制限行為能力者を、民法は4種に定型化しているわ。 未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人 の4種があるの。 あ、サル? ちゃんとPSPは持ってきた? 今日の理解如何では、私があんたのPSP預かるからね。 |
||
ちょ、ちょ、ちょ・・・ のっけから、なんの話してるの? 意味不明なんだけど! |
||
前回約束したじゃないの! 次回の勉強会で、理解が不十分だったら勉強時間確保のために、私があんたのPSPを預かるって話よ。 |
||
TVさえない、あたしの部屋からPSPを奪おうって・・・ 人はパンのみにて生くる者に非ずって言うじゃないの。PSPも必要だってことなんだよ! |
||
人はパンのみにて生くる者に非ずは、物質的満足だけで人は生きているわけではないって意味よ? その理屈なら、ますますPSPは要らないってことになっちゃうわよ? |
||
あわわわわ・・・ 違う、違う、そうじゃない! あ、ひ、ひ、光ちゃん! あのPSPは、死んだ爺ちゃんの形見なんだよ。 だから、片時も離したくないんだよ! |
||
サルのおじい様が亡くなったのは3年前でしょ? あんたが、あのPSPを手に入れたのは去年じゃないの。 騙そうとしてもダメよ? |
||
(くぅぅ、この女ぁ!) え・・・えっと、あの、あ・・・実は・・・そ、その・・・ |
||
もう、そんな言い訳を考えるくらいなら、今日の論点を考えるのに頭使ってよね! さぁ、もう、このやり取りはオシマイ! やるよ! |
||
う、うん・・・ (小声で↓) ねぇねぇ、ナカたん・・・ 光ちゃんに聞かれたら、小声であたしに教えてね! いいね!! |
||
は、はい・・・ 頑張ります・・・ |
||
ん? ナカちゃん、ナニ? 大丈夫? いきなり冒頭から脱線しちゃったけど、今日は、この制限行為能力者の中から、未成年者について学ぶわね。 未成年者の定義は、民法4条ね。 短い条文だけど、確認しておきましょ。 六法で、民法4条を見てみて。 |
||
民法第4条 『(成年)第4条 年齢二十歳をもって、成年とする。』 |
||
バッチリ理解しますた!! | ||
この条文を理解できない人はいないわよ! PSP没収には、そんなことは影響しないからね。 ただし、未成年者でも、婚姻すれば成年に達したものとみなされるという婚姻擬制が働くことは忘れないでね。 条文一応、確認しとこうかな。 民法753条を六法でひいてみて。 |
||
『(婚姻による成年擬制)第753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。』 バッチリ理解しますた!! |
||
だぁかぁらぁっ! 条文読んだだけで理解できることは、評価しないって言ってるでしょ! 未成年者は、行為制限能力者よね。 でも、特定の行為(場合)は、単独でなしうるの。 この特定の行為(場合)は、次のものよ。 @単に権利を取得し、または義務を免れる行為(民法5条1項但書) A処分を許された財産の処分(民法5条3項) B未成年者が、一種または数種の営業を許可された場合に、その営業に関して行った法律行為(民法6条1項) については、未成年者であっても単独でなしうるのよ。 |
||
民法第5条1項っ! 『(未成年者の法律行為)第5条 1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。』 民法第5条3項っ! 『(未成年者の法律行為)第5条 3項 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。』 そして民法第6条1項っ! 『(未成年者の営業許可)第6条 1項 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。』 はぁはぁはぁはぁ。 バッチリ理解しますた! |
||
まぁ、木下さんってスゴいんですねぇ。 条文を読んだだけで、その意味するところをバッチリ理解されてしまわれるなんて。 それじゃ、教えて頂こうかしら? 民法第6条1項にいう「営業」とは、どのようなものを言うのかしら? 定義について教えて下さらない? |
||
えい、ぎょ! ・・・ウプっ! えーよ(いいよ)とかけたんだけど、面白くない? |
||
ちっとも。 営業とは、営利を目的として、同種の行為を反復継続して行うことをいうのよ! 雇われて働いている場合は、ここにいう「営業」にはあたらないの。だから、アルバイトの未成年者は、「営業」をしている者とはされないから気を付けてねっ! あぁ〜あ。 木下さんのPSP、没収されちゃいそ〜。 大丈夫? |
||
ひぃぃぃぃいっ!! 条文一杯読んでアピールしたのに、光ちゃん厳しぃ〜。 ナカたん、あたしを助けてよ! |
||
あうううう。 藤先輩、御役に立てずゴメンナサイです・・・ |
||
それなりに頑張ってくれれば、私だって没収したくてするわけじゃないんだから、2人ともそんな顔しないでよ。 じゃあ、続けるわね。 未成年者が単独でなしうる上記の@〜Bを除く行為については、法定代理人の同意を得て、未成年者自ら、または、その法定代理人が代理して行うの。 そして、この場合において、未成年者が法定代理人の同意を得ずにした行為については、取り消すことができるのよ(民法5条2項)。 尚、取消権を行使することができる者、すなわち取消権者は、未成年者自身、および法定代理人ね(民法120条1項)。 |
||
民法第5条2項っ! 『(未成年者の法律行為)第5条 2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。』 民法第120条1項っ! 『(取消権者)第120条 1項 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。』 はぁはぁはぁはぁ。 今日は条文を読みまくっているなぁ。 これは、理解が深まりそ〜だなぁ〜。 |
||
読んでるだけに見えるんですけどぉ。 理解に努めて読んでいるようには、どうしても見えないんですけどぉ。 でも、六法を一生懸命ひいていることは評価してあげるわ。 いつも、ナカちゃんが頑張っているのを、今日は珍しくサルがしているなぁ〜くらいにはね! 取り消すことが出来る行為であっても、未成年者および法定代理人は、追認することができるの(後から、その行為を有効なものとして認めること)。 ただし、追認してしまったときは、それ以後は、最早取り消せないから注意してね(民法122条)。 もう一つ、注意が必要よね。 取消については未成年者のままでも出来るけれど、追認は、未成年者が行うには、法定代理人の同意、あるいは、未成年者自身が成年に達した後でなければできないわよ。 |
||
・・・えーっとね。 なんか、今更なんだけど、さっきから、ちょこちょこ出てくる法定代理人ってのが、よくワカラナイんだけど・・・ |
||
理解する上で、ワカラナイことを聞くことは必要よ! ソコは、もっと早く聞いてくれていいから。 未成年者の場合は、その保護者が法定代理人となるわ。 未成年者の保護者となる者は・・・ まずは、親権者(未成年者のお父さん、お母さん)よね。 もちろん、未成年者に親権者がいない場合も考えられるわよね。 でも、意思能力が不十分な未成年者については、法は、それらの者に対して放置しておくことは認めていないわ。 必ず、法定代理人を設けるの。 コレが、未成年後見人(民法828条1項、840条)よ。 未成年者の保護者(法定代理人)は、親権者または未成年後見人って覚えておいてね。 |
||
バッチリ理解しますた! | ||
一緒に勉強してるんだから、ワカッタ振りなんていらないから! ワカラナイことあったら、どんどん聞いてよね! 未成年者の保護者は、次の権限を持っているの。 @(法定)代理権(民法824条本文、895条1項) A同意権(民法5条1項) B取消権(民法120条1項) C追認権(民法122条) 内容については、これまでの説明の中で述べてきたから、中身については説明不要だよね。 それぞれの条文については、ちょっと多いから、復習の際に各自しっかり確認しておいてね。 |
||
ウキっ! バッチリ理解しますた! |
||
サムズアップ返しっ!! サル、今日は調子いいじゃない。 PSPを、毎日かけて勉強することにしちゃう? 次の論点は、ちょっと難しいところだから、その調子で頑張ってね。 取り消した場合の効果よ。 六法で、民法121条をひいてみて。 |
||
民法第121条っ! 『(取消しの効果)第121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。』 あ、この「現に利益を受けている限度」って、現存利益のことだよね? |
||
そうそう。失踪宣告の取消のところで勉強したもんね。 (※ 更新の都合上、先に上げてしまったため、話が前後してしまっていますが、現存利益については、第4節、16講失踪宣告@に解説があります。説明が前後して申し訳ございません。) 法律行為を取り消すと、その行為は「初めから無効であったものとみなす」こととなるの(遡及的無効)。 まだ結んだ契約についてお互いに未履行であれば、取消で、契約は初めっから無効となるんだから、お互いに相手に対して履行請求を拒絶すればいいだけよね。 問題は、既に履行してしまっていた場合(既履行)よね。 この場合においては、民法121条但書は、返還について特則を置いているわ。 制限行為能力者の善意・悪意にかかわりなく、その行為によって「現に利益を受けている限度」で返還すればよい、という特則ね。 |
||
こくこく(相槌) | ||
じゃあ、今日の勉強会の理解が出来ているかどうか・・・ サルに質問するからね! 正解ならば、PSPは安泰。 不正解なら要復習ってことで、PSPは預かりにしちゃうから! よく考えて答えてね? 質問です。 サルは大学1回生の18歳。 学費に使うようにと、お母さんから仕送りの10万円を振り込まれました。 ところが、サルときたらPSVitaとゲーム数本を、その10万円でお店から買ってしまったの。オマケに、PSVitaはプレイ中にサルが腹を立てて、壁にブチ当てて壊してしまい、ゲーム数本もあれやこれやで、全部破損ないし故障という有様。 さぁ、この状況を前提として。 サルは、このPSVita及びゲーム数本を購入した売買契約を取り消すことができるのか? もし仮に出来るという結論ならば、サルは10万円を、お店から返還してもらえるのか? その場合、サルは手元のPSVita等をどうすればいいのか? 考えてみてくれる? |
||
考えてみたんだけど、PSVitaは、あたしの大学1回生の頃はまだ販売されてなかったよ? | ||
そんなことは聞いてないから! 別に、当時販売していた適当なモノに勝手に脳内変換して考えてくれて構わないから! |
||
(小声で) ナカたん、ナカたん! 早く考えてっ! そして、あたしに答えを教えてっ!! |
||
(小声で) は、はいっ! 「学資」に使うようにとのことで仕送りの10万円を受け取っていますから、この10万円は、法定代理人(サルのお母さん)が、目的を定めて処分を許した財産ということになります。 したがって、目的の範囲内であれば未成年者は、単独で自由に処分できます(民法5条3項)が、そうでなければ法定代理人の同意なくして処分することはできません(民法5条1項)。 ですから、同意を欠く行為であるため、取り消すことが出来ます(民法5条2項)。 そして、質問の藤先輩は18歳で、未成年者である以上、法律行為は未成年者自身および、その法定代理人が取消権者であるため、この売買契約については取消権を行使できる(民法120条1項)はずです。 えーっと、えーっと。 法律行為を取り消すと、その行為は「初めから無効であったものとみなす」こととなる(遡及的無効)(民法121条本文)ので、藤先輩にゲーム機等を売ったお店は、売買契約が取り消しによって、初めから無効となった以上、藤先輩から受け取った10万円を返還しないとならないことになります。 つまり、藤先輩は10万円を返還してもらえます。 そ、そ、それからそれから・・・ 既に履行してしまっていた場合については、民法121条但書の返還についての特則があるので、藤先輩(制限行為能力者)は善意・悪意にかかわりなく、その行為によって「現に利益を受けている限度」(現存利益)で返還すればよいということなので・・・ 既に、PSVitaもゲームも壊れてしまっているのなら、その壊れたPSVita等をお店に返還すればいいんじゃないでしょうか? はぁはぁ・・・い、い、以上です・・・。 |
||
(小声で) え? マヂで? その結論合ってるの? あたし、あまりにやりたい放題じゃないの? 売った方は10万円返さないといけないわ、PSVitaは壊れて戻ってくるわって、それ、たまったもんじゃないよね? |
||
ううん。ナカちゃんの回答が正解でいいわよ? そのとおりね。 確かに、サルの思うところもなくはないわよね。 幾らなんでも、未成年者を保護し過ぎじゃないのか? って気持ちよね。確かに、大学1回生ともなれば18歳なんだし、この結論は、ちょっと行き過ぎという気持ちはワカルわ。 でも、これが民法の立場である以上、未成年者との取引をなす側が、このような結論となることも気を付けて、取引に臨む他ないと考えるべきということなんでしょうね。 まぁ、18歳のサルには責任能力が認められると考えれば、不法行為が成立する余地はあるとは思うけれど、そのことから、不法行為に基づく損害賠償ができる、とまで言えるかは微妙なところかなぁ。 売った側としては、泣き寝入りしたくないのなら、親の同意なり、本人確認をとって未成年者との取引か否かという点については、確かめることが大事ってことになるんでしょうね。 |
||
うひゃっ! 全部、光ちゃんに筒抜けだったんだ! ってか、地獄耳すぎんだろ、常考っ! |
||
全部ナカちゃんに言わせてるんじゃないわよ! あんた、ナカちゃんの回答にケチつけてただけで、何一つ考えていないじゃないのよ! これはもう問答無用でPSP没収よね? |
||
で、で、でもアレだよ? PSP没収されちゃったら、あたし生き甲斐なくして、やる気どころか生きる気力さえ失っちゃうかもだよ? |
||
な、な、ナニ、脅迫めいた言い方してくれちゃってるのよ! | ||
藤先輩が可哀相です・・・ | ||
可哀相ですぅ〜 | ||
そ、そうかな・・・ わ、私も、ちょっとPSP没収は、やり過ぎかなぁ、と思わなくはないんだけど・・・ |
||
(ナカたん、もうひと押し! なんかフォロってっ!) | ||
せめて学校が休みの日曜日くらいは遊べるようにしてあげて欲しいです・・・ | ||
んっ!? んんっ!? |
||
折衷案ね・・・ たしかに、サルが生き甲斐とまで言ってるんだから、それぐらいの譲歩はないといけないよね。 |
||
やだやだやだやだっ! 没収反対反対っ! 許して、許してよぉ! |
||
だって、あんた理解するもナニも、ナカちゃんに聞こうとしてただけじゃない。 そんな態度じゃ、PSP没収は仕方ないと思いなさいよ! |
||
でもでも、光ちゃん言ってくれたじゃないの! ワカッタ振りはいらない、一緒に勉強してるんだからワカラナイことあったらドンドン聞いてって! だから、あたし、ナカたんにも聞いたんだよ。 だって、ナカたんも一緒に勉強してる大切な仲間だもんね! |
||
藤先輩・・・。 | ||
光ちゃんの言葉を信じてワカッタ振りをせず、仲間のナカたんを信じてワカラナイことを聞いた結果が、PSP没収なんだ・・・ あたし、報われないなぁ・・・ |
||
・・・ふ、ふ、藤先輩・・・ | ||
や、やめてよ・・・ なんか私が完全に悪者みたいになってるじゃないのよ・・・ わかった、わかった、わかりました。 じゃあ、PSP没収は、とりあえず中止。コレでいい? |
||
あ・・・ 良かったですね。藤先輩。 |
||
ウキっ! (アホが。 最後の質問は、今日の勉強会の理解を聞いているんだから、わかっているかの確認のためであって、途中の質問とは意味が違うだろうが! まぁ、所詮は野球の何たるかも解せぬ巨人ファンってことだお。 ニシシシシシシシ。) |
||
・・・。 (藤先輩から、腹黒いオーラを感じます・・・) |
||
・・・なんか納得いかない気がするんだけど・・・気のせいかなぁ? | ||
気のせい、気のせい! あ、じゃあ、あたし近所のスーパーの見切り品買わないといけないから、もう帰るね! じゃねじゃね!! (スタコラサッサ) |
||
逃げた・・・わよね? | ||
はい・・・。 |