公金支出の禁止@ | ||
はーい。 それじゃ、財政の勉強会の第2回ね。 今回と次回との2回に分けて、憲法89条の理解に努めるってことにするわね。 あ、先に言っておくけれど、2回とも判例は見るから、そのつもりでね。 |
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うげぇーーーっ!! | ||
ちょっと! あんたが前回サボった、サボった責めるから、前向きな対応をしたっていうのに、ナニよ、その反応はっ!!! |
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案の定の反応です・・・。 | ||
もうっ! それじゃ、サルは放っておいて、これから学ぶことになる憲法89条を六法で見ましょうか。 ナカちゃん、見てくれる? |
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日本国憲法第89条。 『日本国憲法第89条 【公の財産の支出又は利用の制限】 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業の対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。』 |
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この公金支出の禁止を規定した憲法89条は、前段部分と後段部分とに分けられるわ。 今回の勉強会では、このうち前段部分を、次回の勉強会では後段部分を見るって位置づけにするからね。 それじゃ、先ず前段部分からね。 前段部分は 『公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため』『これを支出し、又はその利用に供してはならない。』 として、宗教上の組織・団体のための支出を禁止しているわね。 |
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この憲法89条は『宗教上の組織若しくは団体』へ、国が財政的援助を行わないことを規定したもので、20条1項後段及び3項の政教分離原則を、財政面から具体化したものといえます。 政教分離原則については、憲法の人権の勉強会で、また学ぶことになると思いますが、国家と宗教の分離の原則をいうものですね。 |
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この問題と関連して見るべき判例として 国有境内地処分法事件 (最大判昭和33年12月24日 百選U205事件) があるわね。 |
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今の判例検討の際に、社寺等についてはアッサリと『宗教上の組織若しくは団体』だって認定をしちゃっていたけれど、この意義についても説明して欲しいよぉ。 | ||
そうね、この意義についての説明は必要よね。 憲法89条にいう『宗教上の組織若しくは団体』については 『従来の通説的見解は、宗教上の『組織』とは、寺院、神社のような物的施設を中心とした財団的なものを指し、『団体』とは、教派、宗派、教団のような人の結合を中心とした社団的なものを意味するとし、宗教上の組織・団体の意味を厳格に解している』 けれど、 『これに対して有力説は、『組織』と『団体』とは厳密に区別できないことを前提にして、『組織』も『団体』も厳格に制度化され、組織化されたものでなくとも、何らかの宗教上の事業ないし活動を目的とする団体を指すと解している』 (中村睦男・他『憲法U【第5版】』有斐閣 2012年 341頁) と説かれているわね。 |
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確かに、確かに・・・。 ドラマ『トリック』でも『母之泉』とかは組織化された感じだったけれど、言霊使いの『玄奘様』の組織なんかは、どこまで組織化されていたか今ひとつ定かじゃなかったからなぁ。 そう考えると、有力説の理解は納得いくなぁ。 |
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なんでドラマの話を持ち出して理解しようとしてんのよ! この『宗教上の組織若しくは団体』について、判例は次のような定義付けをしているわね。 定義だけ見てもらえればいいから、事案についての説明は省略するけれど、 箕面市(みのおし)忠魂(ちゅうこん)碑・慰霊祭訴訟 (最判平成5年2月16日 百選T51事件) が、そうね。 この判例の判決文において 『憲法20条1項後段にいう「宗教団体」、憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」とは、宗教と何らかのかかわり合いのある行為を行っている組織ないし団体のすべてを意味するものではなく、国家が当該組織ないし団体に対し特権を付与したり、また、当該組織ないし団体の使用、便益若しくは維持のため、公金その他の公の財産を支出し又はその利用に供したりすることが、特定の宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になり、憲法上の政教分離原則に反すると解されるものをいうのであり、換言すると、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指すものと解するのが相当である。』 としているわね。 この判例の『宗教上の組織若しくは団体』の意義の理解は、先の学説の通説的見解と親和的なものよね。 |
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あ、そうなんだ。 むぅぅぅ。 今日は、なんか勘が鈍いなぁ。 なんか、あたしの言っていることと判例が違うじゃまいか。 |
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別に気にすることじゃないじゃない。 そうそう。 宗教法人に対する免税措置の合憲性っていう論点もあるわね。 租税法上、宗教法人は『公益法人等』にあたることから、収益事業から生じた所得以外の所得については、法人税や事業税が課せられないこととなっているのよね(法人税法7条、地方税法72条の5等)。 |
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いわゆる『坊主丸儲け』って奴だよね! | ||
その言葉は別に、この免税を受けてのものじゃないわよ! 誤解招くといけないから、この場面で言うのはやめてよね! |
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ふぁ〜い。 ぅわっかりますたぁ〜。 |
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絶対ワカッテない・・・って返事して・・・。 ともあれ、宗教法人については免税措置がとられているわけよね。 このような免税措置が憲法89条との関係で問題となるわけね。 宗教法人に対する免税措置は、一種の補助と同視しうるものであることを理由に、憲法89条は政教分離原則から厳格に解する必要があるものである以上、許されない、とする違憲説という考え方もあるわ。 でも、学説の通説的理解は合憲説となっているのよね。 合憲説によれば、そもそも、免税の場合には、公金を支出する場合のように、その使途をコントロールする必要はなく、また、免税が法律による一定の基準に基づいて一般的に行われるものであることから、個々の事業に対して公権力による干渉が及ぶおそれが少ないこと、さらには、法人税法は、民法の公益法人に対する場合と、全く同じく宗教法人に免税特権を与えているため、一般的に公益法人に対して、国がこの種の利便を図ることは必ずしも、その事業をとくに援助するという意味をもつものではないことを理由に、免税措置は合憲であるとしているわね。 |
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はいはい。 『坊主丸儲け』おつおつ。 |
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だから、違うって言ってるじゃないの!! | ||
ウキっ! |