構成要件要素 過失 | ||||||||||||||
それじゃ、前回はDの故意・過失のうち、故意について学んだので、今回は過失について勉強するわね。 ザックリ言ってしまうと、故意は「わざと」。 過失は「うっかり」っていう話になるわね。 それじゃ、六法で刑法38条1項を確認してみて。 |
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刑法38条1項。 『(故意) 第38条 1項 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。』 |
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刑法38条1項本文は、故意犯処罰を。 そして、刑法38条1項但書は、過失犯処罰を、それぞれ定めているのよね。 条文を読めばわかるように、刑法は原則として故意犯処罰を、そして、例外として過失犯処罰を定めているわけなの。 |
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うんうん。 ソレは、前回までの勉強でやったからワカルよ。 |
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でも、過失犯処罰は、故意犯処罰の例外ではあるものの、実務上は極めて、過失犯の数は多いのよね。 統計に表れている数字を見るだけでも、150万件くらいの受理に対して、そのうち70万件くらいは自動車運転過失致死傷罪という過失犯なのよね。 つまり、例外であるとは言うものの、自動車運転過失致死傷罪だけでも70万件以上あるわけだから、現実には半数以上は、過失犯だということになるわね。 あ、因みに、コレはマメ知識なんだけど・・・。 自動車運転死傷行為処罰法が、今年(平成26年5月20日施行)から施行されることになったから、刑法211条2項(自動車運転過失致死傷罪)は、刑法から特別法(自動車運転死傷行為処罰法)にお引越しになったわね。 |
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へぇ〜。 知らない間に、そんな法律が出来ていたんだ。 過失犯の数が多いことよりも、そっちのマメの方が驚いたよ。 ところで特別法に移って、なんか変わるの? |
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私も、そこまで把握しているわけじゃないから、そんな質問されても困るんだけど、悪質・危険な運転で事故を起こす運転者に対する罰則強化という立法趣旨から、罰則が重たいものになっているわね。 今日は、平成26年6月17日なんで、まだ施行されて1ヶ月も経っていないから、あまり認知されていないのはワカルけれど、一応、あんたも法律の勉強しているんだから、これくらいは知っててもいいんじゃないの? |
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大丈夫! あたし免許持ってないから加害者になることないし! |
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私も免許は欲しいけれど、まだ持っていないです。 | ||||||||||||||
私も、基本送迎の車あるから、免許の必要ないしなぁ。 | ||||||||||||||
なんかゴッツイ感じ悪い発言きたよ、これ。 | ||||||||||||||
『(故意) 第38条 1項 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。』 前回、故意のところで軽く説明したと思うけど、確認のために改めて説明するわね。 過失犯は、38条1項但書にいう「法律に特別の規定」がなければ処罰されないんだったわよね。 具体的には、例えば刑法209条1項を見てくれる? |
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刑法第209条第1項。 『(過失傷害) 第209条 1項 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。』 |
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ホラ。 『過失により』って、ちゃんと明文になっているわよね。 次は、刑法116条1項を見てくれる? |
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刑法第116条第1項。 『(失火) 第116条 1項 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。』 |
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あれ? この条文には、『過失により』ってないけど? |
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そうね。 『失火により』とされていて『過失により』とは書いていないけれど、過失による出火を意味することは、文言上明らかと言えるわよね。 だから、失火罪も、過失犯になるのよね。 あとは例えば、刑法205条のような結果的加重犯も、過失犯処罰を表すものとされているわね。 但し、判例は、結果的加重犯における重い結果については過失は不要としているので、そうは捉えていないんだけどね。 |
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こくこく(相槌) |
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じゃあ、ここで質問ね。 質問! 過失犯を処罰する明文の規定が存在しない場合に、過失犯処罰を肯定することはできるでしょうか? |
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いや、それはアカンやろ・・・ 最初に勉強した罪刑法定主義の法律主義にも反すると思うし・・・。 刑法38条2項にだって、「法律に特別の規定が存在する場合に」ってあるんだから、そこは守ってくれないとさぁ。 |
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私は、前回の藤先輩のように、故意が認められないから不可罰っていう話は納得いかなかったので、明文の規定がなくとも過失犯として処罰されることはあってもいいと思います! | ||||||||||||||
いやいや、ソレは違うでしょ。 明文で定めていないんだから、出来ないものは出来ないってことになるんじゃないの? |
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サルのように考えるのが、本来あるべきだと思うんだけど・・・。 判例は、『取り締まる事柄の本質に鑑み』、過失犯も処罰の対象となる場合があるとしているのよね。 このような考え方が示された判例は、行政刑罰法規(道路交通法や、選挙法など行政法規が、その法規違反に対して刑罰を定めているもの)についてではあるんだけれど、明文がなくとも過失犯処罰を認めているのよね(最決昭和57年4月2日 船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律) ただ、学説からはサルのような考えに基づく批判がなされているところではあるわ。 でもナカちゃんが望んでいるような、前回の事案のような過失器物損壊罪にまで、この判例の考えが適用されるかについては、ちょっと苦しいところかなぁ。 個人的には、特別法上の罪に限られるんじゃないのかな、って思うところなんだけど、そもそも明文もないのに過失犯を処罰の対象としているんだから、私も明言はできないわね。 |
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なんか違うって思うんだけどなぁ。 ソレでいいのかなぁ。 |
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私はソレでいいと思うです! | ||||||||||||||
それじゃ、次は過失犯の構造について、まとめるわね。 過失犯の構造を理解する上で、旧過失論と、新過失論とがあるの。 下に、両者の考え方を表にしてみたわ。 |
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※ 新過失論でも、予見可能性は必要。 |
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過失犯の成立要件を、両説の立場から説明するわね。 旧過失論では、過失犯の成立要件を、 「結果発生の実質的な危険を含んだ行為」を実行行為として捉えて、構成要件的結果との間に因果関係を求めるの。 そして、責任段階で、「犯罪事実の主観的な認識可能性」(特に結果発生の予見可能性)を問うことになるわ。 これに対して、新過失論では、過失犯の成立要件を、 「注意義務に違反した不適切な行為」を実行行為として捉えて、構成要件的結果との間に因果関係を求めるの。 そして、責任段階で、過失責任を認める見解と、認めない見解とに分かれることになるわ。 |
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よくワカリマセン! | ||||||||||||||
過失の内容を、見て欲しいんだけど・・・。 旧過失論は、心理的不注意を過失の内容としているわよね。 つまり、主観面を重視しているわけね。 これに対して、新過失論は、不適切な行為を、過失の内容としているのよね。 つまり、客観面を重視していると言えるわよね。 まぁ、実務は新過失論とされているんだけど、最近は、新過失論と旧過失論の両者に歩み寄りがあるために、両説の違いが相対化しているとされているから、教科書読んでも、違いがよくワカラナイというのなら、新過失論で抑えてくれていいと思うわ。 |
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ふえぇぇぇ。 (あたし、実は教科書は、まだ殆ど開いていないんだよなぁ。 家帰ると、ついPSPで遊んじゃうんだよねぇ。) |
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PSPを明智先輩に預ければいいです! | ||||||||||||||
ナ、ナカちゃん? どうしたの? 急に、なんの話? |
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・・・・。 (このチビッ子、前々から薄々思っていたけど、絶対あたしの考えてること読んでるよね・・・ 試してみよっかなぁ。 コラ! チビッ子! 光ちゃんに余計な事、言ったら木下頭突きが炸裂すんぞ! ゴラァ!) |
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イヤですぅぅぅぅっ! | ||||||||||||||
サ、サ、サトリの妖怪(WikiPedia参照)じゃぁあぁぁぁぁぁぁっ!! Part4! | ||||||||||||||
2人共、さっきから一体ナニを騒いでいるのよっ! 新過失論と過失犯の成立要件のところで述べた「注意義務」について、まとめて今日のところは終わるから、もう少し集中して聞いてよね! 注意義務の意義と内容については、旧過失論と新過失論とで異なるのよね。 旧過失論では、注意義務とは、結果発生を予見すべき義務であると説かれるわ。 これに対して、新過失論では、 注意義務とは、第一次的には結果回避義務。 そして、その前提として、一般に、結果予見可能性が必要とされるわ。 ちょっと説明だけでは理解しづらいと思うから、この新過失論の考え方である注意義務の意義と、その内容とが読み取れる判例を見ることにしましょ。 弥彦神社(彌彦神社)事件(最決昭和42年5月25日)ね。 |
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・・・。 | ||||||||||||||
ナニ、ムスっとしてるのよ? | ||||||||||||||
だって、あたしのこと2人してガン無視してんだもん! そりゃ機嫌も悪くなるよ! |
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どうせ判例検討に関係ないことしか言ってなかったんでしょ? | ||||||||||||||
そうやって決めつけるとこ、ホント狭量だよなぁ。 あぁ〜あ、あたしにも質問したいこと一杯あったのになぁ・・・ |
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言うじゃないのよ。 じゃあ、別に今聞けばいいじゃないの! ホラ、質問一杯あるんでしょ? 早く聞きなさいよ。 |
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・・・・。 | ||||||||||||||
ホラ! 決めつけじゃなくって、実際に聞きたいことなんて、やっぱり無いじゃないのよ! |
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あるよ! あるよ!! えぇ〜っと、えーっと・・・。 そだ! 弥彦神社の所在地の『西蒲原郡』! あと、『斎庭』、それと『随神門』!! |
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ソレがどうしたのよ。 | ||||||||||||||
漢字が読めません! | ||||||||||||||
辞書ひけばっ!? | ||||||||||||||
(『西蒲原郡』は『ニシカンバラグン』。 『斎庭』は『ユニワ』。 『随神門』は『ズイシンモン』だと思うです・・・。) |