最判平成2年2月1日 〜サーベル登録拒否事件〜 |
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先に、配役を言うわね。 今回は、私はナレーターで。 サルは今回はお休みね。 ナカちゃんが、外国製サーベルの登録を求めた方の役。 つかさちゃんが、東京都教育委員会(行政機関)って配役でいきましょ。 |
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日本では、銃砲、刀剣類は登録なくしては持つことは認められていません。そのため、美術品、骨董品として価値のある刀剣類をコレクション、観賞用に持つことを希望する人は、所在地の各教育委員会に、その旨申請し、登録をすることが必要でした。 | ||
いつ見ても、私がスペインで購入した、このサーベルは素晴らしいです! 2本買いましたが、ホントにいい買い物をしたです! |
外国製サーベルの登録を求めた方 |
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まぁ、それはそれとしてです! 日本に持ち帰ったからには、登録しないといけないです! 早速、申請するです! |
外国製サーベルの登録を求めた方 |
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東京都教育委員会 |
登録ですかぁ・・・。 ちょっと今、銃砲刀剣類登録規則を確認したのですけど、登録の要件には「日本刀」であることが定められているんですよね。 ホラ、ここ確認してもらえますか? 銃砲刀剣類登録規則4条2項。 『刀剣類の鑑定は、日本刀であつて、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行なうものとする。 一 姿、鍛え、刃文、彫り物等に美しさが認められ、又は各派の伝統的特色が明らかに示されているもの 二 銘文が資料として価値のあるもの 三 ゆい緒、伝来が史料的価値のあるもの 四 前各号に掲げるものに準ずる刀剣類で、その外装が工芸品として価値のあるもの。』 お分り頂けましたか? あなたが今回申請された刀剣は、外国刀剣なので、登録対象外なんですよね。 したがって、登録を拒否させて頂きます。 |
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刀剣類を、日本刀だけにするなんて、おかしいです! 外国製の刀剣だって、刀剣です! |
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と申されましても、銃砲刀剣類所持等取締法は、『登録に関して必要な細目については、文部科学省令で定める』(同法14条5項)と、銃砲刀剣類登録規則に委任してくれていますからね。 その委任に従って、規則(銃砲刀剣類登録規則4条2項)を定めている以上、当該規則には従って頂かないと困りますね。 |
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それなら、そんな規則の規定が、おかしいです! その規則は、法の委任の範囲を逸脱しているです! だから無効です! 私の申請を拒否するなんて認めないです! 訴えるです! |
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お疲れ様でした〜。 ナカちゃん、良かったじゃない! |
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ありがとうございます。 | ||
実剣であるスパイドも、光剣であるスパッドも剣は剣だよね! 区別するなんて、おかしいよね! |
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・・・FSS? タが古過ぎます。 |
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またわけのワカラナイ事言ってっ! 事案を理解したのなら、本件の争点でも考えなさいよ! |
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ただスパッドは騎士の身分証明にもなるから、そういう観点からは、別個の扱いも必要かも・・・とは思った! | ||
藤さん、スゴい・・・ 国内法どころか外国法の観点からの検討までされてみえるんだ・・・ |
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つかさちゃんもサルの言葉なんか真に受けなくっていいから! 聞き流していいから、って言うか聞く価値さえないからっ! |
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ヒドいです! ヒドいです! ・・・ナカたんの真似。 うまくね? |
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そんな言い方、私はしてないです! ヤメて下さいです! |
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言っとくけど、あんた、そんな態度で、ご馳走して貰えるなんて思わないでよ? 今日の私の審査は、銃砲刀剣類登録規則並には厳しいからね! それじゃ、事案のポイントを、まとめるわね。 本件の争点は、もう分かっていると思うけれど。 銃砲刀剣類登録規則4条2項の規定が、法律の委任の範囲といえるか? というものよね。 先の勉強会での話のとおり、この委任の範囲を超えたかどうかの判断基準は、委任の趣旨目的、個人の権利利益等を勘案して判断する、ということだったよね。 じゃあ、最高裁の判断を見てみましょうか。 |
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私は、外国刀剣を買われた方の主張が認められると思います。 | ||
まぁ、そうだよね。 剣は剣なんだし、日本刀と外国刀剣で分ける意味が、よくわからないもんね。 |
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最高裁の判断は、次のものね。 (※ 改行・段落ちは管理人編集。途中省略あり。) 『銃砲刀剣類所持等取締法(以下「法」という。)一四条一項による登録を受けた刀剣類が、法三条一項六号により、刀剣類の同条本文による所持禁止の除外対象とされているのは、刀剣類には美術品として文化財的価値を有するものがあるから、このような刀剣類について登録の途を開くことによって所持を許し、文化財として保存活用を図ることは、文化財保護の観点からみて有益であり、また、このような美術品として文化財的価値を有する刀剣類に限って所持を許しても危害の予防上重大な支障が生ずるものではないとの趣旨によるものと解される。 〜中略〜 そして、このような刀剣類の登録の手続に関しては、法一四条三項が「第一項の登録は、登録審査委員の鑑定に基いてしなければならない。」と定めるほか、同条五項が「第一項の登録の方法、第三項の登録審査委員の任命及び職務、同項の鑑定の基準及び手続その他登録に関し必要な細目は、文部省令で定める。」としており、これらの規定を受けて銃砲刀剣類登録規則が制定されている。 その趣旨は、どのような刀剣類を我が国において文化財的価値を有するものとして登録の対象とするのが相当であるかの判断には、専門技術的な検討を必要とすることから、登録に際しては、専門的知識経験を有する登録審査委員の鑑定に基づくことを要するものとするとともに、その鑑定の基準を設定すること自体も専門技術的な領域に属するものとしてこれを規則に委任したものというべきであり、したがって、規則においていかなる鑑定の基準を定めるかについては、法の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において、所管行政庁に専門技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当である。 そして、規則に定められた刀剣類の鑑定の基準をみるに、規則四条二項は、「刀剣類の鑑定は、日本刀であつて、次の各号の一に該当するものであるか否かについて行なうものとする」とした上、同項一号に「姿、鍛え、刃文、彫り物等に美しさが認められ、又は各派の伝統的特色が明らかに示されているもの」を,同項二号に「銘文が資料として価値のあるもの」を、同項三号に「ゆい緒、伝来が史料的価値のあるもの」を、同項四号に「前各号に掲げるものに準ずる刀剣類で、その外装が工芸品として価値のあるもの」をそれぞれ掲げており、これによると、法一四条一項の文言上は外国刀剣を除外してはいないものの、右鑑定の基準としては、日本刀であって、美術品として文化財的価値を有するものに限る旨の要件が定められていることが明らかである。 そこで、右の要件が法の委任の趣旨を逸脱したものであるか否かをみるに、刀剣類の文化財的価値に着目してその登録の途を開いている前記法の趣旨を勘案すると、いかなる刀剣類が美術品として価値があり、その登録を認めるべきかを決する場合にも、その刀剣類が我が国において有する文化財的価値に対する考慮を欠かすことはできないものというべきである。 〜中略〜(以下、詳細に刀剣類の我が国における文化財的価値について検討がなされる。省略) これらの認定事実に照らすと、規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、前記のとおり美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するもののみを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものとしたことは、法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を逸脱する無効のものということはできない。 そうすると、上告人の登録申請に係る本件サーベル二本は上告人がスペインで購入して日本に持ち帰った外国刀剣であって、規則四条二項所定の鑑定の基準に照らして、登録の対象となる刀剣類に該当しないことが明らかであるから、以上と同旨の見解に立って、上告人の右登録申請を拒否した被上告人の本件処分に違法はないとした原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。 |
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・・・マヂで? だったら、いっそもう銃砲日本刀類登録規則って名前にしてくれりゃ、解りやすいのに。 |
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藤さんの御意見も、もっともだと思いますよ。 実際、本判決には、反対意見もありますからね。 反対意見の一部抜粋になりますけど・・・。 『我々は、多数意見のうち、法一四条一項にいう刀剣類には外国刀剣が除外されていないという点には異論はないが、規則で登録の対象を美術品として文化財的価値を有する日本刀に限ることとしても、法の委任の趣旨を逸脱するものではなく、規則四条二項は無効ではないという点には賛成できない。 すなわち、法一四条一項にいう刀剣類には、文理上、外国刀剣を含むものと解される(法二条二項参照)。 そして、法一四条一項に規定する登録制度の趣旨は、日本刀、外国刀剣を区別しないで、美術品として価値のある刀剣類で我が国に存するものを我が国の文化財として保存活用を図ることにあると解するのが相当である。 そうだとすると、法の段階では、外国刀剣にも美術品として価値のあるものがあることを認めていることになるから、同条五項の委任に基づいて規則を定める場合にも、日本刀・外国刀剣の両者について、同項所定の事項を定めることこそ法の要請するところというべきであり、規則において外国刀剣を登録の対象から除外することを法が期待し、容認しているとは考えられない。 換言すれば、登録の対象範囲というような登録制度の基本的事項については、本来、法で定めるべきものであって、登録の対象を日本刀に限るというような登録制度の基本的事項の変更に当たる事柄について、何らの指針を示すことなく規則に委任することが許されるとは考えられない。 また、日本刀に限って登録の対象とし、外国刀剣は美術品として価値のあるものであっても登録の対象としないという判断は、政策的判断に属するというべきであり、法は、このような判断を規則に委任していると解すべきではないと考える。』 反対意見では、本判決のように法の趣旨目的を解釈しているのではなく、刀剣類という言葉を、文理解釈しているんですけど、藤さんの指摘されてみえるところは、この反対意見で述べられていると思います。 ただ、規則の名称さえ変えればいいというものではなく、そもそも規則自体が、法の委任の範囲を超えるものである、という厳しい意見なんですけどね。 |
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あ、私も反対意見については紹介しようと思っていたんだけどね。 でも、つかさちゃんが言ってくれたのは嬉しかったかな。 そうなんだよね。 確かに、刀剣類という言葉を使っている法の委任から、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限定する規則というのは、委任の範囲を超えているという指摘はあるところなのよね。 ただ私としては、行政立法の考え方が、本判決ではよく示されていて、その考え方を知る上で、非常に本判決は勉強になると思って、検討判例にしたのよね。 本判決の判断枠組みとしては・・・ 問題となった規則が、法の委任の範囲内かどうか? という問題に対して、まず法の趣旨を読み込んでいるのよね。 そして、その法の趣旨から、文化財的価値の考慮を求めているか否か、という検討をして、求めているとしているわ。 そうであれば、その求めに対して、日本刀のみに限るとしている規則は、あながち法の趣旨に反する(=法の委任の範囲を超える)ものではないと結論づけているのよね。 私は、この最高裁の立場に賛成なのよね。 ただ、反対意見の解釈も支持する学説があるところだから、紹介して、一緒に検討したかったのよね。 |
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規則の名前変えればいんじゃね? | ||
さっきからナニ言ってるのよ? そんな話はしてないでしょ? 規則が法律の委任の範囲か否か、っていう議論をしてるのに、なんでそんなことに拘ってるのよ! |
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じゃあ、法律の名前を変えればいんじゃね? | ||
なんでそうなるかなぁ? いや、言いたいことはワカルわよ? でも、それって本末転倒じゃないの。規則のために法律を変えればいいって言ってるんだよ? 法律による委任なんだよ? サルの意見だと、委任する側が、委任される側に従うことになっちゃうよ? わかってんの? |
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ぶっちゃけ、よくワカンネ! | ||
藤先輩・・・ 少しは頭を使って下さい・・・ |
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木下頭突きっ! えいえいっ!! (ゴスン! ゴスン!) |
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イタい、イタい! 違います、違います! そういう意味じゃないです! |
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ウキっ! もちろんワカッテやってんだけどね! |
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・・・ご馳走の可能性は現状3%以下ね。 | ||
3%? 上等だお! 無理を通して道理を蹴っ飛ばすんだよ!! |
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カミナ兄貴ぃぃっ! |