さぁ、ソレじゃ予告通り、超重要論点の「特定物債権」について今日の勉強会では学ぶわね。 ソレでは、先ずは言葉の定義からね。 特定物債権とは、特定物(この物)の引渡し(=占有の移転)を目的とする債権をいうわ。 |
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この債権総論の勉強会の当初から使っている、サルとナカちゃんとの売買契約を示す上の図。 コレは「サルの持っている家」って、売買契約の目的物を特定しているわけよね。 このような特定物売買における買主(図のナカちゃん)の目的物引渡請求権が、特定物債権ってことになるわ。 |
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もちろん、債権の発生原因の一つである契約は売買だけに限られませんから、例えば、竹中さんが藤さんの家を借りたいっていうような賃貸借契約において、借主(賃借人)である竹中さんが、貸主(賃貸人)である藤さんに対して、借りる部屋を渡すよう求める債権(目的物引渡し請求権)も特定物債権ってことですよね。 | ||
では、特定物債権の目的物となる『特定物』とはナニかって話になるわけよね。 ここに『特定物』とは、具体的な取引において、当事者がその物の個性に着目して引渡しの対象とした物をいうわ。 具体例を挙げるのなら、不動産や美術品がそうね。 |
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ほうほう。 確かに、不動産や美術品なんて、一品限りの物だかんね。 コレってもんしかないわけだおね。 |
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ちょっと、その理解だと雑かしら。 少し説明を入れさせて貰うわね。 コレしかないって物を『不代替物』っていうわ。 取り替えの効かない物って意味だけどね。 そうなると、不代替物は特定物だ!ってことが言えそうにも思えるんだけど、両者は必ずしも『=』ではないわ。 ただ、ほぼ等しいとは言えるから表記するなら『≒』ってことになるかしらね。 せっかくだから、不代替物と特定物との関係について、ちょっと整理しておくわね。 |
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上の図を見てくれるかしら。 不代替物か代替物か・・・という区別は、あくまでも物の客観的な性質による区別になるわ。 コレに対して、特定物か不特定物か、という区別は、物の客観的な性質による区別ではなく、当事者の主観による区別なのね。 勿論、この両者が一致していることも珍しくはないわ。 ただ、不代替物と特定物とを区別する決定的なものは、取引通念に基づく客観的な性質による区別ではなく、当事者が、その物の個性に着目しているか、という点が決定的になってくるのよね。 |
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す、すみません。 ちょっとワカリ辛いので、具体的な例を挙げて欲しいです。 |
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そうね。 例えば、ナカちゃんが家を買おうって思ったとするわよね。 同じ土地に建つ家は2軒とは存在しないわけだから、家は不代替物といえるわけよね。 |
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ですです。 |
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でも、ナカちゃんの希望する家が、2階建ての庭付きの家って内容のものであれば、その条件に見合う家は1軒ではないわけよね。 ということは、家自体は不代替物ではあるものの、特定物とは言えないってことにならないかしら。 |
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なるほど、なるほど。 家だと、あんまりピンと来ないけど、コッコ(木下家の「鶏」の呼び名)ならよくワカルお。 コッコには、それぞれ名前があるわけなんだし、どの子にも、それぞれ愛着があって掛け替えがないんだから不代替物だお。 でも、コッコを下さいって方は、コッコでありさえすればええわけなんだから、特定はしてないってわけだおね。 |
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そうね。 大体そういう理解でいいわ。 さて、ソレじゃもう少し特定物債権についての勉強会を進めるわよ? ちょっと、ここで六法を開いてもらって、民法第400条を見てくれるかしら。 |
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民法第400条 (特定物の引渡しの場合の注意義務) 『債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。』 |
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民法400条は、特定物債務者の保管義務について定めているわ。 特定物債権では、債務者は引渡しをする時点までは『善良な管理者の注意』をもって、その物を保管しなければならないわけね。 |
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いわゆる善管注意義務と呼ばれるものですね。 | ||
あ、なんか聞いたことあるね。 え? つまり、善良な管理人みたいに扱えってこと? ・・・ん? 自分で言ってて、ナニ言ってんだ、って思ってまったけど、どういうこと? |
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ナニ、1人で遊んでるのよ。 ここにいう『善良な管理者の注意』とは、合理的な人ならば、他人の財産を管理するときに尽くすであろう注意を尽くすことを求めているのよね。 換言するならば、取引上要求される注意義務を、個人の資質によるのではなく、合理的な人という客観的基準によることを定めているわけね。 |
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あたしとしては大事にしてたw ってのは通用しないってことかぁ。 |
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最後に「w」(=(笑))を付けている時点で、駄目な気がするです。 | ||
少し難しい話になるけれど、この善管注意義務の適用される場面について説明しておくことにするわね。 | ||
え? 条文が『その引渡しをするまで』って書いてあんだから、適用される場面なんて、ソコやないの? |
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うーん・・・ここで説明してしまうと、少しキャパオーバーかも知れないから、ちょっと別建てってことにしておくわね。 また学習が進んでから、改めて読むと理解できることと思うし。 (※ というわけで別建てにしております。 個人的には先の勉強を終えてから読まれると理解しやすいのではないかと思います。) |
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・・・ん? | ||
いやぁ、春先はおかしな人が出るって言うけど、マヂやないの。 光ちゃん、さっきから目ぇ開けたままブツブツ言ってたよ。 マヂこえぇーお。 |
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え? そうだった? |
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き、き、きっと毎日の勉強で疲れているんですよね? で、ですよね? |
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やだぁ、なんで、そんな少しヒいた言い方してるのよ。 | ||
そりゃ挙動不審な人には、そういう態度にもなるお。 残当じゃまいか。 |
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ちょっと光ちゃんが疲れているみたいですので、善管注意義務について最後に付け足しておく点については、私から述べさせて頂きますね。 債権成立時から履行期までの間に、善管注意義務が課される場合において、目的物の毀損または変更が生じ、それが債務者の責めに帰すべき事由によるときは、400条または他の規定による善管注意義務違反として、債務不履行責任(400条、415条)を負うことになります。 |
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そうね。 まぁ、その点については、また債務不履行の勉強会のところでって思っていたんだけれどね。 |
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あ、そうだったんですか。 す、す、すみませんっ! |
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クロちゃん、クロちゃんっ! おかしな人とは、あまり口きかないほーがええお!! |
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なんですって!? | ||
ウワッ!! あの目っ!! ガチでヤバい人だお!! |
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ちょっ! 人聞きの悪いこと言わないでよね!! あ、コラっ!! どこ行くのよ!! 待ちなさいよっ! |
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次回勉強会ですが、補講という位置づけにさせて頂きます。 次回の勉強会では、各論で学ぶ危険負担という考え方が出てきます。 後々の各論の勉強会を経れば、特定物売買と危険負担の問題についても、十分に理解頂けると思いますが、今の段階では、危険負担自体が前倒しになってしまうことから少し分かりづらいかも知れません。 そういった思いから、補講という位置づけにすることと致しました。 ですので、次回補講は読み飛ばして頂いても、債権総論の勉強会の理解には影響の少ない形をとるつもりです。 ご了承ください。 |