法律要件と法律効果

さぁ、遂に来たわよ!
民法総則第5章! 法律行為!!
総則の一番の山場とも言えるメイン論点てんこ盛りのね。

とにかく抑える論点も多いし、ここで学んだ論点は、この先、様々な問題を解くにあたり問われることが多いから、勉強したことは、しっかり自分のものにするんだ! って気持ちで頑張りましょうね!
  はい!
頑張ります!!
聞いてる?
ソコの裏切り小僧さん? 
 
人を、ドラクエのモンスターみたいな名前で呼ぶのは、やめてよね。

この前のは、違うんだよねぇ。
ホントに、お腹痛くなってさぁ。
たまたま、電話でクロちゃんの声聞きたくなったから、電話しただけだってぇ。
それで、あたしも既に検討自体は終わっていたんだけど、確認の意味で、クロちゃんに、あの質問を聞いただけなんだって!
そうだと思っているわよ?
私だって、親友のことは信じたいって気持ちでいるもの。  
いやいや、瞳孔ガン開きの目で、ソレ言われても、説得力の欠片もないから!
あ・・・すみません。
資料室で、ちょっと印刷待ちしていたもので遅れました。
  あれ?
クロちゃん、どしたの? 
先日、藤先輩が帰られた後、民法の勉強会で、法律行為をやるのなら、是非参加したいって、おっしゃったので、今日から参加されるそうです。
  法律行為は大事な論点ですものね。
是非、宜しくお願い致します。
つかさちゃんなら大歓迎よ!
一緒に頑張りましょ。
 
  はい!
皆さんの足手まといにならないよう一生懸命頑張ります!
・・・。
(メガネ、ぶっちゃけスペックたけぇからなぁ。
 適度に手ぇ抜いてくんないと、あたし置いてかれんじゃねぇの?)
ソコの裏切り小僧は、始める前から、なんて目してんのよ!
もっと、意欲的な目をしてなさいよ!

さぁ、それじゃ、みんな揃ったし、早速始めましょうか。

法は、一定の要件が存すれば、一定の効果を生じる・・・という形で規定されているものなのね。
私達がロースクールの2回生で学ぶ「要件事実論」という講義では、このことに眼目を置いた勉強をすることになるわけ。

法に、一定の要件が存すれば、一定の効果を生じる、という場合の一定の要件が法律要件」であり、生ずる一定の効果が法律効果」ということなのね。

ここまではOK?
うーん、つまり・・・
北岡秀一が、仮面ライダーゾルダになるためには、デッキを携えて変身ポーズをとらないと、仮面ライダーゾルダになれないってことだね?
・・・なんで、そんな無茶苦茶な例え方をされるんですか!

一応、補足的に藤先輩の言葉を解釈するなら。
北岡秀一が、デッキを構えた変身ポーズをとることを法律要件として捉えて、その要件を満たすことで、仮面ライダーゾルダに変身するという法律効果が生じる・・・ということですよね?
やるじゃん、チビッ子!
あたしのいいたいこと、ちゃんと伝わっているみたいで嬉しいよ。
でも、つまり、そういうことでしょ? 
婉曲な物言いは、やめてくださぁ〜い。
しかも、仮面ライダーの話なんかされても知らないわよ!
誰よ!? 
北岡秀一ってっ!! 
ちょっとちょっと暴言じゃない?
光ちゃんも法曹を目指しているなら、先輩のご高名くらいは把握しておきなよ!
一応、補足しておきますと、北岡秀一は、『仮面ライダー龍騎』に出てくる弁護士役の登場人物です。
  あぁ、そう言えば、龍騎にも、ゴロちゃん出てくるよね?
以前のゴロちゃんの会話
すみません。私は、恥ずかしいのですけれど、その弁護士の方を存じ上げないです。
また、改めて勉強するようにしておきますね。 
勉強なんて、いらないわよ!
フィクションの存在でしょ! どんだけ脱線するつもりよ!!

法律要件」の構成要素には、何種類かの法律事実が存在するの!
そのような構成要素の中で、最も重要なものが、「意思表示」!
この「意思表示を中核とする法律要件、「法律行為」なのよ!

今日の勉強は、これから学ぶ「法律行為」について、その前提となるところを学ぼうという、いわばイントロダクションなのよね! 
あ、じゃあ、あたし、ゲームやるときも説明書読まずに、とりあえずプレイしてみる人だから、イントロなら、今日のとこは、流す感じでいいのかな?
あんた、いつもそんな態度じゃないのよ!
ナニ、さもいつもは真剣そのものです、みたいな口調でしゃべってんのよ!
腹立たしいわね!!  
  あうあうあう。
明智先輩、落ち着いてください。
そ、そ、そうね・・・
先日の一件のせいで、ちょっと怒りっぽくなっちゃってたわね。
反省、反省、っと。

法律事実の種類には

@意思表示・法律行為
A準法律行為
B違法行為
C事件


つの種別があるとされるのよね。
あくまでも、イントロだから、ちょっと説明の内容が理解できなくても、今日の段階では構わないわ。
後々、今日の内容が、それぞれの条文や、論点の勉強の際に、あぁ、そう言えば・・・って感じでわかるようになるときがくるはずだから。
・・・ちゃんと勉強していればねっ!!!
  だってさ!
頑張りなよ? ナカたん?
  はいです!
ソコの裏切り小僧っ!!
あんたに言ってんのよ! あんたに!!

まずは、@意思表示・法律行為から、まとめるわね。

法律効果の発生を意図する法律事実を、「意思表示」っていうの。
換言するなら、一定の法律効果の発生を目的とする表示のことね。

意思表示と法律行為との関係には、単独行為合同行為とがあるわ。

単独行為とは、単一の意思表示により構成される法律行為をいうの。
ザックリ言うと、「意思表示=法律行為」っていえる場合ね。
具体例を挙げると、遺言や、契約の取消・解除などがそうね。
これらの行為は、その旨の意思表示のみによって、それぞれ、遺言や、契約の取消・解除といった法律効果が生ずることになるわ。

これに対して、合同行為とは、同一目的に向けられた2つ以上の意思表示の合致によって成立する法律行為をいうの。
だから、この場合は「意思表示≠法律行為」よね。
社団の設立行為が、この合同行為として挙げられるわね。
単独行為合同行為かぁ。
まぁ、言われてみれば、なるほどねって感じだね。
くぅぅぅ。
なぁにが、「なるほどねぇ」よっ!!

次はA準法律行為ね。

準法律行為とは、直接に法律効果の発生を意図する以外の精神作用の表示・・・つまり、意思表示を要素としないという点で、法律行為とは区別されるのよね。

その中身には、大きくつあるわ(※「感情の表示」は抜いています)。
意思の通知」と「観念の通知」と呼ばれるものがあるわ。

意思の通知」とは、一定の意思の通知であるけれど、その意思内容は、その行為から生ずる法律効果以外のものに向けられていることをいうの。
具体例としては、制限能力者の相手方のもつ催告権民法20条)や、債務履行の催告民法153条)等があたるわね。

観念の通知」とは、一定の事実の通知のことをいうわ。
具体例としては、代理権を授与した旨の通知民法109条)、債務の承認民法147条3項)、債権譲渡の通知・承諾民法467条)等が挙げられるわね。

これらの表示ないし通知は、意思表示と異なり、表示したところに従って、意図(意欲)したとおりの効果が生ずるというものではない、というところが特徴になるわね。
  こくこく(相槌)
B違法行為は、一定の法律効果を発生させるが、法律的には違法行為であるものね。
具体的には、不法行為民法709条)、債務不履行民法415条)ね。

C事件は、一定の法律効果を発生させるものの、それ自体は、人の精神作用に基づかないものをいうわ。
具体的には、時の経過や、人の死亡などね。

まぁ、今聞いても、該当条文自体知らないものが多いから、ピンと来ないところもあると思うけれど、また、後々わかってくると思うから、それくらいの認識でいいからね。
  はいはい。
  ・・・。
(完全に聞き流しているです。
 右から左とは、まさに今の藤先輩の姿です。)
法律行為」について、もう少し掘り下げておくわね。

法律行為」も幾つかに分類されるのよね。

まず、つめの分類として。
@単独行為
A契約
B合同行為


という分類ね。
さっき軽く触れたところだけれど、ここで掘り下げるって意味で、再度丁寧にもう一度説明するわね。

@単独行為は、1人の当事者の、1つの、一方的な意思表示で成立する法律行為って言ったわよね。
原則として、民法の規定がある場合にのみ認められるものね。

単独行為は、1人の当事者の一方的な意思表示で成立する・・・って説明したんだけど、相手方のある単独行為と、相手方のない単独行為とがあるのよね。

相手方のある単独行為っていうのは、つまり、相手方に意思表示が到達して、初めて効力を生ずる行為なの。
具体的には、取消民法5条、9条、96条、424条)、相殺、債務の免除、契約の解除があるわね。

これに対して、相手方のない単独行為っていうのは、とくに相手方に意思表示が到達しなくても効力が生ずる行為なの。
具体的には、遺言民法960条以下)、権利(所有権や共有持分権)の放棄があるかな。
シモン(『天元突破グレンラガン』の登場人物)でも、そんなに掘らねぇお。
掘り下げすぎだろ、常考っ!
知らない単語を羅列し過ぎだっての。具体例が、ちっとも具体的になってないから!
頬杖ついて適当に聞き流しているからよ!

じゃあ、次はA契約よね。
複数当事者の、相対立する意思表示の合致により成立する法律行為契約というの。
契約は、具体的なイメージがつきやすいんじゃない?

例えば売買契約民法555条)よね。
売主の「売ろう」という意思表示と、買主の「買おう」という意思表示との合致がなければ、契約という1つの法律行為は成立しないわよね。
逆に言えば、この両者の意思表示が、合致すれば、契約という1つの法律行為が成立するわけよね。
売買の他にも、賃貸借民法601条)、組合契約民法667条)なんかもあるわ。

B合同行為は、複数当事者の、同一方向への意思表示の合致により成立する法律行為ね。
これは、さっきも説明したと思うけれど、社団法人の設立行為などね。
B合同行為という概念自体、社団法人の設立行為を説明するために作り出されたものですからね。
あまり他に、例示するものは私も浮かびませんね。
法律行為つ目の分類としては
要式行為」と「不要式行為」があるわね。

コレは、法律の規定または特約で、一定の方式が要求されているかどうかによる分類なの。

契約自由の原則があるから、不要式行為が原則になるのよね。
要式行為には、要物行為もあるわね。
内容は、名前の通りだから分かりやすいと思うわ。

要式行為は、一定の方式が要求されている行為で。
要物行為は、要件として、物の交付が要求されている行為ね。

要式行為の具体例としては、法人設立行為、遺言民法960条以下)、婚姻民法739条)なんかがそうね。
遺言には、法律に則った要式が求められているってことくらいは知っているでしょ? そういうことなの。

要物行為の具体例としては、質権設定契約民法344条)、消費貸借契約民法587条)、使用貸借契約民法593条)があるわ。
これらの契約では、その契約の対象となる物の交付なくしては、契約が成立しないこととなるわ。
  ストップ、ストォォォォップ!
ちょ、ちょ、どんだけ、一方的にしゃべるつもりなの!
そうですよね。
藤さんからしてみれば、わかりきっていることを延々と言われても、勉強になりませんものね。
私としては、確認の意味で聞いてて、あ、そうだった、そうだったって感じで助かりますけどね。
  私も、一生懸命聞いているのですが、正直言うと、あまりワカラナイです。
三者三様な意見を、ありがとうね。

最初にも言ったと思うけれど、イントロみたいなものだから、今日の話は、今の段階では理解できなくっても、気にしなくっていいから。
後々、その話になったときに分かるようになればいいって言ったじゃない。
そのつもりで、軽く聞いててくれればいいから。

ナカちゃんみたいに、今、理解しちゃおうってすると、ちょっと無理が生じちゃうと思うわよ。

まぁ、つかさちゃんからすれば、そうよね。
もう既に一通り民法の勉強終えているから、体系的な流れで理解の確認って位置づけでいいんじゃない?

・・・裏切り小僧は・・・。
あんたこそ黙ってなさいよね!!

じゃあ、最後につ目の分類ね。
有償行為か、無償行為か、という分類があるの。

これは、当事者が互いに対価的な財産的出捐をするか否かによる分類なのね。
あ、因みに「出捐」は「シュツエン」って読むのよね。
漢字変換で出てこないから困る漢字よね。

有償行為としては、売買民法555条)、賃貸借民法601条)、請負民法632条)などがあるわね。

無償行為としては、使用貸借民法593条)や、贈与民法549条)などがあるかな。
無償行為ですと、要物性が要求されたり、あるいは、効果の保護が弱かったりする等も、当該行為の特徴として言えますよね。
あ、そうね。
じゃあ今日は、これくらいにしておこうかしら。 
 
私、去年は大学の民法の講義に、殆ど出席出来なかったので、自分なりに教科書は読んでいたつもりだったのですが、今、例示された内容が、あまりピンと来なかったので、理解が不十分だったなぁ、って思いました。
だから勉強するんでしょ!
わかっていたなら、勉強をして知る楽しみがなくなっちゃうわよ?
そうですよね!
私、今、一緒に勉強してて、すっごい楽しいです。
藤先輩が、私に声かけて下さったことが本当に嬉しいです!
勉強して知る楽しみよりも、勉強せんでも済む喜びの方が大きいって思うのは、あたしだけ?
裏切り小僧は黙ってなさいって言ったはずよ!   
・・・・。
(うわぁ。
 この女、粘着だなぁ。
 いつまで根に持ってんだお。
 一晩寝たら、フツー忘れんだろ、常考っ!)
先ほどから、光ちゃんが言われていた「裏切り小僧」っていうのは、藤さんに対しての言葉だったのですね。
どうして、そんなヒドいアダ名を、つけられたんですか?
事と次第によっては、いくら光ちゃんでも許しませんよ? 
いいんだお、いいんだお。
クロちゃん。
あたしさえ黙って、受け容れていればいい話なんだからさ。
  藤さん・・・
優し過ぎます・・・
広過ぎます・・・
ちょっとっ!!
ナニ、私を悪者みたいに仕立ててくれてんのよ! 
 
・・・。
(あぁ。
 せっかくいい雰囲気で今日の勉強会が終わりそうだったのに、藤先輩のせいで台無しです・・・。)

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