民法第三章の所有権、第三節の共有について、勉強することにするわね。 民法は『共有』と題する節を所有権の章の中において、249条から264条までの規定を置いているわ。 でも、共有には3つの形態があるの。 今日は、まずそのことを抑えておこうと思うわ。 |
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ほむほむ。 ココで「共有」の話になるわけね。 |
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そうね。 「共有」には、まず次のような3つの形態があるとされているわ。 名前だけ先に挙げておくと、 @総有 A合有 B共有 の3形態ね。 |
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3形態かぁ。 なんか『マクロス』のバルキリーみたいだね。 バルキリーも、通常の戦闘機形態(ファイター)と、手足を展開した中間形態(ガウォーク)と、人型ロボット形態(バトロイド)の3形態があるもんね。 |
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マクロスは『マクロスF』が好きです! クラン・クラン大尉がお気に入りです! |
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ゴメン、ちょっとよくワカラナイんだけど、ソレは共有の話と関係のある話題なの? | ||
あ・・・全くないです・・・。 |
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でしょうね。 ちょっと、サルっ!! ナニ、あんたは関係のない合いの手を入れてきてんのよ! 真面目に聴きなさいよねっ! えーっと、今日の勉強会では、この共有の3つの形態について、1つずつ抑えることにするわね。 それじゃ、まずは@総有からね。 |
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ん!? ソレ、民法総則の勉強会で出てきたよね? |
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あら、ちゃんと関係のある合いの手じゃないの。 そういう合いの手は大歓迎だからね! そうね、「総有」については民法総則の勉強会でも軽く触れたわよね。 ここで、しっかり抑えておくことにするわ。 総有の例としては、よく学生サークルなどが挙げられるわね。 例えば、野球サークル。この野球サークルで、サークルメンバーが部費を出し合って、サークル活動に必要な物品(野球ボールやバット等)を購入したとするわ。 それでは、この野球ボールは誰の所有物になるのか? ということを考えて欲しいわ。 |
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え? そんなもの聴くまでもないでしょ、あたしの物じゃね? |
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どうして、そうなるですか! 藤先輩は、関係していないじゃないですか! 野球ボールを買ったお金は、部費としてサークルメンバーみんなが出し合ったものです。 だったら、その野球ボールは、そのサークルの所有物になると思うです。 |
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そうね。 ナカちゃんが言うように、サークルの所有物だって普通はいいたいところよね。 でも民法総則で学んだように、所有権の主体となる(=所有者となる)には、法的人格(=法人格)を有することが必要だったわよね。 (※ 民法総則18回勉強会 法人@ 法人の概念参照) でも、サークルは法人ではない以上、法人格を有してはいないわ。 そうであれば、野球ボールの所有者が、サークルであるとは法的にはいえないことになるわよね。 |
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あ・・・そうなるです・・・。 じゃあ、一体誰の物になるですか? |
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やっぱり、あたしじゃね? | ||
サルは、ちょっと黙ってなさいよっ! この点については勉強したっていうのに、なんで、そういうことしか言えないのよ! この場合は、野球ボールは、サークルメンバー全員の共有という他は、ないわよね。 本来であれば、ナカちゃんがいうように野球ボールは、サークルの物といいたいところ、サークルには法人格がないため、便宜上、サークル員全員の共有の形をとっている過ぎず、サークル員それぞれに持分(モチブン)があるというわけではないことになるわ。 このような『権利能力のない社団』(民法総則21回勉強会 法人C 権利能力なき社団参照)に属する物の所有関係を説明するのに、「総有」という共有形態が用いられるわ。 この「総有」の用いられる他の場合には、入会地(イリアイチ)の所有、利用関係もあるわね。 入会権(イリアイケン)については民法は、基本的には、それぞれ、その地方の慣習を尊重すると共に、共有の性質を有するものについては共有の規定を適用し(263条)、そうではないものについては地役権(チエキケン)の規定を準用する(294条)としているわ。 でも、ここにいう「共有」は「総有」と考えるべき、とされているわね。 |
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イリアイチ? なに、それ? |
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入会地や地役権については、この後の用益物権の勉強会でまたすることにするわ。 今は、言葉だけ抑えておいて、後からまた復習してくれればいいからね。 |
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・・・ちょっと、チイは「総有」については理解が弱そうだから・・・もう少し具体的に教えて欲しいんだけど、いいのかな? | ||
あ、そうなんだ。 じゃあ、さっきの野球サークルの例をつかって具体的に話すと・・・。 野球ボールが、サークルの物だとは言えない以上、サークルメンバー全員の共有(=総有)ということになるってことだったわよね。 つまり、サークル員は、サークルのメンバーであることによって、共有者としての地位に立ち、そのサークルから卒業や脱会などで抜けることによって、共有者としての地位を失うことになるわ。 また、サークル員でいる間に、例えば、野球ボールの1個について、サークル員が持分を有したり、サークルを辞める際に、その持分を返せと言ったり、サークル員が、その持分を第三者に売ってしまって、その買った第三者が共有者の1人になる、といったことは認められないってことになるわけ。 まぁ、この後勉強する「共有」のときにも「総有」や「合有」との違いについては伝えるつもりだから、そんな心配そうな顔しないでいいと思うわよ。 |
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チ、チイ、そんな心配そうな顔していた? | ||
してた、してた。 昨日の夜の、炊飯器の残りのご飯を確認するときくらい心配そうな顔してた。 |
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アレは仕方ないよ! オネーちゃん、ご飯、すっごい食べるんだもん! ソレは、チイだって心配になるよっ!! |
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・・・。 (言っておくが、お前の食べる量は、あたしの2倍を遙かに凌駕してんだけどな! どの口で、あたしを非難してんだおっ!! ) |
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えーっと、じゃあ、次にA合有について話すわね。 @総有ほどメンバーの結合が強固ではないけれど、一定の共同目的のために、共同で管理している物の所有関係をあらわすために、この「合有」という観念が用いられるのね。 例えば、2006年の新法である信託法79条では、受託者が2人以上いるときは、その信託財産は「合有」になると規定されているわ。 |
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し、し、信託法? うーん、もう少しワカリやすい例えを挙げて「合有」を説明してくんないかな? |
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そうね・・・例えば、私とサルとナカちゃんで集まって、一緒に、オニギリを売ろうっていう企画を立てたとするわよね。 サルがお米を持ってきて、お米を大量に炊く炊飯器は私が用意して、ナカちゃんは自転車を改造して移動販売できるようにした物を、それぞれ持ち寄ったとしましょ。 そして、オニギリを作って売り歩いて、売れたお金を分けて、それぞれのものにしようって決めたとするわ。 この企画・・・というより、これはもう共同事業よね。この事業を続けている間の、この米や炊飯器や改造自転車は、誰の所有か、という問題を考えてみて欲しいわ。 |
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・・・お米は、あたしが持ってきた物なんだから、間違いなく、あたしの物だお。 ・・・で、炊飯器は、そんなデッカいのあっても邪魔だし、いらないから、あたしの物じゃないお。 うーん、自転車はチビッ子の改造は信用できないから、少し迷うけど、いらない。だからソレも、あたしの物じゃないお。 |
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欲しいか、欲しくないかで考える問題なのかなぁ? チイは違うと思うけどなぁ。 うーん、でも一緒に事業をやろうって決めて、共同事業を始めたのに、誰かが、その事業に必要な物を持っていっちゃったら、残った人だって困ると思うよ。 |
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そうよね。 チイちゃんのように考えるべきだと私も思うわ。 私とサルとナカちゃんとは、一緒に事業を始めようって合意をした以上は、少なくとも事業を続けている間は、その持分を他人に売ったり、自分が抜けるからって言って、その持分を返せ、と言うことはできないと考えるべきよね。 だって、そうじゃないと、せっかく始めた事業も続けることが出来なくなっちゃうわけだものね。 民法では「組合契約」といって、契約の一例として規定を置いているわ(667条〜688条)。 その規定においては、組合の財産は「共有」とされているけれど(668条)、組合員は組合財産の持分を処分しても、それを組合や第三者に対抗できないし(676条1項)、清算、つまり事業をやめるまでは組合財産の分割を求めることができない(676条2項)とされているわけね。 ここにいう「共有」を「合有」というわけ。 |
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「合有」の例としては、今、光ちゃんが挙げてくれた組合財産以外にも、共同相続財産で、遺産の分割が行われる前の状態を、共同相続人の「合有」として説明する考え方もありますよね。 ここにいう「共有」も、最終的には遺産分割に至るまで、遺産分割という事業に向けて、各共同相続人が協力し合うことが期待されているものであることを考えると、「合有」と考えるべきなのかも知れないですよね。 |
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ふむふむ・・・。 なんか色々な所有形態があるわけね。 バルキリーみたく、パッと見てワカルものにしてくれればいいのになぁ。 |
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はい、ストップ、ストォーップっ!! 関係ない合いの手は認めてませぇーーんっ! はい、それじゃ最後に、B共有についてね。 民法第三節にいう共有として、249条以下に定められている『共有』は、まったく個人的なものをいうのね。 共有者相互間には、何の連携関係もなく、各共有者の持分は自由なの。 まぁ、この点については、次回の勉強会で詳しく勉強することにしたいって思っているけれどね。 このB共有について、簡単な例を挙げておくと、例えば、私とサルとナカちゃんとで共同である物を買ったときの、その物についての所有関係は、私達3人の共有となるってことね。 まぁ、実際に、この共有が生ずる場合として、最も多いのは共同相続が開始したときが多いみたいだけれどね。 共有を巡る紛争も、多くは、このような共同相続人間で生ずるものなのも、そのせいよね。 |
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私の実家の、いわゆるマンション(建物の区分所有)なんかですと、マンション敷地内のパティオ等は共有部分って呼ばれますよね。 この共有部分については、建物区分所有法11条で特殊な規定がおかれているみたいですね。 |
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単に一緒に持っとる・・・っていうのにも、色々あるわけかぁ。 コレはアレだね、ガンダムやザクと一口に言っても、様々なバリエーションが展開されとるってのと同じことだね。 |
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・・・あんた、今日は最後まで関係のない合いの手や、まとめで終わっちゃったわね・・・。 | ||
・・・・。 (あうあうあうあう。 私、藤先輩のスパロボネタは大好きなんですが・・・。 確かに、勉強会とは一切関係ないです・・・。 いつも、ついつい乗っかってしまうのは反省しないといけないです。) |