社会観念審査 その審査基準 | ||
前回は、裁量審査の前に、裁量処分ではないという前提に立っての審査方法である実体判断代置型審査について学んだわよね。 今回は、裁量処分であるという前提に立っての審査方法である裁量統制型審査について学ぶわ。 前回の復習になるんだけど、裁量統制審査の裁量の審査方法については @裁量行為の結果に着目して違法性の有無を審査する いわゆる社会観念審査。 A裁量行為を行う判断の過程に着目して審査する いわゆる判断過程審査 B手続審査 という審査方法があるって話はしたわよね。 今日は、この@の社会観念審査について学ぶことにするわね。 |
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あ、その前に、ちょっといい? 判例とかでも、よくその「社会観念」って言葉出てくるけどさ。 そもそも、ソレってどういう意味の言葉なわけ? |
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そうね。 まぁ、普通の一般の人であればとるであろう常識的な行為って感じで、私は捉えているわね。 判例の言い回しだと、例えば最近検討した神戸税関事件。 (百選T 83事件 最判昭和52年12月20日) 『懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。』 『本件処分が社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいえず、他にこれを認めるに足る事情も見当たらない以上、本件処分が懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えこれを濫用したものと判断することはできないものといわなければならない。』 という感じでつかっているわよね。 他にも、同様に百選T 80事件のマクリーン事件では、 (最大判昭和53年10月4日) 『右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法となるものというべきである。 したがつて、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれが違法となるかどうかを審理、判断するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。』 神戸税関事件と、マクリーン事件は、似たような論旨展開をしているけれど、ソレは、どちらの判例も、社会観念審査をとっているからなのよね。 つまり、これらの判例からもワカルかとは思うけれど、社会観念審査とは、 法令上、行政に裁量がある・・・という前提に立って。 行政が裁量行為を行った。 ⇒ その裁量行為について、裁判所が裁量濫用であるかを審査 ⇒ とくに裁量行為の結果に着目して審査 ⇒ 社会観念上、著しく妥当性を欠くか否か という審査方法なのね。 |
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成程ね。 まぁ、大層な名前つけているけれど、要は 「ありえないだろ、常識的に考えて。」 かどうかって目線で判断しろってことね。 |
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私は、あんたが時々使うスラング的な言葉や、言い回しは好きじゃないから、そういうザックリした理解の仕方は、どうかなぁって思うけれど、まぁ、そういうことになるわね。 ただ、この社会観念審査には、審査基準が幾つかあるわ。 『社会観念上、著しく妥当性を欠く』かどうかを判断する基準と換言してもいいわね。 これらの基準の考え方を、判例から学ぼうというのが、今日の勉強会のテーマになるわ。 先に言っておくと、今日学ぶべき、この基準は次のものね。 比例原則違反 平等原則違反 不公正な動機・法の目的違反 これらの基準が、それぞれどのような考え方なのか? ということを、判例を題材にして学ぶという流れになるわ。 |
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基準が3つも・・・。 ということは、判例も3つは最低覚悟せんといかんってことかな、やっぱり。 |
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あんただけが大変なわけじゃないから。 判例が多いと検討して、ページ作成する管理人だって大変なんだから。 |
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メタ発言はダメですぅ! |
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え? 今、私ナニか言ったかしら? さぁ。それじゃ、早速見ていくことにするわね。 まずは、基準1として、比例原則違反。 この比例原則が、どのような考え方なのかを検討する題材の判例として、百選掲載判例ではないけれど、大牟田(オオムタ)生活保護廃止事件を見てみましょうか。 (福岡地判平成10年5月26日) 百選掲載ではないけれど、この判例は、演習素材や、判例ケースブック等でも、よく見る判例なのよね。 |
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いきなり、出しゃばったことしてしまって、すみませんでした。 | ||
全然っ! むしろ、私の判例検討より、つかさちゃん任せの方がいいかもって思っちゃったくらいだから。 |
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・・・ドッチも長ぇお。 | ||
じゃあ、あんたが判例検討仕切ればいいんじゃない? 勉強会の前に、検討する判例だけ伝えておくから、事案と争点を整理して、みんなに紹介してくれればいいから。 まぁ、その話はとりあえず後回しにして、今日の勉強会の続きをさせてもらうけどね。 次は、平等原則違反ね。 平等原則違反とは、行政庁が、特定の者を差別し不利益な取り扱いをすような行政行為を行った場合をいうわ。 |
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(な、な、ナニ言ってんだお。 こいつは・・・。 ) え? 不平等な取り扱い!? そ、そ、それはよくないなぁ。 ど、ど、どんな判例を検討するのかなぁ!? |
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無理矢理、興味ある振りしているのが痛い程、伝わってくるわね。 この平等原則違反が問題となった判例として 百選T(※4版) 82事件の栃木米拠出個人割当事件を見るわね。 (最判昭和30年6月24日) |
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そか、そか。 あたしに判例検討仕切らせたいっていう言葉の真意は、あたしの理解を享受したいって気持ちからだったわけね? うんうん、愛い奴、愛い奴! |
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藤さんったら、そんなこと言わずもがなじゃないですかぁ。 | ||
言ってないよぉ? そんなこと誰も、一言も言ってないよぉ? えーっと、それじゃ最後に、不公正な動機・法の目的違反ね。 不公正な動機・法の目的違反とは、行政庁が、当該行政行為の根拠となる法律が定める目的の範囲外の目的のために行政行為を行った場合や、不正な動機をもって行政行為を行った場合をいうのね。 |
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そ、そ、それはまた、とんでもない裁量権の濫用です! | ||
アラ? でも、ナカちゃんは既に、この不公正な動機・法の目的違反の問題を扱った判例を検討しているわよ? じゃあ、質問! 不公正な動機・法の目的違反の問題を扱った既に勉強会で検討済みの判例とは、どんな事件でしたか? ヒントは・・・そうね・・・。 「ケバブ」って言えばピンと来るかしら? |
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ケバブ? ・・・ですか? |
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あっ!! ケバブを食べに連れて行ってもらったお店・・・。 アレは、トルコ料理のお店でした! ということは、百選T 72事件(最判昭和53年6月16日)。 余目町個室浴場事件ですね? あの事件では、トルコ風呂の営業を阻止することを目的とした行政処分が問題となっていたです! |
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そうね。 あの事件の判決では、 『被告会社のトルコぶろ営業の規制を主たる動機、目的とする同町の児童遊園設置の認可申請を容れた本件認可処分は、行政権の濫用に相当する違法性があり、被告会社のトルコぶろ営業に対しこれを規制しうる効力を有しないといわざるをえない』 として、不公正な動機・法の目的違反のある認可処分は、行政権の裁量濫用として違法だと判断したわよね。 この不公正な動機・法の目的違反が問題となった判例としては、 余目町個室浴場事件や、ココム訴訟事件なんかが有名なのよね。 (※ ココム訴訟事件 東京地判昭和44年7月8日 国賠訴訟も絡んだ事案なので、ここでの検討は避けます。) |
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凄いねぇ。ナカたん。 よくケバブのヒントだけで答え出てきたねぇ。 |
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逆に、あれだけトルコ、トルコ騒いでいた癖に、余目町個室浴場事件が出てこない、あんたも凄いけどね。 | ||
うみゅ? ・・・この判例、3つ目だよね? |
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そうだけど? | ||
ってことは、コレで今日は終わりってことじゃない!? | ||
まぁ、そうね。 あんた、そういうことだけは、しっかり気付くのね・・・。 |
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トルコ料理の話が出てきたことだし、コレは今晩はトルコ料理食べに行くしかないよね。 常識的に考えて。 |
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嫌よ。 私、今日は大晦日だし、家に帰らないとダメだもん。 (2014.12.31更新) |
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ワカッタ、ワカッタ。 じゃあ、財布だけ置いて帰っていいから。 |
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・・・。 (な、な、なんという申し出ですか! でも、ここまで来ると、逆に清々しくさえ感じてしまうです。) |
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モヤシ教の教祖様は、今日も供物のモヤシをお食べになられれば、よろしいんじゃないですか? | ||
光ちゃんは御予定があるみたいですし、仕方ないですよね。 私、少しクリームシチューを作りすぎてしまったので、宜しければ持って行きますよ? |
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おひょひょひょひょっ! いいね、いいねぇ。 クリームシチューっ!! よし、それじゃ今晩は、あたしのモヤシ料理とオニギリ。 そこに黒ちゃんのクリームシチューで新年を迎えようじゃない! |
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はいっ!! | ||
・・・どんな年越し料理よ。 ソレ・・・。 |