予感しかしないです。) |
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さぁ、じゃあ続き、続き。 次は88条2項の法定果実ね。 『物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。』ってことなのね。 具体例としては、不動産の賃料。つまり、地代や、家賃のことね。 あとは、貸したお金の利子なんかも法定果実になるわね。 |
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・・・くぅぅぅ。 武者震いが、とまんねぇお。 質問、ナニ聞かれるんだろ。 |
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真面目に聞いているみたいね。 それじゃ、天然果実と法定果実の、それぞれの帰属について、説明するわね。 六法で、民法89条をひいてくれる? |
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民法第89条 『(果実の帰属) 第89条 1項 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。 2項 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。』 |
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天然果実は、原則として、その元物より分離するときの収取権者に帰属するの。 これに対して、法定果実は、対外的には、すべて支払期の権利者に帰属するというのが通説的理解なのね。 ただし、帰属権利者同士の内部関係においては、各自の収取権の存続期間に応じて、日割計算で取得するってことが、89条2項の規定と捉えられているわ。 でも、89条2項は、強行規定ではないから、当事者間の合意があれば、その合意によって、帰属を定めることは可能だからね。 |
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・・・終わり? いよいよ、質問? |
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珍しく意欲的じゃないの! それじゃ、ご期待の質問しちゃうわよ? 見事、正解なら、サルが行きたがっている天然物を出してくれるお寿司屋さんに連れて行ってあげるからね! 質問! サルは、家屋を賃借する借家契約を、私との間で締結したの。 家屋と建物の所有者は、私だったからね。 さて、そのサルが借りた家の庭には、柿の木があって、甘くて美味しい柿が生っていたのよね。 さぁ。サルは、この柿を取って食べることができるでしょうか? あ、木に登って、柿を取れるかどうかなんて聞いてないからね! あくまでも、法律的な問題として答えてね! |
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・・・っ!! あ・・・いたたた! ひ、ひ、光ちゃん・・・ちょっと、あたし、急にお腹痛くなっちゃったんだけど・・・ ちょっとトイレ行って考えて来てもいい? |
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だ、大丈夫? あんたが腹痛なんて、一体昨日ナニ食べたの? |
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ゴメンね。 ちょっと、トイレ行ってくるね。 あ、大丈夫、一応、トイレでも考えること出来るから・・・。 じゃあ、そういうことで、ちょっと待っててね。 (スタコラサッサ) |
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藤先輩が、心配です。 | ||
そうね・・・。 いつも、賞味期限切れの物ばかり食べてるけど、流石に、今の季節だと、痛みやすいしね。 今日のお寿司、仮に正解でも、別の日にしてあげないといけないかもね。 |
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見てきたほうがいいでしょうか? | ||
流石に、そこまで心配する必要はないと思うわよ? | ||
あぁ、スッキリした。 もう大丈夫だお! |
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大丈夫? もう痛くない? |
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藤先輩は、いつも元気なだけに、余計に心配しちゃいます。 | ||
あぁ、あんがと、あんがと。 それじゃ、さっきの質問の答えを言ってもいいかな? えーっとね。 柿の木に生っている柿は、天然果実(民法88条1項)だよね。 となると、天然果実の帰属は、その元物である柿の木から、分離するとき、すなわち取る時の、収取権者に帰属するわけだよね(民法89条1項)。 そこで、あたしが収取権者の地位にあるかが問題となるんだけど。 あたしは、家屋を借りているだけの賃貸人なわけでしょ。 だから、賃貸借契約の対象は、建物の使用なわけだから、あたしには、家屋の使用に必要な範囲での利用権しかないわけだよね。 えーーっと、つまり、あたしは柿の収取権者とは言えないため、当然には、柿を取って食べることはできないって結論になるかな。 |
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サルぅ〜っ!! なになに!? お腹痛いのに、そんな中、問題の答えまで考えていたの? しかも、その答え・・・合ってる。 いい理解が出来ているじゃない! 賃貸借については、債権各論の話だから、ここでは、民法89条1項の原則論から、収取権者は誰なのか、っていう問題について考えてくれればいいなって思って聞いたのに、よく賃借人の利用権なんて出てきたわね。 これなら、天然物の美味しいお寿司を、御馳走しないわけにはいかないわね! |
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まぁ、あたしだって、やればデキルってことを、たまには証明しないとね! お寿司ゴチ・・・ (プルプルプルプル!) |
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藤先輩、携帯が鳴っていますよ? | ||
もう今日の勉強会は終わってるから出てくれていいわよ? | ||
あぁ、大丈夫、大丈夫。 それよりも、お寿司は、どこのお店行くか教えてよ。 光ちゃん家の、あのリムジンで遠征しちゃう? (プルプルプルプル!) |
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藤先輩、ずっと鳴ってますよ? | ||
・・・どうして、電話に出て頂けないんですか? | ||
つかさちゃん? どうしたの? 今の電話、つかさちゃんだったの? |
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あぁあっ!! クロちゃん!! 後から話すから、今はダメ、マヂでマヂで! |
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え? 後から話す? ダメだったって、どういうことでしょう? 私の回答が、間違えていたということでしょうか? |
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私の回答? 間違えていた? ・・・ちょっと、サルっ!! あんた、まさか!? |
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あ、また猛烈にお腹がっ!!!! ヤバイ、コレはアカンやつやっ!!! あ、あ、あたし、帰るねっ!! (スタコラサッサ) |
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ちょっと待ちなさいよ! 逃げるなんて卑怯よっ! |
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ヒドイです! ヒドイです! 藤先輩は、信義則についても再度復習して来るべきです! |
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藤さん、大丈夫かしら? 腹痛なんて心配ですよね・・・ |
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心配いらないわよ! 事情はわかったから! さっき、サルが、つかさちゃんに携帯で質問して、ソレに、つかさちゃんが教えてあげたんでしょ? |
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そうですけど、答えた手前、やっぱり答えが気になるじゃないですか。 急な御質問だった上、やたら急かされるものですから、私もろくに検討できないままに答えてしまって・・・それで、合ってたのかな? って思って、藤さんにお電話したのですが出て頂けなくって・・・。 |
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これが、藤先輩の秘中の策だったわけですか・・・ イヤな予感的中です・・・。 |
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つかさちゃんにまで迷惑かけるなんて、とんでもないサルねぇ〜。 | ||
迷惑? ちょっと事情が、よく飲み込めないんですが、私が藤さんを御迷惑に思うなんてことは、あり得ませんけど。 |
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つかさちゃんも、そろそろサルについての認識改めてくれないとね? ホント、あのサルだけは、いつも裏切ってばっかいるんだから! |