最高裁平成19年9月18日 〜広島市暴走族追放条例事件〜 |
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それじゃ、配役から伝えるわね。 本件では、暴走族を取り締まることを目的とした広島市の条例が問題となったのね。 この条例と関係して、 暴走族の「面倒見」の立場であった被告人を、サル。 被告人主催の集会に参加した暴走族グループの構成員らをチイちゃん。 広島市職員をナカちゃん。 ナレーターを、つかさちゃんに御願いするわね。 |
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ナレーター |
広島市では、いわゆる暴走族の暴走行為が問題となっており、これを取り締まるために、条例を設けて対処することとしました。 条例には、次のような規定が設けられていました。 『(目的) 第1条 この条例は、暴走族による暴走行為、い集、集会及び祭礼等における示威行為が、市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず、国際平和文化都市の印象を著しく傷つけていることから、暴走族追放に関し、本市、市民、事業者等の責務を明らかにするとともに、暴走族のい集、集会及び示威行為、暴走行為をあおる行為等を規制することにより、市民生活の安全と安心が確保される地域社会の実現を図ることを目的とする。』 そして、問題となる第2条第7号には、 『(定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 7号 暴走族 暴走行為をすることを目的として結成された集団又は公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団をいう。』 と規定されていました。 そんな条例のある広島市で、ある集会が行われました・・・。 |
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被告人 |
まったく、ふざけた条例を作りやがってっ! あの定義規定を見たかっ!? また書き以降を、よくよく読んでみろやっ! あの定義規定によれば、暴走族っていうのは 『公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団をいう』 んだとよ! |
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じゃあ、今日の集会参加者のチイ達は、所属暴走族グループ名の刺繍された特攻服着込んでいるし、マスクして、特攻旗もかざしているし、おもいっきり当てはまっている気がするねっ!! | 構成員ら |
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被告人 |
なんで喜んでんだよっ! ソコじゃねぇよっ! 『公共の場』は、ともかくとして『公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団』ってのは、具体的にどういう集団なんだよ! こんな曖昧で、よくワカラナイもんで取り締まろうってのが、土台気に入らねぇんだよっ! |
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ナレーター |
本件条例には、次のような取締規定がありました。 『(行為の禁止) 第16条 1項 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。 1号 公共の場所において、当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会を行うこと。』 『(中止命令等) 第17条 前条第1項第1号の行為が、本市の管理する公共の場所において、特異な服装をし、顔面の全部若しくは一部を覆い隠し、円陣を組み、又は旗を立てる等威勢を示すことにより行われたときは、市長は、当該行為者に対し、当該行為の中止又は当該場所からの退去を命ずることができる。』 『(罰則) 第19条 第17条の規定による市長の命令に違反した者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。』 という内容となっていました。 |
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被告人 |
この条例の16条1項なんて、どうしようもねぇよ! 『何人も』『公共の場所において、当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会を行うこと』はダメなんだとよ! 『公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会』って、なんだよっ!? どんな集会だったら、公衆は不安や恐怖を覚えるっていうんだよ!? 教えてくれやっ!! |
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・・・で、でも、少なくとも、チイ達みたいに特効服着て、顔をマスクで覆ったりしている人たちが、集まって騒いでいたら、周囲の人は怖いって思うんじゃないのかなぁ? | 構成員ら |
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ナニをしているですかっ! です! 許可も得ずに、こんな場所(広島市西新天地公共広場=アリスガーデン)で集会なんて認められないです! 即刻、集会を中止して、この場所から退去するです! (条例16条違反を理由とする条例17条に基づく中止命令) |
広島市職員 |
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被告人 |
うるせぇーよっ! 俺たちの集会にも、集会の自由はあるんだよっ! 集会の自由は、憲法21条1項によって保障されてんだっ! それを邪魔しようってのか! |
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中止命令に従わないのなら、条例17条違反を理由に、19条の罰則を与えることになるです! 早く集会を止めて、退去するです! |
広島市職員 |
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どうしよ、どうしよ! このままじゃ捕まっちゃうよぉ! |
構成員ら |
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ナレーター |
しかし、広島市職員の条例17条に基づく中止命令等を無視し、集会は継続されました。 そのため、被告人は、本件条例違反を理由に起訴されることとなりました。 |
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いいか? 本件の争点を、まとめといてやんよっ! さっきも集会で言ったように、先ずは、俺たちの行う集会にも、表現の自由の一環である集会の自由ってのが、あんだよ! それを取り締まろうなんていうのは、憲法21条1項の表現の自由の侵害になるんだよ! しかもだ。 本件条例の規定は、過度に広汎なものなんだよ! 大体、暴走族の定義からして、おかしいだろうがっ! 『公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団をいう』 って、なんだ、ソレ!? こんな取締対象が、無駄に広い条例なんて、過度に広汎故に無効だろうが、常識的に考えてっ! |
被告人 |
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はいはい、そこまででいいわ。 あんた、どんだけハマり役なのよ、一体。 |
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流石、藤さんですっ! 黒澤流のリアリティーを追求されようとする姿勢には、ただただ頭が下がりますっ! |
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まぁ、珍しくサルが争点まで、まとめてくれたのは驚いたんだけど、そういうことよね。 少し言葉が乱暴なのが、どうなのかしら、って思わなくはないけれど、概ねいいと思うわ。 この事案において、被告人は、自分自身に本件条例を適用することは、不特定の第三者の権利を侵害する可能性があると主張して、本件条例が違憲である、という主張をしているわけよね。 |
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あ、そういう主張だったのか。 | ||
ちょっと、しっかりしてよっ! それじゃ、判決文を見てみましょうか。 『本条例は,暴走族の定義において社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言となっていること,禁止行為の対象及び市長の中止・退去命令の対象も社会通念上の暴走族以外の者の行為にも及ぶ文言となっていることなど,規定の仕方が適切ではなく,本条例がその文言どおりに適用されることになると,規制の対象が広範囲に及び,憲法21条1項及び31条との関係で問題があることは所論のとおりである。 しかし,本条例19条が処罰の対象としているのは,同17条の市長の中止・退去命令に違反する行為に限られる。 そして,本条例の目的規定である1条は,「暴走行為,い集,集会及び祭礼等における示威行為が,市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず,国際平和文化都市の印象を著しく傷つけている」存在としての「暴走族」を本条例が規定する諸対策の対象として想定するものと解され,本条例5条,6条も,少年が加入する対象としての「暴走族」を想定しているほか,本条例には,暴走行為自体の抑止を眼目としている規定も数多く含まれている。 また,本条例の委任規則である本条例施行規則3条は,「暴走,騒音,暴走族名等暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう,印刷等をされた服装等」の着用者の存在(1号),「暴走族名等暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう,印刷等をされた旗等」の存在(4号),「暴走族であることを強調するような大声の掛合い等」(5号)を本条例17条の中止命令等を発する際の判断基準として挙げている。 このような本条例の全体から読み取ることができる趣旨,さらには本条例施行規則の規定等を総合すれば,本条例が規制の対象としている「暴走族」は,本条例2条7号の定義にもかかわらず,暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には,服装,旗,言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られるものと解され,したがって,市長において本条例による中止・退去命令を発し得る対象も,被告人に適用されている「集会」との関係では,本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が,本条例16条1項1号,17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。 そして,このように限定的に解釈すれば,本条例16条1項1号,17条,19条の規定による規制は,広島市内の公共の場所における暴走族による集会等が公衆の平穏を害してきたこと,規制に係る集会であっても,これを行うことを直ちに犯罪として処罰するのではなく,市長による中止命令等の対象とするにとどめ,この命令に違反した場合に初めて処罰すべきものとするという事後的かつ段階的規制によっていること等にかんがみると,その弊害を防止しようとする規制目的の正当性,弊害防止手段としての合理性,この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし,いまだ憲法21条1項,31条に違反するとまではいえないことは,最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁の趣旨に徴して明らかである。 (3)なお,所論は,本条例16条1項1号,17条,19条の各規定が明確性を欠き,憲法21条1項,31条に違反する旨主張するが,各規定の文言が不明確であるとはいえないから,所論は前提を欠く。』 として、合憲限定解釈をしているわけね。 この合憲限定解釈というのは、違憲判断回避の方法の1つで、法律適用の前提となる法律解釈が一義的に決定できない場合で、かつ、当該法律が違憲となる解釈が存在するような場合には、合憲的に解釈することで、合憲であるとする結論を導くための方法をいうのね。 合憲限定解釈については、まだしっかりとした勉強はしていないけれど、刑法総論の勉強会の判例検討の際に、少し見たわよね。 憶えている? (福岡青少年保護育成条例事件 最大判昭和60年10月23日) 本件でも、また合憲限定解釈がとられているわけね。 |
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成程、成程・・・。 過度に広汎だ! っていう主張に対して、いやいや、こうやって限定的に解釈すれば広くないですよぉーって言ってるわけかぁ。 まま、確かに、こうやって解釈しないと違憲ってことになってまうもんね。 ただ、どうなんだろ、この解釈は・・・って思ってまうかなぁ。 |
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あと、 『本条例16条1項1号,17条,19条の規定による規制は,広島市内の公共の場所における暴走族による集会等が公衆の平穏を害してきたこと,規制に係る集会であっても,これを行うことを直ちに犯罪として処罰するのではなく,市長による中止命令等の対象とするにとどめ,この命令に違反した場合に初めて処罰すべきものとするという事後的かつ段階的規制によっていること等にかんがみると,その弊害を防止しようとする規制目的の正当性,弊害防止手段としての合理性,この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし,いまだ憲法21条1項,31条に違反するとまではいえない』 と述べている点も、大事ですよね。 本件条例では、16条違反(禁止行為をしたこと)が、直ちに処罰となっているわけではなく、16条違反に対して、17条(中止命令等)が設けられており、その17条違反(中止命令等に従わないこと)が認められた場合に、初めて19条による処罰という 『事後的かつ段階的規制』 という段階的規制構造がとられていますよね。 そのような規制手段であることから、 『弊害を防止しようとする規制目的の正当性,弊害防止手段としての合理性,この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし,いまだ憲法21条1項,31条に違反するとまではいえない』 とする評価となっているわけです。 因みに、この基準は、合理的関連性の基準(=猿払基準とも呼ばれる)という基準の考え方ですね。 |
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うーん、でもやっぱりこの条例は問題があると思うんだよねぇ。 だって、16条1項1号は『何人も』ってしといて、その取締対象の暴走族の定義が、前段部分はさておき、後段部分は『公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団』って、なっとるんだよ? コレもう、暴走族だけじゃないんじゃない? って思えてまうんだけど。 |
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そうね。 『秋葉原で『ハレ晴レユカイ』を踊っている集団』でも『公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団』という定義には、当てはまらなくはないって言えるわけだからね。 |
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珍しいね。 まさか、光ちゃんから、少し古いけれど、そんなアニメの歌が出てくるなんて。 よく知っていたね、って逆に思ってまったお。 |
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あ、違うわ。 今の例え話は、宍戸常寿先生の『憲法解釈論の応用と展開【第2版】』日本評論社 2014年 150頁にあったものよ。 私、アニメ見ないから知らないもの。 |
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あ、そうなんだ。 でも、確かにそうだよね。 ゾンビーズの踊りなんて、名古屋市白川公園で踊ってたりしたわけだもんね。 コレなんて、知らない人が見たら、まさに 『公共の場所において、公衆に不安若しくは恐怖を覚えさせるような特異な服装若しくは集団名を表示した服装で、い集、集会若しくは示威行為を行う集団』 という定義に、おもいっきり当てはまる気がするもんね。 |
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具体例が妙に生々しいわね・・・。 ドコに食いついてくれるのよ、一体。 そうそう、この判例においては、各裁判官の多数意見、反対意見、共に読んでおくべきだと思うわ。 この判例検討では、多数意見から、堀籠(ホリゴメ)裁判官補足意見と、反対意見から、藤田裁判官反対意見とをピックアップしておくわね。 |
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え? まだ見るものあるの? | ||
はいはい。そうよ。 まずは多数意見からね。 多数意見は、適用上審査という審査をとっているわ。 『本件は,指定暴力団の関係者で暴走族である観音連合の面倒見をしていた被告人が,判示の広場において,引退式と称する集会を強行して暴走族の存在を誇示しようと考え,観音連合などの暴走族構成員約40名と共謀し,判示のような服を着用し,顔面の全部又は一部を覆い隠し,円陣を組み,旗を立てる等の威勢を示して,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会を行い,市長からの中止・退去命令が出されたのに,これに従わなかった事案である。 被告人の本件行為は,本条例が公共の平穏を維持するために規制しようとしていた典型的な行為であり,本条例についてどのような解釈を採ろうとも,本件行為が本条例に違反することは明らかであり,被告人に保障されている憲法上の正当な権利が侵害されることはないのであるから,罰則規定の不明確性,広範性を理由に被告人を無罪とすることは,国民の視点に立つと,どのように映るのであろうかとの感を抱かざるを得ない。』 この審査方法は、条文をどのように解釈しようとも、被告人らの行為は、取り締まるべきものである以上、違憲となるものではない、という判断を下しているわけね。 |
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私は納得いくです。 | ||
ただ、このような審査方法については反対の意見もあるわ。 それは、文面上審査を求める考え方ね。 藤田裁判官の反対意見を見ておきましょうか。 『多数意見は,本条例19条,16条1項1号,17条等について,これらの規定の規律対象が広範に過ぎるため本条例は憲法21条1項及び31条に違反するとの論旨を,いわゆる合憲限定解釈を施すことによって斥けるが,私は,本件においてこのような合憲限定解釈を行うことには,賛成することができない。 いうまでもなく,日本国憲法によって保障された精神的自由としての集会・結社,表現の自由は,最大限度に保障されなければならないのであって,これを規制する法令の規定について合憲限定解釈をすることが許されるのは,その解釈により規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され,かつ合憲的に規制し得るもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず,また,一般国民の理解において,具体的場合に当該表現行為等が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準を,その規定自体から読み取ることができる場合でなければならないというべきである。 この点多数意見は,本条例2条7号における「暴走族」概念の広範な定義にもかかわらず,目的規定である1条,並びに5条,6条,そして本条例施行規則3条等々の規定からして,本条例が規制の対象とするのは,専ら社会的通念上の暴走族及びそれに準じる者の暴走行為,集会及び祭礼等における示威行為に限られることが読み取れる,という。 しかし,通常人の読み方からすれば,ある条例において規制対象たる「暴走族」の語につき定義規定が置かれている以上,条文の解釈上,「暴走族」の意味はその定義の字義通りに理解されるのが至極当然というべきであり(そうでなければ,およそ法文上言葉の「定義」をすることの意味が失われる),そして,2条7号の定義を字義通りのものと前提して読む限り,多数意見が引く5条,6条,施行規則3条等々の諸規定についても,必ずしも多数意見がいうような社会的通念上の暴走族及びそれに準じる者のみを対象とするものではないという解釈を行うことも,充分に可能なのである。 加えて,本条例16条では「何人も,次に掲げる行為をしてはならない」という規定の仕方がされていることにも留意しなければならない。 多数意見のような解釈は,広島市においてこの条例が制定された具体的な背景・経緯を充分に理解し,かつ,多数意見もまた「本条例がその文言どおりに適用されることになると,規制の対象が広範囲に及び,憲法21条1項及び31条との関係で問題があることは所論のとおりである」と指摘せざるを得なかったような本条例の粗雑な規定の仕方が,単純に立法技術が稚拙であることに由来するものであるとの認識に立った場合に,初めて首肯されるものであって,法文の規定そのものから多数意見のような解釈を導くことには,少なくとも相当の無理があるものと言わなければならない。 なお,補足意見が指摘するように,被告人の本件行為は,本条例が公共の平穏を維持するために規制しようとしていた典型的な行為であって,多数意見のような合憲限定解釈を採ると否とにかかわらず本件行為が本条例の規定自体に違反することは明らかである。 しかしいうまでもなく,被告人が処罰根拠規定の違憲無効を訴訟上主張するに当たって,主張し得る違憲事由の範囲に制約があるわけではなく,またその主張の当否(すなわち処罰根拠規定自体の合憲性の有無)を当審が判断するに際して,被告人が行った具体的行為についての評価を先行せしむべきものでもない。 そして,当審の判断の結果,仮に規律対象の過度の広範性の故に処罰根拠規定自体が違憲無効であるとされれば,被告人は,違憲無効の法令によって処罰されることになるのであるから,この意味において,本条例につきどのような解釈を採ろうとも被告人に保障されている憲法上の正当な権利が侵害されることはないということはできない。 私もまた,法令の合憲限定解釈一般について,それを許さないとするものではないが,表現の自由の規制について,最高裁判所が法令の文言とりわけ定義規定の強引な解釈を行ってまで法令の合憲性を救うことが果たして適切であるかについては,重大な疑念を抱くものである。 本件の場合,広島市の立法意図が多数意見のいうようなところにあるのであるとするならば,「暴走族」概念の定義を始め問題となる諸規定をその趣旨に即した形で改正することは,技術的にさほど困難であるとは思われないのであって,本件は,当審が敢えて合憲限定解釈を行って条例の有効性を維持すべき事案ではなく,違憲無効と判断し,即刻の改正を強いるべき事案であると考える。』 とする非常に興味深い反対意見があるわね。 この藤田裁判官の反対意見は、違憲を争う側の主張としても、非常に有益な主張といえることから全文を掲載して、ここで読む機会を得ることにしたわ。 |
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あ、あたしはコッチが納得いくかな。 だって、合憲限定解釈って結局は、解釈なわけでしょ? 解釈なんて変更されちゃうこともあるわけだし、やっぱり、条文上の文言に問題があるから、こうやって解釈の必要があるってことを考えれば、違憲無効って結論が妥当だと思うなぁ。 |
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藤さんの考え方も大いに有り得るところだと思いますね。 『表現の規制に対して文面上の判断を行う目的は、当事者の救済ではなく、訴訟外の一般国民に対する萎縮効果を除去することにあったはずです。 だからこそ、憲法上保護されない行為をした者が過度の広汎性を主張したときには、規制されても文句のいえないはずの者が規制を免れてしまうという不都合にあえて目をつむり、訴訟外の一般国民のために文面上違憲の判決をしてきたのです。 事件の処理ということだけに裁判所の役割を限定すれば、文面上判断の必要はありません。 萎縮効果の速やかな除去ということが、文面上判断の正当性を支えているのです。 そうだとすれば、当事者の行為が憲法上保護されたものかどうかなどの問題ではなく、重要なのは規制が表現に向けられているかどうかなのではないでしょうか。 規制の対象が表現活動であるときは、萎縮効果の除去のために文面上判断のアプローチを採る、その結果として、憲法上保護されない行為を行った者も『救済』を受け、そのために、第三者の権利の援用が許されたかの外観が生じるということではなかったでしょうか』 とする指摘もなされていますからね。 (高橋和之『憲法判断の方法』有斐閣 1995年 40頁) |
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ふむふむ。 つまり、表現の自由への萎縮効果を考えるならば、適用上判断ではなくって、文面上判断をすべきだったってことを言ってるわけだね。 あたしも、そう思うお! |
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非常に重要な判例だから、また、人権の勉強を終えた後に、再度読み返してみることを強くお勧めしたいわね。 あ、そうだ。 よかったら、私も『ハレ晴レユカイ』を、この機会に見てみたいんだけど、いいかしら? |
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珍しいね、なんでまた? | ||
ウチ(=巨人)の西村健太朗が、かつて選手入場曲に『涼宮ハルヒの憂鬱』の主題歌『ハレ晴レユカイ』を希望したのよね。 まぁ、我が巨人軍に、そのような似つかわしくない曲は、当然認められなかったわけなんだけど、どんな曲だったのかしら、って思ってね。 |
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せっまっ!! 流石、自称紳士たれを広言する金満球団だお! まさに表現の自由を制約する狭量な態度っ!! 西村も、FA権行使して、ウチ(=広島)に来ればよかったんだお! そしたら『ハレ晴レユカイ』ぐらい延々かけたったわっ! |
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藤先輩のいうとおりです!! 西村は、好きな入場曲で登場できる球団に移籍したらいいんです!! |
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・・・せっかくいい判例検討だったなぁって思っていたのに、最後はこんなオチなんですか・・・。 | ||
3人共、野球大好きだよねぇ。 チイには、全然ワカラナイよぉ。 |