さぁ、じゃあ今日は『錯誤』の勉強、第2弾ね。 ザックリ言っちゃうと、錯誤って言うのは、思い違い・勘違いって説明をしたわよね。 そして、本来は民法95条の錯誤ではない動機の錯誤については、前回勉強したわね。 その際に、民法95条にいう錯誤とは、表示の錯誤をいうって言ったのは憶えてる? 今日は、この表示の錯誤の勉強からするわね。 それじゃ、お世話になる条文だから今一度。 六法で、民法95条を確認してくれる? |
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民法第95条。 『(錯誤) 第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。』 |
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この民法95条にいう錯誤である表示の錯誤には、2種類あるの。 内容の錯誤 と 表示上の錯誤 の2種類ね。 まずは、この内容について抑えていきましょ。 内容の錯誤の説明なんだけど・・・。 せっかくなんだから、あの図を使うわね。 見てくれる? 下のサルの行為、コレが内容の錯誤の例になるわ。 |
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動機 ⇒ | 効果意思 ⇒ | 表示行為 | |
アメリカなんて初めてっ! 本場の服でも買っちゃおっと。 |
ん? この服が1万ドル? 1万ドルと1万円は同じだよね。 |
『ヘイ。ソコの服。 1万ドルでプリーズ!』 |
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意思表示の成立要素ではないが、動機の不法や、錯誤においては重要な意味をもつ。 | ある動機に基づいて決定された一定の法律効果を欲する意思 | 効果意思の外部への表現行動 | |
この過程を意思表示という。 | |||
おいおいおい! ちょっと待ってよ! あたし、幾らなんでもドルと円が同じ価値だとは思ってないよ? |
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アラ、海外経験ないサルでも、ドルと円の為替レートは把握しているんだ。 | |||
NPBだけじゃなくって、MLBもチェックしてっからね! 確か・・・1ドルは10円じゃね? |
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ふ、ふ、藤さんっ! |
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元広島の黒田のヤンキースでの年棒が、1600万ドルだかんね! 日本円で、1億6千万円ってところでしょ。まぁ、黒田も年いってるしね。 |
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うんうん。 それでこそサルよね。 やっぱり為替レート知らないじゃないの。 いい? 1ドルは、およそ100円よ? |
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な、な、なんだってぇっ!? | |||
ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃ、黒田は16億円もの年棒を貰っているってことなの? |
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広島が黒田を引き止める際の提示金額は年棒2億5千万円だったかしら? その金額が前提だから、そんな為替レートになっちゃうのよ? |
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黒田が広島に戻って来てくれない理由が、ようやくワカッタお。 | |||
マエケンだって、今季はポスティングって話もあるし、広島から出ていっちゃうかもねぇ。 先発投手いなくなっちゃうわね? ウフフフ。 さて。 サルが、ドルと円の為替レートも知らないことがワカッタから話を戻すわね。 今の上の図のサルを見てくれればワカルと思うけれど、サルは、ドルと円が同じ価値であると勘違いしているわけよね。 そして、1万円で服を買おうという意思(効果意思)で、「1万ドルで服を下さい」って言ってしまっている(表示行為)わけ。 コレが、錯誤の最も普通の場合なの。 この錯誤は、内心的効果意思と表示の不一致とを表意者が知らない、という錯誤の定義に、しっかり当てはまるケースでしょ? つまり、内容の錯誤とは、その表示の意味内容に錯誤がある場合をいうの。 |
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1万ドル・・・って・・・ えーっと、1ドルが約100円なんだから・・・ ひゃ、ひゃ、百万円っ!? ひぃぃぃぃっ!!! |
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そして、今説明した内容の錯誤とは別に、表示上の錯誤というのもあるわ。 コッチは、もっとワカリヤスイの。 例えば、サルが、服を1000円で買おうと思っていたんだけど、ついうっかり申し込み記入欄には「10000円」って「0」を1つ多く書いてしまったような場合ね。 つまり、表示上の錯誤とは、表示行為そのものの錯誤なの。 いわゆる、表記の錯誤(誤記)、言い間違い(誤談)のことね。 この表示上の錯誤も、錯誤の定義である、内心的効果意思と表示の不一致とを表意者が知らない、という定義内容に、ピッタリ当てはまるでしょ? |
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いやぁ、あたしは、なんかやりそうで怖いよね。 そう考えると、錯誤無効って、大事だね。うんうん。 |
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それじゃ、サルも錯誤を定めた民法95条の重要性を再確認できたところで、錯誤の効果について説明するわね。 前回散々言っていたから、今更って思うかも知れないけれど、錯誤にもとづく意思表示は無効になるわ(95条本文)。 ここで、この無効の意味が問題になるのよね。 |
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ふむふむ。 どんな、どんな? |
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錯誤を自分がやるかも・・・って思ったら、急に真面目になったわね? じゃあ、質問で聞いてあげるわ。 質問! 錯誤をした表意者当人が、錯誤無効を主張しない場合に、相手方や第三者から、無効を主張することができると思う? |
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えーっと・・・あたしが仮に錯誤をしたとしてぇ。 その、あたしが錯誤無効の主張をしないのに、他の人や、その錯誤の取引をした相手方が錯誤無効だ・・・って言うってことだよね? ・・・どうなんだろ、あたしが錯誤だってことに気付いて、やってくれてるって思えばいいのかな? 厚意だから甘えておくべきなのかな? |
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藤さん、藤さん。 錯誤の制度趣旨がヒントです。 |
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錯誤の制度趣旨・・・って、表意者保護だったっけ? う〜ん。 ってことは、表意者のあたしが無効主張していないってことは、表意者保護の趣旨から、あたしの無効主張しないという意思を尊重して、第三者や、相手方が無効主張するのは、おかしいってことかな? |
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ですよね! 表意者が錯誤無効を主張する意思がない場合は、表意者自身が、その自身の意思表示を有効なものとして進めていこうとしているわけですから、それを、相手方や第三者から無効だって主張することは出来ない、というのが原則なんですよね。 この相対的無効という考え方については、判例もありますよ。 (最判昭和40年9月10日) あ、因みに、この相対的無効というのは、取消的無効とも呼ばれますね。 無効の主張をすることができるのが、当事者の一方だけといった場合は、その限りにおいては、取消と似ているので、そう呼ばれるんです。 似ているということは、相対的無効と、取消は、別物ということなんですけど、取消については総則の後半で学ぶので、そこで光ちゃんから詳しく聞くといいですよね。 |
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ん? なんか色々言っているけど、相対的無効が原則・・・ということは、お決まりの例外もあるってこと? |
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アラ・・・ちょっと難しいから原則だけにしておこうかと思っていたのに意欲的じゃない! それじゃ、サルの期待に応えて、例外の話をしちゃうわね。 事案を詳しく説明するには、ちょっと前提として必要な知識が、今のサルには足りないから省略することにするけれど、表意者が、無効を主張する意思はないものの、意思表示の瑕疵については認めている場合で、かつ、第三者(=判例の事案では、表意者の債権者)が、自己の債権を保全する必要がある場合には、第三者からの無効主張が認められるのよね。 この例外について述べた最高裁は、次のように述べているわ。 『意思表示の要素の錯誤については、表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないときは、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されないものである』 ここまでが、さっき、つかさちゃんが言ってくれた原則論の部分ね。 で、ここからが例外の話になるわ。 『が、当該第三者において表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者みずからは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は、表意者の意思表示の無効を主張することが許されるものと解するのが相当である。』 (最判昭和45年3月26日 百選T5版 18事件 油絵贋作事件) |
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債権保全? 確かによくワカラナイね。 あ、別に説明しなくていいからね! どうせ、今聞いても、右から左になっちゃうだけだし。 |
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・・・。 (いつもなら聞くフリをされるだけなのに、敢えて口にされたところに、今日の藤先輩のやる気を感じます。) |
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もぉっ! やる気あるって褒めたのに、すぐソレ? なんか面白くないから、少し難しい質問をしちゃおうかな? 質問! サルが、私に家(不動産)を売ったの。 だけど、その後、サルは私との取引が錯誤であるとして、この取引について錯誤無効の主張をしてきて、その主張は認められたわけね。 ここまでの事実については、法律上の問題はなかったということにしてね? でも、実は、私はサルが、錯誤無効の主張をする前に、サルから買った家(不動産)を、ナカちゃんに転売しちゃっていたのよね。 ナカちゃんは、サルが私との取引を錯誤だったことについては知らなかったのよね。 この場合、ナカちゃんは保護されると思う? |
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あたしは、ドルと円も、よく知らないくらいなんだし、きっと錯誤はする気がすんだよね! んで!! 錯誤の制度趣旨は、表意者保護なんでしょ? その表意者のあたしが取引を錯誤無効だって言って、その主張に法律上の問題がないっていう前提でいいなら、取引自体、無効なんだから、ナカちゃんは保護されないよね! |
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その結論は、おかしくないでしょうか? 私は、なんの落ち度もなく明智先輩と取引をして家を買ったんですよ? なのに、藤先輩が、うっかり者だったばっかりに買った家を、後から無効だってことにされてしまって、返す羽目になるんですか? |
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そうですよね。 竹中さんのお気持ちは分かります。 ただ、錯誤を定めた民法95条には、第三者保護規定が存在しないんですよね。 また、表意者の藤さんが錯誤無効の主張をして、その主張が認められた場合には、藤さんと光ちゃんの取引が無効だということになりますから、無効な取引では、光ちゃんは家(不動産)の所有権を取得できないことになります。 そうなると、権利は権利者からのみ承継できる』(=無権利者から承継できない)という近代法の大原則がありますから、無権利者である光ちゃんからは、竹中さんは所有権を取得できないわけですよね。 というわけですから、理論的には、転得者である竹中さんは保護されないという藤さんの理解が正しいということになります。 |
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よっしゃぁぁっ! 錯誤無効の力を見たかぁっ!! |
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おかしいです。 納得いかないです。 うっかり者の藤先輩のせいで、なんで私が不利益を被ることになるんですか? |
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判例はないんだけれど、今のナカちゃんみたいな善意の第三者を保護しよう、という有力説が学説にはあるのよね。 ・・・でも、この有力説は、つかさちゃんも知っているんじゃない? |
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ええ・・・実は。 ただ、藤さんが錯誤無効の主張で保護されたことに、随分と喜んでみえたので、言っていいものか迷ってしまって。 96条3項類推適用という考え方ですよね? |
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96条3項? まだ、確認していない条文です・・・ 民法第96条 『(詐欺又は強迫) 第96条 1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。 2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。 3項 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。』 ・・・コレ、詐欺又は脅迫ってありますけど・・・・? あ、でも、類推適用って言っていましたよね? ・・・どういうことでしょう? |
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確かに、さっき説明したように錯誤を定めた民法95条には、第三者保護規定が存在しません。 でも、錯誤も、次の論点として勉強する詐欺取消制度も、共に表意者保護という制度趣旨は同じなんですよね。 そうなると、詐欺によって騙されて錯誤に陥った表意者は、96条3項で善意の第三者に対抗することができない、とされているのに、自分で勝手に錯誤に陥った表意者は、95条に第三者保護規定がないという理由で、善意の第三者に対抗できるということになってしまって、詐欺より錯誤の方が保護が厚いという結論になってしまうという不均衡が生じてしまうんですよね。 この不均衡はおかしいですよね? という観点から、錯誤無効の主張に対しても、善意の第三者を、この96条3項の類推適用によって保護しようという学説の有力説があるんです。 この考え方を適用すれば、今回の質問の竹中さんのような方が保護されるという結論を導くことができますね。 |
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やったです! やったです! 私は、この学説の考え方に賛成です! |
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クロちゃぁ〜ん・・・ ダメじゃなぁ〜い・・・ |
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ああぁ・・・。 違うんです、違うんです。 でも、藤さんも、この96条3項類推適用という有力説は、ご存知でしたよね? |
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サルが、知ってるわけないじゃないの。 | |||
え? 96条・・・3項の類推適用だったっけ? そりゃあ勿論知ってるよ? ホント、ホント。 (少なくとも今は聞いたんで知ってるんだから、嘘は言ってないよね、うんうん。) |
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ふぅ〜ん、木下さんはご存知でしたのね? そうですよね。96条3項類推適用は有名ですものね? じゃあ、博学な木下さんには、もう1問聞かせて頂こうかしら? 質問! サルが、私に家(不動産)を売ったの。 だけど、その後、サルは私との取引が錯誤であるとして、この取引について錯誤無効の主張をしてきて、その主張は認められたわけね。 ここまでの事実については、法律上の問題はなかったということにしてね? でも、実は、私はサルが、錯誤無効の主張をした後に、サルから買った家(不動産)を、ナカちゃんに転売しちゃっていたのよね。 ナカちゃんは、サルが私との取引を錯誤だったことについては知らなかったのよね。 この場合、ナカちゃんは保護されると思う? あ、さっきの質問との相違点は、私とナカちゃんとの間の転売取引が、サルの錯誤無効の主張の前か、後か、というところね。 |
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どうせ、96条3項類推適用で、あたしが保護されないことになるんでしょ? もう何回も言わなくっていいって。 |
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あれ? 藤さん、無効主張後の第三者との関係においては、その考え方は普通とりませんよ? |
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なにゅ? ってことは、この場合は、あたしが保護されるってこと? |
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錯誤無効の主張があった後に、私は現れているわけですが、私は善意なのですから、その錯誤無効の主張についても知らないのに、そんな結論になってしまうのですか? | |||
ヒントをあげよっか? ナカちゃんは、私とサルとの間の取引によって、私のところに家(不動産)があったからこそ取引をしたわけよね? そして、サルの錯誤無効の主張は確かにあったのだけれど、その後の、私とナカちゃんとの間の取引が問題なく成立したからこそ、転売によって家(不動産)を取得しているわけよね? この場合に使える考え方は既に勉強しているんだけど・・・ どう? |
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善意の第三者・・・ 転得者の私・・・ 私を保護するには・・・ |
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あ・・・ 94条2項類推適用か・・・ うわぁ、じゃあ、結局あたし保護されないじゃん! |
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質問の事案なんですから、そんな顔されなくても。 でも、そうですよね。 錯誤無効主張後の善意の第三者は、今、藤さんが言われた94条2項類推適用によって保護することができると言えます。 と言いますのも、質問の事案の藤さんは錯誤無効の主張をした後、第三者の竹中さんが現れるまで、光ちゃんの下に、不動産を放置していたからこそ、光ちゃんと竹中さんの取引が成立してしまっているんですよね。 コレは、@虚偽の外観(光ちゃんの下に不動産)、A外観作出の帰責性(虚偽の外観の放置)、B相手方の信頼(善意の竹中さんの信頼)と、94条2項類推適用の要件を満たすものと言えます。 錯誤無効の主張をされたのであれば、速やかに、無効となった取引の目的物である家(不動産)については、取り戻しておくべきだったのに、それをせずに放置されたということは、この虚偽の外観について承認したものと評価されるのです。 つまり、事後的な承認があったとみなされる以上、意思外形対応型の事案と評価できますよね。 そうであるならば、善意の竹中さんは、94条2項類推適用によって保護されるという結論になるわけです。 |
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うっかり者は、もっと手厚く保護して欲しいよねぇ。 落語の『粗忽長屋』って話は・・・ |
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はいはい! ストップ、ストップっ! あんたの前回の、意味のない寄席にはビックリさせられたわよ! 寄席だけに、もう止せ(ヨセ)ってね? |
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・・・光ちゃん。 今、あたしスッゴイ疲労感感じていたけれど、ソレ聞いて倍増したよ。 |
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・・・。 (口に出しては言えませんが、私、久しぶりに気絶するところでした・・・。) |
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え? 今の私の冗談、そんなに難解だった? 「寄席」(ヨセ)と「止せ」(ヨセ)をかけてみたんだけど、わかんなかった? |
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・・・・っ!! (ヒィィィッ! し、し、しかもウけなかったネタの解説までされてみえるです! さ、さ、サムいですっ! 凍えそうです!!) |
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私は、あまり笑わないんですけれど、今の光ちゃんの冗談は面白かったです。 | |||
ちょちょちょ・・・ 2人とも、ハイスペック過ぎるよ。 ソレはネタで言ってるんだよね? そうだって言ってよ!! |
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まぁ、センスのないあんたには、私達の笑いなんてワカラナイわよ。 そんな話は置いといて・・・共通錯誤、双方錯誤という論点について話すわね。 共通錯誤、又は、双方錯誤っていうのは、契約当事者の双方が錯誤に陥っている場合をいうのね。 |
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例によって、藤先輩みたいな方が2人みえるわけですね? | |||
まぁ、そうね。 じゃあ、今日最後の質問しちゃおっかな。 質問! サルと私は、ドッチも画商を営んでいたの。 サルは、私に、ピカソの絵を5000万円で買わないか? って言ってきたのね。 私もサルも、取引当時、このピカソの絵を本物だって思って取引をしたわけ。 ところが、後になって、この本物だと思っていたピカソの絵が贋作だってことが判明しちゃったから、さぁ大変っ! 当然、私は本物のピカソの絵だということで5000万円の代金を支払ったわけなんだから、贋作だって言うなら、それは錯誤(要素の錯誤)ってことになるから、このサルとの取引を錯誤無効だって主張して、5000万円の返還を求めたわけね。 そしたら、サルはこう返したの。 「民法95条は『ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。』ってあるところ、画商のくせに贋作を本物だと思ったのなら、それはプロとしてはあるまじきことで重過失と言える。だから、お前は錯誤無効の主張はできない!」ってね。 このサルの言い分は通ると思う? |
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質問のあたしとは言え、流石は、あたしっ!! 前回勉強した錯誤無効の主張の要件を、しっかり把握しているね! 95条の条文から・・・要件としては @『法律行為の要素に錯誤』があること A『表意者に重大な過失』がないこと が、表意者が、錯誤無効を主張するための要件だかんね! @については、贋作だったんだから、それは要件を満たしているけれど、画商が贋作を見抜けなかったというのは、流石に重過失って言われても仕方ないでしょ。Aの要件でキれちゃうね。 よって、表意者に重大な過失がある以上、錯誤無効の主張は出来ません。 5000万円いただきまぁ〜すっ!! |
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(ヒソヒソ) 藤さん、藤さん。 竹中さんへのフリですよね? 私にはバレていますよ? |
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はい? どしたの? クロちゃんは、なんか変なモノでも食べちゃった? |
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・・・でも、藤先輩もピカソの絵は、本物だと思っていたんですよね? だったら、藤先輩も錯誤に陥っていたわけですよね? 錯誤を定めた95条は表意者保護ですが、但書きで、表意者に重過失がない場合を求めているのは、取引安全を図るため相手方にも考慮しているからですよね・・・ でも、その相手方の藤先輩も、錯誤だって言うのなら、そもそも2人とも錯誤で交わした、この契約を有効なものにする理由がないように思うのですが。 |
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ナカちゃん、調子いいじゃないっ! すごくバランス感覚のある考え方が出来ていると思うわ。 サルがいうように重過失があることを理由に錯誤無効の主張を認めないとしてしまうと、2人とも錯誤だった契約なのに、私は一方的に5000万円の大赤字を被って贋作の絵を入手して、一方サルは、5000万円の大儲けよ? こんな結論は妥当なものとは言えないわよね。 そこで、共通錯誤の場合には、相手方を保護すべき、また、契約を有効なものとして保護すべき正当な理由があるとは言えないことから、錯誤無効の主張は認められるの。 しかも! 95条但書きの適用は、共通錯誤の場合にはないこととなるわ。 よって、サルが主張するように、仮に私がピカソの絵の贋作を見抜けなかったことが重過失であると認定されたとしても、95条但書きが適用されないのだから、私の錯誤無効の主張は認められるという結論になるわね。 |
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負けてばっかりぃ〜。 5000万円大儲けできると思ったよぉ。 |
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藤さん、藤さん。 もうフリはいいと思いますよ? (ヒソヒソ) |
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最後は、錯誤と、他の制度との関係を、まとめて御仕舞いにするわね。 錯誤と、次回から学ぶ詐欺なんだけど、コレは、似ているところもあるわよね。 つまり、詐欺は、相手方又は第三者の欺罔行為(ギモウコウイ)によって起こる錯誤なんだから、錯誤と詐欺の要件が重なることがあるわけ。 この場合、表意者は、錯誤(95条)、詐欺(96条)のいずれかを任意に選んで主張することができるとされているわ(二重効肯定説による理解)。 次は、錯誤と瑕疵担保責任ね。 瑕疵担保責任については、債権各論で学ぶので、今、説明してもちょっとワカラナイかもね・・・ まぁ、両者が問題になる場合には、判例は、錯誤規定優先説(95条優先説)の立場を示しているわね。 (最判昭和33年6月14日 苺ジャム事件等) ちょっと瑕疵担保を知らずに、この論点を理解するというのは無理があるから、今は、錯誤と瑕疵担保責任とが問題になったときには、判例は錯誤の規定を優先するという立場をとっているんだな、ってくらいの理解でいいわ。 また、瑕疵担保責任を勉強する際に、改めて勉強することにしましょ。 |
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なんか今日は頑張ったのに、報われなかったなぁ、って感じだお。 たまには、あたしが「ウマァ!」って叫びたくなるような質問を出してよね! |
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あんた、勝てば勝ったで、私やナカちゃんに「マヂ、ざまぁ」とかドヤ顔して言うじゃない。 ホント、バランス感覚ないよね? |
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あ、でもソレを言うなら、光ちゃんも私を、あまり質問の事案には出してくれていませんよ? バランスという見地からは、ソレはどうかと思います。 |
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そうだ、そうだ! | |||
あ・・・ゴメンね。 特に、そんなつもりはなかったんだけど、言われてみたらそうね。 次からは、気をつけて、つかさちゃんにも出てもらうわね。 |
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私も頑張りますねっ! | |||
(質問に出て、ナニを頑張るって言うんだろ・・・ このメガネ、面白っ!) |