裁判所の組織と権能E | ||
今日も前回に続いて、最高裁判所についての勉強会、それも司法行政権の後編って位置づけになるわね。 前回は、82条1項を中心にした勉強会だったわけだけど、今日の勉強会では、同条2項を中心に学ぶことにするわね。 それじゃ、まずは六法で、憲法82条を確認してくれる? |
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日本国憲法第82条。 『第82条 【裁判の公開】 1項 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。 2項 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。』 |
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今日は、この82条2項を中心とした勉強になるわ。 憲法82条は、2項で『対審』について『公開しないでこれを行ふことができる』と規定し『公開』の停止についても定めているわ。 この82条2項にいう『公の秩序又は善良の風俗』の意味については、民法90条(民法総則 勉強会27回参照)にいう『公の秩序又は善良の風俗』と同じ意味であると解されていたわけなんだけど、近年、営業の秘密との関係で様々に議論されるようになっているわね。 |
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営業の秘密・・・って、例えばどういうことでしょうか? | ||
うーん・・・。 例えば、秘伝のラーメンの味を盗んだとかが裁判で争われた場合に、その裁判を公開したら、傍聴することで、そのレシピが聞けてまうことになるよね。 しかも、傍聴人がメモをとることも黙認されるわけだしね。 |
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あんた、こういうことには察しがいいわねぇ。 でもまぁ、そういうことよね。 営業の秘密と、公開原則との関係での非公開審理の可能性を広げようとする学説も幾つか展開されているところだからね。 現在では、営業秘密に関する当事者尋問等の公開停止の規定として、特許法105条の7、不正競争防止法13条などが設けられているわね。 まぁ、理由としては、ザックリ言うならサルのイメージの理解でいいと思うわ。 |
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むぅぅぅぅ。 ラーメンの話題なんかされたもんだから、モヤシが山盛りに入ったラーメンが食べたくなってきてもぉたお!! |
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・・・自分から言っておいてソレですか。 とんでもないマッチポンプです。 |
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はーい、木下さんの発言はスルーして、次の論点に行きまぁーす。 次は非訟事件ね。 この非訟事件が、『公開』原則との関係で問題になるわ。 |
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す、すみませんです。 非訟事件って、なんですか? |
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あのね。 非訟事件っていうのは、当事者間の権利義務に関する紛争を前提とせず、紛争の予防のために裁判所が一定の法律関係を形成するという性質の事件をいうんだよ。 非訟事件は、一般に非公開ってところが、公開原則との関係で問題になるってことだよ! |
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成程です! ありがとうです! チイちゃん。 |
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えへへへへへ。 | ||
ここで紹介する判例だけど。 少し難しい判例だから、ここでは、判決文を紹介しておくに留めることにするわ。位置づけとしては、今の段階では、参考判例ってことくらいで。 もう少し、他の法律科目の勉強が進むと、この判例をしっかり読みこむことが出来るので、その際に改めて見ることにしてもいいかな、とは思うわね。 |
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強制調停事件ですか。 (百選U 129事件 最大判昭和35年7月6日) |
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そうね。 民事訴訟法の勉強会をすると、判決文の言っている内容がワカリやすくなると思うんだけど・・・。 |
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うむ・・・確かに、民事訴訟法は、完全に放置の空き地と化している・・・まぁ、誰が悪いわけでもないとは思う、と必死の自己弁護。 | ||
別に、そんなこと言ってないじゃないの。 事案についても省略して、本件の争点だけを先に述べるわね。 本件の争点は、 純然たる訴訟事件について強制調停をすることは違憲ではないか? ということが問題になったの。 |
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純然たる訴訟事件? |
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まぁ、そのあたりは、判決文を紹介しながら、都度説明していくことにするわ。 この問題について、最高裁は次のように述べたわ。 『憲法は一方において、基本的人権として裁判請求権を認め、何人も裁判所に対し裁判を請求して司法権による権利、利益の救済を求めることができることとすると共に、他方において、純然たる訴訟事件の裁判については、前記のごとき公開の原則の下における対審及び判決によるべき旨を定めたのであつて、これにより、近代民主社会における人権の保障が全うされるのである。 従つて、若し性質上純然たる訴訟事件につき、当事者の意思いかんに拘わらず終局的に、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判が、憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び判決によつてなされないとするならば、それは憲法82条に違反すると共に、同32条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものといわねばならない。』 まず、ここでは、今、サルが訊いた『純然たる訴訟事件』とは、どのようなものか、ということについて言及しているわよね。 『純然たる訴訟事件』とは『当事者の意思いかんに拘わらず終局的に、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判』をいうってことになるわ。 裏を返せば、そうではない裁判こそが、非訟事件ってことよね。 そして、ここにいう『純然たる訴訟事件』か否か、ということが、本件では問題になってくるわけ。 そういう意味では、本決定のキーワードは、この『純然たる訴訟事件』という単語と言えるわね。 |
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ワカル・・・ような、ワカラナイような・・・。 | ||
少し間を飛ばして・・・。 『金銭債務臨時調停法7条の調停に代わる裁判は、これに対し即時抗告の途が認められていたにせよ、その裁判が確定した上は、確定判決と同一の効力をもつこととなるのであつて、結局当事者の意思いかんに拘わらず終局的になされる裁判といわざるを得ず、そしてその裁判は、公開の法廷における対審及び判決によつてなされるものではないのである。 よつて、前述した憲法82条、32条の法意に照らし、右金銭債務臨時調停法7条の法意を考えてみるに、同条の調停に代わる裁判は、単に既存の債務関係について、利息、期限等を形成的に変更することに関するもの、即ち性質上非訟事件に関するものに限られ、純然たる訴訟事件につき、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定する裁判のごときは、これに包含されていないものと解するを相当とするのであつて、同法8条が、右の裁判は「非訟事件手続法ニ依リ之ヲ為ス」と規定したのも、その趣旨にほかならない。』 『しかるに、このような本件訴に対し、東京地方裁判所及び東京高等裁判所は、いずれも金銭債務臨時調停法7条による調停に代わる裁判をすることを正当としているのであつて、右各裁判所の判断は、同法に違反するものであるばかりでなく、同時に憲法82条、32条に照らし、違憲たるを免れない』 としているわね。 つまり、本決定では、純然たる訴訟事件について、強制調停をしたことは違憲である、という判断が下っているってことなの。 |
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ここで述べられている最高裁の考え方ですが 82条にいう『裁判』と、32条にいう『裁判』とは、同義であることを肯定した上で、憲法32条が 『基本的人権として裁判請求権を認め、何人も裁判所に対し裁判を請求して司法権による権利、利益の救済を求めることができる』 ものであって 『純然たる訴訟事件』については、 『公開の原則の下における対審及び判決によるべき旨を定めたのであつて、これにより、近代民主社会における人権の保障が全うされるのである』 から、 これに反して、『純然たる訴訟事件』が 『憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び判決によつてなされないとするならば、それは憲法82条に違反すると共に、同32条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却する』 つまり、違憲となる、と言っているわけです。 |
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つかさちゃん、ありがとうね。 まぁ、今の時点では、参考判例ってことにしておくわね。 少しワカラナくても、大丈夫ってことで。 |
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・・・成程。 まぁ「少し」のニュアンスが、人それぞれ違うってことを前提に、OKOKってことにしとくお。 |
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ナニその返し・・・大丈夫なの? | ||
まぁまぁ。 そんなことより、せっかくだから、今日はみんなでラーメンに行こうっ! |
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あ、それなら、コチラのお店なんか、いかがでしょう? 藤さんの大好きなモヤシも山盛りですし、全乗せのボリュームも、コレは納得して頂けるものだと思うのですが。 |
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お、お、オネーちゃんっ!! すっごい美味しそうだよぉ!! |
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つ、つかさちゃん・・・。 なんか、いつもすごくタイミングよく、その手の雑誌持ち出してくれるけど、いつも持ち歩いているの? |
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あ・・・ええ、まぁ・・・。 なんて言うんでしょう・・・エアー観光・・・的な・・・。 まぁお店ですから、エアー食べ歩き・・・的な感じで・・・。 |
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そ、そうなんだ・・・。 私に言ってくれれば、一緒に付き合うから。 つかさちゃんなら、サル達みたいに大食いするってわけでもないし、大騒ぎもしないから、お店は何処でも行けるしね。 |
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そう言われてみれば、藤さんを交えずに、2人で食事に行ったことはないですね。 それじゃ、是非宜しく御願いします。 |
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あ、なんなら一度私の家に遊びに来ちゃう? 私の左馬之助にも、一度会って貰いたいしね! |
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そ、そ、それは願ったりかなったりです!! デ、デジカメを用意しますので、是非是非遊びに行かせて下さいっ!! |
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・・・。 (あ・・・また黒田先輩の頭に、なんか見えるです・・・。) |