違憲審査の方法 | ||
今日の勉強会では、前回の判例検討の際に出てきた言葉。 文面審査と適用審査、という違憲審査の方法について学ぶことにするわね。 |
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明らかに順番をミスっていることについて謝罪の一言もないという、驚天動地の姿が目の前に・・・。 | ||
まぁ、でも習うより慣れろって言葉もありますしね。 | ||
ですです! 藤先輩は、いつも新しいゲームだって説明書も読まずに始めるくせに、そんなこと言うなんて、おかしいです! |
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昨今のゲームの説明書は、説明不足も甚だしいこと多いかんね! だけど、ソレとコレとは違うでしょ!! |
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はいはい。 すみませんでしたっ! |
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ウワッ!! 謝ったから、いいでしょ、みたいな態度が、言動にありありとっ!! |
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オネーちゃんなんて謝ることさえないんだから、そんなこと言えないよぉ。 | ||
あたしは悪いことしたな、って思ったときは、素直に謝るお! 謝ることがないのに、謝らないのは当たり前じゃないの! あたしが謝らないってことは、ソレは取りも直さず、あたしが悪いことをしていないってことの証明じゃないの? |
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そうね、そうね。 サルの言うとおりね。ごめんなさいね。 それじゃ、順番が前後しちゃったけれど、違憲審査の方法について話してもいいかしら? |
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ふむ。 まぁ、過ちを許すことも必要だお。 よかろう。 話したまえ。 |
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・・・。 (明智先輩・・・大人の対応です・・・。 ソレに比べて、藤先輩ときたら・・・。) |
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それは、どうも。 えーっと、違憲審査の方法には、適用審査と文面審査とがあるわ。 適用上審査(=適用審査)とは、法律の適用によって生じる事態そのものを直接憲法的に評価する方法をいうわ。 これに対して、文面上審査(=文面審査)とは、法律そのものを直接憲法的に評価する方法をいうの。 |
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えーっと、ということは・・・。 適用上審査だと、法令違憲、適用違憲、両方が考えられるってことになるね。 でも、文面上審査だと、法令違憲しかないってことになるよね! |
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そうね。 そうなるわ。 この2つの違憲審査の方法の使い分けについてだけど、表現の自由などへの萎縮効果がある場合には、文面上審査で法令違憲を導く方がよくって、司法府と政治部門との関係を考えれば、萎縮効果が生じない場合には、適用審査を行うことが求められる、と一般に考えてもいいといえるわね。 |
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成る程・・・そのような使い分けがあるわけですね。 | ||
そうね。 それじゃ、話をもう一歩進めて、それぞれの審査方法の判断方法について話すわね。 先ずは、適用上判断からね。 先に適用上違憲について話をするわね。 ある法令の存在を前提として、その法令が違憲になるか、ならないか。 換言するならば、ある法令が、合憲か、違憲か、という前提に立って、その法令の適用が違憲であるという場合、これが適用上違憲という場合よね。 この場合、2つのルートがあるわ。 @法令の文言は合憲なんだけど、その合憲である法令の適用が違憲である、という場合。 Aそもそも、適用の根拠となった法令の文言が違憲であり、その法令による適用も違憲である、という場合ね。 @の場合は、法令そのものは合憲なわけなんだから、違憲主張をするのであれば、適用上違憲(適用違憲、処分違憲)の主張をしていくこととなるわ。 Aの場合は、法令が文面上も、適用上も違憲なわけなんだから、適用上違憲、文面上違憲のいずれでも最終的には、事件の処理が可能、という話になるわけね。 |
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・・・なんか難しい言い方しとるけど、訊けば、そりゃそうだろって話じゃない? | ||
随分と呑み込みがいいのね、サル。 それじゃ、適用上判断のもう一方の場合、適用上合憲についてね。 適用上合憲である以上、違憲を主張をするのであれば、文面上違憲を主張することになるわ。 この場合は、法令違憲を言わざるを得ないといえるわね。 このケースにあたるのが、前回検討した広島暴走族追放条例事件になるわけね。 あの事件では、被告人らの行為は、条例の適用局面において、まさにど真ん中ストライクの典型的な行為であって、適用上合憲という判断は妥当と言えるわけよね。 だからこそ、被告人らは、適用局面ではなく、文面局面、すなわち、文面上違憲であるとする主張をして争ったわけよね。 |
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過度の広汎性故に無効や、明確性の原則をもって違憲を争うという場面になりますね。 | ||
そういう理解になるわけよね。 それじゃ、次は、文面上判断について、まとめるわね。 文面上判断において、文面上合憲であるという場合には、特に論じる必要性がないわ。 |
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まぁ、そっか。 文面を審査して、それが合憲だっていう判断だったら、それ以上言うことはないよね。 |
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問題となるのは、文面上違憲の場合になるわ。 文面上違憲には、文面上の法令審査と、内容上の法令審査とがあるの。 『文面上の法令審査とは、法令の文面つまり法規定だけを参照して違憲審査を行うもので、司法事実はもちろんのこと立法事実も参酌されない』 とされるわ。 (駒村圭吾『憲法訴訟の現代的転回』日本評論社 2013年 44頁) この例としては、不明確故に無効、過度の広汎性故に無効、検閲などが挙げられるわね。 これらの考え方については、また後で説明するわね。 |
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・・・まぁ正直、名前訊けば、おおよその検討はつくっちゃぁ、つくけどね。 | ||
次に、 『内容上の法令審査とは、法令の文言や形式を審査する文面上の法令審査とは異なり、法令の内容・構造を審査対象とするものである』 とされるわ。 (駒村圭吾『憲法訴訟の現代的転回』日本評論社 2013年 44頁) いわゆる目的審査基準などが用いられるのは、この審査の場合になるわね。 まぁ、あとは合憲限定解釈も、あるわね。 |
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・・・いわゆられても知らんがな。 | ||
さて、それじゃ、さっきの説明の中で出てきた 過度の広汎性故に無効の法理 明確性の原則 について、まとめるわね。 これらは、いずれも憲法の人権、その表現の自由のところで、よく用いられる考え方なんだけれど・・・。 先ず「過度の広汎性故に無効の法理」とは、法律が規制対象に合憲的適用部分のみならず違憲的適用部分をも含んでいる場合に用いられる考え方になるわ。 これに対して「明確性の原則」は、2つに区分されるの。 @法文から、いかなる行為が禁止されているのか全く読み取れない場合。 A禁止された行為の核心的部分は読み取れるが、周辺的部分について、どこで線が引かれているのかが、はっきりしない場合。 の2つの場合ね。 Aについては「漠然性故に無効の法理」という考え方が用いられることにもなるわ。 |
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難しいねぇ。 |
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そうね。 あとは、事実を拾う際にも注意が必要になるわ。 その事実が、立法事実なのか、司法事実なのか、といった区別をしなければならないわ。 当てはめをする際に、その事実は、いずれの判断で使うべきか事実かを考えて、評価できるようにすることが求められるわけだからね。 |
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立法事実と、司法事実という言葉が、よくワカラナイです。 | ||
あ、少し説明を等閑にしていたわね。 えーっと、立法事実というのは、芦部先生の定義によれば 『法律を制定する場合の基礎を形成し、かつその合理性を支える一般的事実、すなわち社会的、経済的、政治的もしくは科学的事実』 と説かれるものね。 すごくザックリ言っちゃうと、その法令が何故必要とされているのか、ということを支える事実という理解でいいと思うわ。 立法事実を用いた違憲審査を行うにあたって 『法律が合憲であるためには、その法律の背後にあってそれを支えている』社会的、経済的、政治的もしくは科学的な『一般事実の存在と、その事実の妥当性が認められなければならない』 とされるわ。 次に、司法事実ね。 司法事実というのは、係属中の事件の解決にとって、その確定が直接必要とされる事実をいうわ。 まぁ、言葉の定義だけ聞いて、把握できるものでもないと思うから、それはまた判例検討や、今後の勉強会の中で、少しずつ自分のものにしていければいいと思うわね。 実際に新司法試験の論文問題なんかにあたって、事実を拾う作業をしてみる、というのも、これらの事実の区別をつけれるようにするためには、いいと思うわ。 |
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・・・ごっつ難しい話だお。 | ||
流石の藤さんでも、そう思われるんですね。 私も、この事実の区別と、当てはめは苦手なので、藤さんでも、そう思ってみえるってことに少し安心感を覚えてしまいました。 |
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じゃあ、新司法試験の過去問を一緒にやろうよぉ! チイも、やってみたいし、みんなも苦手なら、きっと勉強になるよ! |
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チイには、まだ早いお! | ||
えぇぇ。 そうかなぁ・・・でもでも、やってみたいよぉ。 |
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確か、新司法試験の論文問題は、R20+だからね!! | ||
ええええぇぇぇっ!! じゃあじゃあ、チイは、見ることもできないよぉ!! |
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・・・チイちゃん。 そもそも、レイティングシステムには、その区分自体存在しないです。 |
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あんたの存在がR18+よ! ホント、ろくなこと言わないお姉さんには困っちゃうわよね。 新司法試験の過去問検討ね・・・いつか、やれるといいわね。 |
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・・・。 (憲法の統治機構さえ、まだ終わりが見えないというのに、コイツはナニを言ってんだお。) |