占有訴権

今まで学んできてワカルように、占有権っていうのは、占有という事実状態を、そのままの形で保護しようというものだったわよね。

今日は、この占有状態が侵害、または侵害されるおそれが生じた場合に、その侵害を排除、またはおそれを除去し、占有の回復・維持を求める請求権について学ぶことにするわね。

この請求権を、占有訴権っていうのね。

占有訴権の内容

@占有保持の訴え民法198条
A占有保全の訴え民法199条
B占有回収の訴え民法200条1項

つがあるわ。まずは、これらの占有訴権について、六法で条文を確認してみましょうか。
民法第198条
『(占有保持の訴え) 第198条
 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。



民法第199条
『(占有保全の訴え) 第199条
 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。



民法第200条1項
『(占有回収の訴え) 第200条
1項 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
それぞれの占有訴権の内容については、条文をしっかり読んでおいてってことでいいと思うんだけど。

一つ注意しておくと、占有訴権のうち民法200条占有回収の訴えについては、『占有者がその占有を奪われたときのみに提起しうる、という点がポイントになるわね。

例えば、貸しておいた物の貸与期間が満了したから返せっていう場合や、騙されて相手に渡してしまった、というような場合には占有回収の訴えは提起できない、ということになるわ。
占有回収の訴えを提起できるのは、例えば、盗まれたという場合や、自分の土地に勝手に居座られた、というような場合になるってことね。
それじゃ、あたしの物が借りパクされそうになったり、あたしん家の庭に、勝手に不法占拠された場合はどうすればいいんだお?
その場合は、オネーちゃんは、自分の物なんだから、所有権に基づく返還請求なり、土地の明渡請求なりをすればいいだけじゃないの? 
そういうことよね。
所有権に基づく返還請求権の場合には、占有権のような制限はないわ。
占有回収の訴えと、所有権に基づく返還請求権の違いはソコよね。

もう少し付け加えて説明しておくわね。

占有訴権にいう『占有者』についてね。
ここにいう『占有者』には、善意、悪意は問われないわ。
また、他人のために占有を為す者も含まれるわ。
また、自主占有はもちろん、他主占有であってもいいし、直接占有、間接占有も問われないわ。
管理占有であっても、よいとされているの。
でも、占有補助者、占有機関はダメだからね。占有補助者や、占有機関は、所持を有しないことから、占有者とは認められず、占有訴権を有しないとされているわ。
占有補助者・・・占有機関・・・
ソレって、なんだったっけ?
勉強会でやったじゃないのよ!
モンキー株式会社のサル代表取締役・・・って言えば思い出す?
ナニ、そのアホみたいなネーミングは・・・。
・・・やったです。確かにやっているです。
そうよねぇ。
やったことくらいは、ちゃんと把握しておいて欲しいわよねぇ。

占有訴権について、まとめると下の一覧になるわね。 
  占有保持の訴え 占有保全の訴え 占有回収の訴え
条文 198条 199条 200条1項
要件 占有者の占有が
 侵害されている
占有者の占有の
 妨害のおそれがある
占有者の占有を
 うばわれた
請求権の内容 妨害の停止
損害賠償
妨害の予防
または
損害賠償の担保
物の返還
損害賠償
行使期間 201条1項 201条2項 201条3項
占有訴権のそれぞれの行使期間については、ちょっと表には、まとめきれなかったから条文を、確認しておきましょうか。
六法で、201条を見てくれる?
民法第201条
『(占有の訴えの提起期間) 第201条

1項 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。

2項 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。

3項 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
と、ここまで占有訴権について見てきたわけなんだけど。
占有訴権については、面白い判例百選に掲載されているのよね。
ちょっと確認しておきましょうか。
最判昭和40年3月4日ね(百選T 6版68事件 7版67事件) 
むぅぅぅ。
残当な結論で、面白くなかったなぁ。
錯誤取得時効に続く、あたしの心の砦の登場かとwktkしたのに・・・。
藤先輩の心の砦は、いっそのこと全部壊れてしまえば、いいんです!
どうも聞いていると、怪しげな話ばかり考えているような気がしてならないです! 
シィぃーーーッ!
そういうことは、あんまり大きい声で言わないのっ!!
ナニよ。
あんた、なんか悪いことでも考えているわけ?
他人様に言えないことって、なんなのよ?

えーっと、それじゃ、最後に。
占有が回復された場合に、どのような問題を生ずるか
そして、その問題は、どのように処理されるか、についてね。

さっきの泥棒の例え話じゃないけれど、ある物について、占有者が本権を有しない場合、最終的には、そのある物は、本権を有する者に返還されるべき物ということになるわよね。

そのような場合において、その物が返還されるとき、返還までに生じた様々な事由について、占有者と本権に基づいて、その物の占有を回復する者との間の利害調整が必要になってくるわけよね。

その処理について、民法が定めるのは、次のつの場合なの。

@果実の処理
A滅失又は損傷した場合の処理
B占有中に支出した費用の清算の処理


つね。

ここは条文を見ておくだけにするわ。

まずは六法で189条190条を見てくれる?
民法第189条
『(善意の占有者による果実の取得等) 第189条
1項 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2項 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。



民法第190条
『(悪意の占有者による果実の返還等) 第190条
1項 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2項 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

@果実の処理というのは、占有者のもとで生じた果実をどのように処理するのか、という話ね。

その処理については、善意の占有者と、悪意の占有者との場合に分けられ、前者については189条が、後者については190条が、それぞれ定めているわ。

次は、六法で191条を見てくれる?
民法第191条
『(占有者による損害賠償) 第191条
 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
これがつ目の、A占有物が、占有者のもので滅失または損傷した場合の処理になるわ。
191条条文の定めにあるとおりね。

次は、最後のつ目ね。
六法で、196条を見てくれる?
民法第196条
『(占有者による費用の償還請求) 第196条
1項 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

2項 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。


はあはぁ・・・。
ナカちゃん、お疲れ様。

196条B占有中に支出した費用の清算の処理について定めているわね。
それぞれの条文をみながら、整理は各自使用している基本書の記述を確認しておくってことにさせてもらうわ。
よーし、帰ったら六法と基本書出して、しっかり復習しないとだね! 
  チイ、ガンバりなよ!
あんたも、あんたもよ!  
竹中さん、お疲れ様でした。
あ、コレ、今淹れて来た紅茶です。よろしければどうぞ。
  あうあうあうあう。
黒田先輩、ありがとうです。
つかさちゃん、占有が回復された場合の処理についての話の際に、急に席を外したと思ったら、そういうことだったのね。 
やさしぃー。
キャラクター紹介の立ち絵では、私も六法を携えているんですけれど、六法を読む竹中さんのアイコンが追加されてからは、条文はずっと竹中さんが担当されてみえますからね。
ご負担もあるものと思って・・・。 
そう言えば、そうよね。
条文を読むことだって、大切な勉強なんだから、サルも率先して読んでもらわないといけないわよね。 
計画通り』 
まぁた悪い顔してる・・・。 
 

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