動産物権変動@ 引渡し

これまでの勉強会では、不動産の物権変動についての理解に努めてきたわけなんだけど、そもそも物の種類種類あったわよね。

この点については、民法総則で勉強したところ(民法総則23回勉強会 物A参照)だから今更かも知れないけれど。

一応、確認しといたほーがいいかしら?
食べられる物と、食べられない物だったよね!
違うよっ!
不動産動産種類だよね! 光おねーちゃんっ!
ですです。
民法第86条

『(不動産及び動産) 第86条
1項 土地及びその定着物は、不動産とする。
2項 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3項 無記名債権は、動産とみなす。


とあるです。
そうね。
ナカちゃん、六法まで、ちゃんと確認してくれて、ありがとうね。

不動産以外の物は、すべて動産よね(民法86条2項)。
そして動産は、その種類も数も、もう無限と言っていいくらいあるわけよね。

私の着ている服も、ナカちゃんの今持っている六法全書も、みんな動産だもんね。
このような動産全てについて、不動産の登記のような登録制度を設けるなんてことは現実問題として不可能な話よね。

でも、動産にだって、不動産同様、所有権移転のような物権変動はあるわけだし、民法176条意思主義は、動産の物権変動も含めた規定となっているわ。

そうであれば、動産についても、不動産同様、公示の原則が求められることにはなるわ。
そこで、民法動産については民法178条を定めているの。
ちょっと六法で、民法178条を確認してくれる?
民法第178条

『(動産に関する物権の譲渡の対抗要件) 第178条
 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
178条は、動産の物権変動の公示方法について定めているわ。
そこでは、動産の引渡し』をもって、その公示方法としているわよね。

公示方法は、そもそも外部から認識できる、という点に、その意義があるわ。
つまり、当事者以外の者から認識できる、みえる、という方法でなければ、公示方法としての機能を果たすことはできないといえるわ。

引渡し』が実際に、公示方法としてとられているわけなんだけど、この『引渡し』を今日は学ぼうと思うわ。
ちょ、ちょ、ちょっ!!
ゆとり過ぎだろ、常識的に考えてっ!!
幼稚園児じゃないんだし『引渡し』の説明なんて、いちいち必要なくない?
そんなもん、「はい、どうぞ」「はい、どうも」ってことでしょ?
流石、藤さん。
相変わらず、いいフリをされてみえますね!
今のフリからの今日の導入って形を意識されてみえるんですね。
  え? どうした?
また、おかしなこと言い出してない?
同い年なのに、なんで私だけが「ゆとり」呼ばわりされないと、ならないのよ! 大体、あんたが言うような簡単な話だったら、私もいちいち説明なんかしないわよ!

いい?
引渡し』とは、物の占有の移転が行われることをいうわ。
そして、この占有移転について、民法つの規定を置いているの。

ソレが今日学ぶことになる

@現実の引渡し
A簡易の引渡し
B占有改定
C指図による占有移転


つなのね。
@A、B、Cとに大別することができるわ。
このような大別がなされる理由については、4つを学んだ後に、説明を聴くとワカリやすいと思うから、最後にまとめることにするけれどね。

それじゃ、一つずつ見ていくことにしましょうか。
まずは@現実の引渡しからね。

六法で182条1項を見てくれる? 
民法第182条1項

『(現実の引渡し及び簡易の引渡し) 第182条

1項 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
ホラホラっ!
やっぱ、あたしの言ったとおりじゃないのっ!
「はい、どうぞ」「はい、どうも」ってヤツでしょ? コレ!
コレはね!!

確かに、182条1項にいう@現実の引渡しは、サルがいうような、一般的な引渡しよね。
わざわざ図を用いて説明するまでもないから割愛するけれど、この方法は、まさに物理的な方法よね。
外から見える」という意味においても、本来の引渡しといえると思うわ。

ただ、そうではない方法もあるからこその勉強会なのよ。

ちょっと六法で民法180条181条と見てくれる?
民法第180条
『(占有権の取得) 第180条
 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。



民法第181条
『(代理占有) 第181条
 占有権は、代理人によって取得することができる。
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する』(民法180条)。そして、その『占有権は、代理人によって取得することができる』(民法181条)わけよね。

つまり、私が現実に物を所持していなくても、例えば、つかさちゃんを代理人として、現実に、つかさちゃんが物を所持している場合でも、私は占有権を取得することができることを民法は定めているのよね。 

実演してみましょうか。

つかさちゃん、ちょっと、このペンを貸してあげるわね。
はい。
確かに、光ちゃんのペンを借りましたよ。
今の状態を考えて欲しいわ。

私のペンを、今、現実に所持しているのは、つかさちゃんよね。
でも、つかさちゃんのペンは、私が、つかさちゃんに貸した物よね。
このような場合、もまた、つかさちゃんを代理人として占有権を持っている、と考えるわけ。

民法は、このように現実に物を所持しない者にも占有権を認めているわ。
ただ、そうなると、占有権の所在が外部からはワカラナイ(=「外から見えない」) ということを免れないわけよね。

ただ取引の煩雑化を回避する必要性などの現実的要請からも、このような代理人を通じて物を所持する、ということについては認めざるを得ないわ。

ただ、このような占有移転があるということは、今から説明するA〜Cの場合がありうる、ということになるわけ。
それじゃ、1つずつ見ていくからね。

まずは六法で182条2項を見てくれる?
民法第182条2項
『(現実の引渡し及び簡易の引渡し) 第182条

2項 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
 
182条2項が定めているのは、図で示すと上のようなことね。

私は以前から、つかさちゃんにペンを貸していたわけ(@)。
ということは、ペンの占有は、つかさちゃんにあるわけよね。

その後、私は、つかさちゃんの占有している私の貸したペンを、つかさちゃんに上げることにしたの(A)。
ということは、以後は、つかさちゃんは、ペンを借りているのではなく、自分の物として占有するということになるわよね。

でも、ペン自体は、物理的になんら動いていないわけよね。
だけど、182条2項は『意思表示のみによって占有権が移転する旨を定めているわ。
このような現実の物の所在の移転を伴わない占有移転を、A簡易の引渡しっていうの。 
へ・・・へぇ〜。
確かに、ありそうではあるけれど、ソレは、ちょっとワカリにくいね。
あたしが第三者だとして、ずっと前から、つかさちゃんが使っているペンが、いつの時点で、借りているペンじゃなくって、つかさちゃんの物になったのかは見えないわけだもんね。 
勉強会で学ぶ必要性がわかった?

じゃあ、次はB占有改定ね。
六法で183条をみてくれる? 
民法第183条

『(占有改定) 第183条
 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
 
少しワカリにくい条文だけれど、図で示すと上の図のようなことね。

私が所持しているペンを、私は、つかさちゃんに上げたの(@)。
でも、その際に、まだ使う用があるから、暫く貸しておいてねってことにしたのよね(A)。

ということは、それ以後は、私は、つかさちゃんの占有代理人として、ペンを占有するってことになるわけよね。

でも、物理的には、ペンはずっと私のところにあるわけだし、所持も、つかさちゃんには一度も移っていないわけよね。

それでも、私から、つかさちゃんにペンは譲渡されているわけなんだから、私はつかさちゃんの占有代理人としてペンを占有し、つかさちゃんは本人としてペンを占有している、ということになるわ。

つまり、このような場合でも、つかさちゃんはペンの占有権を取得したことになるってわけ。
コレがB占有改定なのね。
うわぁ。ソレはひどいなぁ。
現実問題、ペンは光ちゃんとこに、ずっとあるわけでしょ?
さっき(=A簡易の引渡し)よりも、さらにヒドいじゃないの。
外からはまったく見えない」よ?
それなのに、『引渡し』って言っちゃうわけ?
うーん、でも民法181条が、代理人による占有権の取得を認めているんだから、そうなっちゃうよね・・・。
でもでも、確かにオネーちゃんが言うように「外からはまったく見えない」ってことは問題にも思えるなぁ。
そうね。
確かに「外からはまったく見えないけれど引渡し』ってことになるわけよね。
まぁ、この問題については、ここでの検討は置いておいて、先にC指図による占有移転についての説明をしちゃうわね。

C指図による占有移転については、民法184条が定めているわ。
ナカちゃん、今日は大忙しで申し訳ないけれど、六法で条文をひいてくれるかしら? 
民法第184条

『(指図による占有移転) 第184条
 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
 
最後は、C指図による占有移転ね。
コレは図で示すと上の図のようなことね。

私には、つかさちゃんを代理人として占有しているペンがあったの。
私は、そのペンをナカちゃん(第三者)に上げたの(@

そして、つかさちゃんに対して、つかさちゃんが今、私のために占有しているペンだけど、以後は、私は、そのペンをナカちゃんに上げたから、ナカちゃんのために占有しておいてね(=指図伝えたの(A)。

そして、そのことをナカちゃんに伝えて、ナカちゃんからの承諾を得た(B)場合、以後は、つかさちゃんはナカちゃんの占有代理人ということになるわ。
この場合において、つかさちゃんの同意は必要ないわ。

このような場合も、私からナカちゃんへの『引渡し』があったということになるわけ(=第三者のナカちゃんは、ペンの占有権を取得する)。

ペン自体は、ずっと占有代理人である、つかさちゃんのとこにあるだけで、まったく動いていないんだけど、『引渡しがあったとみるのね。
コレを、C指図による占有移転というわ。
あぁぁぁ・・・もうナニがナニやら・・・。
ナニが「外から見える」方法なんだか・・・。
全然、外からはワカラナイじゃないのっ!
そうね。
今一通り確認したつの形態。

@現実の引渡し
A簡易の引渡し
B占有改定
C指図による占有移転


つは、いずれも占有権の移転として認められているわ。
そして、動産物権変動の対抗要件とされる『引渡し』も、この4つの形態のいずれでもよい、とされているのね。

@の現実の引渡しに対して、AからCを、現実の物の所在の移転が伴わない占有移転の形態であることから、観念的引渡しともいうわね。

この観念的引渡しは、「外から見える」ということから『引渡し』を対抗要件としたはずなのに、実際には「外から見えない」状態での『引渡し』についても対抗要件が備わっていることになっているわけよね。

そのため、取引上、特に占有改定の場合に問題が生じやすいといわれているわ。

例えば、占有改定の場合だと、ペンはずっと私のところにあるわけよね。
でも、ペンの所有権は、つかさちゃんにあるわけよね。
ただし、占有改定の方法での占有権の移転は、サルが騒いでいるように外部からは認識できないわ。
それでも『引渡し』である以上、つかさちゃんは対抗要件を備えているわけよね。

そのような場合に、私がずっとペンを持っていることから、そのペンは私の物に違いない、と考えて、サルが私からペンを買ったとしたら・・・。
この問題に解決を与えるのが、即時取得制度なのよね。
即時取得制度については、また改めて勉強会で学ぶことにしましょ。
いやぁ、思ったよりも難解だったね。
光ちゃんが最初に「外から見える」なんてことを、さも大事そうに言うもんだから、あたしの理解がミスリードされちゃったようにも思えるんだけどさ。 
違うわ。
外から見える」ということは、重要なキーワードよ?
まぁ、今日の勉強会では、ここまでにしておくけれど、その言葉は抑えておいて欲しいって思っているわ。
あ・・・そうなんだ。
へぇ〜、ふぅ〜ん。
動産の論点とは言えませんが、動産譲渡登記ファイルについては、見ておかなくていいでしょうか? 
うーん、登記制度については勉強会を、ネージュ・ブロンシュでやったもんね。
動産譲渡登記ファイルについても、一応見ておいたほうがいいのかな?

ただ、つかさちゃんが言うように論点があるところでもないから、軽く抑えておくという位置づけでいいとは思うけれどね。
ねぇ? サルは、今日は夜、予定あるの? 
予定の有無は、光ちゃんからの提案次第だね・・・。
ないよっ!
だって、オネーちゃん、今日はナイター中継の観戦だお! って朝から騒いでいたもん。 
ちょっ!! おまっ!!
ソレは立派な予定だろうがっ! 常識的に考えてっ!!
チイは野球には興味ないもん!
むしろ、野球中継中、オネーちゃんがチイの勉強の邪魔してくるから嫌いなくらいだもん。
だから、今日のオネーちゃんの予定なんて、ないよっ! 
チイちゃんのお気持ちが伝わってきますね・・・・。
うーん、応援球団は違えど、同じプロ野球ファンとしては、少し寂しい話ではあるけれど、サルが邪魔してくるのは、迷惑この上なさそうね。

そうね。
それじゃ、つかさちゃん家に、私の家の馴染みの料理屋の板さんに御弁当を届けてもらうから、一緒に食べながら軽い勉強会ってっていうのはどうかしら。
  私は大賛成ですっ!
お、お花見のときに食べ損ねた幻のお弁当っ!?
今から御願いするから、アソコまで手の込んだ物にはならないと思うけれど、あの板さんなら、きっと美味しい御弁当を作ってくれることと思うわ。
それじゃ、その予定で、夜にまた改めて、つかさちゃん家に集合ってことで、いいかしら? 
あたし、賛同した覚えはないってのに・・・勝手に決めちゃうのなら、最初に、あたしの予定聞いた意味なくね? 
まぁまぁ。
チイちゃんも御弁当を楽しみにしているみたいだし、オネーちゃんなら付き合って上げなさいよ。
それじゃ、みんなまた夜にね。
・・・・。
(か、か、固まってしまった・・・みたい・・・です・・・。) 

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