おいおいおい。 よくもまぁシレっとした顔して来れたねぇ~。 もう少し申し訳なさそうな態度は出来ないものかねぇ。 |
||
・・・。 (やっぱり黒田先輩から事情を聞いてしまったみたいです。 内緒にしとくのも藤先輩に悪いって思ってましたが、今の藤先輩を見てしまうと、内緒にしとくべきだったと思ってしまうです。) |
||
ナニよ、サル・・・。 感じ悪いわねぇ。 |
||
ちょいちょいっ!! 感じ悪いのはドッチだお! あんな性質の悪い悪戯しといて、謝罪の一言もないのかお!! |
||
あ、柴田さんのボイスレコーダーのこと怒ってるの? ゴメンね、あんなにサルが驚くなんて思わなくって。 もうしないから許してよ。 |
||
ゴメンで済んだら警察はいらねぇーんだお!! 謝罪の気持ちを形にしろっつってんだお!! あぁぁん!? それともなんだお!? 謝るのは口先だけってことなのかおぉ!? |
||
・・・。 (もう、ただのチンピラにしか見えないです・・・。) |
||
わかったわよ。 それじゃ、ネージュ・ブロンシュで御馳走するから、ソレで許してくれる? |
||
足りないおっ!! あたしの寿命が、あの悪戯のせいで、確実に5年は縮んでいるんだお!! あたしの5年の生命を、ネージュ・ブロンシュのシュークリームだけで済まそうなんて、あたしの命をなんだと思っているんだお! |
||
はいはい、それじゃ、サルの食べたい御飯も御馳走させてもらうわよ、コレでいいのかしら? | ||
うわっ!! あたしの生命の価値は、御飯1回分しかないって思ってるんだ! 怖いっ!! 怖い、怖い、マヂで怖いっ!! 最低でも今週と来週一杯は、晩御飯御馳走じゃないとダメだお!! |
||
・・・。 (生命の価値って言っておいて、御飯数回分でいいなんて、藤先輩の生命の価値の評価こそ怖いです・・・。) |
||
・・・オネーちゃんはチイに悪戯して、チイが怒っても謝らないんだから、いいじゃない。 光おねーちゃんは謝っているんだし、許して上げてよぉ。 |
||
あたしのは、可愛い妹とのスキンシップだお!! しかし、光ちゃんのは違うかんね!! あんな悪意に満ち満ちた悪戯・・・いや、もうアレはそんな次元ではなかった・・・ 一歩間違えれば、命を落としかねない・・・保護法益の現実的危険をも内包する刑罰法規に抵触する許し難い行為であった・・・。 |
||
確かに、藤さんの御指摘の通りかと。 暴行罪・・・いいえ、傷害罪の構成要件に該当する可能性がありますよね! |
||
あるわけないじゃないのよ。 もう、つかさちゃんったら、サルの肩ばっかり持つんだから! 柴田さんの声を録音したものを再生しただけじゃないの。 しかも、発言自体は穏当なものだったわけだし、あんなので過剰に脅えること自体、どうかしてるんじゃないの? |
||
ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! 遂に開き直りよったでぇぇぇっ!! |
||
だって謝ってるのに、因縁つけてくるんだもの。 謝ることが馬鹿馬鹿しくなってきちゃったわよ。 はい、もうそんな脱線はおいといて、今日の勉強会に入るからね!! |
||
わ、わ、わかったっ!! そ、それじゃ、あたしも譲歩するから!! ネージュ・ブロンシュと、御飯1回分の御馳走で手ぇ打つから! |
||
藤さん・・・お広い・・・。 |
||
私もやり過ぎたかなって思っては、いるんだからね! 最初っから、そう言って許してくれれば良かったのに。 |
||
・・・。 (ゴネれば、も少し美味しい話になるかと思ったんだけどなぁ。 くぅぅぅ。 この金満豚めぇ~。) |
||
・・・。 (最早、思っていることまで、ただのチンピラになってしまっているです・・・ダメだ、コイツ、早くなんとかしないと、です。) |
||
じゃあ、サルも納得してくれたみたいだし、今日の勉強会のテーマを言うわね。 抵当権の実行とは、どのようなものをいうのか? ソレが今日の勉強会で理解する話になるわ。 |
||
抵当権の実行の手続きについては、説明されないのでしょうか? | ||
うーん、私、つかさちゃんみたいに手続法については詳しくないからね。 つかさちゃんが説明してくれるのなら任せたいって思うけれど、私には無理かなって。 |
||
あ、でしたら抵当権実行の手続きについては、民法というより、むしろ民事執行法の話になりますし、藤さんへの謝罪を兼ねてネージュ・ブロンシュでの勉強会って形にしては、いかがでしょうか? | ||
謝罪・・・って言葉に、少し違和感を感じなくはないけど、そうしようかしら。 それじゃ、ここでの勉強会では、抵当権の実行についてだけにして、具体的な手続については、ネージュ・ブロンシュに移動して、つかさちゃんに任せることにするわね。 |
||
はい、わかりました。 | ||
それじゃ、抵当権の実行とは、どのようなことかってことについて話すわね。 抵当権は、被担保債権が弁済されれば消滅するわ。 コレは、抵当権の性質の一つである付従性から、当然の帰結になるわけよね。 抵当権の実行がなされるとき・・・というのは、つまり、債権の弁済期になっても、被担保債権が弁済されないときよね。 |
||
うんうん。 抵当権をつけて、お金を貸したのに、返してもらえんかったときってことだね。 そりゃ、抵当権をせっかくつけてんだし、貸したお金が返ってこないのなら、抵当権を実行したいって思うよね、普通。 で、実行って、具体的にどういうこと? |
||
ソレを今から話すわけ。 抵当権による債権回収の方法だけれど、まずは抵当権設定者に、抵当目的物を売却させて、その代金から回収する、って方法が考えられるわ。 ただ、この形だと、抵当権は目的物が売却されても、そのまま第三取得者の所有となった抵当目的物の上に存続することになってしまうから、買い手も相当つきにくいことになってしまうわ。 だから、この場合は、買い手(第三取得者)から支払われる代金を、そのまま抵当権者に渡して、抵当権を抹消した上で、抵当権目的物を第三取得者に移転するなどの方法がとられるわけね。 |
||
うーん、色々面倒そうだなぁ。 少なくとも、あたしなら、そんな土地とか建物は欲しくないかなぁ。 |
||
その他の方法として、抵当目的物自体を抵当権者の物にしてしまう、という方法もあるわね。 質権の場合の質流れと同じよね。 もっとも、質権については質流れの特約は禁止されていたわよね(民法349条)。この質流れの特約禁止は強行規定なので、双方が特約として付したとしても無効とされるものだけどね。 ところが、抵当権については、このような特約は禁止されていないのよね。 これを抵当直流れ(テイトウジキナガレ)っていうの。 |
||
こくこく(相づち)。 | ||
以上の方法とは別に、抵当権者は直接に目的物について、換価手続きをとって、その代金から優先的に被担保債権の弁済を受けることができるのね。 これこそが、抵当権の効力としては最も本来的なものといえるわ。 この手続きが抵当権の実行とされるものなの。 で・・・この抵当権の実行の手続きとしては、つかさちゃんに御願いしたいって思うわけなんだけど・・・いいのよね? |
||
ええ、もちろんです。 | ||
よぉしっ!! それじゃ、あたしへの罪を償わせるため、ネージュ・ブロンシュに罪人を連行すんおっ!! |
||
・・・ちょっと、誰が罪人ですって? | ||
あ・・・いや、あの・・・そだそだ。 「財産を持っている人」って意味で『財人』ってことだお。 |
||
あるの? そんな言葉? |
||
言葉は活きてっからね! 日々、新しい言葉が、今日も生まれ、そして死んでいくんだお。 言葉(コトノハ)を重んじる木下家の末裔のあたしが言うんだから、間違いないお! |
||
・・・。 (お気に入りなのかナニか、ちょいちょい、そのフレーズを出してきてますが、申し訳ないですが、藤先輩には誰よりも言葉の重みを感じられないです・・・。) |