権力分立、政党 | ||
憲法のトップページの構成でもワカルと思うけど、憲法には大きく2つの分野があるのよね。 ソレは、「人権」の領域と、「統治機構」の領域なの。 ココからは、「統治機構」の領域について勉強することにするわね。 憲法の目的とは、自由の保障にあるって言ったわよね。 「人権」の領域では、その保障すべき自由の内容としての「人権」を学び、「統治機構」の領域では、その人権保障達成の手段を学ぶ、っていう位置づけで捉えてくれればいいわ。 じゃあ、今日は最初だし、まずは簡単な質問! 権力分立において、その国家の諸作用の性質に応じて「区別」、「分離」される三権はナニ?。 |
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立法、行政、司法っ! | ||
うんうん。 三権分立って言葉は、学校でも習ったもんね。 三権分立の意義は 『国家の諸作用の性質に応じて、立法・行政・司法というように『区別』し、それを異なる機関に担当させるよう『分離』し、相互に『抑制と均衡』を保たせる制度であり、そのねらいは、国民の権利・自由を守ることにある』 と説かれるわ。 (芦部信喜『憲法』第5版 岩波書店 277頁) この権力分立の背景には、国民の自由を確保するという自由主義的世界観があるの。 そして、憲法との関係においては、国がなるべく関与しないという消極的国家観と、権力を持つと人はその権力によって暴走するため、権力を持つ側に対しては懐疑的になるという懐疑的人間観が、この権力分立という原理を規定しているとされるわ。 |
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懐疑的人間観・・・って、なんかワカルね。 あたしも小さいころガキ大将してたし、やっぱり人は、そういうとこあるんだよね〜 |
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そうよね・・・。 なんか、あんた「人は・・・」とか言って、一般論化しようとしてるけど、あの頃、よくイジメられてた私としては 、ナニ昔話で済まそうとしてんのよ・・・って気持ちはあるんだけどね。 |
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でも懐かしいよね・・・ 一緒に川に行ったり、山菜摘みに行ったりしたもんねぇ。 |
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そうね・・・ 背中に釣った魚入れられたり、ヘビ投げつけられたりしたわね・・・ |
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・・・。 一緒にお弁当食べたり、縁日の屋台廻ったりしたよね・・・ |
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そうね・・・ お弁当のオカズ取り上げられたり、スーパーボールぶつけられたりしたわね・・・ |
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・・・え? そんなことまで? 流石に作ってるよね? 嘘だと言ってよ、バーニー!! |
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バーニーって誰よ? 言っとくけど、あんたが忘れてもヤられた私は忘れてないからね! |
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な、な、なんか今更だけど、謝るよ・・・ ゴメンね、光ちゃん・・・ |
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ううん。 別に怒ってるわけじゃないのよ? 私も今となってはいい思い出だと思ってるし・・・ |
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マヂで? 逆だったら、あたし絶対許さないけどね! 100パーお返しするけどね!! |
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・・・。 (なんだかんだ言っても、あの頃の私の唯一の友達は、あんただけだったもん・・・お母様が亡くなって、お婆様の実家の広島の片田舎に来て、遊び相手も居なかった私を、行ったこともない山や川や、お祭りに誘ってくれて・・・あの夏休みは本当に楽しかったよ・・・サル・・・) |
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・・・。 (ヤバいよ・・・ なんか復讐の策でも練ってる顔してるよ・・・ なんで、そんなことまで覚えてるんだよ・・・) |
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あ・・・ ちょっと思い出話で脇道それちゃってたね。 権力分立の類型には、アメリカ型とフランス型があるの。 三権を憲法の下で同格とものとみる三権対等型のものがアメリカ型。 これに対して、議会を中心とする立法権優位型のフランス型。 日本は、国会を最高機関と位置づけ、内閣が国会に対して連帯して責任を負うという議院内閣制をとりながらも、裁判所の違憲審査権を認めていることから、どちらかと言うとアメリカ型に近い考えをとっていると言われているわね。 |
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ひ、ひ、光ちゃんは教え方が上手いなぁ。 持つべきものは、やっぱり友達だなぁ。 |
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ん? どうしたの急に? 次は政党について理解することにするわね。 政党の定義については、択一でもよく聞かれるから、しっかり抑えておいてね。 政党とは、一定の政治理念に基づいて結成され、自ら国民的利益と信じるところを綱領・規約によって明示し、政権の獲得を目指す政治組織、と定義づけられるわ。 |
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政治の話かぁ。 あたし、賢い光ちゃんの話に、ついていけるかなぁ・・・ |
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大丈夫、大丈夫。 別に政治の話をするわけじゃないから。 あくまでも、憲法の下における政党や選挙権について学ぶんだから。 ここで、政党の定義について述べている判例があるから見ておきましょ。 1つ目は、「法人の人権享有主体性」という論点で学ぶ超重要判例の、八幡製鉄事件(最判昭和45年6月24日 百選T 9事件)。 この判例では、『政党は議会民主主義を支える不可欠の要素なのである。そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体』であると定義しているわ。 この判例は、後に詳しく検討するつもりだから、今は、この政党の定義だけ抑えておいてくれればいいからね。 2つ目は、「部分社会の法理」で扱う重要判例なんだけど、共産党袴田事件(最判昭和63年12月20日 百選U 189事件)ね。 この判例では、『政党は、政治上の信条、意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって、内部的には、通常、自律的規範を有し、その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり、一定の統制を施すなどの自治権能を有するものであり、国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であって、議会制民主主義を支える上においてきわめて重要な存在であるということができる』と定義しているわ。 ドチラかと言うと、政党の定義としては、後者の方が有名ね。 |
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いやぁ、光ちゃんは判例にも詳しいなぁ。 あたしは、ホントいい友達がいて幸せ者だなぁ。 |
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もうっ! ナニ、さっきから言ってるのよ!! そ、そ、そんなのいいから、真面目に聞いてよね。 この政党の憲法上の根拠は、憲法21条1項の「結社の自由」に求められるわ。 憲法21条1項を六法でひいてくれる? |
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憲法21条1項ね。 うわーい、光ちゃんと一緒に勉強できて楽しいなぁ。 『憲法21条【集会・結社・表現の自由】 1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。』 あ! 結社って聞くと、秘密結社ショッカーを思い出すよね? |
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知らないし。・・・別に知りたくもないけど。 さっき紹介した八幡製鉄事件では、政党について、次のように述べているのよね。 『憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えていないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべき』としているわ。 憲法に政党の定めはなく、また、それ故、憲法上の特別な地位も定められていないわけよね。 それにもかかわらず、憲法は政党の存在を予定しており、現実問題として政党の存在なくして議会制民主主義の円滑な運用は果たせないとしているわよね。 そこで、このような政党に対して、どのような法規制を図るべきか・・・ということが問題となるの。 |
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頭のいい光ちゃんなら、その答えも即座に出てきちゃうんだよね? スゴイ、すご過ぎるよ、光ちゃん! |
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ちょっとサルっ! やめてよね!? 私が、こんな問題に答えられるわけないでしょ? この問題に対して、どのように考えるかは、最高裁判例を検討して理解するのよ! それじゃ、まずは判例見ちゃいましょうか。 共産党袴田事件ね。 (最判昭和63年12月20日 百選U 189事件) |
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難しい判例だったなぁ。 いやぁ、参った。参った。 光ちゃんいなかったら、ホントどうしようもなかったなぁ。 |
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ナニよ! ナカちゃんに全部聞いたくせに! もうっ! 政党に対する法規制という論点では、もう一つ重要判例あるから、ソッチも見ないとね。 日本新党繰上当選事件ね。 (最判平成7年5月25日 百選U 160事件) |
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タ、タ、タンマっ! 判例検討はストップ、ストップ! |
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ん? なんで? この判例は、要検討判例よ? |
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優しい光ちゃんに甘えてばかりの自分が恥ずかしくてさぁ。 この判例ぐらいは自分でやっておきたいかなぁって。 (今日は長く居ると、嫌な予感するもん。 昔のこと蒸し返されても嫌だしなぁ・・・) |
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その気持ちは嬉しいけど、遠慮しなくていいのに。 私だって、サルとの勉強は自分自身も勉強になってると思えばこそなんだし。 じゃあ、簡単に事案と判旨だけにしちゃうよ? ホントにいいのね? 日本新党繰上当選事件をまとめるね。 (最判平成7年5月25日 百選U 160事件) 平成4年の参議院議員比例委代表選出選挙において、日本新党の候補者名簿の5位に登載されていた原告は、次点で落選しちゃったの。 その後、この原告は党から除名されたのね。 ところが、その直後に、日本新党の参議院議員に2名の欠員が出ちゃったのよ。そこで、日本新党は名簿順位の6位と7位の方を繰上当選としたわけ。 次点で落選していた原告としては、当然我慢できないわよね。 それで、除名処分の無効を理由に、下位の方の繰上当選の無効を主張して、中央選挙管理会に当選訴訟(公職選挙法208条)を提起したっていう事案なのね。 |
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へぇ。 共産党袴田事件と同じで、除名処分の無効を主張しているんだね。 |
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同じと思う? 違うのよね、ソレが。 共産党袴田事件は、原告は家屋の明渡し請求を受けての除名処分の無効を争ったわよね。この訴訟は、自己の権利・利益が侵害されていることを訴える主観訴訟なの。 他方、日本新党繰上当選事件では、同じ除名処分の無効を争ってはいるけれど、本件は当選訴訟、コレは客観訴訟なのよね。 主観訴訟と客観訴訟については、まだあまり勉強していないけれど、行政法の浦安ヨット事件の際に、少し触れたよね。 |
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ほ、ほ、ほう・・・ (ん? なんか変わるの? ソレで・・・) |
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この両者の論理の違いは極めて重要なところだから、抑えて欲しいところよ! それじゃ、本件の判旨見るわね。 本判決では、公職選挙法の法の趣旨について言及し、その後、先の共産党袴田事件での政党の定義を述べた後、次のように続けているわ。 『このような政党等の結社としての自主性にかんがみると、政党等が組織内の自律的運営として党員等に対してした除名その他の処分の当否については、原則として政党等による自律的な解決にゆだねられているものと解される。』 この考え方は、共産党袴田事件で最高裁が示した立場と同じくするものよね。 『そうであるのに、政党等から名簿登載者の除名届が提出されているにもかかわらず、選挙長ないし選挙会が当選除名が有効に存在しているかどうかを審査すべきものとするならば、必然的に、政党等による組織内の自律的運営に属する事項について、その政党等の意思に反して行政権が介入することにならざるを得ないんであって、政党等に対し高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をすることのできる自由を保障しなければならないという前記の要請に反する事態を招来することになり、相当ではないといわなければならない。』 政党の公的性格と、その内部自律権の尊重から、行政権の介入は抑制すべきであると述べているよね。 『参議院議員等の選挙の当選の効力に関するいわゆる当選訴訟(法208条)は、選挙会等による当選人決定の適否を審理し、これが違法である場合に当該当選人決定を無効とするものであるから、当選人に当選人となる資格がなかったとしてその当選が無効とされるのは、選挙会等の当選人決定の判断に法の諸規定に照らして誤りがあった場合に限られる。選挙会等の判断に誤りがないにもかかわらず、当選訴訟において裁判所がその他の事由を原因として当選を無効とすることは、実定法上の根拠がないのに裁判所が独自の当選無効事由を設定することにほかならず、法の予定するところではないといわなければならない。』 ここでは、立法府の予定していない法について、司法が『独自の当選無効事由を設定すること』は、法の創造であり認められない、と述べているわね。 そして、結論としては 『政党等の内部的自律権をできるだけ尊重すべきものとした立法の趣旨にかんがみれば、当選訴訟において、名簿届出政党等から名簿登載者の除名届が提出されているのに、その除名の存否ないし効力という政党等の内部的自律権に属する事項を審理の対象とすることは、かえって、右立法の趣旨に反することが明らかである』とし、『したがって、名簿届出政党等による名簿登載者の除名が不存在又は無効であることは、除名届が適法にされている限り、当選訴訟における当選無効の原因とはならないものというべきである。』としているわ。 |
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あ、アレなんだね。 判例検討に、わざわざ行かなくっても、あんまり長さ変わらないんだね・・・ |
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一体ナニを期待してたのよ? そんな感想じゃなくって、もっとマシな感想はないの? |
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参議院議員選挙名簿の登載された議員さんがいたからこそ、日本新党に投票した国民だっていると思うのに、それを政党の自律権を尊重するという理由で蔑ろにしている気がします! | ||
あら? ナカちゃんいたんだね。 でも、いい指摘するわね。 たしかに国民主権に反してはいないか、とする批判はあるところよね。 それに、そもそも政党の内部自律権でキッてしまっては、当選訴訟を法が想定したのに、実質的救が図れないのではないか? という批判もありえるわよね。 この日本新党繰上当選事件は、そういう意味では、共産党袴田事件よりも、政党の内部的自律権を広く認めているものと言えるわね。 |
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こくこく(相槌) (藤先輩に捕まったけど、法律の勉強しているのなら帰りたくないです!) |
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政党に対して、どのような法規制を図るべきかという問題に対しては、具体的な法規制として、政治資金規正法や、政党助成法があるわね。 まぁ、ザル法として有名なくらいだから、政党に対する法規制として機能しているのかは、甚だ疑問視されるところではあるんだけど。 政党については、まとめはこれくらいかな? |
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あ・・・ もうオシマイなんですか? |
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まぁ、今日の論点としては、これで大体終わったからね。 ソレに、アッチの方がなんか帰りたそうにしてるし。 |
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あ? 終わった? じゃあ、あたし帰るね。 |
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ねぇ、サル? 今日、この後よかったら昔の思い出話に付き合わない? 私が、『ネージュ・ブロンシュ』(洋菓子店の名前) 奢るから。 |
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っ!! (い、い、行きてぇっ! だが、しかぁ〜し! 今日の流れ、それも話題が昔話というところが怖すぐるっ! 店出たら、光ちゃんとこのSPとかにスモークウィンドウの車に連れ込まれんじゃねぇの?! 執念深い光ちゃんのこと・・・思い出したが運の尽き! 子供の頃の恨みを、ここぞとばかりに晴らされたら、たまったもんじゃないお! ってか、もう時効だろ、常考っ!!!) |
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ん? どうしたの? 行こうよ。 |
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い、い、行かなひ・・・。 (誘ってる、誘ってる・・・ コレ、ガチでヤバいヤツだお・・・。 ヘタしたら店入る前にヌッ殺されるまであるお・・・。 とりあえず、今日さえやり過ごせば、怒りも収まるお。 ってか、どんだけ粘着なんだお。 そりゃ、あたしも光ちゃんの髪の毛長いから面白くって、引っ張りまわしたり、やたら過剰な反応するのが楽しくって、トカゲやクモやゴキブリぶつけたりしたのは思い出したけどさぁ。 子供のやったことじゃない。カワイイもんじゃないの!) |
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そっか・・・ サルも忙しいんだね。 わかった、諦めるね。 ナカちゃん、なんか代わりに・・・みたいな流れで申し訳ないんだけど、一緒に行かない? |
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あ、それじゃ、私、今日の勉強会途中からだったので、質問してもいいですか? | ||
いいよ、いいよ。 |
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それじゃ、一緒に行かせて下さい。 | ||
じゃ、じゃあ。 あたし帰るから! じゃねじゃね!! (スタコラサッサ) |
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うん、じゃあね。 (あぁ〜あ。 せっかくサルとの思い出話で楽しいお茶が飲めるって思ったのに。 サルは、あんまり覚えてないのかなぁ? 私は、今でもあのサルとの夏休みは、一番楽しかった夏休みだったって思ってるのに、なんか寂しいなぁ。) |