公定力の関連判例 違法性の承継 | ||
では、今日は行政行為の効力、その中でも、しっかりと学ぶと伝えた公定力に関連する判例を見ていくことにするわね。 それじゃ、前回学んだ公定力の定義だけ、おさらいしておく? 公定力って、どんな法効果があるんだったっけ? |
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皇帝力には、大衆を従えさせるカイザーパワーが備わっているのだ! 無論、誰であろうが、その強大無比なるパワーの前では無力なのだ! |
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公定力というのは、行政行為が仮に違法であっても、取消権限のある者によって取消されるまでは、差し当たり有効なものとして通用させる力のことです。 そして、公定力の効果を否定することはできません。 取消訴訟の排他的管轄という考え方が、その根拠です。 |
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ナカちゃん、しっかり復習できているみたいね。 ・・・サル。あんた、そのネタ、いつまで引っ張るつもりなの? じゃあ、本日、1つ目の判例の検討をすることにしましょうか。 百選U 240事件 の矢掛町宅地買収事件ね。 (最判昭和36年4月21日) 百選Tではなくって、百選Uに掲載されているのは、この事件での大きな論点は「訴えの利益」だからなんだけどね。 ただ、公定力の問題を考えることの出来る事件でもあるから、まぁ、ここで見ておこうかなって思ってね。 |
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公定力の問題よりも、あたしへのヘイトバッシングに驚かされちゃったよ。 | ||
藤さん、大丈夫です。 藤さんには、私がついていますから! |
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・・・。 (黒田先輩は、藤先輩を甘やかせ過ぎです!) |
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ある行政行為に対して、国会賠償請求訴訟を提起する前提として、当該行政行為の取消訴訟を提起して判決を得る必要があるのか? という問題についての判例を見たんだけれど・・・。 次は、刑事訴訟に、取消訴訟の排他的管轄が及ぶのか? という論点を検討する意味で、もう一つ判例を見ることにしましょうか。 百選T 72事件(最判昭和53年6月16日)。 余目町個室浴場事件ね。 |
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うんうん。 ワカッタ、ワカッタ。 ワカッタから、次の論点の勉強、早くやろうっ! |
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なんか怪しいわねぇ。 本当に理解してるの? ご飯食べたいから急かしているだけじゃないでしょうね? |
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そういうのを下衆の勘ぐりって言うんだよ? 真面目に勉強したいって気持ちを、そんな風に言われるなんて心外だなぁ。 ね? クロちゃん? |
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ですよね? 藤さんの向学心たるや、私達なんて足元にも及ばないものですのに、あんな風に言われたら傷ついてしまいますよね? |
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まぁ、本来ならば謝罪と撤回を要求するところではあるけれど、まぁ、今日はトルコ料理を御馳走してくれるっていうから、その厚意に免じて、特別に不問に付すことにするよ。 | ||
それはどうもっ!! それじゃ、今日のメイン論点にいくわね。 公定力の問題の中でも、特に重要な論点となるのは、今から話す違法性の承継っていう問題ね。 どういった場面において、この違法性の承継が問題となるのか、というと。 行政行為の中には、一回の行政処分で、その目的である行政目的が達成しえず、関連する行政処分を複数行って、段階的な行政行為によって、当該行政目的を達成する場合があるのね。 例えば、農地買収という行政処分を例に説明すると。 まずは、農地買収計画の策定。 その後、当該買収計画の公告。 そして、その後の農地買収処分といった具合にね。 このような場合において、農地買収計画の策定・公告(自創法6条)を先行行為、その後の農地買収処分(自創法3条)を後行行為として見て、先行行為を違法な行政行為であるとして取消訴訟を提起したいんだけれど、取消訴訟の出訴期間を経過してしまったがために、最早取消訴訟の提起ができない・・・といった場合に、先行行為に違法性があれば、後行行為に独自の違法性がなくっても、先行行為の違法性が後行行為に承継され、後行行為の取消訴訟で、その違法を争うことができるか? という問題が、違法性の承継という問題なの。 |
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む、む、難しいです。 |
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今日の勉強会のテーマである公定力と絡めて、わかりやすく説明すると、違法性の承継が認められて、後行行為の違法性が認められると、後行行為である行政処分は、違法な行為である以上、取り消されることになるわけよね。そうなると、結局、先行行為である行政処分の効果が、なくなるってことになるわけ。 ただ、いつでも後行行為で、先行行為の処分の違法性を争えるってことになってしまうと、先行行為の公定力が、後行行為で争うことで否定されてしまうことになってしまって、それでは、取消訴訟に出訴期間の制限を設けた意味がなくなってしまうわよね。 また、先行行為が、結局は後行行為によって取り消されることになると、先行行為の公定力が実質的には否定されることになるという問題もあるわ。 だから通常は、違法性の承継は否定されるのね。 ただし、例外的に、違法性の承継が肯定される場合があるの。 ここでは、その例外的に違法性の承継が肯定される場合というのが、どのような場合なのか、そして、その肯定される場合に求められる要件とは、どのような要件なのか、ということを、判例から学ぼうと思っているわ。 正直、難しい判例ではあるんだけれど、一緒に頑張って勉強しようね。 |
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(うわぁ。 またエラい判例が、きそうな感じだなぁ。早くご飯行きたいのになぁ。) |
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違法性の承継について、判例を検討する前に、再度確認しておくわね。 瑕疵のある行政行為は取り消されるべき行為であるのだけれど、行政行為の違法性を争う場合に、当該行政行為(後行行為)の違法性ではなくって、その行為に先行する行政行為(先行行為)の違法性を、先行行為の出訴期間が経過しているにもかかわらず、後行行為の取消訴訟において争うことができるのか? という問題が、違法性の承継という考え方だったわよね。 この問題を考える上で、検討する判例は 最判平成21年12月17日(百選T 87事件)。 たぬきの森訴訟事件ね。 さぁ、早速見てみましょう。 |
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いやぁ、楽しい判例検討だったねぇ。 あんなに盛り上がった判例検討はなかったんじゃない? |
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でも、最後のオチは手放しでは喜べなかったです。 たぬきの森を取り返したいです。 |
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はいはい。 そうね、そうね。 えーっと、公定力について、無効の行政行為との関係の論点もあるんだけれど、まぁ、それは改めて、無効の行政行為についての勉強会での話にするわね。 まぁ、今、簡単に言っておくと、無効の行政行為には公定力は及ばないってことなんだけど、詳細は、後の勉強会でってことにするわ。 一応、今日の勉強会はここまでかな。 難しい判例が多かったけれど、小芝居はともかくとして、いい検討してくれていたと思うわ。 じゃあ、約束のトルコ料理に行きましょうか。 |
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私も連れて行って下さるんですか? | ||
勿論じゃない。 今日の勉強会の流れで行くんだから、このメンバーで行かないで、どうするのよ! |
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え? では、私も御一緒していいのでしょうか? |
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うんうん。 つかさちゃんも一緒に来てよ! |
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いやぁ、久し振りだなぁ。 トルコ料理も。 (ワクワクっ! トルコ料理なんて初めてだお。 どんな味すんだろ? どんな料理出てくるんだろ?) |
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ホントに久し振りなの? なんか、あんた、また知ったかしてるだけなんじゃないの? |
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藤さんは博識ですから、知ったかなんてされませんよ。 「また」なんて言い方は、藤さんに失礼じゃないでしょうか? |
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ま、まぁ。 確かにサルは勉強以外の知識は、やたら豊富だからね。 トルコ料理について知ってても、おかしくないのかなぁ? |
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ま、ま、まぁね。 (美味いモンばっか喰っとる金満豚のお前と違って、こちとら庶民なんだお! そんな珍しい食い物なんか知るかお! いいから早く御馳走しろっての!) |