物権変動における公示の原則を前回は勉強したわけだけど、ここで、物権変動における意思主義と対抗要件主義について、しっかり抑えておこうと思うわ。 | ||
対抗要件主義は、ええけど、そろそろ登記とやらについての説明を、して欲しいって思っとるんだけど・・・。 | ||
あら、珍しい。 随分と前向きな姿勢じゃない! うんうん、登記ね。 次回は、しっかり登記について説明するつもりだから。 今日は、その前提となる民法176条を理解することにして欲しいわ。 というわけで今一度、民法176条を見てくれるかしら。 |
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民法第176条 『(物権の設定及び移転) 第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。』 |
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民法176条は、意思主義を定めるものだって話はしたわよね。 『物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。』 と176条は定めているわ。 コレはどういうことかって言うと、ともかく登記なんてされなくっても物権変動は生ずるってことよね。 そこに必要なのは、意思表示だけってことよね。 |
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いや、意思表示だけで、ええって言われてもさぁ。 大根一本買うのと、土地を買うんではワケが違うじゃないの。 「大根下さい」「ハイ、どうぞ」なら、ソレで終わりでいいけどさ。 「家を下さい」「ハイ、どうぞ」ってわけには、いかんでしょ。 |
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そうよね。サルの言うとおりだと思うわ。 だから当然、土地や建物の売買においては、その後のことも契約で取り決めることとなるわ。 代金は、いつ、どのように支払うのか。 引渡しは、いつ行うのか。 移転登記は、いつするのか等々よね。 そうして代金が支払われ、引渡しがなされ、移転登記の手続きも終わると、売買の過程が終了し、物権の変動も完了することになるわけよね。 この過程において、どの時点で物権の変動・・・例えば、土地ならば、どの時点で所有権の移転が生じているのか、ってことが問題になるんだけど、176条は、ソレは意思表示の時点で、所有権は移転するって定めているわけ。 |
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物権変動の過程において、所有権移転の時期をどのように考えるべきか、という問題についての判例もありますよね。 最高裁は 『売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するのが相当とする。』 としています。 (百選T 6版48事件 7版50事件 最判昭和33年6月20日) つまり、当事者間に特約がなければ、売買契約の成立時点をもって所有権移転は生じる、としているわけですよね(契約成立時説)。 |
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マヂでか・・・。 結構、アッサリと土地の所有権って移転してまうんだな・・・。 |
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ココに、ひとつ学説の対立があるわね。 この所有権移転の意思表示とは、売買契約とは別個のものなのか、どうか、って議論があるのよね。 つまり、売買契約とは別個に所有権移転のための意思表示(合意)が必要なのか、どうかっていう議論ね。 サルが指摘するように、大根1本買うのとはワケが違うんだから、所有権移転のためには、売買契約とは別個に独自の物権行為が必要だと捉える考え方もあるわ。 物権行為独自性説と呼ばれる考え方ね。 これに対して、売買契約自体が176条にいう意思表示なのだ、と捉える考え方もあるわ。物権行為独自性否定説と呼ばれる考え方ね。 この考え方では、所有権は売買契約によって移転するってことになるわ。 日本では、意思表示さえあれば登記はされなくても所有権は移転するということなんだから、つかさちゃんの紹介してくれた判例の立場からも、この後者の物権行為独自性否定説の考え方が妥当するといえるわよね。 |
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成程ねぇ〜。 まぁ、意思主義っていうくらいなんだから、売主と買主の合意があるなら、別に、ソレでいんじゃね? |
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ナニよ・・・珍しく意欲的な姿勢だなぁ、って思ったら、その返しは! 大事なのはココからよ! 売主と買主の合意で、所有権移転が生ずる・・・のは、いいとして、この売主と買主の合意自体は外部からは見えないわけよね? 仮に所有権移転には登記が必要だってことであれば、登記によって外部から、所有権移転を認識することは可能となるわ。 でも、所有権移転は当事者間の合意のみでなされる、となると、外部からは認識し得ないために、前回の事例で聞いたような問題も生ずるわけよね。 そこで、対抗要件ということが求められることになるわけ。 六法で177条を見てくれる? |
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民法第177条 『(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。』 |
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『物権の得喪及び変更』つまり、所有権を得た買主、または所有権を失った売主は『登記をしなければ、第三者』つまり、売買の当事者である売主と買主以外の者に対しては『対抗』つまり、そのことを主張『することができない』とされているわよね。 これが対抗要件主義という考え方なの。 所有権移転のみで物権変動が生ずる意思主義という建前と、現実問題としての所有権帰属という問題についての対抗要件主義とが、物権変動では結びついていることが分かるかしら。 物権変動は、民法物権総則の基本にして要となるところだから、敢えて、しっかりと説明したわけなんだけど、伝わったかしら。 |
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おんなじような話を、何度もしてんじゃねぇーよ、とマヂレス。 | ||
なんてこと言うのっ! オネーちゃんはっ!! 大事なのは、何度も反復して理解することなんだよ! 光おねーちゃんは、大事なことだって思えばこそ、こうしてチイ達に話してくれているんだよ! 光おねーちゃんに謝りなよっ! |
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えーっと・・・ふ、藤さんは人一倍普段から勉強されてみえるので、流石に食傷気味だったということじゃないかと思いますが・・・。 ただ、理解の基本は反復ですから、他の人にとっては必要な話だったとは思いますね、ええ。 |
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つかさちゃんも、サルのフォローなんて無理矢理しなくってもいいのに。 あ、そうそう。 物権変動における有因と無因という問題もあるわね。 この流れで説明しておくことにするわ。 どういう問題かって言うと、物権変動の原因となる債権契約(売買契約など)が無効となった場合に、そのことが物権行為にも影響するか、っていう問題なのね。 原因行為(売買契約)が無効であるならば、それを原因とする物権行為も当然無効になる、という考え方を有因主義というの。 これに対して、原因行為が無効であっても、それによって物権行為は影響を受けず、物権行為の結果として生じた物権変動(所有権移転)は、そのままである(つまり、所有権は買主の元に残る)という考え方が無因主義なのね。 有因主義と無因主義とでは、その後の処理が異なることになるわ。 有因主義に立つ場合は、売買契約の無効の効果(遡及的無効)から、所有権は初めから買主には移転しなかったと考えるから、売主は所有権ではなく、移転した登記や、占有を戻せって、買主に対して主張することになるわね。 無因主義に立つ場合は、売主は買主のところに残った所有権を、売買契約が無効となった以上、法律上の原因を欠く利得だという理由から、不当利得として返還請求することになるわけよね。 有因主義による理解が、一般に当事者の意思に合致するものといえると思うわ。 |
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・・・急に話が見えなくなったような気が。 | ||
真面目に聞いてないからだよっ! 有因主義、無因主義の話は、物権行為独自性説の話を前提として出てくる議論なんだから、同じような話だと思って、聞き流していたオネーちゃんのせいだよ! |
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・・・コイツ。 姉である、あたしに対するリスペクトの気持ちが皆無じゃないかお。 決めたお! チイの今日の晩飯は、ご飯3合までしか食わせてやらねぇお! |
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・・・3合までしか・・・って、普段は何合食べているんですか・・・。 | ||
と、こんなところかな。 少し短い気もするけれど、キリがいいから、ここまでにしようと思うわ。 次回は登記について、ってことなんだけれど、登記の話自体は、民法の勉強というより、むしろ登記制度という制度についての説明になっちゃうから、勉強会って形じゃなくって、お茶でもしながらってことでいいと思うんだけど、どうかしら? |
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賛成、賛成、大賛成っ!!! いやぁ、流石、光ちゃんっ! そういう柔軟な発想から来る誰しもが喜ぶであろう提案を即座に思いつくとこは、ホント素晴らしいの一言だよっ! 頭のいい人っていうのは、やっぱり違うよね! 天才じゃね? 天才降臨じゃね? |
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・・・ソコまで言うと、逆に馬鹿にしているようにしか聞こえないです。 | ||
ちょっとぉ。 天才は、いくらなんでも褒め過ぎよぉ。 |
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あ・・・そう言えば、明智先輩は褒められるの大好きでした・・・。 | ||
お茶を飲みながら・・・。 ってことは喫茶店なの!? |
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チイちゃんも気に入ってくれたネージュ・ブロンシュにしようかと思っているわ。 | ||
やったぁぁぁぁっ!! チイ、あのお店大好きだよっ! ウワー、楽しみでワクワクしちゃって、今夜は眠れそうにないよぉ〜っ! |
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チイちゃん、良かったですね。 光ちゃんも素敵な提案をしてくれますね。 |
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・・・。 (いやいやいや。 明智先輩も黒田先輩も、いつぞやのことをお忘れなんでしょうか・・・。 お店でケーキを買われて、藤先輩のお宅に行くなどの対策は不要と考えているんでしょうか・・・。 ) |