条例制定権の範囲と限界 | ||
いやぁ、喰った、喰ったぁ。 この前のゴチでは、ホントたらふく食べたぁ。 お寿司なんて、最初っから大トロからだかんね!! 大トロ、大トロ、大トロときて、中トロと見せ掛けての大トロですよ!! |
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藤さん、ホントお寿司好きですよね。 でも随分と、いいお店に連れて行って貰えたみたいで何よりです。 |
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むぅぅぅぅぅぅぅっ!! オネーちゃんだけ、光おねーちゃんに御馳走してもらうなんてズルいよ、ズルいよぉ!! |
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なぁーに言ってんの! チイにも、優しいお姉ちゃんは、ちゃんとオミヤを持って帰って来て上げたじゃないの。 |
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お土産は散らし寿司だったよぉ。 チイも大トロを食べたかったよぉ!! |
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あの味は、お子様には、まだ早いね。 まぁ、チビッ子は、黙って卵でも食べてろってことだお!! |
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むぅぅぅぅぅぅぅっ!! | ||
あ、もう、みんな来てるんだ。 遅くなってゴメンね。 それじゃ、今日の勉強会始めましょうか。 |
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明智先輩・・・。 お疲れ様でした・・・。 |
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え? ナニを、そんなに心配してくれてるの? あ、もしかしてサルの御馳走のこと? まぁ、サルも満足してくれたみたいだし、いいわよ。 それじゃ、前回の続きから入りましょうか。 前回の勉強会で話した条例制定権の範囲と限界という問題は、次の2つの場面に分けて考えるべき問題ってことだったわよね。 @条例による地域的取扱いの差異と平等原則 A憲法の法律留保事項と条例 という2つの場面ね。 そして、前回の勉強会では、このうち@の場面についての判例を見たわけよね。 というわけで、今日の勉強会では、Aの場面についての判例を見ていくことにしたいと思うわ。 |
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はいはぁーい!! | ||
珍しく元気一杯じゃないの。サルは。 このA憲法の法律留保事項と条例という問題は、さらに2つの問題に分けて見る必要があるわ。 財産権の問題 と 条例と罰則の問題 の2つの問題ね。 それじゃ、先ずは条例制定権と財産権の問題を見てみることにしましょうか。 |
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どういう問題なのか、よくワカリマセン! | ||
そうね、もう少し噛み砕いて説明した方がいいわよね。 えーっと、六法で憲法29条を見てくれる? |
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日本国憲法第29条 『日本国憲法第29条 【財産権】 1項 財産権は、これを侵してはならない。 2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。 3項 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。』 |
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そうね。 憲法29条によれば、財産権は侵してはならない(29条1項)もので、その内容は、公共の福祉に適合するように『法律でこれを定める』と規定されているわけよね。 となると、この憲法29条2項にいう『法律』に、条例は含まれるのか、ということが問題になるということなのね。 つまり、条例で財産権の内容を定めること・・・条例によって財産権を制限することが憲法上認められるのか、という問題ってことになるわね。 |
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よくワカリマスた!! |
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学説には、肯定説、否定説の両説があるところなんだけれど、この問題を、判例はどう考えているのかを見てみることにしましょうか。 検討判例は 奈良県ため池条例事件 (最大判昭和38年6月26日 百選T103事件) にするわね。 |
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なんか判例検討でページ移動したっていうのに、あんまり検討なかったね。 あ、まさか、アレ? 行政法の判例検討のページを先取りで作っただけとか? |
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メ、メタはダメですぅ!! | ||
ナニ、わけのワカラナイこと言ってんのよ。まったく。 それじゃA憲法の法律留保事項と条例という問題の2つ目。 条例と罰則の問題 について見るわね。 先ず、この問題の前提として、憲法31条、そして憲法73条6号を見て欲しいわ。 |
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日本国憲法第31条 『日本国憲法第31条 【法定の手続の保障】 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。』 日本国憲法第73条第6号 『日本国憲法第73条 【内閣の職務】 6号 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。』 |
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この憲法の規定から、条例と罰則という問題を説明するわね。 先ず、憲法31条は 『法律の定める手続によらなければ』『刑罰を科せられない。』 としているのに、条例違反による制裁としての罰則を設けてもいいのか、ということが問題になるわけよね。 そして、憲法73条6号但書きは 『政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。』 としていることから、どの程度の委任があれば許されるのか、ということが問題になるわけね。 |
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この問題について学説は大きく3つに分けられますね。 @憲法直接授権説 A一般的・包括的法律授権説 B限定的法律授権説 の3説です。 それぞれの学説の考え方を紹介しますと、 @憲法直接授権説は、憲法94条が『法律の範囲内』で認めた条例制定権は、その実効性を担保するため、罰則制定権を当然に含むもので、憲法31条の例外をなすものであるから、罰則設定のため、法律による条例への特別の委任規定を必要としない、と考えますね。 A一般的・包括的法律授権説は、憲法94条の条例制定権は、当然には罰則制定権を含むものではなく、刑罰権の設定は、本来的には国家事務であって、地方自治権の範囲には属しない、という前提に立ちます。 そして、条例は行政府の命令ではなく、地方住民の代表機関である議会の議決によって成立する民主的立法であるから、実質的に法律に準ずるものであることを理由に、条例の罰則の委任は、命令への罰則の委任とは異なり、一般的・包括的な委任でよい、と考えます。 そして、最後にB限定的法律授権説ですが、この考えは、先ず大前提として、刑罰権の設定には、法律の授権が必要であるとします。 その上で、条例への罰則の委任は、条例が地方公共団体の議会の議決を経て成立する自治立法であり、国民の公選議員で組織される国会の議決によって制定される法律に類するものであることを理由に、その内容が相当な程度に具体的であって、かつ、限定されていればよい、と考えるんです。 |
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ぐわっ!! 難しいっ!! まぁまぁ、学説はいつも難しいことを言っているわけですが、判例の立場は、どうなんだお? まぁ(赤太文字になっとるから)B限定的法律授権説なんだろうなぁ、って推定は働くところなんだけど、一応ね、一応。 |
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そこで見る判例が、前回少し見た 最大判昭和37年5月30日 (百選U215事件) になるのよね。 というわけで、あの時は伝えなかった事案についても、ここで話しておくわね。 この事案も、売春絡みの事件なのよね。 大阪市天王寺区内の路上で、通行中の男性を誘った人が、大阪市の「路上等における売春勧誘行為等の取締条例」違反として逮捕・起訴されたのね。 この被告人が、本件条例は 『法律の定める手続によらなければ』『刑罰を科せられない。』 とする憲法31条に反するものだ、と主張したという事案なのね。 |
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なんか売春絡みの事件ばっかだね。 うーん、そうなると事案再現は、ちょっとしたくないなぁ。 |
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サルは、どんな事案でも事案再現したくないくせに! それじゃ、判決文は短めに紹介するわね。 『憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によってそれ以下の法令によって定めることもできると解すべきで、このことは憲法73条6号但書によっても明らかである。 ただ、法律の授権が不特定な一般的な白紙委任的なものであってはならないことは、いうまでもない。』 『条例は、法律以下の法令といっても』 『公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。』 としているわ。 この判例の立場は、学説のB限定的法律授権説の考え方といえるわよね。 後は結論部分になるんだけれど。 『相当に具体的な内容の事項につき、同法14条5項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもって罰則を定めることができるとしたのは、憲法31条の意味において法律の定める手続によって刑罰を科するものということができるのであって、所論のように同条に違反するとはいえない。 従って地方自治法14条5項に基づく本件条例の右条項も憲法同条に違反するものということができない』 という帰結ね。 |
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やっぱりね! あたしはワカッてたお! 判例は、限定的法律授権説の立場だってね!! (だって、そもそも赤太文字だったかんね!) |
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藤さんには、今更な話ですしね。 | ||
だおだお。 | ||
また知ったかしてぇ。 そうそう、条例制定権の範囲と限界のうち、その限界という問題についての説明を最後にするわね。 ここで改めて憲法94条を見てくれる? |
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日本国憲法第94条 『日本国憲法第94条 【地方公共団体の権能】 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。』 |
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ここにいう『法律の範囲内で』という文言が、条例制定権の限界との関係で問題になるのね。 つまり、国で定める規制基準よりも厳しい基準を定める、いわゆる「上乗せ条例」や、法令の規制対象以外の事項について規制を行う、いわゆる「横出し条例」は認められるのか、という問題なのね。 この問題についての重要判例として 徳島市公安条例事件(最大判昭和50年9月10日 百選T88事件) があるわ。 ただ、この判例自体は、憲法の人権のところで扱いたいと思っているから、ここでは、この問題についての判例の考え方だけ抜き出して紹介するに、とどめるわね。 いわゆる「上乗せ条例」や「横出し条例」が認められるのか? という問題に対して、判決文では次のように述べているのね。 『条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。』 この規範は、非常に重要な規範で、行政法でも同じ論点があるから、また改めて学ぶ機会を設けるつもりでいるわ。 同判決では、上記規範の後に続けて次のように述べているのね。 『例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。』 とね。 この『例えば』以下の説明によって、先に述べられた抽象的な規範の内容を説明しているわけね。 |
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また見るって言ってるし、そこで抑えることにすんお! | ||
そうね。 最後は、ちょっと駆け足になっちゃったけれど、地方自治の勉強会としては、ここまででいいと思うわね。 |
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まぁ、こんなところで、いんじゃね? | ||
・・・なんだか随分と偉そうな言い方です。 | ||
偉そうではないのだお! 事実、偉いのだお!! |
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そうですとも。そうですとも。 ホント、いつも藤さんが、私達の勉強会を優しい眼差しで見守って下さることを、私は心から有難いと感謝していますからね! |
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うんうん。 クロちゃんも最近は頑張っているなぁって、あたしも思ってっからね! |
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・・・ナニ様のつもりかしら。 あんたより頑張っていない人なんて見付ける方が大変よ! |
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光ちゃん、目ぇ悪いもんね。 そりゃ、そうだと思うお。 |
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お生憎様っ! コンタクトレンズ入れているから、視力には問題ありませんから! |
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・・・あたしも視力には問題はないんだけど、資力には問題しかないのであった、まる | ||
・・・人格的にも問題しかないです、まる | ||
そうよね。 せっかく、今日は珍しくやる気だなぁって感心してたのに、1回の勉強会さえ、そのやる気を維持してくれないんだもの。 ホント、問題しかないわよね。 |
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少し、地方自治の勉強会は最後は駆け足気味でしたね。 ただ行政法の勉強会で、また改めて学ぶ論点も多いことですし、その際に、しっかり理解するという位置付けなんですよね? |
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そ、そうね。 そのつもりで、いるわ。 |
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と、最後まで、やるやる詐欺を働く金満であった、まる |