構成要件要素・A行為 間接正犯 | ||
今回のテーマは、実行行為の中のメインテーマ、間接正犯を勉強するわよ! 間接正犯っていうのは、自らは外形的には実行行為を行っていないにもかかわらず、実行行為を行った者として正犯の罪を負う場合をいうの。 前回、毒まんじゅう事案を説明して話したけど、おさらいがてら、もう一度違う事案を出して説明するね。 お医者さんが、事情を知らない看護師さんに、医師としての立場を利用して、患者さんに毒薬を注射させて殺した・・・というケースを想定してみて。 この事案において、お医者さんが間接正犯といえるかのポイントは、実行行為を自ら行わなくても、自ら行った場合と同視できるか否かってことなの。 そして、それは、他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」といえる場合をいうのよ! |
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ふむふむ。 そうやって考えてみると、お医者さんは、患者を殺す為(自己の犯罪実現のため)に、看護師さんを(自分の道具として)利用しているね・・・つまり、お医者さんは自らの手は下してはいないけれど、実行行為性が認められるから間接正犯が成立するってことだね。 |
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間接正犯が成立するかのポイントは。 他人の行為を「自己の犯罪実現のための道具として利用した」 といえるか否かによって判断するのよ。 つまり、間接正犯として、実行行為と同視できる場合というのは、 @自己の犯罪を実現する意思(正犯意思)をもって A他人の行為を道具として利用した B危険性を有する行為 ってことね。 間接正犯の成立を判断する上で重要なのは、@とAね。 |
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なるほど。 この@〜Bの基準をつかって、間接正犯の実行行為性を判断するってことね。 |
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それじゃ、ここで判例の間接正犯の事案を見てみることにしましょ。 (最決平16.1.20 百選T 73事件) |
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自殺関与罪とか、殺人罪とかについては、ちょっと今はまだよくワカラナかったけど、間接正犯についてはなんとなくワカッタ気がするよ。 | ||
さっきの検討判例は、強制された被害者の利用が、間接正犯を成立させるか、という事案だったけど、こんな事案もあるから考えてみてよ。 付き合っている2人がいると想定してね。 被告人は男性。被害者は女性よ。 被告人は被害者である女性に別れ話を持ちかけたんだけど、彼女はそれに応じず、心中をもちかけてきたの。 でも、被告人にとっては別れるつもりの女性との心中なんて、その気になれないわよね。そこで、女性が自分を愛して追死してくれると信じ込んでいるのを奇貨として、追死するよう装って、青酸ソーダを同女に与え、それを飲ませて死亡させてしまった、という事案なの。 (最高裁昭和33年11月21日判決) この事件は、各論の殺人罪のところでまた改めて扱う判例なので、今日はこれぐらいの説明にしておくけど、この事案をサルはどう考える? |
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ん〜。 「奇貨」とか「追死」とか、あんまり変な言葉使わないでよぉ。 聞いててナニ言ってるの? って思っちゃったよ。 |
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別に私だって、普段からこんな言葉使わないわよ。 ただ、法律の勉強していると、散見される言葉ではあるから、まぁ、慣れたほうがいいわよ。 そんなことより、サルの考えを聞かせてよ。 |
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愛している人が一緒だって言うから死んでもいいって思ったのに、自分だけだなんて、こんなのほとんど騙されたみたいなもんじゃない。 あたしだったら、コレで死んだら、死んでも死にきれなくって、相手を呪い殺したくなっちゃうよ・・・ 自殺関与罪・・・だったっけ? あたしはコレ、相手の気持ちワカッてたら自殺してないから、殺人罪だと思うかなぁ。 |
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そうよねぇ。 相手の女性の同意が有効なら、自殺関与罪(刑法202条)が成立するに留まると思うけど。 サルが言うように、わかっていたら自殺しなかったっていうなら、その同意は有効なものとは言えないわよね。 私も結論的には、殺人罪が妥当だと思うんだけど・・・そうなると、間接正犯性があるか? って問題になるんだけど、間接正犯として、実行行為と同視できる場合というのは、 @自己の犯罪を実現する意思(正犯意思)をもって A他人の行為を道具として利用した B危険性を有する行為 という基準をもって間接正犯の成立を判断することになるわよね。 @とBは認められるといえるけど、Aが少し苦しいわよね。 青酸ソーダ(猛毒)を女性に渡したこと、相手がその毒を飲むまで、傍に立って女性の行動を仕向けた・・・このあたりの事実を評価して、Aを認定することになるかなぁ。 |
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人に聞いておいて、迷っているのは光ちゃんの方っていうのは、どうなの? | ||
仕方ないじゃない。 私だって勉強中の身なんだし。 それに法律の勉強は、答えが一つってわけじゃないんだから、こうやって考えることばかりなのよ。 サルも私と一緒に考えて欲しいなって思ったのよ! それじゃ、次は責任能力なき者を利用した場合について考えるわよ。 |
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あ、ひょっとして刑法41条つかう? 『(責任年齢)第41条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。』 責任能力なき者の利用って、この14歳未満の子を利用した犯罪ってこと? |
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責任能力なき者っていうのは、刑法41条だけってわけじゃないけど、パッと条文出てきたのはいいことよ。 サル、復習をちゃんとしてるみたいね。 |
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ウキキキキ。 (あたしがお世話になった条文だからね! 反省っ!!) |
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あれ・・・なんでだろ・・・ なんかサルから微妙な空気が・・・ 気のせいよね・・・ まぁ、いいか。 じゃあ、サル、こんな事案を考えてみて。 お母さんが、5歳の息子にスーパーの商品を陳列ケースから持ってくるように命じたの。 この場合、お母さんに間接正犯は成立すると思う? |
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そりゃ、するでしょ? 間接正犯が成立するかっていう判断基準の @自己の犯罪を実現する意思(正犯意思)をもって A他人の行為を道具として利用した B危険性を有する行為 って基準から考えて・・・ 商品をガメようと思って、まだ判断能力の弱い5歳の子供をつかって窃盗させちゃってんだもん。 |
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OK! 5歳の子供には、まだ是非弁別能力は備わっていないから、道具性が肯定(Aの要件)されるわよね。 お母さんには、窃盗罪(刑法235条)の間接正犯が成立するわね。 |
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うう・・・嬉しい。 なんかワカッテルって感じが自分の中にある。 |
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うんうん。 今日のサルは、目の輝きが違うって感じするよ。 じゃあ、ノリノリのこの調子で、是非弁別能力と道具性について考える判例の事案いっちゃお! (最決昭58.9.21 百選T 74事件) |
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ううう・・・ まだ顔痛いんだけど・・・ フリだけでいいのに、ホントに顔こするなんてぇ。 |
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それじゃ、本日最後の判例やっちゃいましょ! まず事案を説明するね。 スナックのホステスだった被告人は、生活費に困って、自分の勤め先から金品を強取しようと思って、自分の中学1年生の息子(12歳)に、覆面とエアーガンを渡して、脅迫等によって、スナックの経営者のママから金品を奪ってくるよう命令したの。 流石に息子も最初は嫌がるんだけど、お母さんの被告人に説得されて、やる気になっちゃって、目的地のスナックに向かったわけよ。 スナックに着いた息子は、お母さんから言われてもいないのにお店の出入り口のシャッターを下ろさせたり、スナックのママをトイレに閉じ込めたりと、とても中学生とは思えない対応力で、見事ミッションクリア。 現金約40万円を強取して自宅に帰ってきたって事案よ。 (最高裁平成13年10月25日決定) どう? サルは、この事案で間接正犯が成立すると思う? |
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お遍路事件の女の子は12歳だったよね。 そんで、今回の事案の男の子は、中学1年で同じ12歳。 2人の相違点は、意思の抑圧の有無じゃない? この男の子は、最初こそ嫌がっていたけれど、犯行現場では、主体的に動いているよね。それに、被告人の母親から息子に対して、お遍路事件の養父みたいな意思を抑圧するような行為もなかったんだよね? それなら、あたしは意思の抑圧もなく、男の子本人が主体的になって金品の強取を成し遂げていることから、道具性は否定するね。 道具性が否定される以上、Aの判断基準が満たされないから間接正犯も成立しないってことになるけど、どうどう? |
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うんうん。 最高裁の判断は次のとおりよ。 『本件当時、被告人の息子には是非弁別の能力があり、被告人の指示命令は息子の意思を抑圧するに足る程度のものではなく、息子は自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂したことなどが明らかである。 これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。』 サル、間接正犯の判断基準、理解できてるじゃない! |
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いぇいっ! | ||
うん、これなら、後のところは自分で抑えれるね。 間接正犯の論点には、 「故意ある道具」 「目的なき故意ある道具」 「身分なき故意ある道具」 と利用されていた他人の故意を評価するものがあるんだけど、これらの論点についてはサルが教科書読んで理解しといてね。 「目的なき故意ある道具」っていうのは、例えば、騙されて偽造貨幣を作った人なんかが例として挙げられる場合ね。 貨幣を作るという故意こそあれ、使用するっていう目的は騙されて作らされている以上ないからね。 「身分なき故意ある道具」っていうのは、公務員の奥さんが、旦那さんに頼まれて賄賂の受け取りに行った場合なんかがそうね。この論点は、ちょっと理解が大変なところだから、しっかり頑張っておいてね。 |
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えぇーー。 光ちゃんが、それも教えてよぉ。 |
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実は、私さっきお遍路事件の判例再現のとき、被告人役で張り切り過ぎたせいか疲れちゃったの。 | ||
ドコにスタミナ消費してんだお・・・ | ||
てへぺろっ。 |