国会議員の特権@ 不逮捕特権 歳費請求権 | ||
さぁ、今日からは国会議員の地位について学ぶわね! 今回と次回とで2回に分けて、国会議員の有する特権について学ぶことにするわ。 先に特権の内容を伝えておくと、 @不逮捕特権 A免責特権 B歳費請求権 の3つなんだけど。 今回は、この特権から@不逮捕特権とB歳費請求権について学ぶことにするわ。 A免責特権は、次回ってことにするわね。 |
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うーん、なんかやる前から、こんなこと言うのもアレなんだけど、国会議員に、そんな特権なんかいるのかなぁ? あたしとしては、そんなものいらなくない? っていうのが本音なんだけどさぁ。 |
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まぁ、昨今の感覚からすると、そういう気持ちもワカルわね。 ただ、今回と次回で学ぶ国会議員の特権というのは、議院の自律権を確保・保護するために、歴史的に勝ち取った権利なのよね。 このような特権を認めないと、行政の恣意的な介入を認めることになってしまって、全国民を代表する国会議員の活動が妨げられることになる、おそれが生じるからなのよね。 |
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ふぅ〜ん。 そんなものなのかなぁ? |
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今の感覚的には、サルが言うように、いらなくないって思う気持ちは、私もワカルけどね。 ただ、国会議員は、憲法上、全国民を代表する地位にある(憲法43条1項)以上、その活動を保護するためには、様々な特権が認められることも必要だとは思うわ。 それじゃ、早速ひとつずつ見ていきましょうか。 まずは、@不逮捕特権。 六法で、憲法50条を見てくれる? |
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憲法第50条。 『第50条 【議員の不逮捕特権】 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。』 |
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そうね。 因みに、ここにいう『会期』とは、国会の開会中ということを意味するわ。 したがって、会期外(閉会中)には、この特権は認められないことになるわけね。 それともう1つ。 ここにいう『逮捕』とは、憲法33条にいう『逮捕』とは異なり、ひろく公権力によって身体の自由を拘束することを意味するものと解されているわね。 ただし、訴追は可能なんだけど、この論点を扱った判例については、次回のA免責特権のところで見ることにするわね。 |
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えっ!? あ・・・私、藤さんから、今日は国会議員の特権について勉強会をされるって聞いて、それなら百選掲載の判例もあることですし、来てもいいよねって思って参加しに来たんですけど・・・。 |
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あら。 つかさちゃん、いらっしゃい。 別に、そこまで気にしなくってもいいじゃない。 判例検討しないからって参加できないってわけじゃないし。 |
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・・・。 (嘘ばっかりぃ〜。 判例検討しないときは、基礎的な話しかないからって、参加させてくれていないくせにぃ〜。) |
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あれ? やっぱり判例検討がないのは、つかさちゃん的には不満? じゃあ、後から判例検討を入れるようにするわね。 この不逮捕特権は、行政府による不当な逮捕から、議員の自由な活動を保障し、これにより議院の自主的な活動を確保することを目的としているの。 ちなみに、逮捕の許諾請求は内閣が行うものとされているわ(国会法34条)。 そして、議院が許諾を与える際の判断基準については、この特権の目的を議員の活動の自由の保障とみるか、議院の活動の確保とみるかで分かれることになるの。 議員の活動の自由の保障とみる考え方が、議員の身体的自由保障説。 議院の活動の確保とみる考え方が、議院の活動確保説ね。 あ、「議員」と「議院」との区別は、しっかりしておいてね。 私も話していて、混同しないように気をつけているところだからね。 前者の考え方では、逮捕の理由が正当なものであれば許諾を与えなければならないと解されるわ。 これに対して、後者の考え方では、当該議員の逮捕が議院の活動に支障を及ぼすか否かによって判断されることになるわけ。 |
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こくこく(相槌) | ||
そして、この逮捕請求を認める場合に、議院は条件または期限をつけることができるか? という論点があるの。 この問題に対しては、 積極説 と 消極説 とがあるわ。 積極説によれば、逮捕許諾の請求に対して、議院が、その許諾を全体として拒否することが出来る以上、これに条件や期限を付すことも可能である、と考えられるわ。 この積極説の考え方は、さっき説明した議院の活動確保説と親和的よね。 消極説によれば、議院が逮捕請求に対して許諾を与える以上、その後の措置は、すべて刑事訴訟法の規定に従って検察庁ないし裁判所の判断に委ねるべきである、とされるわね。 この消極説の考え方は、議員の身体的自由保障説と親和的といえるわよね。 「親和的」っていう、少し弱い表現をとっているのは、必ずしも、それぞれの考え方と対応しているわけじゃないからなんだけど、まぁ、言い出しちゃうと難しくって細かい話になるから、そういうことで。 それじゃ、判例はこの問題をどのように捉えているのか? ということから、判例検討って流れでいいかしら? |
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あ、なにか判例検討を、せっついているみたいで、すみません。 | ||
・・・。 (まったくだお! どうせ、この眼鏡、検討判例既に知っているんだから、勉強増やすようなことせんで欲しいお。) |
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・・・。 (ダメだ、こいつ。 なんとかしないと・・・です。) |
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今から検討する判例は、不逮捕特権について述べている唯一の決定なのね。そういう意味では、要チェックの事件といえるわ。 少し、事件の再現がし辛い事案だから、事案については口頭での説明ってことにさせて貰うわね。 検討判例は、百選U 174事件ね。 (東京地裁昭和29年3月6日決定) 事案は次の流れなんだけど。 検察官Aが、国会開会中に、ある衆議院議員に対して、贈賄の被疑事実があるという理由から、東京簡裁に逮捕状を請求したわけ。 この請求を受けて、同裁判所は内閣に対して、逮捕許諾の要求書を提出したわ。 この要求を受けて、内閣は衆議院に対し付議。これを受けて、衆議院は、その衆議院議員に対する逮捕許諾を議決、内閣に通知したわ。 ところが、この逮捕許諾の議決には、逮捕勾留を3月3日までとする期限が付されていたわけね。 ともあれ、逮捕許諾自体は出たわけだから、裁判所は逮捕状を発して、この逮捕状執行により、その衆議院議員は逮捕されたわ。 逮捕された衆議院議員の勾留について、検察官は裁判所に勾留状を求め、裁判所はこれを発したんだけど、この勾留状には、3月3日まで、という期限が付されていなかったわけ。 期限がなかったので、その逮捕された衆議院議員は、3月7日まで東京拘置所に拘禁されることになったわ。 そこで、この衆議院議員は、期限付き許諾だったのに、期限を付さずになした、この勾留は議員の不逮捕特権を侵すものであり不法であるとして、訴えた・・・という事件なの。 |
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ある衆議院議員・・・って、しといてリンク張ったら意味ない気が激しくするんだけど。 | ||
贈賄するような国会議員には、文句言う資格がないです! | ||
そうよね。 賄賂するような政治家は許せないもんね! あ、脱線しちゃいそうだから、先にこの事案の争点をまとめるわね。 今日の勉強会のテーマは、国会議員の特権よね。 この特権のうち不逮捕特権について考えて欲しいわ。 つまり、この事案の争点は 逮捕請求を認める場合に、議院は、条件または期限をつけることができるか? ということよね。 それじゃ、本決定はどのような判断をしているのか見てみましょうか。 |
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あ・・・事案の再現がなかったので、私が決定要旨を読み上げてもいいでしょうか? せっかく来たんですし、いいですよね? |
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勿論よ。 じゃあ、つかさちゃんお願いね。 |
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はい! 本決定では、 『よつて衆議院の逮捕期間を制限してなした逮捕許諾が法律上有効なりや否やについて検討する。』 として、次のように述べていますね。 『憲法第50条が両議院の議員は法律の定める場合を除いて国会の会期中逮捕されないことを規定し、国会法第33条が各議院の議員は除外における現行犯の場合を除いては会期中その院の許諾がなければ逮捕されないことを保障している所以のものは、国の立法機関である国会の使命の重大である点を考慮して、現に国会の審議に当つている議院の職務を尊重し、議員に犯罪の嫌疑がある場合においても苟も犯罪捜査権或は司法権の行使を誤り又はこれを濫用して国会議員の職務の遂行を不当に阻止妨害することのないよう、院外における現行犯罪等逮捕の適法性及び必要性の明確な場合を除いて各議院自らに所属議員に対する逮捕の適法性及び必要性を判断する権能を与へたものと解しなければならない。 逮捕が適法にしてその必要性の明白な場合においても尚国会議員なるの故をもつて適正なる犯罪捜査権或は司法権行使を制限し得るものではない。 このことは院外における現行犯罪の場合には議院の許諾なくして逮捕し得るものとしていることによつて明瞭である。 かくの如く議院の逮捕許諾権は議員に対する逮捕の適法性及び必要性を判断して不当不必要な逮捕を拒否し得る権能であるから、議員に対しては一般の犯罪被疑者を逮捕する場合よりも特に国政審議の重要性の考慮からより高度の必要性を要求することもあり得るから、このような場合には尚これを不必要な逮捕として許諾を拒否することも肯認し得るけれども、荀も右の観点において適法にして且必要な逮捕と認める限り無条件にこれを許諾しなければならない。 随つて議員の逮捕を許諾する限り右逮捕の正当性を承認するものであつて逮捕を許諾しながらその期間を制限するが如きは逮捕許諾権の本質を無視した不法な措置と謂はなければならない。 正当な逮捕であることを承認する場合においても尚国会審議の重要性に鑑みて逮捕期間の制限を容認し得るならば、院外における現行犯罪の場合においても尚同様の理由によつてその逮捕を拒否し又はこれに制限を加へてもよい訳であるが法律はこれを認めないのである。以上の理由により逮捕を許諾しながらその逮捕の期間を制限することは違法である。 申立人は議院は議員の逮捕を許諾するも将又これを拒否するもその裁量に基く専権であるから、これを許諾する場合に逮捕の期間を制限することは部分的許諾として当然なし得られ有効であると主張するのであるが、逮捕許諾権はそのように恣意的に行使し得るものではない。 憲法第50条及び国会法第33条等にいわゆる逮捕は刑事訴訟法所定の被疑者乃至被告人の逮捕勾引勾留等を汎称するものであるが、これらの逮捕、勾引、勾留がすべて憲法及び法律の規定に基いて執行されなければならないことは多言を要しない。 法定の期間を超えてこれを勾留することは固より、恣に法定期間を短縮して拘禁を解くことも許されないのである。 固より立法機関である国会が法律をもつて勾留の期間を変更することは可能であるけれども、特定の議員を勾留する場合に法律の規定を無視してその勾留期間を変更制限することはできない。 即ち逮捕許諾権は逮捕を許諾するか或はこれを拒否するかそのいずれかを決定すべき権能であつて、逮捕勾引勾留等に関する憲法及び法律の諸規定を無視してこれを執行すべきことを要求する権能ではないのである。 申立人主張の如く憲法が刑事訴訟法に優位するものであることは云うまでもないが,そのことから直ちに憲法所定の議院の逮捕許諾権が刑事訴訟法の規定を無視した法的措置を要求し得る権能であると速断することはできない。 議院の逮捕許諾があつてはじめて刑事訴訟法所定の逮捕が可能となるのであるから、逮捕許諾権は刑事訴訟法に優位する権能であると考へることも誤りである。 議院の逮捕許諾権は憲法及び法律に定める手続によつて逮捕することを許諾するか否かを決定する権能であつて、憲法及び法律に定める逮捕以外の方法により逮捕を許諾し又はこれを要求する権能ではない。 本件衆議院議員の逮捕許諾においてその逮捕期間を制限した点は逮捕許諾権の本質を誤り刑事訴訟法を無視した法的措置を要求するものであつて無効である。 従つて何等制限を附せず刑事訴訟法の規定に準拠してなした本件勾留の裁判は正当であり、これと反対の見解に立ち右裁判の取消を求める本件申立は理由がないから刑事訴訟法第432条第426条第1項によつて主文のとおり決定する。』 と述べていますね。 |
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な、な、ながいよっ!! ・・・3行でヨロシク。 |
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え? さ、さ、3行ですか? 会期中の議員に対する逮捕許諾については 国政審議の重要性を考慮しても尚、許諾する以上は 議院は、条件または期限をつけることができない。 ということになるのではないかと。 |
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つかさちゃんも、サルの無茶ぶりに付き合わなくっていいのに。 でも、まぁそういうことよね。 本判決は、国政審議の重要性については、逮捕の必要性の中で考慮すべきとしていて、その考慮を経て、逮捕を必要と認めた以上は、期限をつけることはできない、っていっているわけよね。 |
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ほむほむ。 短くてワカリやすい。 最初っから、そうしろとマヂレス。 |
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事案説明もなしに話しても、判例の射程がわからないじゃないのよ。 大体、あんた文句ばっかり言ってないで、そろそろ判決文読むのにも慣れるべきなんじゃないの? えーっと、それじゃ、国会議員の特権のうち@不逮捕特権については、このあたりにして。 もう1つやるって言っていたB歳費請求権についてね。 六法で、憲法49条を見てくれる? |
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憲法第49条。 『第49条 【議員の歳費】 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。』 |
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ナカちゃん、ありがとうね。 今、ナカちゃんが読んでくれた憲法49条、そして、憲法49条に基づき定められた国会法35条から、議員の特権の一つである歳費請求権が認められているわ。 この歳費の性質については、生活保障ではなく、職務遂行上要する出費の弁償としての性質をもつものであるとする捉え方もあるけれど、議員の職務が専業化している現在においては、議員の勤務に対する報酬としての性質をもつものという理解が一般的といえるわね。 このように解すると、歳費請求権は財産的な請求ということになるわね。 |
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ぶっちゃけ国会議員は、どれくらい金もらってんだお? | ||
それ、憲法の勉強と、なんの関係もないじゃないのよ。 まぁ、ザックリでいいのなら・・・ まずは議員歳費があるわよね。そこにさらに、ボーナスもあるし。 ここに、文書通信交通滞在費や、秘書給与も税金から支払われているわよね。 その他にも、ホテル並の施設といわれる議員宿舎は、周辺相場よりも格段に安いという特典を付与されているし、交通機関を利用した際にも便宜が図られているわね。 まぁ興味があるなら、ネットで調べてみるといいんじゃない? |
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お金ってあるところには、あるんだなぁ。 あたしの財布には、今日も300円しかないっていうのに。 |
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よかったら、今日の夕ご飯、なにかおごるわよ? | ||
マヂでっ!? うほほほぉぉぉーいっ! じゃあね、お寿司っ! お寿司が食べたいっ!! |
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よかったですね。 藤先輩。 |
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みんな揃っているんだし、どうせなら、みんなで行きましょうよ。 今日は、私が出すからお金の心配はしなくっていいから! |
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わ、私もいいんですか? | ||
うんうん。 せっかく、つかさちゃんもいるんだから一緒に来て欲しいな。 |
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早く行こうっ! 早く行こうっ!! 気が変わらないうちに早く行こうっ! |
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明智先輩、ありがとうございます。 | ||
これこれ。 チビっ子や。 今日のお寿司が食べられるのは、ひとえにあたしのお陰だお? 感謝するんだお? |
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は・・・はい・・・。 (御馳走して下さるのは、明智先輩なのに、どうして藤先輩が感謝を求めてこられるのかワカラナイです。) |