憲法改正の手続と限界 
今日の勉強会で学ぶ論点は、次の2つになるわ。

憲法改正の手続
  と
憲法改正の限界

の2つね。

択一で問われる知識って位置づけになるところだけれど、一通り抑えておくことにしましょうか。
憲法改正かぁ。
なんか最近、ニュースとかでもよく話題になっている話だよね。
そうよね。
それじゃ、先ずは憲法改正の手続からね。

先ずは、日本国憲法で、唯一改正について述べている憲法96条を六法で見てくれる?
日本国憲法第96条

『日本国憲法第96条 【改正の手続、その公布】
1項 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2項 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布す。』
・・・この条文・・・すっごい昔にいっぺん見たよね。
よく憶えているわね。
実は、記念すべき第1回の憲法の勉強会でサルが、六法を開いて読んだ条文よね。
・・・オネーちゃんでも六法開くことあるんだ・・・。
チイちゃんのお姉さんは、六法の内容は全て頭に入ってみえますからね。
確認の意味で見ることはあっても、基本必要とはされてみえないんですよ。
・・・つ、つ、つかさちゃん・・・。
なんか、ますますサルへの認識が、とんでもないことになっちゃっていない?

この憲法96条1項前段国会による発議と、後段国民投票について、まとめるわね。

憲法96条1項前段にいう『発議』とは、通常の議案について国会法などでいわれる発議』(合議体において議案や動議など議事の対象となるべき案件を提起すること)とは異なり、国民に提案される憲法改正案を国会が決定することをいうものとされるわ。

因みに、この議員の原案提出権については、議員が有するということには争いはないわ。
国会法68条の2において、憲法改正原案を発議するには、衆議院議員の100人以上、参議院議員の50人以上の賛成を必要とする、とされているわ。
  こくこく(相づち)。
少し細かい論点にはなるんだけれど、内閣が、憲法改正発案権憲法改正の発議権を有しているか、という論点があるわね。

学説の争いのあるところなんだけれど、憲法は内閣の発議権を否定しておらず、憲法改正を含めて議案の提出権を認めている、という肯定説

この考え方に対して、憲法改正は国民の憲法制定権力の作用であるから、国民の最終的決定の対象となる原案の内容を確定する行為を国会が行うのは当然であり、それを考えれば発議の手続の一部をなすものとも考えられる原案提出権は、議員のみに属すると解するのが憲法の精神に合致するという否定説とがあるわ。

因みに、後者の否定説の考え方が多数説とされているわね。
あ、でも憲法68条1項を見てもらっていいですか?
日本国憲法第68条第1項

『日本国憲法第68条 【国務大臣の任命】
1項 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。』
ですよね。

つまり、国務大臣の過半数は国会議員であること憲法68条1項から要求されているわけです。

このことから、内閣の発議権を議論する実益は乏しい、とする指摘もあるんですよね。
この見解に立てば、内閣の憲法改正発議権を認める肯定説の考え方で理解しておけばいいかなって話になりますよね。
ふむふむ。
ソレなら、あたしは肯定説で抑えておくかな。
つかさちゃん、いい補足をしてくれたわね。
それじゃ、私からも少し補足を入れておこうかな。

国会法68条の3で、憲法改正原案の発議にあたっては、内容において関連する事項ごとに区別して行われると定められているわ。

そうそう。
憲法改正原案の審議・議決においては、衆議院の優越は認められていないのよね。
  成程、成程だよ!
えーっと、憲法96条1項後段にある国民投票要件である『その過半数』という憲法の文言を、どのように解すべきか、ということも問題になっているわね。

@有権者の過半数
A無効票を含めた総投票の過半数
B有効投票の過半数


つの考え方があるところだけれど、通説的理解としてはB有効投票の過半数とされているわね。



流れで、憲法96条2項にいう憲法改正についての公布』についても、まとめておくわね。
国民の過半数の賛成が確定して、国民の承認が得られたとき、憲法改正は確定することとなるわ。

憲法96条2項から
天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する
と、定められているわ。

このため、国民の承認の通知を受けると、総理大臣は直ちに公布の手続をとらなければならないわ(国民投票法126条2項)。
そして、憲法改正の公布は、憲法7条1号にある天皇の国事行為であるため、内閣の助言と承認の下で行われることになるわけね。
  こくこく(相づち)。
それじゃ、今日の勉強会のもう一つの論点になる憲法改正の限界についてね。

日本国憲法の改正限界について、学説は大きくつに分けられるわ。

憲法改正の限界の有無の肯否から

@改正無限界説
   と
A改正限界説

説ね。

踏み込むと、さらに学説も分かれるところだから、ザックリと憲法改正には限界があるとするA改正限界説で抑えておけばいいと思うわ。
いくらでも変えていいってわけじゃないんよ。
って考え方が妥当ってこと?
そうね。

芦部先生も、改正権の生みの親は制定権であるから、改正権が自己の存立の基盤ともいうべき制定権の所在、すなわち制定権が憲法内在化された国民主権の原理を、憲法の定める手続きによって変更することは、いわば自殺行為であり、改正無限界説は採用し得ないとするお考えから、改正限界説のお立場だからね。
その理解で、いいんじゃないのかしら。

まぁ、国会答弁において内閣法制局長官
憲法改正の手続をもってしても、主権在民の原則を変えるということは現在の憲法は予想していない
主権在民の原則、それから国際的な平和強調主義、それから基本的人権のうちの重要な部分、そういうたぐいのものは、これは憲法が将来にわたって国民に保障しているというふうに見ていい
としていることから、少なくとも内閣法制局も、改正限界説の立場をとっていると言っていいと思うわ。
憲法改正には限界があるってことは、よく話題になっとる戦力不保持を定める憲法9条は、改正の限界を超えるものになんのかな
それとも、憲法改正の手続を踏めば、内容の改正が許されるってことになんのかな
一般には、憲法9条2項の改正までを理論上不可能であるとは考えることはできない、と解されているみたいね。
  ・・・。
あら・・・どうしたの?
ナニか、不満でもあるの?
いや・・・今、憲法9条って口にして気付いたんだけど・・・。
憲法9条については勉強会やってなくね?
・・・そうね。
日本国憲法第2章第9条戦争の放棄についての勉強会は、実は飛ばしているわね。
  なんで?
憲法9条については、最近は議論の遡上に上がることも多いし、この9条の問題だけを扱った書籍や専門書なんかも豊富なところだし、ナニより、この問題をどう考えるかについては、最近だとでよく議論にもなっているし、それぞれの考え方もあるだろうから避けたのよね。

大丈夫よ。
勉強会については、体系的・網羅的なものではないって断りも伝えてるんだし、ここまで特に突っ込みもなかったわけだから、私としては今日の勉強会をもって憲法統治機構の勉強会を最終回にしようって思っているわ。
わ、私は憲法9条の勉強会なら是非やって欲しいです!
あたしは、やんなくっていいお。
あんたは、いつだって、その答えでしょうに。

そうね。
新司法試験では択一としての知識が求められるところだけれど、裏を返せば、択一としての知識しか求められないところだからね。
論文で問われることは、天皇と並んで考えにくいところだしね。
そんなわけで、この勉強会をもって終わっておこうと思うの。
ううう・・・やって欲しかったです・・・。
じゃあ、ナカちゃんは、チイと一緒に勉強会をしようよ!
え?
チイちゃんが私に教えてくれるですか?
うんうん。
チイで良ければ、ナカちゃんに、チイのワカる範囲で勉強会をするよ!
  ワーイ!
嬉しいです!
  えへへへへ。
チイちゃんなら安心ね。
ソレじゃ、ナカちゃんには申し訳ないけれど、憲法統治機構の勉強会は今日でお終いってことにするわね。
申し訳なくなんかないです!
一緒に参加させてもらえて嬉しかったです!
ありがとうです!!
私は途中からの参加だったんですけど、とても楽しかったです。
是非、次は最初っから参加させて欲しいですね。
  ソレなら、チイもだよぉ!
チイちゃんは、憲法勉強会の開始当時は居なかったものね。
実は、憲法統治機構の勉強会は、開始が一番早い勉強会だったんだけれど、ホントに長くかかっちゃったわね。
確かに、確かに。
司法の勉強会やっとるときなんて、コレいつ終わるんだろ・・・って怖くなったけれど、終わった今となっては・・・・

あ、別にいい思い出ってわけでもなんでもねぇお。
えがった、えがった。
終わってくれて、とにかく、えがった。
・・・なんて感想かしら。
このサルだけは・・・。
  ウキっ!!
 というわけで憲法統治機構の勉強会は、この回をもって最終回と致します。

 憲法9条についての勉強会はしておりませんが、その理由は光ちゃんのコメントにある通りです。
 また事実、ここまでの更新において9条を飛ばしている点についての御指摘がなかったこともあります。
 需要が多ければ、末尾で述べたようにチイとナカちゃん・・・まぁ、主役ですからサルも含めた勉強会も検討しますが、9条については多分にアホの管理人自身のイデオロギー的な主張も懸念されるところで、結果偏った理解を伝えることになるのではないかという思いから避けたところです。

 ですので『需要が多ければ』と付言しておりますが、ここにいう『需要』は相当多くなければ、やる予定はないと思って下さって結構です。試験的には択一に必要な知識で十分だといえますので、お持ちの基本書を一読されることで、いいかと思っております。仲間内での勉強の際の議論でも、よく平行線になったりしたところなので、あまり踏み込みたくないんですよね・・・すみません。

                                         アホの管理人

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