地方公共団体の権能 | ||
今日の勉強会では、地方公共団体の権能について学ぶわね。 あ、でも地方公共団体の事務については、各自の自主勉強に任せるわ。 持っている基本書の該当頁を読んで、勉強しておいてね。 |
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うんうん! 頑張るよぉ! |
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・・・サボってんじゃねぇお(ボソッ) | ||
・・・。 (鏡の自分に先ず言って欲しい言葉です・・・) |
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地方公共団体の権能の内容について学んでいくことにするわね。 それじゃ、先ずは条例制定権からね。 憲法94条を、六法で確認してくれる? |
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日本国憲法第94条 『日本国憲法第94条 【地方公共団体の権能】 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。』 |
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ここにいう『条例』とは、地方公共団体が、その自治権に基づいて制定する自主法をいうわ。 | ||
自主法っていうのは、どのようなものなのですか? | ||
自主法というのは、法律・命令等の国家法に対する観念で、条例は、地方公共団体の事務(自治事務)に関する事項についてしか規定できないものの、その範囲内では、国家法とは原則、無関係に、独自に規定を設けることができるこというわ。 この自主法である『条例』の意味が問題となるんだけれど、この意味については学説は大きく3つに分けられるのね。 ザックリ言うと『条例』の意味を、広く解するのか、狭く解するのか、という違いから、 @狭義説 A広義説 B最広義説 の3説になるんだけれど、多数説はB最広義説とされているわね。 B最広義説によれば、議会の制定する条例、長の制定する規則の他に、各種委員会の定める規則その他の規定が、憲法94条にいう『条例』にあたる、という理解になるわね。 この考え方は、憲法94条は、地方公共団体の自主立法権を広く認める趣旨であるという前提に立つわ。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
あ、待って下さい。 条例制定権の根拠条文ですが、今、光ちゃんは憲法94条を、その根拠条文とされましたが、条例制定権の根拠を、憲法のいずれの条文に求めるのか、という論点もありますよね。 |
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あぁ、そうだったわね。 憲法92条の自治権の保障から条例制定権は導けるものであり、94条は、これを具体化したものである、と捉える憲法92条説。 そして、憲法94条は、憲法92条にいう『地方自治の本旨』から導かれる条例制定権を確認する趣旨の規定ではなく、積極的に条例制定権を付与する趣旨の規定である、と捉える憲法94条説。 そして、憲法92条、94条の両者を並列的にとらえ、この両者に条例制定権の根拠を求める見解である並列説などがあるわね。 私は、ここは端的に、憲法94条説で抑えていたから、ちょっと説明をはしょっちゃっていたわね。 |
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ですよね。 一応、百選掲載判例もあるところですし、説明をされた方がいいかと思いまして。 えーっと、百選ですとUの215事件になりますね。 (最大判昭和37年5月30日) 判例は、 『地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき(同92条)、直接憲法94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法に外ならない。 従って条例を制定する権能もその効力も法律の認める範囲を超えることはできないけれども、法律の範囲内にあるかぎり、条例はその効力を有するものといわなけばならない』 と述べていますよね。 |
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コレは学説でいうところの、どの説になるの? | ||
憲法94条説か、並列説の考え方に親和的といえますね。 ちょっと、いずれかかは分りかねますけど。 |
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そうね。 あまり実益がないところかと思って、はしょっちゃったけれど、説明は必要だったわよね。 つかさちゃん、ありがとうね。 あ、今紹介してくれた判例については、また改めて別の論点の際に事案と共に紹介するから、そのつもりでね。 |
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ソレを聞いて、既に今から吐きそうだお。 | ||
・・・。 (・・・ダメだ、こいつ。早くなんとかしないと・・・です。) |
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食べ過ぎなだけじゃないの? いつも、なんでもかんでも詰め放題に口に入れているからよ! それじゃ、条例制定権の範囲と限界という論点について話すわね。 この論点では、少し見るべき判例も多いから、今回の勉強会で先ず1つ見て、次回の勉強会で2つ判例を見ようと思うわ。 |
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うげぇぇぇーーーーっ!! あ・・・もう吐いちゃったw |
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・・・ホントに嘔吐しちゃえばいいのに。 この条例制定権の範囲と限界という問題は、次の2つの場面に分けて考えるべき問題なのね。 @条例による地域的取扱いの差異と平等原則 A憲法の法律留保事項と条例 という2つの場面ね。 今日の勉強会では、このうち@の場面についての判例を見ることにするわね。 |
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ゲロゲロゲロぉぉぉぉ。 |
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あ、蛙さんの真似だね! オネーちゃん! チイも、チイもっ! ゲロゲロゲロぉっ! |
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チイちゃん。 そんなオネーちゃんの真似なんか、しなくっていいから。 えーっと、それじゃ検討判例は 最大判昭和33年10月15日 (百選T34事件) にするわね。 先ず事案を説明するわ。 東京都品川区で料亭を経営していた人が、その料亭において雇用している女中らに、不特定のお客を相手に売春行為をさせていたの。 この料亭の経営者は、売春の報酬を一部取得し、売春をさせる目的で女子を自己の管理下においていたとして、東京都の売春等取締条例4条等違反の罪で、逮捕・起訴されたのね。 ところが、この起訴された料亭の経営者は、同じ日本国民でありながら、居住地によって取締りが異なる条例による刑罰は、平等の精神を定める憲法14条違反だとして上告したのよね。 |
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なかなか面白いねぇ。 そかそか。 確かに条例は、地方公共団体が各個に制定するもんだから、住んでる自治体ごとに、取締りが異なるわけだもんね。 ふむふむ、法の下に平等といっておきながら、住んでる地域によって条例の取締りが違う結果、刑罰に問われる人と、問われない人がいるっていうのは、平等じゃないよって主張は有り得るかもねぇ。 |
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こういう事案だと、すぐに争点を理解できちゃうサルの頭の中が見てみたくなっちゃうわね。 ただ争点は、サルのいうとおりね。 この問題に対する最高裁の判決文は、次のものね。 『社会生活の法的規律は通常、全国にわたり劃一的(かくいつてき)な効力をもつ法律によつてなされているけれども、中には各地方の特殊性に応じその実情に即して規律するためにこれを各地方公共団体の自治に委ねる方が一層合目的なものもあり、またときにはいずれの方法によつて規律しても差支えないものもある。 これすなわち憲法94条が、地方公共団体は『法律の範囲内で条例を制定することができる』と定めている所以である。 地方自治法は、憲法のこの規定に基き、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、その事務に関し、条例を制定することができる旨を規定し(同法14条1項)、その事務として、『地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること』(同法2条3項1号)や『風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の保健衛生、風俗のじゆん化に関する事項を処理すること』(同条同項7号)等を例示している。 そして条例中には、法令に特別の定があるものを除く外、『条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる』(同法14条5項)としているのである。 本件東京都売春等取締条例は前記憲法94条並に地方自治法の諸条規に基いて制定されたものである。(同条例は、昭和31年法律118号売春防止法附則4項、1項但書により昭和33年4月1日効力を失つたが、同法附則5項により、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の規定によることとなつている。) 論旨は、売春取締に関する罰則を条例で定めては、地域によつて取扱に差別を生ずるが故に、憲法の掲げる平等の原則に反するとの趣旨を主張するものと解される。 しかし憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。 それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、所論のように地域差の故をもつて違憲ということはできない。』 と、しているわね。 |
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あらま。 でもつまり、こういうことだよね? 地方公共団体の制定する条例によって、地域ごとに、その取扱いに差別が生じてもOKOKってことなんだ。 |
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OKOK・・・とまでは言っていないから! 判決文の言葉を引用するなら 『憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところである』 という理解をもって抑えて欲しいわね。 だから、 『地方公共団体が』『各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、所論のように地域差の故をもつて違憲ということはできない。』 という結論になるってことよね。 ただ、本判決の下飯坂・奥野裁判官補足意見では 『憲法が各地方公共団体に、条例制定権を認めているからといって、当然に、各条例相互間に憲法14条の原則を破る結果を生ずることまでも、憲法が是認していると解すべきではなく、各条例が各地域の特殊な地方の実情その他の合理的根拠に基いて制定され、その結果生じた各条例相互間の差異が、合理的なものとして是認せられて始めて、合憲と判断すべきものと考える』 と述べられているわ。 この補足意見を裏返せば、合理的範囲を超えた差別が生ずるような条例は、憲法14条に反する以上、違反となると考えるべきよね。 |
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成程、成程。 補足意見は、いいこと言ってるねぇ。 ここまで言ってくれると、条例による地域格差はある程度は仕方ないって気になるね。 |
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「ある程度は」じゃなくって「合理的範囲内であれば」って言葉を使ってよね! サルは、ホント言葉が乱暴だから、心配になっちゃうじゃないの! |
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噴霧器で、眼球に直接毒ガス攻撃仕掛けてくるわ。 グーで殴ってきたりするような人に、「乱暴」なんて言われてもピンと来ないけどね! |
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グーで殴ってくる? ソレは一体、誰の話をしてみえるんですか? |
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チイは、オネーちゃんにグーで殴られたから、自分のことを言っているんじゃないのかなぁ? | ||
そ、そ、そうよね!! じ、自分のこと言ってるんじゃないのかしらね!! ほ、ホント、乱暴な人はダメよね!! ね? ね? |
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(小声で) ・・・黙っててやっから、晩御飯奢れや(ニヤリング)。 |
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え? ナニナニ? お腹が空いたから、ご飯を御馳走して欲しい? そ、そうね。 うんうん。サルの行きたいお店に連れてってあげるから!! |
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・・・ニシシシシシシ! |