それじゃ予告どおり、今日は地役権について勉強するわね。 まずは、六法で民法280条を見てくれるかしら。 |
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民法第280条 『(地役権の内容) 第280条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。』 |
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そうね。 地役権とは、ある土地の便益のために『他人の土地』を利用できることを内容とする権利をいうわ。 この『自己の土地の便益』のため、という範囲は限定されておらず、『土地の使用』(265条)というよりも広いものを意味するわ。 |
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ん? も少し詳しく。 |
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例えば、以前の勉強会で囲繞地通行権(イニョウチ通行権)について学んだわよね。 その際に、公道に出るために、他人の土地を通行する権利としては、地役権の設定も考えられるって話はしたんだけど憶えている? |
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うんうん! 憶えているよっ! |
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・・・あたしは休んで出ていなかった可能性が微レ存。 | ||
出ていたわよっ! っていうか、あんた、身体の頑丈さだけが売りみたいな人じゃないのよ! 休むって、どんな理由があるって言うのよ! この地役権の設定によって、他人の土地を通行する権利は、通行地役権といって、囲繞地通行権とは異なるものなのよね。 地役権は、ナニも他人の土地を通行する権利だけに限られないわ。 例えば、民法285条を見てくれる? |
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民法第285条 『(用水地役権) 第285条 1項 用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 2項 同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。』 |
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285条は、用水地役権について定めているわ。 これは『自己の土地』の便益のために『他人の土地』の湧き水を利用する場合について規定したものよね。 |
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成程、成程。 うちの実家は田舎で農業やっとるから、ひょっとしたら、この用水地役権とかのお世話になっているのかも知れないなぁ。 |
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地益権の具体例としては眺望地役権や・・・ | ||
ちょっと待って下さい。 眺望地役権というのは、私もよく知らないのですが。 |
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あら、つかさちゃんが知らないなんて珍しいわね。 それじゃ、少し丁寧に説明しないとね。 眺望地役権というのは、観望地役権ともいわれるものなんだけど、例えば、こんな事案を考えてみてくれるかしら。 |
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なんかワクワクしちゃいますね。 いつも竹中さん達は、こんな感じで聞いてみえるんですね。 ちょっと気持ちがワカッて嬉しいです。 |
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・・・。 (このメガネ、面白いなぁ。) |
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例えば、私の家には沖縄の別荘だけじゃなく、十和田湖や軽井沢、京都や福岡、北海道、熱海に草津に飛騨・・・それこそ海外にも幾つも別荘があるのよね。 | ||
・・・。 (マ、マヂでかっ!! チョ、チョッ!! あたしの沖縄別荘計画は、さらに遠大かつ大規模なものになる可能性が出てきたじゃまいか! これは、大幅上方修正の必要性が出てきたおっ!! 沖縄どころか、北海道や、飛騨にまで別荘が持てるチャンス到来だおっ!! スバラ、マヂ、スバラっ!! ) |
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す、すごいですね・・・光ちゃんの家は・・・。 | ||
ただ、別荘の中には、その別荘の御部屋からの眺め(眺望)が素晴らしいという理由で持っているものもあるわ。 そうした別荘にとっては、その別荘の前面の土地に、高層マンションなんかが建てられてしまうと、せっかくの眺めも台無しになってしまうわけよね。 |
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別に、いんじゃね? 眺めなんか夜になってまえば見れないもんだし。 |
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夜景が凄いかも知れないじゃないの! 俗に「100万ドルの夜景」なんて言葉もあるくらいよ? |
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ふぅ〜ん。 | ||
・・・まぁ、サルにはいらなくっても、きっとお父様達にとっては、眺めの素敵な景色っていうのは価値があるのよ! ソコで眺望確保のためには、どうしたらいいのか? って話になるわけよね。 いくら眺めが素晴らしいから、この御部屋から見れる景観を、そのままにしておきたい、って思ったとしても、それだけのために、別荘の御部屋からの前面の土地全てを所有したり、賃借したりすることは不可能よね。 でも、眺めを確保するためだけなら、一定以上の高さの建築物を、別荘前面の土地所有者の方に遠慮してもらえれば、目的は達成できるって思わない? |
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ええ、確かに、そうですね。 | ||
こういった場合に、その前面の土地所有者の方に対して、例えば2階建て以上の建物は建築しない、といった内容の地役権を設定できるの。 コレが眺望地役権なのね。 実際、私の家の別荘の幾つかは、この眺望地役権の設定をしているものもあるわ。 |
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たまにしか使わない別荘の部屋の眺めのためだけに、他人様に迷惑をかけるとは、明智財閥の企業体質をモロに感じるエピソードだね。 | ||
ちょっとっ!! いつ迷惑をかけたって言うのよ!! 眺望地役権を受け容れた土地の所有者の方は、畑をもってみえる方だったのよ。 2階建て以上の建物を建てる予定もないし、眺望地役権の名目で、一定額のお金が得られるのなら、それはいい話だって喜んでみえたって聞いたわっ! ソレを、どうして悪く言われないと、いけないのよっ!! |
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・・・光ちゃん。 自分の胸に手をあててごらんお。 |
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・・・な、なによ? | ||
・・・おまえ、自分のオッパイ触って、気持ちいいのかお? | ||
・・・コロスっ!! | ||
まぁまぁ、御2人とも仲良くしてください。 でも、眺望地役権については知らなかったです。 勉強になりました。 地役権って、そういう使い方もあるんだなぁって思いました。 |
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ハァハァ・・・。そ、そ、そうね。 他にも、送電線地役権なんていうのもあるわよ? 例えば、電力会社が、発電所から電力消費地に電力を送るために、高圧線を通すわけなんだけど、上空に送電線が通る部分について地役権を設定したりするわね。 このように、地役権には、色々な利用方法があるわけだけど、 『ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。』 と280条但書きの規定があるように、相隣関係に関する強行規定に反するものなどは認められないわね。 具体的には、例えば、袋地について囲繞地通行権を認めないといった内容の地役権の設定とかよね。 |
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ヒドい意地悪になっちゃうもんね、ソレは。 | ||
・・・あんたみたいな土地所有者だったら、やりかねないけどね! | ||
明智先輩、お、落ち着いて下さい。 | ||
そ・・・そうね・・・。 えーっと、地役権が設定された場合の、便益を受ける土地のことを要役地(281条参照)、その負担を受ける土地を承役地(285条参照)というわ。 ここは、条文に定義が、そのまま書いてあるからね。 ちょっと六法で281条を見てくれるかしら? |
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民法第281条 『(地役権の付従性) 第281条 1項 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 2項 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。』 |
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・・・あ、ナ、ナカちゃん、あ、ありがとうね。 地役権の付従性について281条は規定しているわ。 要は、要役地の所有権が移転すれば、地役権も一緒に移転するってことね(281条1項)。 そして、地役権を、要役地所有権と切り離しては譲渡することもできない(281条2項)ってことね。 もっとも、承役地が譲渡された場合、地役権が登記(地役権の登記については不動産登記法80条)されていなければ、要役地所有者は、承役地の取得者に対して、地役権を対抗できなくなるわ(177条)。 |
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アレ? でも、チイは、登記されていない地益権が対抗できたって事案を知っているよ? |
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ソレは、最判平成10年2月13日(百選T 6版59事件 7版60事件)ではないでしょうか? あの事案は特殊な事案でしたからね。 原則としては、光ちゃんが説明されたように、登記をしなければ地役権は第三者には対抗できない、という理解が大事ですね。 |
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そ、そうね・・・。 つ、つかさちゃん、ちょっと申し訳ないんだけれど、わ、私、今、少し動悸が激しくなっているみたいで・・・。 |
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オッパイ触って興奮したの? | ||
キィィィィィィィッ!! あんた、マヂで、はっ倒すわよ!! |
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藤先輩・・・もう明智先輩をからかうのは、止めて下さいです! | ||
オネーちゃんも、光おねーちゃんもケンカしちゃダメだよぉぉ。 | ||
・・・。 (ヤバス・・・面白すぐる・・・。) |
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ハァハァ・・・。 えーっと、つかさちゃん、申し訳ないんだけれど、チイちゃんとナカちゃんに判例を紹介してあげてくれない? |
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アレ? あたしは入ってないの? |
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・・・死ねっ!!! | ||
えーっと、それでは、光ちゃんに代わりまして。 最判平成10年2月13日(百選T 6版59事件 7版60事件)を紹介させて貰いますね。 地役権が、登記なくしては第三者に対抗できないものであることは、先程も述べたとおりなんですが、実際、地役権は黙示的に設定されることも多く、登記されることは多くないものなんですね。 今から紹介する判例では、通行地役権が問題となったんです。 通行地役権ということは、通路として土地を使用することを目的とした地益権ですよね。 でも、ある土地が通行路として使用されているかどうかは、外見上一見して明らかなことだと思いませんか? |
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うんうん。 その土地が、通路となっているかどうかは見ればワカルって、チイも思うよ。 |
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ですです。 | ||
そうですよね。 でも、そうであれば、その通行地役権の承役地を買おうとされる方だって、そのことは認識されて、その土地を買い受けることが多いと思われませんか? そのような場合に、要役地のための通行地役権の登記がなされていないことを理由に、その通行地役権を否定することを認めてしまっていいのかが問題となったのが、この判例なんですね。 この問題に対して最高裁は、次のような判断を示しました。 『通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。』 としていますね。 |
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あっ! チイが、さっき言ったのは、この判例だっ! | ||
ですよね。 百選掲載の有名判例ですからね。 |
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チイちゃんはよく勉強しているです。 私は、この判例については抑えていませんでした。 もっとガンバらないと、いけないです! |
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竹中さん。 勉強されていて、分からないことなんかありましたら、私でよければ、いつでも聞いて下さいね? |
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黒田先輩、ありがとうです! | ||
あ、光ちゃん? 判例紹介終わりましたよ・・・って、アラ? |
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アレ? オネーちゃん達がいなくなってるよ? |
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あ、あら? お、お、終わったのかしら? |
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ええ。 あのぉ、ところで、藤さんは御存知ないですか? |
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え? さ、さぁ? サルは、ど、ど、何処に行ったのかしらねぇ? 私は知らないわよ? |
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あ、きっと購買だよっ! さっきお腹空いた、空いたって言ってたもんっ! オネーちゃん、またチイに内緒で自分だけお菓子買って食べているんだ、ズルい、ズルいっ! |
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あ、そ、そ、そうね。 き、きっと購買よ。 うんうん。 わ、私はホント知らないからね!! |
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・・・。 (そういうことにしておくです・・・。) |
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階段踊り場・・・ | ||
・・・まさか、グーで殴るお嬢様がいるとは・・・。 |