さぁ、それじゃ今日からは代理について勉強するわね! 代理は論点が多いから、色々学ぶことが多くって大変だとは思うけれど、一緒に頑張りましょうね。 まずは、今日は代理の論点について学ぶ前に、代理制度そのものについて学ぶことにするわね。 |
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代理ってアレ? プロ野球選手の年棒交渉とか、MLB挑戦の契約のときに出てくる代理人のこと? |
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ナニもそんな遠い存在を例に出さなくってもいいわ。 サルの妹の小(チイ)ちゃんって、今18歳じゃなかった? |
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よく、あたしの妹の年齢まで憶えているね。 うん、小(チイ)は、今18歳だったと思うけど? |
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だったら、サルのお父様や、お母様も代理人よ? | ||
なにゅ!? し、し、知らんかった・・・ いつの間に、チイのヤツ、プロ野球選手になりよったんだお!? け、け、契約金を御裾分けしてもらわんと! |
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ちょっと!! なんで、代理人=プロ野球関係者って前提になっているのよ! そうじゃないわよ! 代理っていうのは、代理人が本人の意思、または、法律の規定に基づいて、本人のために意思表示をなし、または、これを受けることによって、その法律効果を本人に生じさせる制度をいうの! ザックリ言うと、他の人が、本人のために、本人に代わって法律行為をするってことね。 |
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え? それで、なんで、あたしの父ちゃんと母ちゃんが代理人になるわけ? しかも、チイをわざわざ出したってことは、チイにとっては代理人なのに、あたしの代理人ではないってこと? ナニそれ? 差別じゃない? いや、そりゃ、確かにあたしよりチイの方が出来がいいのは認めるけどさぁ・・・だからって、そんな差別をしていいってわけじゃないでしょ。 |
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ナニを騒いでいるのよ。 いい? 代理には種類があるの。 法定代理と任意代理の2種類ね。 法定代理っていうのは、本人の意思によらず、法律上、一定の場合に発生する代理関係をいうの。 この法定代理には、色々な場合があるわね。 一番身近な例としては、本人に対して、一定の地位にある者が、当然に代理人となる場合ね。 この具体例が、未成年者に対する父母(親権者)なの。 チイちゃんが18歳なら、まだ未成年(民法4条)でしょ? ということは、サルのお父様、お母様は、既に成年に達しているサルの代理人ではないけれど、チイちゃんにとっては代理人になるわけよ(民法818条1項、3項)。 この法定代理の例としては、他にも、協議・指定によって代理人となる場合(民法819条1項、3項但書、4項)、裁判所による選任によって代理人となる場合があるわ(民法819条2項、840条、843条、918条2項等)。 この裁判所による選任によって代理人となる例としては、実は、これまでの勉強会で既に勉強しているのもあるわ。 例えば、不在者の財産管理人(民法25条、26条)は法定代理ね。 |
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あぁ、なるほど、なるほど。 未成年者の親権者は法定代理として代理人になるわけね。 ソレで、あたしの父ちゃんと母ちゃんは、チイの代理人ってことになるわけね。 いやぁ、驚いた、驚いた。 チイが、プロ野球選手になったのかと思っちゃった。 |
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NPBには、まだ女性のプロ野球選手は1人もいないじゃないですか。 | ||
まぁ、でもナックル姫みたいに野球してる女性もいるしさぁ。 チイが女性初のプロ野球選手って話があっても、おかしくないかなぁ、って。 |
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藤さんの妹さんって、野球が上手なんですね! スゴいです!! |
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んみゅ? いや、チイは野球はやんないし、そもそも野球好きでもないけど? |
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・・・ソレってプロ野球選手云々以前の問題じゃないでしょうか? | ||
あんた、よくソレで、そんな勘違いができるわね・・・ まぁ、今の話で法定代理についてはワカッタと思うけれど、最初にサルが言ったプロ野球選手の代理人っていうのは、この法定代理とは違うの。 こっちの代理関係は、任意代理なのね。 任意代理っていうのは、本人が本人の意思によって、他人に代理権を授与することによって発生する代理関係をいうの。 具体的な例を挙げるなら、2012年に、ダルビッシュ有が、アーン・テレムを自分の代理人にして、テキサス・レンジャーズと6000万ドルの6年契約を結んだわよね。 代理人アーン・テレムの締結した契約の法律効果は、契約を結んだアーン・テレムではなく、ダルビッシュに帰属することになるわ。 また、その効果帰属を望んで、ダルビッシュは、アーン・テレムに代理権を与えているわけね。 コレは、任意代理の代理人による代理行為なの。 ちょっと今、話した代理制度(図は任意代理をイメージ)を、図にすると下の図の理解になるわね。見てくれる? |
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上の図だと、あたしがダルビッシュってことになるわけか。 コレは、いっちょ新たな変化球でも編み出さないといけないのかな? |
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変化球はいいから、代理制度が何故あるのか、ってことを考えてみてよ。 代理が、法定代理と任意代理の2種類あることから考えると、どうして代理制度が求められるのか、ってことがわかると思うわよ? あ、これ質問だからね。さぁ、答えて、答えて。 |
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んーとね。 チイのためと、ダルビッシュのため。 |
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その答えはなんですか! えーっと、法定代理の例として、親権者があがっていました。 でも、同じ子供の親権者でありながらも、成年である藤先輩と、未成年である藤先輩の妹さんとで扱いが異なるわけですから、これは未成年者保護という観点からの代理制度であるといえます。 つまり、判断能力が不十分な人を助けるために、代理制度があることがワカリマス。 任意代理の例としては、プロ野球の代理人があがっていました。 これは、自分に代わって、自分のための活動を代理人にしてもらうことで、自分の活動の範囲を広げるための代理制度であるといえます。 えーっと・・・つまり・・・。 |
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竹中さん、もう答えを言われていますよ。 その考えから、代理制度はあるわけなんです。 端的にまとめると、上の考え方は、私的自治の補充と呼ばれ、下の考え方は、私的自治の拡張と呼ばれますね。 私的自治の補充。 私的自治の拡張。 代理制度の必要性は、この2つの考え方を合わせて、私的自治の拡充であるといわれますね。 |
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そうね。 それじゃ、代理の必要性がわかったと思うから、六法で民法99条を確認しましょう。 この条文から、代理の要件と、効果がわかるはずよ? |
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民法第99条。 『(代理行為の要件及び効果) 第99条 1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。』 |
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条文から、代理の要件は @代理人に有効な代理権が存在すること(代理権) A本人のために意思表示をする旨を示すこと(顕名:ケンメイ) B代理人が代理権に基づき、その範囲内で意思表示をなしたこと(代理行為) の3要件ね。 要件は、( )内の短いものを憶えてくれてもいいわ。 @代理権、A顕名、B代理行為って感じでね。 代理の効果は、代理人がした法律行為の効果は、本人に帰属するということね。 代理権を授与する行為(代理権授与行為)は、普通は、委任等の事務処理契約と一体となって行われるものなの。 ここから、この代理権授与行為の法的性質とは、という論点があるわね。 ここで、まとめておくと。 代理権授与行為は、事務処理契約と一体となって行われるものではあるけれど、理論的には、代理権授与行為と、この事務処理契約とは区別されうるものという理解ね(独自性肯定説)。 そして、代理権授与行為は、事務処理契約とは独立したもので、代理権授与のみを目的とした無名契約(無名契約説)であり、かつ、有因行為であるとする見解が、通説の理解になるわね。 あ、今、有因行為って言葉を使ったけれど、有因の対義語は無因なのね。 有因というのは、その根拠となる法律的原因が無効であれば,それに伴い、その法律行為も無効となるってことね。 無因は、その反対なんだから、その根拠となる法律的原因が無効となっても、その法律行為には影響はないってことになるわね。 商法で学ぶんだけど、手形なんかは無因証券なのよね。 |
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んみゅ? なんか急にワカラナクなった気がすゆお? |
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真面目に聞かずに、変化球のことなんか考えてるからよ! さぁ、それじゃ次は代理権の範囲ね。 法定代理の場合は、法律によって、その代理権の範囲は定められているわ。 例えば、さっきの例だと、未成年者の法定代理人である親権者(両親)については、民法824条が、包括的な代理権を認めているわね。 「包括的」って言葉については、以前の勉強会で話したと思うけれど、つまり、これは非常に広い範囲の代理権と言えるわね。 これに対して、任意代理の代理権の範囲は、本人と代理人との間の代理権授与行為の内容によって定められるの。 ここで、定められた代理権の範囲外の行為を、仮に代理人がしたとしても、その効果は本人には帰属しないこととなるわ(=無権代理)。 (※ 無権代理については、後ほど改めて勉強します) 具体例を挙げるなら、そうねぇ。 MLB挑戦のために、任意代理の代理人との間で、MLB交渉の一切についての代理権を、その代理人に与えた選手がいたとしてよ? その代理人が、あのクラスの選手なら、これくらいの車に乗らないとダメなんだよなぁ、って思って、高級車を代理人として購入したとしても、高級車の購入は、MLB交渉という選手と代理人との間の契約によって定められた代理権の範囲外の行為よね? だから、その法律行為の効果は本人には帰属しないことになるわけ。 |
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MLBの契約交渉頼んだのに、高級車買ってくるって、どんな代理人なのよ、ソレ! | ||
例えだからね! 別に実在する代理人がいなくたって、いいじゃない! 代理権の範囲が、法律又は、本人と代理人との間の契約によって定まっている場合は、いいんだけれど・・・ 代理権の範囲が明らかではない場合もあるわけよね。 この場合については、民法103条を見てくれる? |
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民法第103条。 『(権限の定めのない代理人の権限) 第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。 1号 保存行為 2号 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為。』 |
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103条1号の保存行為と、103条2号の利用・改良行為。 この2つを合わせて、管理行為っていうのね。 保存行為(103条1号)は、財産の現状維持を図る行為。 利用行為(103条2号)は、財産について収益を図る行為。 改良行為(103条2号)は、財産の使用価値・交換価値を増加する行為。 と、それぞれ定義される行為ね。 但し! 103条2号の法文上明らかなように、利用行為及び改良行為は、あくまでも目的物・権利の『性質を変えない範囲内』でなければならないから、そこは注意してね。 |
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こくこく(相槌) |
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じゃあ、代理権の範囲が明らかでない場合に、次の行為は、民法103条から、代理人がなしうる行為と言えるかどうかを、それぞれ考えてみて。 質問! @雨漏りがするので、工務店に修繕してもらうこと A本人の建物を、他人に賃貸して賃料を取得すること B本人の現金を、他人に利息付で貸し付けること C本人の農地を、宅地にするための工事を行うこと。 さぁ、代理権の範囲が明らかでない場合の代理人は、上記の行為を、管理行為としてできると思う? |
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@は、自信をもって保存行為だと言えます。 ですから、代理人ができる行為です。 Aは・・・利用行為になるのでしょうか? 本人の建物を利用している行為ですものね? あ、でも、それを言うと、Bも利用行為ですね。 本人の現金を利用しているわけですものね。 じゃあ、AとBも、利用行為なので出来る行為です。 Cは・・・改良行為ですよね? じゃあ、これも出来る行為ってことになります。 |
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竹中さん、惜しいです。 @〜Bについては正解です。その理解でいいかと思います。 ただCについては、確かに、農地を宅地へとする工事は改良行為にあたるわけですが、『性質を変えない範囲内』で、という点に抵触してしまうので、これは管理行為を超えた行為と言えるため、代理人はすることができないですね。 ですから、このような行為を代理人がした場合には、無権代理となります。 |
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改良行為であっても、目的物・権利の性質を変更するような行為については、代理人はできないから、その観点は忘れずにね。 じゃあ、次は、代理が禁止される場合ね。 先に、六法で民法108条を確認してくれる? |
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民法第108条。 『(自己契約及び双方代理) 第108条 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りではない。』 |
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自己契約、双方代理。 これらの場合には、代理が禁止されるわ。 自己契約、双方代理は、権限としては、代理権の範囲内であって出来るようにも思える行為なんだけれど、代理人と本人の利益が相反して、その衡平が維持できない、という理由から代理を禁止されているの。 因みに、この禁止に違反して行った代理人の法律行為は、無権代理になるわね。 それじゃ、自己契約、双方代理について説明するわね。 自己契約というのは、自己が当事者となる法律行為について、相手方の代理人となることをいうの。 ザックリ言うと、代理人自身が、当事者の一方になって自分のために代理しているような場合ね。 具体例を言った方がいいかな? 例えばそうね・・・球団経営している人が、選手の代理人になって、年棒交渉をする・・・って考えたらどうかしら? そんなことになったら、年棒なんて幾らであろうが、やりたい放題よね? |
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銭闘民族、絶滅の危機だお! | ||
確かに、年棒交渉においては、球団と選手との利益は相反しているわけですから、それなのに、球団側が選手の代理人になんてことになったら、とても衡平は図れないです。 | ||
双方代理も、自己契約と類似の行為といえるため、やっぱり同じ理由から禁止されているわけね。 でも、108条には但書きがあるわよね。 但書きにある例外として、利益が相反しない場合、そして、利益が相反する場合であっても、本人が予め許諾している場合には、自己契約・双方代理が許されるのよね。 利益が相反しない場合っていうのは、法文上にいう『債務の履行』なの。 この場合は、予めなすべきことが決まっていて、今更それをしたからと言って、ただ、その行為をなすだけであって、本人の不利益になることがないから、例外的に、自己契約・双方代理が許されるわけ。 そして、本人が予め許諾している場合は、本人が被る不利益について、その本人自身がいいって言ってるわけなんだから認められるってことね。 |
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えぇ、そうかなぁ・・・ 例えば、さっきの光ちゃんの例だけどね? 球団側が、選手の代理人になって、自己契約という形で、年棒交渉を含む契約更改を果たすって話を持ちかけられた選手が、その年の成績がすっごい不振だったから、「もう幾らでもサインしますから任せますよ!」って自己契約になる代理を、その選手自身が許諾したとしてだよ? その球団が、「○○君。 君の来季の年棒だけど、100円な!」なんてことになっても、本人がいいって言った以上、認められるってことになるわけ? |
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事前の承認については、本人に不利益をもたらすおそれが十分に考えられるものであるため、この承認については、合理的な範囲内で認める、という黙示的制限が付されていると解すべき、とされているわね。 ただ、あんたが言った年棒が100円なんてことは幾らなんでも、あまりに不当でしょ? そこまで当事者の一方に著しい不利益を強いるような場合には、108条本文に違反するものと言えるから無効と考えるべきだと思うわね。 あ、ちなみに法定代理の場合も、利益相反行為については禁止規定があるからね(民法826条1項、860条、876条の2第3項等)。 |
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なるほど、なるほど。 それなら納得かな。 |
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じゃあ、ここで少し難しい質問出しちゃおうかな。 質問! サルは、会社の代理人(営業部門主任)として、会社が販売している商品の原材料を買い付ける仕事をしていたのね。 ところが、サルは、この会社の販売する商品の原材料を、他に転売して、その差益を着服しようと思って、会社の名義で、つかさちゃんが支配人を勤めている会社から原材料を購入して、それを転売して利益を着服しちゃったわけ。 でも、このサルの事情を、原材料をサルに売った会社の支配人のつかさちゃんは知っていたのよね。 その後、つかさちゃんの勤める会社は、サルの勤める会社に対して、原材料の購入代金を支払うことを請求したわけ。 さて、この場合、サルの勤めている会社は、サルが転売してしまった商品の原材料の代金を支払わなければならないでしょうか? (最判昭和42年4月20日をベースにした質問) 少し事案が複雑だと思うから、下に図解しておいたから見て考えてね。 |
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まぁた悪いことした人は、すぐにあたしにするんだもんなぁ。 でも、あたしは、営業部門主任として、商品原材料の買い付けの仕事をしていたってことは、原材料の買い付けは、会社から、あたしに与えられた代理権の範囲内の代理行為ってことだよね。 コレ、結果的には、あたしが買った原材料を転売しちゃっているから問題ではあるけれど、まぁ、それはあたしに代理権を与えた結果なんだから、会社は代金を請求されたら払わないといけないってことになるんじゃないの? |
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藤先輩に代理権なんか与えるから、こういうことになるんです。 ただ気になるのは、黒田先輩は、藤先輩が、転売するつもりで原材料を購入しようとされたことについて知っていたんですよね・・・ そのことについては、検討しなくっていいんでしょうか? |
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この事案は、代理人が代理権の範囲内で代理行為を行ったもので、外形上は問題はないのですが、その実、自分の利益を図る目的で行っていて、本人(=会社)が損害を被ることになるという場合なんですよね。 いわゆる代理権の濫用事案と言えます。 |
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そうね。 ちょっと答えは出ていないみたいだけど、つかさちゃんが言ってくれたように、この事案は、代理権の濫用事案ね。 このような事案に対して、判例・通説は、93条但書の類推適用説という考え方を示しているわ。 民法第93条は、『意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。』と定めているわよね。 つまり、93条の心裡留保は、原則有効。 そして、例外的に、相手が、その表意者の真意(=デタラメであること)を知っている、又は、知ることができたときは、その意思表示は無効とするというのが、 但書きの内容よね。 この但書きを類推適用することによって、このような事案を処理しようというのが、93条但書の類推適用説という考え方なの。 では、どうやって考えるのか、というと・・・。 サルの勤める会社と、その会社の代理人であるサルとを、一体として捉えるのよね。 代理人サルの行為は、会社が本来サルに期待したものではないわよね。そこで、サルの会社=サルという1人の人間に擬人化して見ると、効果意思(=会社)と、表示行為(=サル)とが異なるものであるといえ、この点で、心裡留保に類似すると言えるわ。 そこで相手方が、表意者の真意・・・つまり、ここではサルの勤める会社の利益に、サルの行動が反していることを知っているか、または、知ることができたとき(悪意又は有過失)は、93条但書を類推適用して、その代理行為の効果を、会社に帰属させないと考えることが妥当だとするわけ。 従って、質問の事案では、つかさちゃんがサルの事情について知っていたことから悪意であると言えるため、93条但書類推適用説からは、サルの代理行為の効果が会社に帰属しないものである以上、会社は代金支払請求に対して支払義務を負わないこととなるわ。 |
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少し難しい・・・って振っておいて、この質問はないよねぇ。 全然ワカラナイ質問だったもん。 こんな答え出るわけないじゃない。 |
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でも、検討してくれていたみたいで何よりだったわ。 やっぱり、一度自分の頭を使って考えてから答えを聞いた方が、ただ聞くよりもいいかなぁ、って思うしね。 はい。次は、復代理についてね。 復代理(=復任)とは、代理人が、自己の権限内の代理行為を、他人(=復代理人)に行わせることをいうの。 そして、この復代理を行わせる権利を、復任権っていうのよ。 この復任権と、その責任は、法定代理と、任意代理とで異なるものだから、その点は注意してね。 基本的には、ここは条文知識だけだから、民法104条〜107条を、確認して内容を整理しておいてくれればいいわ。 |
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・・・いやぁ、多分やらない自信あるから、今、光ちゃんが軽くでいいから、まとめておいてくれると有難いかなぁ。 | ||
なんで、私が、あんたの怠慢を助長するようなことしないとならないのよ! でもまぁ、定期試験も近いし、時間ないってことはあるかもね。 それじゃ、軽くね? 一応、後でちゃんと条文は見ておいてね! 復任権は、法定代理では一般的に認められるの(106条)。 でも、任意代理では、原則、復任権はなくって、例外的に、本人の許諾があるか、やむを得ない事由があるときに限られるの(104条)。 これが何故かは、わかるわよね? 法定代理は、法律によって定められた代理人だから、当事者間の信頼関係によって代理人になるわけじゃないのだから、復任権を認めてあげないと代理人にとっても酷と言えるからよね。 これに対して、任意代理は、当事者間の信頼関係によって代理人を引き受けた以上は、他の人に任せるなんてこと(=復任)はダメでしょ、って話になるわけ。 でも、その任せた本人がいいよっていう場合や、已むにやまれぬ事情がある場合は、他の人に任せるということも認められるってことよね。 |
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なるほど、なるほど。 その調子で、代理人の責任の違いについてもお願いしまぁす。 |
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復代理をした場合の責任も、法定代理と、任意代理とでは大きく異なるわね。 復任権自体は、任意代理の場合は原則なし、で、法定代理は常にあるってことだったわよね。 じゃあ、復代理した代理人の責任はとなると。 任意代理の場合は、復代理人の選任・監督についての責任を負うにとどまるの。 しかも、この復代理人を、本人の指名によって選任したような場合には、その復代理人が代理人としては不適格・不誠実な人だよってことを伝えなかった、または、これを理由に解任しなかった場合にのみ責任を負う(105条)というものなのね。 一方、法定代理の場合は、原則として復代理人について全責任を負うということになっているの。但し、やむを得ない事由で復代理人を選任した場合は、その選任・監督についてのみ責任を負う(106条但書き)ってことになるんだけどね。 あ、そうそう。 コレは、任意代理・法定代理、共通の話になるんだけど、復代理人の地位についてね。 復代理人は、代理人の代理人じゃなくって、あくまでも、本人の代理人だからね(107条1項)。 それと、も一つ大事なことなんだけど。 代理人は、復代理をしたからって言って、代理人じゃなくなるわけじゃないわよ? 代理人は、復代理人を選任しても、その後も、本人の代理人のままだからね。ここは間違えないでね。 |
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え? そうなの? 復代理した場合は、後はソイツ(=復代理人)に任せて、代理人は代理人じゃなくなるのかと思った。 |
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違うわよ。 代理権の消滅については、ちゃんと条文にあるんだから、そこも抑えておいてよね。 代理権の消滅事由については、民法111条ね。 はい、六法ですぐ見る! |
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任せとけぇいっ! コロポックル! 出番だよ? |
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(ジトォ〜) | ||
え? ひょっとして、私のことでしょうか? |
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いやいやいや。 コロポックルって言ったら、アイヌの伝承に出てくる小人だからさぁ。 チビっ子じゃないとね。 ねぇ、ナカたん? |
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(ジトォ〜) | ||
先、進まないから、私がひいちゃうわよ? 民法第111条。 『(代理権の消滅事由) 第111条 1項 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。 1号 本人の死亡 2号 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。 2項 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。』 まとめておくと・・・。 法定代理・任意代理に共通の代理権の消滅事由としては、本人の死亡、代理人の死亡、代理人の破産手続開始の決定、後見開始の審判があるわね。 任意代理に特有の代理権の消滅事由としては、代理権を授与した原因関係、まぁ、主に委任関係を締結した契約の終了があるわね。 法定代理に特有の消滅事由としては、それぞれの法定代理ごとに、条文の定めがあるところになるわね。 あ、最初に例で出した、未成年者の親権者の場合は、その未成年者であった本人が、成年に達したら、法定代理の代理権も消滅することになるわね。 |
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あうあうあうあう。 明智先輩、ごめんなさいです。 でも、藤先輩が、また変なアダナで呼ぶものですから・・・ |
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コロポックル可愛いじゃない。 アレ? ひょっとして、キジムナーの方が、よかった? |
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(ジトォ〜) | ||
あんた、人に変なアダナをつけるのはやめなさいよね! ナカちゃんが、嫌がっているのがワカラナイの? じゃあ、最後に、ちょっとだけ付け加えを言って終わるわね。 本人の死亡によって代理権は消滅するっていうのは、一般的な代理権については当てはまるんだけど・・・ 訴訟代理権は、本人の死亡等によっては消滅しないの(民事訴訟法58条1項)。 あ、訴訟代理権っていうのは、例えば、弁護士を代理人として、裁判をしているような場合に、その弁護士に与えられた代理権のことね。 何故、訴訟代理権が、他の代理権同様、本人の死亡等を理由に消滅しないのかというと、この訴訟代理権は、本人に属しているというより、むしろ事件に属しているものとみられるためなのよね。 いわゆる、訴訟代理権の属物性って言葉で表されるんだけど。 まぁこれは、民法の話というよりも、民事訴訟法の話だから、一応付け加えってことで。 |
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ちょっとちょっと! 人に変なアダナつけるのはやめなさいって言う、光ちゃんだって、あたしのこと「サル」って呼んでいるじゃないの! |
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藤先輩が、私に変なアダナをつけるのをやめないのなら、私だって、藤先輩のことを「サル先輩」って、今度から呼ぶです! | ||
別に構わないお。 それじゃあ、あたしは、これからはナカたんをドンドン、アダナで呼んでいいってことだね? |
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イヤです! イヤです!! わ、わ、私は藤先輩って、これからも呼ぶので、アダナつけるのはダメですっ!! |
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イヤなサルだよねぇ〜。 今度一緒に、なんかサルが嫌がるようなアダナを考えよっか。 |
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・・・「サル」を嫌がらない藤さんの嫌がるアダナなんて、あるのでしょうか? | ||
あたしは「美人」って呼ばれるのが、すっごく怖いっ! |