それじゃ今日は、質権の内容の一つである動産質について学ぶわね。 | ||
動産、動産、お鼻が長いのね~♪ | ||
そうね、そうね。 その動産ね。 |
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・・・。 (なんか新しい返しを覚えてきたお・・・。 正直、ムカつくお・・・。 ) |
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動産と言うのは、その種類は、数限りなくある物よね。 価値のある物から、価値の乏しい物、中には価値のない物まであるわ。 動産質権というのは、書画や骨董・衣服や、装飾品などの動産を目的とする質権をいうわ。 前回も話したけれど、この動産質権が、質権制度の中心をなすものなのね。 ちょっと、ここで民法352条を見てくれる? |
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民法第352条。 『(動産質の対抗要件) 第352条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。』 |
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動産質権は、その対抗要件として、目的物の占有の移転を求めているわ。 このために、生産信用の手段としては、あまり機能しえないものであり、主として、庶民の消費信用のための担保手段として機能するにとどまらざるを得ないものとなっているわね。 ただ、商品の担保化については、その商品について倉庫証券や、貨物引換証などが発行されているときは、これらの証券によって質入れすることが可能となっているのよね。 |
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商法で学ぶ倉庫証券や、倉荷証券ですね。 倉庫証券というのは、預証券と、質入証券の2枚が1組になっているものをいいます。 倉荷証券とは、上の2つの機能を1枚で果たす証券をいいますね。 |
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そうね。 倉庫に保管中の商品については倉庫証券または倉荷証券。 運送中の商品については、貨物引換証や船荷証券が発行されているときは、これらの証券を債権者に引き渡すことによって、商品をそのまま(=保管中あるいは運送中のまま)の状態で質入れすることができるわね。 因みに、こうした商品については、譲渡もまた、この証券によって行われるわ。 これらの証券については、商法571条以下、598条以下を見てもらえればいいと思うわ。商法の分野での話だから、ここでは条文確認まではしないけどね。 |
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これらの証券による商品については、質権者は、証券を所持することによって、質物たる商品を確実に留置することができる、ということになります。 | ||
へぇ。 ちょっと変わっているね。 その物自体は、占有していないんだけど、それもOKなんだね。 |
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そうね。 証券化された商品の質入れについては、それが商品の質入れ(動産質)なのか、商品の引渡請求権(権利質)なのか、という議論があるところではあるけれど、まぁ、いずれにせよ現実問題として、企業金融の媒介手段として重要な役割を担っていることには違いないわ。 |
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細けぇこたぁいいんだよ、ってヤツだね。 | ||
そうね、そうね。 細かいことなんて、いいわよね。 |
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・・・。 (やっぱり、この返し、ムカツくお・・・。) |
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動産質権の設定をめぐっては、勉強会では次の2点を抑えておいて欲しいわ。 一つは、設定契約の当事者の問題。 もう一つは、要物契約性の問題ね。 |
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こくこく(相づち) |
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まずは1つ目の、設定契約の当事者の問題から話すわね。 動産質権の成立は、次の2要件だったわよね。 ①質権設定の合意 ②目的物の引渡し(要物契約) 動産質権の成立は、その成立契約によることになるわ。 すなわち、お金を借りるにあたって、債務者が、その所有物を質入れすることを債権者に約し、その物を引き渡すことによって質権が設定される、というのが普通だわ。 ただ、債務者ではない者が、債務者のために、その所有物に質権を設定することもあるの。これを物上保証人と呼ぶわ。 |
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えーっと、つまり、お金を借りるのは、あたしなんだけど、質権設定される目的物を出すのは、チビッ子みたいな話? | ||
そういうことね。 物上保証人は、債務を負担するわけではないわ。 だから、お金を貸した債権者も、直接、物上保証人に対して、弁済を求めることはできないということになるのよね。 でも、被担保債権が弁済されないときは、物上保証人の差し出した目的物は、換価され、債権者の優先弁済に充てられるということになるわ。 その場合、物上保証人は、質権設定のために差し出した目的物についての所有権を失うことになるので、そのような場合の物上保証人には、保証人と同様の求償権が認められるということになるわけね。 このことを定めた条文が、351条なのね。 ちょっと六法で確認してくれる? |
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民法第351条。 『(物上保証人の求償権) 第351条 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。』 |
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ってことね。 | ||
まぁ、もっともチビッ子が差し出した質物が換価されちゃったとして、チビッ子があたしに求償してきても、あたしが払うとは限らないけどねっ!!! | ||
・・・大丈夫です。 私は、間違えても、藤先輩の物上保証人になんか、なりませんからっ!(ドヤっ |
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流石、ナカちゃんだよ! チイも見習わないといけないね! たしかにオネーちゃんは貸した物、いっつも返してくれないからね! |
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藤先輩は『借りたモノは貰ったモノだと認識している』って以前言っていたです! チイちゃんも、絶対に藤先輩には、ナニか貸したらダメです! |
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うんうん! ナカちゃんの言うとおりだよ! |
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・・・。 (こ、このチビッ子1号め・・・。 マヂ許せんっ!! ) |
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まぁ、貸すときは相手を見て・・・って言うしね。 はい、それじゃ次に、2つ目の要物契約性の問題ね。 この要物契約性の問題では、とくに、占有改定の禁止ってことを、しっかり抑えておいて欲しいわ。 質権設定契約の成立要件は ①質権設定の合意 ②目的物の引渡し(要物契約 ということよね。 つまり、債務者のその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずることになるわ。 民法344条を確認してくれる? |
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民法第344条。 『(質権の設定) 第344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。』 |
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もちろん、その引渡しの前に、債権者と設定者との間に、質権設定の合意がなければならないわけなんだけど(要件①)、合意だけでは効力は生じない、というところがポイントになるわ。 これが、質権設定契約が、要物契約という所以よね。 さらに、占有改定による引渡しは認められていないわ。 民法345条を確認してくれる? |
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民法第345条。 『(質権設定者による代理占有の禁止) 第345条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。』 |
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占有改定については、勉強済みだから、占有改定が、どのようなものか、という点については、ここでの説明は割愛するわ。 まぁ、簡単に言っちゃうと、例えば、質権の目的物となる物を、質権設定者が、従前のままに債権者から預かったり、借り受けたりして占有し続けることはできないってことよね。 質権は、占有移転をもって、その公示方法とするものである以上、その徹底を図ることが求められるってことになるわ。 そして、345条の規定は、その徹底を明文化したものといえるわね。 |
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でも、簡易の引渡し(182条2項)や、指図による占有移転(184条)の方法による質権の設定は可能なんだよね! | ||
そうね。 この要物性との関係で、一つ論点があるわ。 少し考えてみてくれるかしら? 質問! サルが、お金がないから・・・と言って、ナカちゃんにお金を借りに来ました。 その際、サルは質物として、法律の教科書一式を差し出してきました。 質権設定の合意(要件①)があり、質物となる目的物の引渡し(要件②)もなされたので、ナカちゃんの質権は成立しました。 しかし、その後、手元に教科書もないから、という理由で、サルはいっこうに勉強をしようとしません。 また、ナカちゃんに借りたお金も返してはいません。 これを見かねたナカちゃんは、自らの意思で、サルに質権の目的物となっていた教科書一式を返還し、勉強を続けるように言いました。 さて、この場合、質権は消滅してしまうのでしょうか? という問題ね。 (大判大正5年12月5日をモデルとした問題) |
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・・・あたしが頼んでもいないのに、ナカたんが任意に、質物を返してくれたわけか・・・。 うーん、でも、さっき占有移転っていう公示方法の徹底って話を聞いたからなぁ。 質権の目的物を返しちゃったら、そりゃ質権も一緒に消滅してしまうんじゃないだろうか。 常識的に考えて。 |
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うーん、結果的に占有改定みたいな形態になっているしねぇ。 345条に反する気がするなぁ。 |
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でもでも、藤先輩が勉強しないのを見かねて、私は教科書を返して上げたのに、ソレをいいことに藤先輩が、私にお金を返さないでいいっていうのも、なんだか違う気がするです! | ||
そうね。 私も、個人的にはナカちゃんのように考えるところかな。 このような問題について、判例は、質権は消滅しないが、対抗力は失われる、としているわ。 (大判大正5年12月5日) 先にも述べたように、質権の成立については、公示の原則の徹底が図られているわけよね。 そうであれば、この機能を重視して、第三者への対抗力は認めるべきではない、という帰結になるわ。 但し、当事者間における質権の消滅まではしない、ということになるわけね。 ただ、学説の有力説には、サルやチイちゃんのいうように345条の趣旨から、質権の留置的効力を重視して、質権は消滅する、という考え方もあるところだわ。 |
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な、成程・・・です。 気をつけるです・・・。 |
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こんなところかしらね。 | ||
ほむほむ。 そう言えば、なんかアレだね? 光ちゃん、変にスルー機能を身につけてきたね。 なんか理由でもあるの? |
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スルー・・・? あ、柴田さんが、私がサルに過敏に反応し過ぎているから、足元をすくわれることになるんです、って指摘して下さったのよ。 言われてみて思い当たる節があったから、少し意識してみたんだけどね。 |
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流石、格闘家の柴田さんです! 相手の弱点を捉えた、すごく的確なアドバイスだと思うです! |
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柴田おねーちゃん、スゴぉーいっ! | ||
ふむ。成程ね。 (あのゴリラめ・・・。 いらん入れ知恵しよってからに・・・。 くそぉ・・・どうしてくれようか・・・。) |