今日からは回を跨いで、物権変動について学ぶことにするわね。 具体的には、物権変動とはなにか。 物権変動は、民法の条文では、どのように表現されているのか。 そして、物権変動の原因には、どのようなものがあるのか。 今日は、これくらいは抑えて貰えたらって思っているわ。 まずは、物権変動というのがナニか? って話からだけど、物権変動とは、物権の取得・変更・喪失を総称する言葉なのね。 それじゃ、この物権変動が、民法の条文上、どのように表現されているのかを確認する意味で、 ちょっと六法で民法176条、177条、178条を見てくれる? |
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民法第176条 『(物権の設定及び移転) 第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。』 民法第177条 『(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。』 民法第178条 『(動産に関する物権の譲渡の対抗要件) 第178条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。』 |
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今、ナカちゃんが呼んでくれた条文の赤太文字部分が、物権変動を表現しているのがワカルかしら。 物権変動とは、物権の取得・変更・喪失を総称するものだったわよね。 じゃあ、この物権の取得・変更・喪失を、具体的に考えてみることで、物権変動とは、どういうものか、っていうことを理解することにしましょうか。 |
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あぁ、もう言っちゃってくれていいから。 物権の取得・変更・喪失の具体例だっけ? ドンドン言っちゃいなよ、YOU! |
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そんなこと言うなら、オネーちゃんが具体例を言っちゃえばいいんだよ! | ||
チイちゃん。チイちゃんのお姉さんは、勿論御存知なんですよ。 ただ、みんなの理解を促す為には、どうしたらいいのか、という視点を、いつも大事にされてみえるだけなんです。 |
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そ、そうなんだ・・・。 |
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ちょっと、つかさちゃぁ〜ん。 シレっと嘘を教えちゃ駄目じゃないのぉ〜。 まぁ、つかさちゃんのサル・フィルターは、すっごく強固なものだから、ココで言い争いをするつもりはないけれど・・・。 じゃあ、質問させてもらうわね。 質問! 物権変動の原因の一つである物権の「取得」とは、具体的にどのような場合を言うのかを考えてみてくれる? |
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いやいや、ソレは簡単過ぎるでしょ。 物の所有権を「取得」したって言える場合で、いいんでしょ? あたしが、光ちゃんから、シュークリームを貰ったって場合は、あたしは、シュークリームの所有権を、光ちゃんから「取得」したって言えるよね。 こういうことでしょ? |
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明智先輩は、藤先輩に上げる前に、そのシュークリームを、お店で買うことによって、そのシュークリームの所有権を「取得」したって言えるです! | ||
そうね。 ドッチも、所有権を「取得」したと言えるわね。 他にはないかしら? |
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シュークリームは関係なくなっちゃうけど、相続(民法882条以下)も、所有権取得の原因になるよ! | ||
そうね。 サルが言ってくれた「取得」原因は、贈与。 ナカちゃんが言ってくれた「取得」原因は、売買。 そして、チイちゃんが言ってくれた「取得」原因は相続。 物権変動ではあるけれど、それぞれ「取得」原因は異なるわよね。 この違いを説明できるかしら? |
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「贈与」と「相続」はタダで貰える。 「売買」はお金払わないといけないからタダじゃない。 という違いがあるお。 |
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・・・そんな分類は聞いたことないです。 えーっと・・・た、たしか、「売買」や「贈与」の原因は契約という法律行為です。 これに対して「相続」は、人の死亡という事件(当事者の意思の関わりのない事実)が原因となっているという違いがあったと思うです。 |
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そうですね。 民法176条は、当事者の意思による物権変動、すなわち法律行為に基づく物権変動の場面を定めているわけですが、物権変動の原因には、法律行為以外の権原によっても生じるものがありますよね。 ソレが、例えば「相続」ということですよね。 (※ 取得時効や即時取得などもあります) |
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・・・オ、オネーちゃんの答えは、なんだったの? | ||
チイちゃんのお姉さんは、敢えて間違った答えをされることによって、皆さんが間違えても怖くないっていう空気を率先して作って下さってみえるんですよ。 | ||
そうなんだっ! 流石、オネーちゃんだよ! |
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・・・チイちゃんが、つかさちゃんの誤った誘導によって汚染されていっているような・・・大丈夫かしら・・・。 売買も贈与も相続も、前に、その物については所有権者が居るわけよね。 そして、新たな所有者が、所有権を取得しているわけよね。 これを所有権の承継というの。 このような承継による取得を、承継取得っていうのね。 そして、売買や贈与のように特定の物についてだけ承継が生ずる場合を特定承継。 相続のように包括的に承継が生ずる場合を包括承継っていうのね。 相続の承継人を包括承継人っていうってことについては、以前、民法総則の勉強会でも言ったから、憶えていてくれるんじゃないかしら。 |
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あぁ〜、憶えている、憶えている・・・。 あたしが、噴霧器で眼球破壊されたときの勉強会だ・・・。 アレは、ヒドい仕打ちだった。 |
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ナニ、被害者面してくれちゃってるのよ! 聞く人が聞いたら、誤解されるような言い方はやめてくれない? さて。 所有権の承継が生ずる場合の、所有権取得を、承継取得っていうことは話したわけなんだけど。 じゃあ、逆に、所有権の承継が生じない取得っていうのは、どんな場合があると思う? |
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海に泳いでいる魚を釣った場合や、山に棲む野生の動物を捕獲した場合が、そうだよ! 海に泳ぐ魚や、山に棲む野生の動物には所有者がいないから、所有権も存在しないことになるよ。 でも、誰かが捕まえると、その捕まえた人は、その魚や、動物についての所有権を取得することになるからね! |
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流石です、チイちゃん。 前の所有者からの承継が生じない取得であることから、原始取得と呼ばれる場合ですよね。 民法239条1項に規定がありますね。 |
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チェック、チェックです! 民法第239条1項 『(無主物の帰属) 第239条 1項 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。』 成程、成程です。 魚や動物は動産です。そして捕まえた人には、所有の意思があるわけですから、所有権を取得することになるです。 これが、原始取得ってことですね、メモメモです! |
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ナカちゃん、すぐに六法ひくなんてスゴいよ! チイも見習って、すぐに六法で確認するようにするよ!! |
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・・・。 (あ、考えたら、あたしの六法、まだ先輩から貰った六法だったお。 2009年のポケット六法のままなんだよなぁ・・・こいつ等、きっと律儀に六法を毎年買い替えてるんだよなぁ、多分。 ムムムっ!! じゃあ、こいつ等の去年の六法貰えばよくね? 少なくとも、2009年のよりは新しくなるしね! あたし、マヂ天才っ!) |
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・・・。 (六法も買わないなんて、とんでもないです・・・。 去年の六法は不要ですが、藤先輩のためにも、私は頼まれても断らないとです! あ、でも、そうしたら藤先輩は、チイちゃんの六法を貰うです。 コレは、チイちゃんにも言っておかないといけないです! ) |
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そうね。 ところで、物権変動とは、物権の取得・変更・喪失を総称するものだったわよね。 じゃあ、次は、物権の喪失を、具体的に考えてみることで、物権変動とは、どういうものか、っていうことを理解することにしましょうか。 質問! 物権変動の原因の一つである物権の「喪失」とは、具体的にどのような場合を言うのかを考えてみてくれる? |
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いやいや、ソレも簡単過ぎるでしょ。 物の所有権を「喪失」したって言える場合で、いいんでしょ? あたしが、光ちゃんから貰ったシュークリームを食べた場合じゃない? シュークリーム自体がなくなっちゃうわけなんだか、コレはシュークリームの所有権の「喪失」ってことになるんじゃない? |
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シュークリームの話をされるのなら、明智先輩は、藤先輩にシュークリームを上げたことによって、そのシュークリームの所有権を「喪失」したって言えるです! | ||
そうね。 贈与によって、サルは、シュークリームの所有権を取得することになるけれど、同時に、私は、シュークリームの所有権を失っているわけよね。 つまり、この場合、私については、所有権が消滅していることになるわ。 でも、この場合の所有権は、物理的に消滅しているわけではなくって、私からサルへと「移転」しているわけよね。 この「移転」というのは、前主の私にとっては所有権の消滅、後主であるサルにとっては所有権の取得ということになるわ。 このような所有権の消滅を、相対的消滅ということもあるわ。 これに対して、サルがシュークリームを食べてしまったとすると、所有権の目的自体が滅失しているわけよね。 だから、当然、サルのシュークリームの所有権も消滅せざるを得ないこととなるわ。 この場合の所有権の消滅を、絶対的消滅っていうの。 |
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例えが身近な物のせいかイメージしやすいなぁ。 ただ、あんまりシュークリーム、シュークリーム連呼されるせいか、無性にシュークリームが食べたくなっちゃったけどね! |
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シュークリームを例えに出したのは、そういう意図だったわけね。 ネージュ・ブロンシュに行きたいなら、素直にそう言えばいいのに。 えーっと最後に。 民法176条では『物権の設定』って言葉を使っていたわよね。 この『物権の設定』については、まだ勉強していないから、私からの説明にさせて貰うわね。 抵当権や地上権のような物権が、コレにあたるわ。 また物権で改めて勉強することになるんだけれど、例えば、サルが私からお金を借りるにあたって、サルの所有する不動産に抵当権を設定したりすることがあるわ。 これは、私とサルとの間の抵当権設定契約が原因となるんだけれど、この契約によって、私は抵当権という物権を取得することになるわ。 この場合、『サルが抵当権を設定し、私が抵当権の設定を受ける』という言い方がなされるの。 この場合、サルが「抵当権設定者」、私が「抵当権者」となるわ。 いわゆる制限物権については、このような設定行為によって権利が設定されることになるの。 これも物権変動の一つなのね。 最初の勉強の際は、あまり耳慣れない言葉なので間違えやすいんだけど、抵当権を設定するのは所有者であるサル(設定者)で、抵当権の設定を受ける、あるいは、抵当権者になるのは私だから。 抵当権者が抵当権を設定するわけじゃないし、抵当権設定者は抵当権者じゃないから混同しないようにね。 |
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大丈夫だよ。 だって、まだ抵当権もナニも知らないんだから、間違えようがないじゃないの。 |
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え? 抵当権は、みんな知ってるはずだよ? ナカちゃんだって、学部で途中までは勉強したって言ってたし、抵当権については勉強していると思うよ。 オネーちゃんは、ナニを言っているの? |
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チイちゃん、チイちゃん? チイちゃんのお姉さんの「理解」というのは、非常に深い理解を意味しているんですよ。 ですから、お姉さんからしてみれば、まだまだ私達の抵当権についての理解なんて混同する恐れさえないレベルだっていう深遠な意味が、あの言葉には内包されているんです。 |
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ス、ス、凄いよっ! オネーちゃんっ!! 確かにチイは、まだまだだよっ!! でも、そんなオネーちゃんの言葉の意味が、すぐにわかっちゃう、つかさおねーちゃんもスゴいよね! |
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・・・。 (一番とんでもないおねーちゃんは、実は黒田先輩かも知れないです。 次から次に、とんでもない嘘八百を、チイちゃんに仕込んでいる気がしてならないです・・・。 ) |