実際に事例問題を解いてみよう! ということで、前回はやってみたわけだけど、答案構成については、重ねて伝えることになるけど、あくまでも一例って位置づけだから。 そのつもりで読んでもらえると嬉しいわ。 |
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まぁ、ぶっちゃけチイの書いた答案なんて、落書きに毛が生えた程度の代物だからね。うんうん。 | ||
・・・チイも頑張ったのに、そんな言い方はないよ〜。 | ||
そうよねぇ。 そもそも、サルが書くべき答案を、チイちゃんが書いてくれたって言うのに、そんなことが言えた義理なのかしら。 |
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でも、答案書いてみると色々と勉強になったよ! 勉強会で、光おねーちゃんに教えてもらったことを思い出しながら、答案にしてみたんだよ! |
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私も、今回は答案を書いてみるです! |
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じゃあ、ナカちゃんとチイで、一緒に書いてみようよ! チイも、一緒に勉強する友達がいると励みになるし、いいよね? |
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やるです、やるです! | ||
・・・。 (よしよぉぉーしっ!! 今回も、チビっ子2匹が、無駄にやる気を出しているお。 こりゃ答案構成は、コイツらがやってくれそーだお。 ) |
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また、なんか腹黒いこと考えているんでしょ? サルも、チイちゃんのオネーさんとして、いいとこ見せなさいよ! それじゃ今日の事例問題ね。 【問題】 『チイちゃん(=A)は、ナカちゃん(=B)から馬(甲)を購入した。 チイちゃんが、甲を購入したのは、甲が競馬のレースで過去に何度も優勝した名馬の子を受胎していると聞いたからであった。 ナカちゃんも、甲が名馬の子を受胎しているものと思って、通常より高額で甲をチイちゃんに売ったのであるが、甲は実際には受胎していなかった。 この場合において、チイちゃんは、ナカちゃんに対して、この契約の無効を主張できるか、を論ぜよ。』 「チイちゃん」をA。 「ナカちゃん」をBと置換してくれてもいいわよ。 その方が事例問題っぽくはなるからね。 (※ ページ最後尾の答案構成では、登場人物をアルファベット表記置換してあります。) さぁ、どこから検討しましょうか。 |
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アレ? なんかデジャヴかな? コレって、民法総則の勉強会で出された質問と同じじゃない? |
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受胎良馬売買事件(大判大正6年2月24日)が、LC(リーディングケース)となった事例問題だからじゃないでしょうか。 事例問題では、こうした有名判例を素材にした問題もありますからね。 光ちゃんも勉強会で出した質問を、事例問題として、どう起案するのか、ということを確認する意味で出してみえるんじゃないでしょうか。 |
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そうね。 事例問題の「馬」くらいは変えておくべきだったかしら。 この事例問題の論点は、勉強会でも学んだことだから、先に言ってもいいよね。 論点は、動機の錯誤であっても、錯誤無効の主張はなし得るか? ってことになるわよね。 ちょっと、錯誤について「あんまり記憶にない」とか「自信がない」と思うのなら、この機会に戻って復習に努めるべきね。 |
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錯誤は、あたしの心の砦だかんね! 民法総則の中でも、錯誤と時効については、あたし結構自信持ってるから、その心配はないね! |
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藤さんが得意なんて言われてしまうと、どれだけ御理解されてみえるのかって、私レベルの理解ですと不安を覚えてしまいますね。 | ||
動機の錯誤については、勉強会で、しっかり伝えたと思うから、ここでの説明をすることはしないわ。 この問題の論点は、さっき言ったとおりなんだけど、他にも、この問題の事案の抑えるべきポイントが、どこか分かる? |
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ナカちゃんが『通常より高額で甲をチイちゃんに売った』という点だと思うよ! 動機の錯誤が、民法95条の錯誤となるか? という問題とは別個に、動機の表示が明示されていなければならないのか、黙示的であってもいいのか? という問題があるよね。 この問題については、動機の表示は、黙示的であっても外部から認識可能であれば、動機の表示があったといえるんだよね。 問題の事案では、チイもナカちゃんも、甲というお馬さんが名馬の子馬が、お腹の中にいると思ったからこそ、そのお腹の中の子馬の分も、取引価格に上乗せしたから高値にしているんだよね! ということは、チイの動機については、黙示的な表示がなされていたと言えるよ! 光おねーちゃんが訊きたかったのはコレだよね? |
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そう! この話については、私やサルやナカちゃん、つかさちゃんは以前勉強会で抑えているけれど、チイちゃんは居なかったから、確認しておきたかったのよね。 うん、でも大丈夫みたいね。 今回の事例問題は、基礎的な論点の理解を、しっかり答案という形で表すことができるか、というところが大事になってくると思うわ。 内容的には、以前の勉強会の理解さえあれば答えられる話ばかりだからね。 ということで、後は答案を出してもらって、基礎的な理解の定着を確認するってことで。 今回は、チイちゃんとナカちゃんの両方が起案してくれるってことだから、2つの答案構成があるってことよね。 それじゃ、2人共。 頑張ってきてね! 出来たら、また声かけてくれる? 私は自習室に居るからね。 |
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じゃあナカちゃん! 答案書きに行こうよ! |
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ハイです! | ||
2人共元気ですね。 もう行っちゃいましたよ。 |
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まぁ、ドッチもガキだからねぇ。 ガキは走り回ってナンボだと思っているんだろうねぇ。 まぁまぁ。 うるさいガキんちょも居なくなったことだし、あたし達は、大人の女性らしくお茶でも飲みに行きますか。 |
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私と、つかさちゃんは、ともかく。 サル、あんたもナカちゃん達と一緒に、起案してらっしゃいよ。 ろくに答案練習もしてないと、定期試験で大騒ぎする羽目になるわよ? |
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そんな先のことより、今のお茶のほーが大事だお。 飲ませてくれないなら大騒ぎすんぞ! いいのかお!? |
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別に、私ももう自習室に戻るから。 大騒ぎしたいのなら、どうぞ好きにしたら? |
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藤さん、残念でしたね。 でも、今日の勉強会は、すごく早く終わってしまいましたし、ちょっとお茶には早いと私も思いますよ。 一緒に、自習室で勉強することにしましょうか。 |
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あぁ・・・そう言えば来週提出の課題3つもあったんだ・・・。 課題ばかりで、全然自分の勉強できやしないよなぁ。 |
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学習計画さえ立ててない人が「自分の勉強」なんて、どの口で言っているのかしら・・・。 | ||
以下、チイとナカちゃんによる今回の問題の起案(答案構成)です。 あくまでも、答案構成例であって、正解がこれだけというわけでは決してないです。 チイとナカちゃんによる答案構成ということで御理解下さい。 お気付きの方もおみえになるかも知れませんが、ナカちゃんの起案は、以前の勉強会のつかさちゃんの回答をベースにした起案となっています。 |
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チイver.起案 1.(1)本件ではAはBに対し、錯誤による無効(民法95条 以下、以下、法律名省略)の主張が考えられる。 錯誤とは、内心の効果意思と表示行為に不一致があり、表意者がこれを認識していないことをいうところ、本問のAは、甲を買おうと思って、その旨をBに表示しているのであるから、内心的効果意思と表示行為は一致しており、ただ効果意思を決定する過程、すなわち「動機」に錯誤があるに過ぎない。 このような「動機」の錯誤に95条の適用があり得るかが問題となる。 (2)動機の錯誤は、内心的効果意思と表示の不一致という本来の錯誤の概念から外れるものであるし、また、外部から容易に認識し得ない動機の錯誤について全て95条が適用されるとすると、取引の安全を害する危険が大きい。 従って、原則として、動機の錯誤については95条の適用はないと考える。 しかし、錯誤が問題となる多くのケースが動機の錯誤のケースであり、これについて一切95条の適用を否定することは表意者にとって酷な場合もある。 よって、動機の錯誤であっても、意思表示に際して動機が表示された場合には、動機も意思表示の内容となり、また錯誤の有無が外部から認識可能となっているのであれば、取引の安全を害することもないため、95条の適用を認めてよいと考える。また、動機の表示は、明示的な場合だけでなく、黙示的であっても外部から認識可能である限り、取引の安全を害するものとはならないことから、表示があったものと扱うことができるといえる。 (3)本問では、Aは甲が名馬の子を受胎していると思ったから通常より高額で甲を購入しているのであり、Bも甲の受胎を前提として、この契約交渉をしていたはずであるから、BもAの動機を十分に認識していたといえる。 従って、Aの動機は黙示的には表示されていたといえる。 2.次に、95条適用の要件としては、契約の重要な内容、すなわち「要素」に錯誤があったことが求められる。 本問では、甲が名馬の子を受胎しているからこそ、Aは高額での購入をしているのであり、この点は、Aの本件取引にとって最重要事項であり、甲が受胎していなかったとすれば、一般的にも本件契約締結には至らなかったであろうことは明らかである。 従って、「要素」に錯誤があったものといえる。 なお、Aに「重大な過失」があった場合には、95条の錯誤無効の主張はできないこととなる(95条但書)が、本問では、Aに重大な過失があったことを示す事情は伺えない。 3.よって、AはBに対して、95条によって錯誤による契約の無効を主張することができる。 以上。 ナカver.起案 1.Aは、甲が名馬の子を受胎していると聞いて、甲の購入(以下、「本件取引」)をしている。 しかし、実際には、甲は名馬の子を受胎しておらず、Aの本件取引は、甲の受胎を前提としたものであったことから、この事実について錯誤があったといえる。 そこで、本件取引について、錯誤無効の主張(民法95条)ができるかを検討する。 2.Aは、甲の所有権を得ようという効果意思で、お金を払い、甲を実際に買っている以上、効果意思と表示行為との間に不一致はない。 しかし、事実から動機を形成する過程においては、錯誤があるといえることから、このAの錯誤は動機の錯誤といえる。 意思と表示との間に不一致がない以上、動機の錯誤は、原則として錯誤とは言えないこととなるが、錯誤の趣旨である表意者保護の要請から、このような場合であっても、例外的に錯誤無効の主張を認めるべきといえる。他方、取引安全の見地から、相手方の被る不利益との調和も図る必要もある。 そこで、@動機が明示的又は黙示的に表示され、その動機が法律行為の内容となっていて、Aそれが、法律の「要素」の錯誤と言えるのであれば、相手方も表意者の動機については知り得たこと、そして、その錯誤がなければ、表意者は、その意思表示をしなかったであろうといえることから、錯誤無効の主張を認めるべきといえる。 3.本問では、Aの動機は、AB間の本件取引において共通の前提となっており、甲が名馬の子を受胎していないという事実は、本件取引において要素の錯誤にあたるものといえる。 4.よって、Aは錯誤無効の主張ができる。 以上。 |
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※ 今回は勉強会の内容が短かったこともあり、2つの起案を掲載しております。 同じような考え、結論であっても、法律の勉強の事例問題の起案は、人それぞれです。 それぞれいいところ、悪いところがあり、うまい表現や、あまり上手ではない表現、論旨展開や、流れなども、それぞれなので、色々な人の起案を見ることも勉強になる、という意味で2つの起案を掲載しております。 |
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光おねーちゃん、書けたよ! | ||
以前の勉強会の、黒田先輩の回答を、そのまま下敷きにしてしまいましたが、どうなのでしょう・・・。 コレで、ちゃんと書けているのでしょうか・・・不安です・・・。 |
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あ、光ちゃんなら、今、事務の人に呼ばれていましたよ? 答案ですか? 私でよければ見ましょうか? 光ちゃんには及びませんが、ソレで宜しければ・・・という前提ですけれど。 |
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早く見て欲しいから、御願いしたいよ! いいの? |
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ええ、もちろん。 今回の起案ですけれど、前回の起案が、いわゆる要件・効果パターンの起案だったのに対して、今回の起案は、いわゆる原則・修正パターンでの起案だったんですよ。 気付いていました? |
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答案構成しているときに気付いたよ。 エヘへへへ。 セーフだよね。 |
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全然セーフですよ。 確かに、今回の事例問題の論点は、光ちゃんが最初に指摘してくれたように 動機の錯誤であっても、錯誤無効の主張はなし得るか? ということなんですけれど、法律問題の起案に際しては、いきなり論点に飛びつくのは、いけません。 まずは、原則論から書き始めることが大事です。 その点、御2人共、最初に原則論を、しっかり抑えて書いていますから、そこは大丈夫みたいですね。 チイちゃんは、最初に錯誤の定義についても書いていますが、やっぱり本問では、錯誤が問題となっている以上、定義もしっかり書いておくことが望ましいと思います。 竹中さんは、定義に触れずに、内容の検討をしているので、少し、その点が勿体無いと思いますよ。 答案の構成としては、原則として、動機の錯誤は、民法95条の錯誤ではない ということに言及したあとに、この原則論を貫くことの不都合を指摘すべきですよね。 そして、不都合な処理を回避(=修正)するための解釈の必要性、許容性を論じるべきです。 この点については、竹中さんの起案では 『錯誤の趣旨である表意者保護の要請から』 と簡潔に述べていますが、本問では、動機の錯誤くらいしか大きな論点がないわけですから、もう少し厚く必要性について述べても良かったかも知れないですね。 『現実の社会の取引上、錯誤の生じる事案においては、動機の錯誤であることが多いため、動機が相手方からは分からないものであるという理由だけで、動機の錯誤は95条の錯誤にあたらない、とすることは妥当ではない』というくらい厚めに書いて、説得力を増す、ということも考えられると思います。 もちろん、今回の事例問題とは違って、他の拾わないといけない論点が多い事例問題の場合ならば、また話は変わってきます。 要は、メリハリということになりますが、今回のような論点の少ない事例問題の場合は、論証も気をつけた方がいいと思いますね。 必要性・許容性の理由を述べた後に、論証からの規範定立⇒当てはめ⇒結論、という構成をとっていますので、その点については、概ねいいかと思いました。 ただ、竹中さんの当てはめは、少し言葉足らずかと思います。 少ない問題文ではありますが、重要な事実については適示して、評価することが、当てはめでは大事なので、Aの動機が黙示的に表示されていたことを、ナニをもって認定したのかを、もう少し答案で示せるといいと思いますよ。 そう言えば、チイちゃんは、95条但書きについても言及していますが、その点は加点要素となるでしょうね。 急いで答案を書いていると落としがちになってしまうのですけれど、条文にそった検討をする姿勢は大事ですからね。しっかり検討できているなって思いました。 |
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ううう・・・。 ノートのメモを下敷きに書いてしまいました・・・。 もう少し自分の言葉で書けばよかったです・・・。 |
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答案は、何度も書いてみたり、友達の答案を見て、いいとこを盗んだり、真似したりすることで、よりいいものになっていくので、最初からいい答案なんて出来ないんだ、って割り切るくらいでいいと思いますよ。 竹中さん、ナイスファイトでした! |
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頑張ったです! | ||
せっかくですから、御2人の書いた起案をコピーしておきますから、お互いに読み返してみるといいですよ。 自習室のコピー機で、コピーしてくるから、ソコで待ってて下さいね。 |
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ありがとうです! | ||
ナカちゃん! 楽しかったね!! また一緒にやろうね! |
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ハイです! 今度は、自分の言葉で答案を書けるようにしたいです! |
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その頃、自習室・・・。 | ||
シメシメ・・・。 光ちゃん、どっか行ってて、おらんから今のうちに課題を勝手に見させてもらうお・・・。 お、チャンとやってあるじゃない。 流石、心の友だお。 いやぁコレで、今回の課題もなんとか、なりそぉだお。 |