刑法 検討会 | ||
光おねーちゃん! 起案の前に、少し一緒に検討して欲しいよぉ。 |
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あら、ヒントは要らないんじゃなかったの? | ||
ヒントじゃないよぉ。 一緒に検討をして欲しいんだよぉ。 |
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・・・ちょっと違いがよくワカラないんだけど。 まぁ、いいわ。 ソレじゃ、ヒントにならないような検討を心掛けるってことで、いいのかしら? |
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うんうん。 | ||
・・・。 (なかなかの無茶ぶりです。 やっぱりチイちゃんは藤先輩の妹ということで・・・ これは血の為せる業ということなのでしょうか。) |
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そうね。 前回の事例問題の際に、私は 「抜き出す行為は2つ」 って言ったわよね。 というのも、甲の実行行為には、過失犯が成立する行為と、故意犯が成立する行為の2つの行為があるからだったのよね。 |
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こくこく(相づち)。 |
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もっとも、問題文において 「ただし、刑法犯に限る」 という但書きがある以上、刑法犯以外の罪責については検討不要ってことになるわけなんだけど。 |
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えーっと、どういうことですか? | ||
つまり、甲の2つの実行行為のうち、過失犯が成立する行為については、刑法ではなくって、特別法で処罰される行為なので、起案においては示す必要がない。 すなわち問題上、検討不要ってことなのね。 丁寧に説明をするなら、問題文における 『甲が、誤って自己の運転するトラックの前部を通行中のA女及びその背負った乳児Bに衝突させ』た行為 については、自動車運転死傷行為処罰法という特別法によって罰されることになるから、その検討は不要っていうことになるわけ。 ちょっと、前回の私の言い方は、誤解を招く言い回しだったので、掲示板でも混乱を招いてしまっていたのよね。 その点については、この場をお借りして御詫びさせて頂くことにしたいわ。 |
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へぇ、そうなんだぁ。 | ||
そうね。 「甲が誤って、運転するトラックを衝突させてしまった行為」 と 「甲が、衝突後、運転する車の下にA女らがいる状態で、時速約30キロで車を走行させた行為」 とは、別個の行為として検討すべきといえるわ。 そういう意味で「抜き出す行為は2つ」って言ったわけなんだけど・・・ ただ、問題の前提に刑法犯に限るという但書きがあるから、前者については起案上は検討不要ってことになるわけ。 |
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成程、成程だよぉ。 | ||
改正前の刑法だったら、自動車運転過失致傷罪(元刑法211条2項)の成立を検討する・・・ってことになったんだけどね。 もっとも、仮にこの罪責を検討するにしたところで、本問の一番の争点は、A女およびBの死亡という結果について、いかに考えるべきか、ということなんだから、ごくごくアッサリの認定になるとは思うけれど。 一応、検討ってことだし、改正前の刑法を前提に示しておくと・・・。 『1.(1)甲は、自身の運転する車をA女に誤って衝突させている。 かかる行為は、自動車運転過失致傷罪(刑法211条2項)の客観的構成要件に該当する行為といえる。 (2)そして、甲は「誤って」トラックをA女に衝突させていることから、過失があったといえる。 (3)よって、甲のA女に対する行為には、自動車運転過失致傷罪が成立する。』 くらいの認定で構わないわ。 (1)が客観的構成要件を、(2)が主観的構成要件を、(3)は結論ってことになるわね。 甲の過失については、問題文上『誤って』とあることから、過失の認定は、そのまま、この文言を引用すれば足りると言えるしね。 また、かなりアッサリになっているのは、ここは大きな論点ではないという理由によるものね。 |
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この議論は、触れなくっていいんだよねぇ? | ||
そうね。 あくまでも検討会ってことでの話だからね。 |
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OKOK! 了解だよぉ。 |
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車を衝突させた行為と、車で引き摺った行為とを区別するのは、車の衝突の時点では、故意がないからよね。 過失行為と、故意行為とは区別して論じるべきだから、という理由よね。 だから、実行行為を抜き出すときにも、その点には注意して欲しいわ。 甲の、どの行為を実行行為として論じるのか、ということね。 例えばだけど・・・。 「衝突させ、さらに車で両者を引き摺った・・・」と、前者と後者とを一連の行為として実行行為と認定するかのような書き方は好ましくないわね。 明確に区別していることを示す意味でも 「衝突後、車で引き摺った」行為 とか、 「車で引き摺った」行為 といったような表現がいいと思うわね。 |
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うんうん、大丈夫だよぉ。 | ||
私も、今の話を聞いて大丈夫なような気がしてきたです。 | ||
起案上において、過失犯の成立を論じることはなくても、実行行為の抜き出しにおいて、キチンと区別していることは示すべきだからね。 正直、今回の起案は掲示板を見ていても、他には、あまり指摘する点は見当たらなかったのよね。 甲の殺意については、みんなも検討してくれたように「未必の故意」を認定して、故意を認めるということでいいと思うわ。 (※ 「未必の故意」については刑法総論勉強会参照) |
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「掲示板」とか「みんな」とか、もうメタメタです。 | ||
チイは、光おねーちゃんがナニを言っているのかワカラナイよぉ。 | ||
A女への殺人罪の成否については、この未必の故意の認定で、後は争いなく成立が認められるところと言えるわね。 問題となるのは、この事例問題の一番の論点ともいえるBについての殺人罪の成否についてになるわ。 つまり、甲は、A女に背負われた状態のBについては、その存在も認識していなかったわけよね。 そうなると、認識していなかった客体(B)に対する故意が問題となるわけね。 |
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認識していた具体的な事実に、甲には錯誤があったわけだよね。 | ||
そうね。 この具体的事実の錯誤の処理については、大きく2つの考え方があるわ。 具体的符合説 と 法定的符合説 の2説ね。 もっとも、サイトの刑法総論の勉強会では、後者の法定的符合説についてしか説明していないんだけどね。 一応、具体的符合説について、ここでザックリ説明しておくと、 具体的符合説によれば、認識した内容と、発生した事実とが具体的に一致していなければ故意は認められない と説かれるわね。 (※ 実際には、ここまで徹底した具体的符合説の見解の学説はなく、客体の錯誤については、重要な事実の錯誤ではないとして、故意犯の成立が認められます。詳しくは御手元の基本書等で勉強して下さい。) 勉強会では、法定的符合説の説明しかしていないのは、この法定的符合説が、学説でも多数説であり、また判例上も、ほぼこの立場での処理がなされているからなのよね。 実際、みんなの起案を見ても、この法定的符合説での処理がなされているみたいだったしね。 |
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みんなの起案? | ||
メタな話だから気にしなくっていいです。 | ||
そうそう。 一つ、ここで伝えておくわね。 刑法に限らず、起案においては、ある特定の考え方で処理しなければならない、ということはないわ。 一貫した論理的整合性がとれているのであれば、自己の見解(支持する考え方)による処理をしても問題ではないわ。 判例の見解ではないから駄目、とか、通説ではないから駄目っていうことはないからね。 (※ 但し、刑法の罪数処理については、判例の先例を重視すべきです) だから、例えば、具体的事実の錯誤について、具体的符合説による処理をすることも問題ではないわ。 ただ、いずれの考え方をとるにせよ、ソレがどのような見解なのか、そして、その見解を何故自分はとるのか、という点については言及する必要はあるわ。 「法定的符合説によれば」 とか 「数故意犯説によれば」 といった大上段からの議論は慎むべきね。 確かに、何れも判例の立場と一致する考え方ではあるわ。 でも、判例がいっているから・・・では論文の説得力に欠けるわけよね。 かくかくしかじかだから法定的符合説を自分はとります、そして、自分で挙げた、その法定的符合説の考え方(規範)に本件事案の事実を当てはめて、結論を述べる、ということ(三段論法)を意識して欲しいわ。 |
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・・・なんだか検討なのに、答えまで聞いちゃった気がするよぉ。 | ||
・・・チイちゃんの最初の振りが、そもそも無茶ブリだったから仕方ないと思うです。 | ||
あら・・・。 で、でも、理解をキチンと起案として示せるのか? ということも非常に重要なことだからね。 私は、あくまでも論点の整理をしただけだから、その整理が起案に出来るのか、ってことはチイちゃんとナカちゃんの頑張り次第ってことよね! |
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そうだよね、そうだよねぇ! | ||
そうそう。 誤解があるといけないから、今更だけど、ここで一言述べておくわね。 起案というのは、人それぞれと言えるわ。 さっきも言ったけれど、論理的一貫性をもって述べられているのか? ということが重要なのであって、いずれの見解によっているから駄目ということはないわ。 刑法では、特に、結果無価値、行為無価値という大きな考え方の対立があるわけだから、いずれの立場をとっているかで答案の結論さえも大きく異なることもあるわけだからね。 だから、そういう意味では、起案においては結論がどうなっているのか、ということも重要視されるものではないわ。 (※ もっとも暴力団の組長と組員の罪責を検討する上において、共謀共同正犯の規範を示しておきながら、組長は無罪という結論は、相場判断的には微妙ということは、先の説明の通りです) あとはそうね・・・。 ある事案の処理において、最高裁判例があるのであれば、先ずは、その見解によるべきといえるけれど、そうではない考え(学説ないしは下級審判決)をとることも問題ないわ。 ただ、最高裁判例がある以上、判例には挨拶をしておく必要はあるわね。 いきなり自説(そうではない考え)を展開しちゃうと アラ? 最高裁判例も知らないの?(不勉強じゃない? とう誤解) って誤解を招きかねないからね。 もっとも、時間は限られているんだから、挨拶はそこまで丁寧なものでなくっても構わないけれどね。 |
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メモメモです! | ||
だから、起案は人それぞれってことになるわけよね。 チイちゃんとナカちゃんによる起案は 『あくまでも、チイちゃんとナカちゃんによる起案』 という意味のものでしかないし、この起案が、全て、正解、という意味では全然ないわ。 一応の論理的一貫性が示されている、ということで、特に直すところがない (※ ソレも、アホの管理人のレベルでの話になるわけですが) という程度のものとして見て欲しいわね。 |
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・・・ひ、光おねーちゃんは、さっきから誰に話しているの? | ||
夏の暑さのせいだお・・・。 あんまり、おかしな人の相手はせんほーがええお。 ささ、夏も残り僅か。 ポケモン探しに行こうじゃまいか。 |
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ふ、藤先輩、なんでココにいるですか? | ||
ん? なんかね、隠れているポケモンが、大学構内におるみたいなんだおね。 うーん・・・コッチやないのかなぁ? |
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隠れているポケモンは、なんなのですか? | ||
気になるのなら『ポケモンGO』を起動させてみれば、ええお。 | ||
・・・(アプリ起動)。 | ||
ふえっ!!! ラッキーです!! ラッキーが近くに隠れているです!! (ラッキー:発見したら小躍りしたくなるようなレアポケモン) |
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というわけだお。 ポケモントレーナーの竹中君! 事は一刻を争う事態だということを認識してくれたようだね! |
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は、はい!! 隊長っ!! |
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コッチにいないとなれば、アッチが怪しいお! オラァァァァ!! ラッキィィィイーーーっ!! 待ってろやぁぁぁっ!! |
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ラッキーがいるのぉ? ・・・・・ラッキーってなぁに? ねぇねぇ、チイも一緒に行くぅ! |
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・・・あのサルぅ。 | ||
・・・藤さんは人一倍元気ですからね。 | ||
アラ、つかさちゃん。 一緒に行かなくっていいの? |
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いえ、藤さんとずっと一緒にいたんですけど、藤さんは、欲しいポケモンが近くにいると、ああして走られるので・・・。 | ||
成程ね。 置いてきぼりになってしまう・・・ってことね。 |
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そうですね。 ただ、藤さんは、私のスマホをお持ちなので、流石に、そのままってわけにもいかなくって、こうしていつもついて行っているんですけど。 |
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ホント迷惑な話よね? つかさちゃんも、嫌なら嫌って言わなきゃ駄目よ! |
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いえ、全然嫌じゃないですよ。 むしろ藤さんと一緒に、お散歩が出来て楽しいって思ってますもの。 ただ、時折ああして走って行かれてしまうので・・・ソレは厳しいなぁとは思っているんですけれど・・・。 |
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つかさちゃん、人がいいんだからぁ。 | ||
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ウキャキャキャキャキャ! やったお、やったお! ラッキーを捕まえたお!! |
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へぇ〜。 コレがラッキーなんだぁ。 可愛いねぇ。 |
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あうあうあうあうあうあうあうあう! 私は逃げられてしまったです!! |
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ナカたん、ナカたん? | ||
ふえっ? | ||
マヂざまぁあぁぁぁぁあぁっ!! | ||
ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・ |