地方公共団体の機関 
今日の勉強会では、地方公共団体の機関について学びことにするわね。

それじゃ、早速、憲法93条を六法で見てくれる?
日本国憲法第93条

『日本国憲法第93条 【地方公共団体の機関、その直接選挙】
1項 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

2項 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。』
憲法93条は、地方公共団体の組織に関する憲法上の要件として、

第一に、住民の直接公選による議員で構成される議会を議事機関として設置すること
第二に、地方公共団体の執行機関である地方公共団体の長および法律の定めるその他の吏員が住民の直接選挙で選ばれること

点を挙げているわ。

そして、この規定を受けて、首長主義(=首長制)を採用しているのね。

説明は不要だろうけれど、93条2項にいう『地方公共団体の長』は、都道府県では知事、市町村では市町村長ということになるわ。
これらの『地方公共団体の長』は、その地方公共団体を統轄し、その地方公共団体を代表する最高の執行機関としての長であり、憲法上、住民の直接投票によって選出されるわけね(93条2項)。
「首長」って「クビナガ」とか「クビチョウ」っていうよね。
あ、ソレは「市長」と「首長」との聞き間違いを避けるための言葉ね。
「シチョウ」と「シュチョウ」って耳で聞くと間違えそうでしょ?
北斗七星の隣に輝く小さな星(=アルコル)のことを死兆(シチョウ)星っていうんだお、
と主張(シュチョウ)してみますた。
・・・はいはい。
ソレは聞き間違えても、なんの問題もなさそうな話ね。

そうそう、地方公共団体の機関ではないけれど、地方公共団体の住民、すなわち地方住民についても、ここで述べておくわね。

地方住民によって行われる住民投票には、大きく次のつの類型があるわ。

@憲法上の住民投票
A
地方自治法上の住民投票
B地方公共団体の
条例に基づく住民投票

つね。

先ずは@憲法上の住民投票から確認しておきましょうか。
憲法95条を六法で見てくれるかしら。
日本国憲法第95条

『日本国憲法第95条 【特別法の住民投票】
 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。』
この地方特別法に対する住民投票を規定した憲法95条立法趣旨は、

@国の特別法による地方自治権の侵害の防止
A地方公共団体の個性の尊重
B地方公共団体の平等権の尊重
C地方行政における民意の尊重


と挙げられるところだけれど、中心的なものは@になるわね。

次にA地方自治法上の住民投票ね。
条文確認はしないけれど、この地方自治法による直接請求には次のものがあるわ。
条例の制定改廃の請求地方自治法74条74条の4
監査の請求地方自治法75条
議会の解散請求地方自治法76条79条
議員・長・役員の解職請求地方自治法80条88条
なんか憲法の勉強っていうより、昔、学校で教わった公民の勉強みたいだね。
そうかも知れないわね。
実際、重なる部分もあるものね。

それじゃ、最後にB地方公共団体の条例に基づく住民投票ね。

この、住民投票条例に基づく住民投票が、首長に対して法的拘束力を有するのかが争われた事件があるのよね。
この機会に見ておくことにしましょうか。
名護市住民投票条例事件
那覇地判平成12年5月9日
ね。
沖縄米軍基地の移設をめぐって条例に基づく住民投票が行われたという事案でしたよね。
本件事案の争点は、今、光ちゃんがまとめてくれたとおりですが、判決文では

本件条例は、住民投票の結果の扱いに関して、その3条2項において、市長は、ヘリポート基地の建設予定地内外の私有地の売却、使用、賃借その他ヘリポート基地の建設に関係する事務の執行に当たり、地方自治の本旨に基づき市民投票における有効投票の賛否いずれか過半数の意思を尊重するものとする。と規定するに止まり(以下、右規定を『尊重義務規定』という。)、市長が、ヘリポート基地の建設に関係する事務の執行に当たり、右有効投票の賛否いずれか過半数の意思に反する判断をした場合の措置等については何ら規定していない

 そして、仮に、住民投票の結果に法的拘束力を肯定すると、間接民主制によって市政を執行しようとする現行法の制度原理と整合しない結果を招来することにもなりかねないのであるから、右の尊重義務規定に依拠して、市長に市民投票における有効投票の賛否いずれか過半数の意思に従うべき法的義務があるとまで解することはできず、右規定は、市長に対し、ヘリポート基地の建設に関係する事務の執行に当たり、本件住民投票の結果を参考とするよう要請しているにすぎないというべきである』。

として、住民投票条例に基づく住民投票の結果の首長に対する法的拘束力を否定しているんですよね。
この住民投票の結果をどう受け止めるか、という問題は難しい問題よね。

そもそも、市長だって選挙によって選ばれているわけなんだし、判決文がいうように
間接民主制によって市政を執行しようとする現行法の制度
を前提とする以上、住民投票の結果に、法的拘束力を肯定すると
現行法の制度原理と整合しない結果を招来することにもなりかねない
ということになるわけだものね。

そうなると、必ずしも住民投票はいい側面だけではない、という理解にもなるわよね。
その時、その時で、一時的な議論が過熱しているだけかも知れないのに、その議論に左右されかねないということになるわけだからね。
衆愚政治って言葉もあるもんねぇ。
この場面で、その言葉はどうなのよ・・・とは思うけどね。
ただ、民主制に対する批判としては用いられる言葉だから、そういう一面はあるのかしらね。

それじゃ次は、地方公共団体の機関である地方議会についてみてみることにしましょうか。

地方公共団体には、住民が直接選出した議員によって構成される議会がおかれるわ。
この地方公共団体の議会は、住民の代表機関であり、議決機関である点において、国会と同じ性質を有するわけなんだけれど、執行機関との関係においては、執行機関と独立・対等の関係に立つもので、国会が国権の最高機関であることとは異なり、自治権の最高機関たる地位にあるものではない、という点が違うわけね。

この地方議会の議員に、国会議員のような免責特権が認められるのかが問題となった事件があるわ。
国会議員の免責特権
国会議員の有する特権としては、憲法50条にいう不逮捕特権や、51条にいう議員免責特権があるってことは勉強会で学んだじゃないのよ。

 国会F国会G勉強会参照)
いいなぁ。
オネーちゃんは、一緒に一杯勉強してるんだなぁ。
でもでも、チイだって議員免責特権は知ってるからね!!
チイちゃんは、サルと違って1人でも、しっかり勉強できるものね。

さて、この問題が争われた事案として
佐賀県議会事件
最大判昭和42年5月24日
があるわ。

百選掲載判例じゃないし、丁寧な判例検討まではしなくて、いいかしらね。

事案について簡単に説明すると、佐賀県議会の県議会議員らが、ある議案の一括裁決に反対して、議長の椅子を揺り動かす等の暴行を働き(刑法95条1項公務執行妨害罪)、さらに、議会を流会にすることを目的として、控え室にいた反対派の議員らを30分程、控え室に閉じ込めた行為(刑法221条監禁罪)で、逮捕・起訴されたのよね。
いやぁ、なかなかやってくれてんねぇ。
確かに、この議員らの行為はそれぞれの罪の構成要件には該当しそうだよね。
コレは免責特権がないってことになると大騒ぎだね。
そうね。
この問題について、最高裁は次のように述べているわ。

論旨は要するに、本件に関し議会又は議長の告訴告発がなかつたことは顕著な事実であるから、本件各公訴事実については、すべて公訴棄却の判決がなされるべきであつたのにかかわらず、これに反する判断をした原判決は、地方議会についても当然認められるべき憲法上の大原則のひとつである議会自治・議会自律の原則に関する法理の解釈適用を誤つたものであるというにある。

 しかし、
憲法上、国権の最高機関たる国会について、広範な議院自律権を認め、ことに、議院の発言について、憲法51条に、いわゆる免責特権を与えているからといつて、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない。

 もつとも、地方議会についても、法律の定めるところにより、その機能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められてはいるが、その自治・自律の権能が認められている範囲内の行為についても、原則的に、裁判所の司法審査権の介入が許されるべき
ことは、当裁判所の判例(昭和三〇年(オ)第四三〇号同三五年三月九日大法廷判決、民集一四巻三号三五五頁参照)の示すとおりである。
 そして、原判決の指摘するような言論の域を超えた実力の行使については、所論のような議員の免責特権その他特別の取扱いを認めるべき合理的な理由は見出しがたいといわなければならない

 また、現行法上、告訴告発を訴訟条件とする場合には、法律にその根拠のあることが必要であつて、その根拠に基づくことなく、地方議会の議事進行に関連して議員が犯した刑事犯罪について、単に地方議会の自治・自律の原則を根拠として、議会又は議長の告訴告発を訴訟条件と解すべきであるとか、司法権の介入を許さないという主張は、肯認することができない


として、地方議会には、国会各議院同様の議院自律権は認められない、としているわ。

また、議会自治・自律主義の原則を理由に、検察官は、県議会の議決または議長による告訴・告発なくしては公訴を提起できない、とする主張に対しては、
地方議会についても、法律の定めるところにより、その機能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められてはいるが、その自治・自律の権能が認められている範囲内の行為についても、原則的に、裁判所の司法審査権の介入が許される
として、
現行法上、告訴告発を訴訟条件とする場合には、法律にその根拠のあることが必要であつて、その根拠に基づくことなく、地方議会の議事進行に関連して議員が犯した刑事犯罪について、単に地方議会の自治・自律の原則を根拠として、議会又は議長の告訴告発を訴訟条件と解すべきであるとか、司法権の介入を許さないという主張は、肯認することができない
とし、県議会議員らの行為が、刑法95条1項にいう公務執行妨害罪にあたるとしているわけね。
あらま・・・。
国会議院と地方議会では違うってことなんだ。
そうね。

もちろん、学説には、地方議会の議事運営の自律性を尊重して、議員の行為の法益侵害程度を考量し、その程度が大きくない限りは、国会議員の免責特権の趣旨から、地方議会においても、議会または議長の告訴・告発を訴訟条件とすべきである、とする考え方もあるわ。

ただ判例は、そのような積極的な考え方はとっていないってことね。
ちょっと、この判例は知りませんでした。
そうなんだ。
それじゃ、より有意義な判例紹介になったわね。
私も嬉しいわ。

それじゃ気分もいいし、もう一つ判例紹介しちゃおうかしら。
コッチは、紹介不要かなって思っていたんだけれど、まぁノリよね、ノリ。
・・・なんという、ありがたくないノリだお。
まさに悪ノリ。
ノリの一言で済まされるレベルじゃねぇって思うお。
あんたのノリこそ、毎度毎度「悪ノリ」そのものじゃないのよ!
たまには、ナカちゃんや、妹のチイちゃんを見習って、もっと前向きに参加する姿勢を見せたら、どうなのよ!

えーっと、紹介する判例
最判昭和59年5月17日にしようと思うわ。
百選U 156事件
   あ、ソレは私も知っていますね。
そうよね。
地方議会における議員定数の不均衡が争われた事案よね。
へぇー。
「一票の格差」問題の、地方自治体ver.ってことかぁ。
また変な名前つけて。
まぁでも、そういうことね。

議員定数不均衡の問題については、以前の勉強会( 権力分立B勉強会参照)で学んだわよね。
あのとき検討した判例最大判昭和51年4月14日 百選U153事件)では、

投票価値の平等
  ↓
 立法裁量
  ↓
 合理的期間
  ↓
事情判決の法理


という判断枠組みの流れをとっていたわよね。

この理解を前提に、本判決を見てみましょうか。
  こくこく(相づち)。
最高裁判決文は、次のものね。

公選法15条7項各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。と規定しており、地方公共団体の議会は、定数配分規定を定めるに当たり、同項ただし書の規定を適用し、人口比例により算出される数に地域間の均衡を考慮した修正を加えて選挙区別の定数を決定する裁量権を有することが明らかである(なお、同法266条2項は、都の議会の議員の定数配分に関する特例を定めたものであるが、同法15条7項ただし書の規定が存しなかつた当時に設けられた規定であつて、同ただし書の規定以上に広範な裁量権を都の議会に付与するものではない。)。

 そして、いかなる事情の存するときに右の修正を加えるべきか、また、どの程度の修正を加えるべきかについて客観的基準が存するものでもないので、定数配分規定が公選法15条7項の規定に適合するかどうかについては、地方公共団体の議会の具体的に定めるところがその裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによつて決するほかはない

 しかしながら、地方公共団体の議会の議員の選挙に関し、当該地方公共団体の住民が選挙権行使の資格において平等に取り扱われるべきであるにとどまらず、その選挙権の内容、すなわち投票価値においても平等に取り扱われるべきであることは、憲法の要求するところであると解すべきであり、このことは当裁判所の判例(前掲昭和五一年四月一四日大法廷判決)の趣旨とするところである。


ここで引用されている判例については、以前の勉強会で検討済みなので、疑問に思うのなら、この機会に戻って復習しておくといいと思うわ。

そして、公選法15条7項は、憲法の右要請を受け、地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求していることが明らかである。
 したがつて、定数配分規定の制定又はその改正により具体的に決定された定数配分の下における選挙人の投票の有する価値に不平等が存し、あるいは、その後の人口の変動により右不平等が生じ、それが地方公共団体の議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしんしやくしてもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、右のような不平等は、もはや地方公共団体の議会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され、これを正当化すべき特別の理由が示されない限り、
公選法15条7項違反と判断されざるを得ないものというべきである。

 もつとも、制定又は改正の当時適法であつた定数配分規定の下における選挙区間の議員一人当たりの人口の較差が、その後の人口の変動によつて拡大し、
公選法15条7項の選挙権の平等の要求に反する程度に至つた場合には、そのことによつて直ちに当該定数配分規定の同項違反までもたらすものと解すべきではなく、人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が同項の規定上要求されているにもかかわらずそれが行われないときに、初めて当該定数配分規定が同項の規定に違反するものと断定すべきである

そして、較差の有無について丁寧な検討をした後、次のように続くのね。

選挙区間における本件選挙当時の右較差は本件条例制定の前後を通じた人口の変動の結果にほかならないが、前記のとおり、選挙区の人口と配分された定数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準とされる地方公共団体の議会の議員の選挙の制度において、右較差が示す選挙区間における投票価値の不平等は、地方公共団体の議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしんしやくしてもなお、一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたというべきであり、これを正当化する特別の理由がない限り、選挙区間における本件選挙当時の右投票価値の較差は、公選法15条7項の選挙権の平等の要求に反する程度に至つていたものというべきである

 そして、都心部においては昼間人口が夜間常住人口の数倍ないし十数倍に達し、それだけ行政需要が大きいことや、各選挙区における過去の定数の状況を考慮しても、右の較差を是認することはできず、他に、本件選挙当時存した選挙区間における投票価値の不平等を正当化すべき特別の理由を見いだすことはできない

 また、本件配分規定の下における選挙区間の投票価値の較差は遅くとも昭和45年10月実施の国勢調査の結果が判明した時点において既に
公選法15条7項の選挙権の平等の要求に反する程度に至つていたものというべく、右較差が将来更に拡大するであろうことは東京都における人口変動の経緯に照らし容易に推測することができたにもかかわらず、東京都議会は極く部分的な改正に終始し、右較差を長期間にわたり放置したものというべく、同項の規定上要求される合理的期間内における是正をしなかつたものであり、本件配分規定は、本件選挙当時、同項の規定に違反するものであつたと断定せざるを得ない
なっげぇーーーっ!!
  はいはい。
いつものリアクションを、ありがとうね。

本判決からワカルように、地方議会の議員定数配分の適法性についても、国政選挙における議員定数不均衡の問題とパラレルに捉えることができるといえるわ。

投票価値の平等の重要性を前提として、
投票価値の平等
  ↓
 立法裁量
  ↓
 合理的期間
  ↓
事情判決の法理

という判断枠組みの流れよね。

そして、本件では、この合理的期間を既に徒過していることから、投票価値の不平等の合理性を否定しているわけね。
・・・ってか、地方議会の議員定数問題も、国政選挙の議員定数問題と同じよ、の一言で済ませてくれれば、ええやないの。
なんで、こんな長い判決文を、わざわざ読ませるんだお。
言っておくけど、この判例百選掲載判例だからね!
重要判例は、最低でも一通り目を通しておくべきだと思えばこその紹介でしょ!!
ふ、ふ、藤さんは、この判例は勿論、熟知されてみえると思いますよ?
だからこその御発言だと思いますし。
ま・・・まっ、まぁ、熟知しているかどうかは、さておき。
判例百選もアレだよね。
「百」って数字を挙げておきながら、実際は、百に収まっていないんだから、コレはもう立派なタイトル詐欺だよね。
タイトル詐欺っていうなら、このサイトのタイトルこそ、タイトル詐欺じゃないのよ!!
サル」の「法律勉強奮闘記」って・・・あんたが、いつ法律勉強に奮闘したっていうのよ!!
  ですです!
まったくです!!
メ、メタは駄目ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!

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