今日の勉強会では、種類債権の特定の効果について学ぶわね。 その後で、ここまで学んだ種類債権が理解出来ているのか、ってことを事例形式での質問で聞くことにするつもりよ。 |
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ワクワクしちゃうよぉ。 |
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・・・全くしない。 ・・・微塵もしない。 |
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前回の勉強会で学んだような特定の方法がなされることで、種類債権の「特定」があると、次のような効果が生ずることになるわ。 @種類債権の目的物が、特定の物に定まる A善管注意義務の発生(民法400条) B危険(対価危険)の移転(534条2項) C所有権の移転 といった効果ね。 それぞれの効果についてみていくことにするわね。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
先ずは@種類債権の目的物が、特定の物に定まるってことよね。 特定の物になったということは、どういうことかっていうと、特定された以降は、その物(特定物)を引き渡せば、それでいいってことなのよね。 このことを定めた条文が、民法483条ね。 見てくれるかしら。 |
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民法第483条 (特定物の現状による引渡し) 『債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。』 |
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次にA善管注意義務の発生(民法400条)ね。 種類債権が特定された以降は、特定物になるってことよね。 これにより、債務者は無限の調達義務という責任から解放される代わりに、特定された個物について、善良な管理者としての注意を尽くした保管義務(=善管注意義務)が生じることになるわ。 |
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代わりの物を調達せんでもええ代わりに、その特定された物については、他人の財産を管理するときに尽くすであろう注意を払えってことか。 まぁ、聞けば納得の話だよね。 |
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そうよね。 お米屋のチイちゃんの事案を素材に、この善管注意義務を考えてみましょうか。 コレは、前回の取立債務の際の図なんだけど・・・。 チイちゃんが、ナカちゃんに準備したから取りに来てーって連絡した後(=特定後)に、チイちゃんが店先を離れて・・・その間に、チイちゃんがナカちゃんに渡すように店先に置いておいたお米10sが何者かによって盗まれてしまったとしたら・・・。 |
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そりゃ、チイが悪いだろう。 常識的に考えて。 |
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ソコは法律的に考えて欲しいんだけどね! まぁ、でもそうよね。 この事案のような場合であれば、お米屋のチイちゃんには、お米10sを引き渡すことができなくなったことについて帰責事由(善管注意義務違反という過失)を問われる可能性が大きいといえるわけよね。 |
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なんか難しく言っとるけど、そりゃそうだよね。 | ||
難しく言っているわけじゃないわよ! 法律的に正しい表現をしてるだけじゃないのよ! えーっと、次はB危険(対価危険)の移転(534条2項)かな。 危険負担については、少し補講等で触れたと思うんだけれど、不特定物売買の場合には、原則として債務者主義(536条1項)をとるんだけど、特定すると特定物に関する債権者主義を定めた534条2項が適用されることとなるんだったわよね。 条文を、再度見ておきましょうか。 民法534条2項・・・あと合わせて401条2項も見てくれる? |
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民法第534条 (債権者の危険負担) 『1項 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する 2項 不特定物に関する契約については、第401条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。』 民法第401条 (種類債権) 『1項 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。 2項 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。』 |
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前回の勉強会の質問事案で触れたと思うけれど、判例・旧通説は、特定時説という考え方をとっているんだったわよね。 この考え方に立てば、534条2項が適用される場面ということになるわけだから、個物として特定された後に、その個物が債務者の帰責性なくして滅失したときは、対価危険は、債権者が負担するってことになるわけよね。 つまり、目的物を取得できなくなったとしても、債権者は、対価(目的物代金)を支払わなければならないということとなるわ。 |
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もっとも、この判例・旧通説の立場である特定時説の結論の当否については議論のあるところで、妥当ではない、とする批判から、引渡し時説(現実支配説)という有力な学説があることについては、再三紹介されていますよね。 | ||
うんにゃ。 初耳じゃね? |
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おぉぉぉぉぉぉぉぉっい!! ナニをシレっと、聞き逃しがたいことを言ってくれちゃっているのよ! |
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光ちゃん、藤さんのいつもの御冗談ですってば。 | ||
・・・。 (ど、ど、どっちなのかワカラナイのが、藤先輩の冗談のタチの悪いところです・・・。) |
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ホントに大丈夫なのかしら・・・。 ソレじゃ、最後にC所有権の移転についてね。 判例によれば(特約が特になければ)、特定された時点で、選定された個物の所有権が、債権者に移転することになるわね。 (最判昭和35年6月24日、最判昭和44年11月6日) 種類債権の特定の効果については、これくらいかしらね。 |
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ウホホーイ!! 終わった、終わったっ!! |
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違うよぉ。 まだ、ここまでの勉強の理解を聞いてくれる質問が、まだだよぉ。 だよね? 光おねーちゃん? |
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そうよね。 最初に、ちゃんと言ったじゃないのよ。 サルは、ホントなんなら覚えていてくれるのよ? もう! ソレじゃ、次の事案の種類債権の債務が、どのような債務なのか、そして、その債務においては、どのような行為をすれば『債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し』たとき(民法401条2項)といえ、特定が生じるのかを答えてくれるかしら。 |
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頑張るです! | ||
質問! 東京に住所を有するサルは、大阪に住所を有するナカちゃんとの間で、人形焼き20箱を売却する契約を結んだわ。 契約により、履行場所は名古屋にあるチイちゃんの会社の1号倉庫ってことになったわけね。 さて、この事案におけるサルの債務は? そして、この事案において、サルはどのような行為をすれば特定が生じるといえるのかを答えてくれる? |
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債務者である藤先輩、債権者である私の住所地以外の第三の場所に目的物を送付すべき債務であることから、この藤先輩の負う債務は、送付債務といえるです。 送付債務には、2つの場合があったですが、本件は、当初から、第三の場所が定められている場合(=第三地における履行が債務者の義務)です。 ということは、持参債務同様、藤先輩が、名古屋にあるチイちゃんの会社の1号倉庫で、人形焼き20箱の「現実の提供」をしなければ特定は生じない、ということになるです! |
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うんうん。 大正解っ!! ちょっと出目が低いって言ってた送付債務の事案だったけれど、よく理解出来ていると思うわ。 ソレじゃ、もう1問っ! |
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うげぇーーーっ!! | ||
質問! ナカちゃんは、お米屋さんのチイちゃんに電話をかけて @「お米10s」を注文し、 A「今から取りに行くから、店先に出しておいて欲しい」って伝えたわ。 この電話を受けてチイちゃんは B倉庫の米俵から10sの米を運び出して C米袋に詰めて D米袋に「ナカちゃん」って名札をつけて E店の入り口付近に置いて Fナカちゃんに、準備ができたことを電話で告げたのね。 さて、この事案におけるチイちゃんの債務は? そして、事案のどの段階で特定が生じたと言えるのか丸数字で答えてもらえるかしら? |
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今度はチイが答えたいよぉ! この事案は、債権者のナカちゃんが、債務者のチイのとこ(住所)にやって来て、取立てて履行を受ける債務だから、取立債務だよぉ。 取立債務においては、分離、準備、通知が特定を生じさせるためには求められるんだから、Fの段階で特定が生じることになるといえるよぉ。 |
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そうね。 この事案のにおけるチイちゃんの債務は、取立債務ってことになるわけよね。 取立債務ということから、米俵から10sの米を運び出したBの段階や、その後の米袋に名札をつけたDの段階では、まだ特定したことにはならないわけよね。 分離、準備そして通知(=口頭の提供)までが特定したことにするためには求められるんだったわよね。 だから、答えはFってことよね。 大正解よ。 うんうん、大丈夫みたいね。 |
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えへへへへへ。 一緒に勉強しているお陰だよぉ。 |
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そうね。 みんなもよく理解出来ているみたいだし、次回は積み残した論点を2つ消化して、種類債権の勉強会は終わりにしちゃいましょう。 |
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ハイです! | ||
ん? ん? 『勉強会は終わりにしちゃいましょう』? マヂで!? マヂで!? なんで、そんな話になったわけ? いやでも・・・なんだろ、この味わったことのない解放感は・・・ |
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・・・大事な言葉が抜けていますことよ? 『種類債権の』勉強会は・・・って話ですわよ? |
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なんだソレ! ぬか喜びさせてんじゃねぇお! |
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・・・。 (・・・ダメだ、こいつ・・・。 ・・・早くなんとかしないと・・・です。) |