最高裁昭和63年12月20日第三小法廷判決 〜共産党袴田事件〜 |
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じゃあ、先に配役を言うね。 この事件は、日本の政党である日本共産党と、同党の党員である幹部との間の事件なの。 私が、日本共産党。 サルが、同党党員幹部。 って配役で始めるわよ。 |
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最近の党の活動は、わしには到底理解できんのじゃ! お前らは間違っとる! 我が党は、かくあるべきなんじゃ! |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
言いたいことあるなら、党の会議で言ってくださいよ! | |
うるさい! わしの主張は、そんなとこじゃ、よぉ言わんわ! マスコミつかって、わしの正しさを伝えちゃる! |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
ちょっと、ちょっと! 意見があるなら、党内で解決するべきでしょ! 党規約の「党内の問題を党外に持ち出さない」という基本原則を幹部のあなたが破るんですか? |
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わしに、あれこれ指図するな! この内部批判の内容は、マスコミ発表するんじゃ! |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
党の幹部自らが、党規約を破るなんて、党員に対して示しがつかないことですよ? 御自分のやってることが分かっているんですか? |
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やかましいわ! もうやってやったわ! |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
なんてことを・・・ 党としては、あなたの今回の行為を調査の上、然るべき対応をとるつもりです! |
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おいっ! ナニが調査じゃ! わしは、そんなものいらんわ。いらんことすんな! |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
規約違反はするわ、その調査にも応じないわでは、あなたの規律違反行為は、党籍剥奪処分にする他ないですね。 | |
おう!清々するわ。 わしは、これからも党内部の問題についてマスコミを通じて発表するからな! |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
そうですか。 それじゃ、あなたを除名処分とさせていただきます。、 |
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さてと・・・ それじゃ、こっちの主張は手記にして発表して、こっちは週刊誌にでも・・・ |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
ところで・・・ あなたは、党籍剥奪処分を受けて、我が党を除名になったんですけど、その家にいつまで居座るおつもりなんですか? |
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うん? なにが? |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
いえ、あなたが住んでみえるのは、党所有の物なのですが、党員でもないあなたが、いつまでいるのか、と聞いているのですけど。 | |
ナニをいちゃもんつけとるんじゃ! わしは、家を出ていくつもりはないで? |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
これは、おかしなことを。 党の所有する物件に、どうして党員でもないあなたが、居座れる道理があるんですか? 家屋の明渡しを求めます! |
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いや、そもそも除名処分自体が党規約に反し、手続き的にも問題があったような・・・ だから、その除名処分を前提とする家屋明渡請求なんて認められんのじゃ・・・ |
日本共産党幹部 |
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日本共産党 |
党規約は、あなたも御存知だったのに今更ですか。 まぁ、家を出て行かないというのなら、訴えさせて頂きますけどね! |
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はい。お疲れさまぁ。 ここまでが事案の整理になるわね。 サルは、やってみてどうだった? |
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うーん、ちょっとあたしの方に無理があるかなぁ。 党員でもないのに、党の家屋に居座るってのは厳しいかなぁ。 |
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だから、そもそも除名処分自体が無効だって主張しているわけでしょ? 除名処分が無効なら、党籍はあることとなるんだから、家屋明渡請求に応じることはなくなるからね。 |
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あ、それで除名処分の無効を訴えてたのか。 やってて、なんで今更ソコを訴えてんだろ? って思ってたよ。 |
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ちょっと! 事案整理してんだから、自分の配役の主張くらいは理解してよね? それじゃ、この事案のポイントをまとめるわね。 サルの主張に対して、日本共産党は次のように主張したの。 除名処分の適否は政党の内部自律権に委ねられるべきもので、司法審査の対象とはならない。 仮に、その対象となるとしても、審査対象は党規約の手続き上の問題の有無についてであると。そして、本件除名処分には、その手続き上の問題はなかったとするものよ。 両者の主張から、本件の争点は次のものになるわね。 除名処分という日本共産党の内部審査に、果たして裁判所の審判権は及ぶのか? 及ぶとするのであれば、どのような審査が妥当な審査と言えるか? そして、本件で争われている除名処分は、有効なものと言えるか? よね。 |
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ぐわっ! 難しいっ!! |
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政党の内部自律権と、その自律的に定めた規約の有効性をどのように考えるか・・・って問題ね。 因みに、この判決は、政党内部の処分に対する司法審査について言及した初の最高裁判決だから、そういう意味でも重要判例なのよ。 |
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うーーん。 ちょっと考えてもワカラナイから判決見ちゃおうよ。 |
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少しは考えて欲しいんだけどなぁ。 最高裁は、次のように判旨しているわ。 (※ 段落ちは、管理人編集) (※ 赤太文字算数字は、管理人挿入) 『1.政党は、政治上の信条、意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であつて、内部的には、通常、自律的規範を有し、その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり、一定の統制を施すなどの自治権能を有するものであり、国民がその政治的意思を国政に反映させ実現させるための最も有効な媒体であつて、議会制民主主義を支える上においてきわめて重要な存在であるということができる。 2.したがつて、各人に対して、政党を結成し、又は政党に加入し、若しくはそれから脱退する自由を保障するとともに、政党に対しては、高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなしうる自由を保障しなければならない。 3.他方、右のような政党の性質、目的からすると、自由な意思によつて政党を結成し、あるいはそれに加入した以上、党員が政党の存立及び組織の秩序維持のために、自己の権利や自由に一定の制約を受けることがあることもまた当然である。 4.右のような政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、したがつて、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であつても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則つてされたか否かによつて決すべきであり、その審理も右の点に限られるものといわなければならない。 5.本件記録によれば、被上告人は前記説示に係る政党に当たるということができ、本訴請求は、要するに、被上告人と上告人との間で、上告人が党幹部としての地位を有することを前提として、その任務の遂行を保障する目的で上告人に党施設としての本件建物を使用収益させることを内容とする契約が締結されたが、上告人が被上告人から除名されたことを理由として、本件建物の明渡及び賃料相当損害金の支払を求めるものであるところ、右請求が司法審査の対象になることはいうまでもないが、他方、右請求の原因としての除名処分は、本来、政党の内部規律の問題としてその自治的措置に委ねられるべきものであるから、その当否については、適正な手続を履践したか否かの観点から審理判断されなければならない。 6.そして、所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、右事実関係によれば、被上告人は、自律的規範として党規約を有し、本件除名処分は右規約に則つてされたものということができ、右規約が公序良俗に反するなどの特段の事情のあることについて主張立証もない本件においては、その手続には何らの違法もないというべきであるから、右除名処分は有効であるといわなければならない。』 それぞれの段落について、まとめるわね。 1.は政党の定義について述べているわね。 これは、さっきも引用紹介したものだから、重複しちゃったけど、判決文において重要な前提となるから、ちょっと割愛できないわよね。 2.3.では、政党の公的性質について述べているわね。 4.が、本判決の肝部分よね! この点については、後で述べている内容について、まとめるわね。 5.は4.を受けての、あてはめ部分ね。 6.は、あてはめ及び結論部分になるわ。 |
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光ちゃん、いいかな? ・・・・なげぇよ! |
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開口一番がソレなの!? もう判例検討したげないわよ? 4.の内容について、まとめるわね。 政党の内部的自律権に属する行為については、本来的には自律的解決に求めるものであるとしているわね。 そして、その上で、次の2つの要件を挙げているわ。 本来的に自律的解決に委ねるべきものとしていることから、一般市民法秩序と直接の関係を有さない内部的な問題にとどまる限りは、裁判所の審判権は及ばない、ということ(1つ目の要件)。 そして、審判権が及ぶような問題であったとしても、政党が自律的に定めた規範が公序良俗に反するようなものでない限りは、手続き的審査に限定されるものである、ということ(2つ目の要件)。 |
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うーん、ってことは、今回の事案にあてはめて考えてみると・・・ あたしは除名処分によって家を追い出される羽目になってんだから、一般市民法秩序と直接の関係あり・・・ってことで、司法審査が及ぶってことになるよね(要件@)。 んで、司法審査が及ぶとしても、日本共産党の自律的規範が公序良俗に反するものじゃないし、適正な手続きに則ってなされたものである以上、適法なので有効(要件A)って結論になるわけかぁ。 |
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ちょっとサルぅ〜。 なになに、すっごい理解できてるじゃないの! 私、驚いちゃったわ!! |
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見直した? | ||
うんうん。 サルはやればデキル子だって思っていたよ! |
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・・・。 | ||
ん? ナカちゃん? なんで、こんなとこ居るの? |
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光ちゃんが、なっがい判例読んでるときに通りかかったから捕まえて、判例の要点を聞いていたんだよ! 流石、ナカたん! 使えるよね! |
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え? じゃあ、さっきのサルの当て嵌めは、ナカちゃんの受け売りなの? |
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当たり前でしょ? あたしが、あんなにスラスラ答えられるわけないじゃん? バカなの? |
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バカはあんたよ! 誰のための勉強なのよ! ナカちゃんも、サルに教えちゃダメじゃないの! |
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うう・・・ ゴメンナサイです・・・。 |
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まぁまぁ。 ナカたんも悪気があってしたことじゃないんだし、許してあげなよ。 |
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・・・・・。 | ||
ん? どったの? お腹でも空いた? |