ひぃぃぃ。暑ぃ、暑ぃ。 夏はなんだって、こう暑いかねぇ。 あたし、人一倍暑がりだから応えるんだよねぇ。 まぁ、でも家に居てもクーラーないし、学校までの辛抱だと思えば・・・いやぁ、それにしても暑いなぁ。 |
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遅いっ! もう毎回最後に来るのは、どうしてなのよ! |
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うーん、アレじゃない? 人間、イヤなことは自然と足が重くなるじゃないの。 別に意図して遅く来てるわけじゃないんで、ソコはワカッテ欲しいかな。 |
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藤先輩担当の勉強会が、民法総則では、今日の代理までだと思うと、名残惜しいです。 私、藤先輩の勉強会好きでした。 |
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(民法総則では・・・ね。 なんか引っ掛かる物言いしてんなぁ、このチビっ子。) そのうち、ナカたん担当の勉強会っていうのもいいんじゃない? あたしが務まるなら、ナカたんなら余裕だよ、きっと。 |
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む、む、無理ですっ! 私には、とても務まらないです! |
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ううん、そんなことないわよ! 案外妙案かもね。 ナカちゃんも、担当になれば、その論点をしっかり勉強して挑むことになるだろうし勉強になるかもよ? 大丈夫、足りないところや、ワカラナイところは、ちゃんと私達がフォローするから! |
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うんうん。ナカたん、真面目だし、きっといい勉強会になるよ! (って言うか、あたしだけに、この地獄の苦しみ味あわせてオワリなんて、神が許しても、このあたしが許さないよ!! 絶対、このチビっ子にも、ストレスとプレッシャーの生き地獄を味あわせてやんよ! 二シシシシシシシシシ! ) |
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私は、このままずっと藤さん担当がホントは嬉しいんですけどね! 藤さんが、あまり乗り気でないみたいなので、言い出しにくかったんですけど。 |
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(メガネっ!! あんまり洒落になんないこと抜かしてると、そのレンズ割んぞ! まぁ、あまりこの話題は引きずらない方がいいかな・・・ コッチに飛び火してきたら、エライことだしね。 ) あぁ〜、それじゃ、みんなそろそろ勉強会始めるよぉ? 今日は、代理の最後の論点。 表見代理の重畳適用(チョウジョウテキヨウ)だね。 重畳の「畳」の字は「タタミ」って字だから書けるようにしとくべきだね。カタカナで書くと格好悪いしね。 ところで、この表見代理の重畳適用って、一体どういうこと? って疑問はあるところじゃない? そうだよね? ナカたん? というわけで、年下にも別け隔てなく優しいお姉さんに、丁寧な説明をお願いすることにしようか。 優しさと言えば、やっぱりあたしなんか足元にも及ばない方がみえるんで、その方を差し置いて、あたしなんてわけにはいかないからね。 はい、じゃあ、光ちゃん、ナカたんにもワカルように説明お願いします。 |
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優しいって言うなら、つかさちゃんだって十分優しいじゃないの! なんで、私なのよ?(ニコニコ) え? なに? 表見代理の重畳適用についてだったっけ? 表見代理の重畳適用は、一方では本人に帰責要素があり、他方では、正当な権限ありと信じた相手方に保護すべき利益がある場合で、かつ、109条、110条および112条の各条文の要件を厳密には充足しないものの、各条文の重畳性、競合性が認められる場合に、表見法理によって、各条文の法意、精神に則してそれらを重畳的に類推適用することをいうわね。 まぁ、ザックリ言っちゃうと、109条、110条、112条・・・それぞれの条文だけでは、本人に帰責事由があるんだけれど相手方の保護が図れないというような場合に、109条の足りないところを110条で、110条の弱い部分を強めるために109条を・・・って感じに互いの足りないところを補う意図で用いられるのよね。 |
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(へぇ〜。そういう意味なんだ、重畳適用。なるほどねぇ。) 合わせ技一本みたいなことだね? |
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合わせ技一本ですか。 なるほどです! |
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それじゃ、実際に表見代理の重畳適用とは、どのようなモノかを判例を見て確認することにしようか。 判例百選Tの32事件と33事件が、それぞれ表見代理の重畳適用を扱った判例として掲載されているから、今日の勉強会では、この2つの判例検討を通じて、表見代理の重畳適用について勉強することにするね。 今日は前もって、表見代理の重畳適用の勉強会をすることは、みんなも知っていたはずなんで、判例くらいは事前に予習済みだとは思うから、バンバン聞いていくけど答えられるよね? (因みに、あたしは重畳適用の判例の存在を調べてきただけだから、事案も判旨も知らないけどねっ!!) |
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どこからでも来なさいよ! | ||
言い訳するわけではないんですけど、私は、事案が難しくって、ちょっと理解できていません。 説明は難しいです・・・。 ごめんなさいです。 |
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藤さんみたいにコンパクトにまとめられていはいないと思いますが、私なりに理解してきたつもりです。 | ||
(くぅぅぅぅ。 チビっ子にフリたぁぁぁ〜い! しかし、逆に聞かれたら目も当てられないし、まぁ、ここは無難なところにしておくかなぁ。) じゃあ、光ちゃんに質問しようかな? 最判昭和45年7月28日(百選T 32事件)の事案を、みんなに分かりやすく説明してあげてよ。 |
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いいわよ。 ちょっと登場人物が多いから、それぞれアルファベットで表すことにするわね。 A(ナカちゃん)は、自己所有の山林(=不動産)を、C(サル仮装)に売却(@)し、Cの代理人Bを介して、Cに対して、土地の権利証、印鑑証明書、さらに白紙委任状(受任者・年月日欄が白地、登記一切の権限を与える趣旨の委任事項は記載済み)と、売渡証書(Aの記名押印、売渡物権記載済み、相手方欄、金額、年月日欄白地)の関係書類等を交付(A・B)したの。 山林(=不動産)の所有権を、Aとの売買によって取得したCは、この山林を、D(私)が所有する山林と交換しようと思い、その旨を代理人B(サル)に委任して、Aから受け取った登記関係書類一式を、Bに交付(B)したの。 しかし、代理人Bは、その関係書類をDの代理人E(つかさちゃん)に示して、あたかも自分がAの代理人のごとく装い、Eもまた契約の相手方を、CではなくAと誤信したために、本来、CD間で予定されていた山林の交換契約が、AD間での交換契約として締結(C)されてしまったの。 その後、DはAに対し、この交換契約に基づき、山林の所有権移転登記手続請求(D)をした・・・というのが事案の大まかな説明ね。 一応、下に事案の理解のための図を書いてみたわ。 黄色の矢印は、関係書類等の交付の流れを示すものね。 あ、あとメンバーが足りなかったから、Cには、サルに私の仮装をさせて参加してもらったけど。CとBは、別人格だから誤解しないでね。 |
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・・・この事案の私(=A)は、Cに白紙委任状を交付してしまっていますが、その委任の内容は、売却した土地の登記一切の権限だったはずです。 なのに、Cの代理人Bは、勝手に土地の交換契約をしてしまっています。 その結果、私は土地をCに売っているのに、その登記移転をDから請求されてしまうことになってしまい非常に困ったことになっているです。 代理人Bの行為は、私の委任の範囲を越えたものであり、明らかな無権代理です。 そもそも、私の交付した委任状の受任者欄が白地なのに、代理人Bが、私(=A)の代理人であると思うなんて、Dの代理人Eだって、おかしいです! |
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そうよね。 ナカちゃんの考えもワカルわ。 実際、一審では、民法109条の表見代理の成立を主張する原告(D)に対して、Aが登記手続きに必要な書類を特定の他人に交付した場合に、それが何人が行使しても差し支えないという趣旨での交付でない限り、特定他人たるAから交付を受けた第三者(=代理人B)に対しての代理権授与の表示があったとは言えない、として、原告の請求を棄却しているわ。 (同判決では、最判昭和39年5月23日を引用 →確認ページ) 二審では、原告は民法110条の表見代理の成立を主張するんだけど、これに対しても、代理人Bに基本代理権が生ずる余地がない、として、やはり請求を棄却しているのよね。 |
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そうです、そうです。 白紙委任状の呈示があっても、受任者欄が白地なんですから、私が、代理人Bに代理権を授与したなんて見るのは、おかしいです! 大事な点は確認すべきです! |
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でも、最高裁はそうは言っていないんですよね。 『右各書類は、AからBに、BからCに、そしてさらにCからBに、順次交付されてはいるが、Bは、Aから右各書類の交付を受けることを予定されていたもので、いずれもAから信頼を受けた特定他人であって、たとい右各書類がCからさらにBに交付されても、右書類の授受は、Aにとって特定他人である同人ら間で前記のような経緯のもとになされたものにすぎないのであるから、Bにおいて、右各書類をEに示して、Aの代理人として本件交換契約を締結した以上、Aは、Eに対し、Bに本件山林売渡の代理権を与えた旨を表示したものというべきであって、D側においてBに本件交換契約につき代理権があると信じ、かく信ずべき正当の事由があるならば、民法109条、110条によって本件交換契約につきその責に任ずべきものである。』 としているんです。 大事なのは、Dは白紙委任状だけで代理人Bが代理権を授与されていると信じたわけではないということです。 つまり、Aは、関係書類の中に、白紙委任状だけではなく、権利証、印鑑証明書、売渡証明書までも交付していますよね。 そして、代理人Bは、これら全てを、相手方の代理人Eに対して、交付・呈示しています。これらの事実から、相手方代理人Eも、代理人Bに代理権が授与されていることを信じたわけです。 表見代理の制度趣旨は、外観法理でしたよね。 @虚偽の外観、A外観作出の帰責性、B相手方の信頼。これらの外観法理の要件に鑑みるに、Aの白紙委任状だけではなく、権利証や印鑑証明書まで呈示(@)された相手方としては、Aから代理人Bへの代理権授与を推測させられる(B)と言えます。この事実からAには109条の表見代理が成立(A)すると言え、この109条の代理権授与を基本代理権として、代理権外の表見代理である110条の適用が認められるとして、判例は、109条、110条の重畳適用による表見代理を成立させ、Dを保護しているんです。 |
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そうね。 一般に、代理権を象徴する物として、本人の実印、印鑑証明書、委任状、権利証などが挙げられるからね。 この代理人Bも、Aの印鑑証明書や権利証等を、白紙委任状とは別に持っていたわけなんだから、代理権をもっているであろうと、相手方が信じるに足る『正当な理由』(民法110条)があると判断されるところかもね。 |
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そうかなぁ? ぶっちゃけ、身内だったら、実印や権利証だって勝手に持ち出すこと出来るよ? そんな物で、代理権を象徴する物だって思っても、それは『正当な理由』って言えない気がするけどね。 |
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ちゃんと聞いてた? 私、「一般に」って言ったじゃないの。 あんたみたいな、とんでもない身内もいるわけだから、家族がこれらの物を所持して代理人として振舞うようなときには、これらは代理権を象徴する物としては扱われないわよ! 確かに、あんたが言うように、身内は、これらの代理権を象徴する物を、持ち出しやすい立場にあるわけだからね! |
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ちゃんと確認をとるべきだったんです! 本人に契約前に確認を入れてくれれば、私だって、そんな人は代理人にした憶えはない! って言えたです! |
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そうですね。 実際、最近では相手方の確認義務が求められることが多いですね。 契約締結に際して、本人への確認・照会をとったのか、ということが求められます。 これが、専門職や事業者であれば尚のことです。 自身の専門分野、事業取引において、相手方への確認義務を怠った結果、無権代理人と取引をしてしまったというような場合には、その確認義務懈怠が過失であると評価されて、『正当な理由』がないと判断され、110条の適用が認められないという結論になることも多いですね。 ただ、過失の認定は、あくまでも事案ごとに個別に判断されるべきだと言えるので、一概にこうだ、と言うことは出来ませんが。 |
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いやいや、まったくそうだよね。 なかなか白熱した判例検討ができたね。 あたしの仮装まで出てくるとは思わなかったんで、ソコは驚いたけど、まぁ、聞いてる限り、みんないい検討が出来ていたと思うよ? (あたしを除いてね!) それじゃ、もう一つ判例検討しちゃおっか。 そだ。 代理のトリを飾る判例だし、ここは判例検討やっとく? (立て続けに事案説明させると、勘ぐられるといけないからなぁ。 ココは、敢えて個別に判例検討することで、矛先をかわすのが得策と判断したよ? 二シシシシシ。) うん、そうしよう、そうしよう。 検討判例は、大判昭和19年12月22日(百選T 33事件)ね。 |
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うんうん。 表見代理の重畳適用を扱った判例検討は、これでいいんじゃない? まぁ、まとめちゃうと、表見代理の制度趣旨である外観法理が重要ってことよね。 条文の定めは、あくまでも個別類型を定めているに過ぎないものであって、その制度趣旨に鑑みて、相手方保護の要請が働くと言える場面であれば、これらの条文を重畳的に適用して、相手方保護を図ればいいってことよね。 ただし、判例の考え方からもワカルように、相手方には、外観法理からも求められるB相手方の信頼=善意無過失って要件があるのだから、その信頼には、「正当な理由」がやっぱり重要ってことになるわよね。 でも、サルの勉強会、しっかり出来たって思ったよ。 ご苦労様。 |
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労いの言葉は、形にして欲しいと思うんだけど・・・。 美味しいお酒が呑みたいなぁ〜。 そうだねぇ。美味しい海鮮モンを肴にしたいかなぁ。 |
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藤先輩、定期試験前に、呑んでいる場合じゃないです。 |
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ナカたん。 車だってガソリンなかったら走らないでしょ? 最後にラストスパートかけたいと思うなら、ここはピットインしとかないと燃料切れ起こしちゃうよ? |
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そうね。 サルも、私の知らない間に、自分で勉強出来る習慣を身につけてくれていたみたいだし、今の理解があるなら、定期試験も大丈夫そうだしね。 じゃあ、美味しい海鮮モノを出してくれるお店行っとく? |
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うほほほおぉぉぉぉいっ! イワガキを生で食べれるお店が、近所にあることを知っちゃってさぁ。 刺身も美味しいって聞いて、もう行きたくって、行きたくって! |
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うんうん。 サルも、勉強会担当で頑張ってくれたしね、いいよ、いいよ。 |
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うわぁーーいっ! それでこそ頑張った甲斐があったというものだお! ↑ (ろくに勉強していないことをバレないように苦心するという意味での頑張りを言っています・・・) |
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私は試験前だから遠慮するです。 | ||
私も、藤さんや光ちゃんみたいに出来るわけではないので、遠慮しておきます。 | ||
え? 2人とも来ないの? ・・・それじゃ延期にする? |
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やだやだやだやだっ! もう行くってことになったじゃないの! 禁反言っ! 禁反言っ! |
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でも、試験勉強もしないといけないですし、今の時期呑みに行くというのには抵抗が・・・。 | ||
あ、じゃあこうしない? サルは、今は自分で、しっかり勉強する習慣が身に付いているみたいだし、楽しくお酒呑んでてくれていいから。 私達3人は、美味しい海鮮物頂きながら勉強会の続きをしてるってことで、どうかしら? |
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藤さんだけお酒というのは、申し訳ないです・・・ | ||
全然オッケーだお!! じゃあ、あたし楽しくお酒呑んでるから、3人は勉強会でも、懇親会でも好きなことしててよ! |
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藤先輩、ゴメンなさいです。 なんか、せっかくのお酒の席で、お付き合いもせずに勉強会なんて。 |
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いやいやいや。 むしろ最高でしょ! 横でお酒呑んで、美味い物食べながら、勉強もできるんだから! |
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でも、お酒呑んでしまわれたら、せっかくの勉強会の話なんて、右から左になっちゃいますよ? | ||
ソレなら大丈夫っ! あたし、いつも右から左だもん! |
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え? | ||
(おっとっと、ヤバイ、ヤバイ) あれぇ? もうお酒が回ってきちゃったのかな? なんか変なこと言ったような気がするような、しないような・・・ |
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まだお店にも着いていないのに、どこでお酒なんか呑んだっていうのかしら? | ||
あぁ、アレかな? 昨日、深夜遅くまで重畳適用について勉強会の担当という責任感から、ずっと勉強してた疲れから、変なこと口走っちゃったんだ、きっと。 |
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ふぅ〜ん。 確かに、今日の勉強会も、しっかり出来てたと思うしね。 まぁ、いいわ。 それじゃ、ここで話しててもなんだし、お店行きましょ? |
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ウキっ!! やったぜ、あたしっ!!! |