最判昭和36年4月21日判決 〜矢掛町宅地買収事件〜 |
||
久し振りの判例検討だけど、まぁいつもの流れで頑張りましょう。 それじゃ、恒例の配役からね。 私はナレーターを。 所有する宅地に買収計画を公告された原告を、ナカちゃん。 訴えられた町の農地委員会を、つかさちゃんって配役でいくわね。 |
||
ナレーター |
昭和23年12月。 ある町の農地委員会は、ナカちゃんの所有する宅地について、自作農創設特別措置法15条に基づいて、その宅地の買収計画を樹立、公告しました。 |
|
買収計画なんて、とんでもないです! 私は断固反対です! 農地委員会の公告に異議を申し立てるです! 買収計画なんて必要ないって言うです! |
原告 |
|
農地委員会 | はぁ。 まぁ、そう申されましても、本計画は決定事項ですから、はい。 却下させていただきますね。 |
|
話にならないです! こうなったら裁判所に訴えるです! あんな買収計画は無効です! 無効確認の訴えを提起するです! |
原告 |
|
農地委員会 | やれやれ・・・。 困った人がいるなぁ。 お陰で、買収計画が進められないよ。 |
|
ナレーター |
買収計画の公告はなされたものの、結局、その後の手続きは一切行われることはありませんでした。 また、買収計画に関する買収申請人からも、その申請の取り下げがあったことを受けて、この買収計画は取り消されるに至りました。 |
|
裁判所に訴えている間に、あの買収計画はなくなってしまったです! でも、あんな買収計画があったせいで、私はとんだ迷惑を被ったんです。 ホントにとんでもない公務員の人達です! 国家賠償を求めるです! |
原告 |
|
農地委員会 | まだ無効確認の訴えをされてみえるのですか? 無効確認されなくっても、最早、買収計画自体がないんですから、いいじゃないですか。 |
|
ナニを言うです! その買収計画自体が、違法だってことを、しっかり裁判で明らかにしないと、国家賠償を求めることができないです! 私は、あなた達、公務員の違法性を裁判で明らかにして、賠償してもらうです! |
原告 |
|
|
||
こんなところかな。 久し振りの判例再現だったけど、ナカちゃん熱が入ってて、よかったわよ! |
||
頑張りました。 | ||
相変わらず、語尾は固定のロボっぷりだったけどね。 | ||
そして、相変わらず、何故か私は行政側の配役なんですね。 | ||
それぞれ、みんな意見があるのね。 まあまあ。いい判例再現できていたし、いいじゃない。 それじゃ、事案のポイントをまとめましょうか。 この事件は、公定力の限界を検討する判例として取り上げたんだけど。 事件自体の論点としては。 国家賠償請求訴訟において、公務員の行った行政行為の違法性を主張するためには、あらかじめ取消訴訟で、その公務員の行った行政行為の違法性を確定しておく必要があるのか? というものね。 少し、この論点が、どういうことを言っているのかを噛み砕くわね。 まだ取消訴訟も、国賠請求訴訟も勉強していないから、それぞれの訴訟の意味が不明確かも知れないから、そこからね。 どちらも、この行政法で学ぶ話ではあるんだけれど、ザックリとした説明をしておくなら・・・ 取消訴訟は、処分の効力の取消を求めて裁判所に訴えるものね。 国賠訴訟は、国家の違法(不法行為)を理由に金銭賠償を求めて裁判所に訴えるものってことね。 それで、本件の論点の話に戻すんだけど。 処分について取消訴訟を提起し、取り消さないままだと、公定力が働くわけだから、その処分は有効なままってことになるわよね。 有効な行為なのに、その処分を違法なものとして国家賠償を認めてしまってもいいのか? ということが問題になっているわけ。 問題の所在は把握できた? というわけで、判旨を見ることにするわね。 |
||
事件のポイントって言ったじゃないの。 ポイントって、『点』って意味なんだけど知ってる? どんだけデッかい点なのよ! |
||
明智先輩は、論点を分かりやすく説明して下さっただけです。 私は、お陰で、ナニがこの事件では問題となっているのか、よくワカッタです・・・。 |
||
ナカちゃん、ありがとうね。 1人でも気持ちが伝われば私としても話した甲斐があったと思えるから、十分よ? ・・・サルは死ねばいいのに(ボソっ えーっと、最高裁の判断は、次のものね。 ちょっと長いから、本件で論点となっている部分だけの引用にとどめるわね。 『買収の要件を定めた自作農創設特別措置法の規定が強行法規であることは所論のとおりであるが、強行法規の違背が常に行政処分の当然無効の原因となるものと解すべきではなく、その違背が重大かつ明白と認められる場合にかぎつて当然無効の原因となるものと解すべきことは当裁判所の判例とするところである(昭和三二年(オ)第四八一号、同三五年(オ)六月一四日第三小法廷判決、民集一四巻八号一三四二頁)。 右に反する所論は、独自の見解であつて、採用に値しない。 また、行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではないから本訴が被上告人委員会の不法行為による国家賠償を求める目的に出たものであるということだけでは、本件買収計画の取消後においても、なおその無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するということの理由とするに足りない。』 本判決の大事な部分は、太文字部分になるわね。 |
||
・・・・今、ものすごい殺気を感じた・・・。 | ||
日頃から、他人様の恨みを買うようなことしているからじゃない? 少し判例の言い回しが難しいから、論点に対する答えを、まとめておくわね。 本件での論点は、先に言ったように、 国家賠償請求訴訟において、公務員の行った行政行為の違法性を主張するためには、あらかじめ取消訴訟で、その公務員の行った行政行為の違法性を確定しておく必要があるのか? というものだったわよね。 この論点に対する答えとしては、その必要はない、ということになるわ。 大事なのは、その理由よね。 確かに、行政行為には公定力が働くわ。 でも、この公定力という法効果は、あくまでも当該行政行為自体にかかわるものであって、国家賠償請求において問題となっているのは、行政行為の法効果ではなくって、当該行政行為が、国家賠償請求が認められる違法な行為であったかどうか、ということなの。 ということは、行政行為の取消訴訟を経なくとも、その行政行為の違法性が認められるものであれば、国家賠償請求を求めることはできるという結論になるわけね。 短く言うならば、行政行為の公定力は、国家賠償請求には及ばない(=取消訴訟の排他的管轄には触れない)という理解になるわね。 |
||
一行でまとめれるなら、一行でサッサと済ませろ、とマヂレス。 | ||
そうね、そうね。 ホント、そうよね。 ・・・死ねばいいのに(ボソっ |
||
・・・ま、ま、またものゴッツい殺気を感じたお。 | ||
誤解があるといけませんから先に言っておきますけど、私じゃないです。 | ||
ナカたん・・・ あたし、そんな風にナカたんを思ったことないよ。 なのに、そんなこと言われたら、逆に怖くなっちゃっうよ。 |
||
ナカちゃん、サルには、いつもイジめられているもんね。 うんうん。どうしても我慢できなくなったら相談してね。 |
||
因みになんだけど・・・。 相談すると、どうなるわけ? |
||
さぁ、どうなるのかしらね? | ||
ガクガクブルブル・・・ | ||
わ、わ、私、別にそこまで困っていませんから大丈夫です。 ホ、ホ、ホントです。 |
||
死ねばいいのに・・・って発言の方が、絶対暴言だと思うんだけどなぁ。 あたしとしては。 |
||
聞こえてたんじゃないの! じゃあ、もう余計な事、言わないようにしてよね! 私だって、ワカリ易く伝えたいなって思って言ってるんだから! |
||
余計な事を言わなかったら、それはもう、あたしじゃないお! と、マヂレス。 |
||
・・・。 (ホント難儀な人です・・・。) |