議院の権能A 国政調査権
長かった国会の勉強会も、今日が最終回ね。

議院の権能である国政調査権が今日の勉強会のテーマになるわ。

それじゃ、国政調査権とは、なんぞや!?
ってことで、まずは六法で憲法62条を見てくれる?
憲法第62条

『第62条 【議院の国政調査権】 
 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
法律の制定や予算の議決などの諸機能を適切かつ実効的に行使するためには、正確で十分な情報が必要となるわ。
その情報入手のために、議院に認められた権能、それが国政調査権ってことになるわね。
  よくワカッタ!
終わり?
終わり?
今日の勉強会は、これで終わり?
そんなわけがないじゃない!
コレで終わりになるなら、前回の勉強会で、この話をしてるわよ!

国政調査権は、論点の多いところだから、しっかりやろうと思えばこその持ち越しなんだからね!

さて。
この国政調査権の法的性質が問題となるわ。

学説には、独立権能説補助的権能説とがあるんだけれど。
ここは、補助的権能説で理解しておくべきね。

一応、両者の学説を紹介しておくと・・・。

独立権能説によれば、国政調査権とは、国会の最高機関性を根拠に国会が国権を統括するための独立の機能とする、という考えなの。
但し、この考え方は統括機関説を前提とする考え方なので、この独立権能説をとるのであれば、統括機関説の立場をとっていなければ、連動する考えである独立権能説はとれないことになるわ。 
ただ、以前の勉強会でも説明したように通説的理解としては、国会の最高機関の意味については、政治的美称説での理解で抑えておくといいって話をしたわよね。
だから、ここで独立権能説という考え方はとれないってことになるわけよね。

そこで、抑えて欲しいのが、補助的権能説
この補助的権能説が通説なんだけど。
補助的権能説によれば、国政調査権とは、議院の諸機能を実効的に行使するための手段であると説かれるわ。
まぁ、今日においては、国民主権の実質化という観点から、国政調査権は、国民の「知る権利」に仕え、国民に対して、積極的に情報を提供するという機能を有するものであるとの主張もなされるわね。
憲法の重要判例というわけではないのですが、この国政調査権の法的性質を理解する上で浦和事件は重要ですよね。

浦和事件というのは、ギャンブル三昧で家庭を顧みない夫に対して、落胆した妻が親子心中を図って、3人の子供を殺害したのですが、自分は死に切れず警察に自首した・・・という何ともやり切れない事件なんですけど。

この母親(浦和充子)に対して、浦和地裁(現・さいたま地裁)は、懲役3年・執行猶予3年という判決を下すんです。
この裁判所の判断に対して、参議院法務委員会は、量刑が不当(軽すぎる)であるという決議を下しました。

この決議に対して、最高裁は、法務委員会の決議は司法権の独立を侵害するもので、憲法上、国会に許された国政調査権の範囲を逸脱するものだと抗議しました。
これに対して法務委員会は、国政調査権は、司法権に対しても監督権を有するものだと主張したのです。

この事件を切っ掛けとして、国政調査権の法的性質が議論されることとなったわけですが、学説は、最高裁の見解を概ね支持するものでした。

つまり、国会は国政調査権について、独立権能説的な考え方だったのですが、最高裁、学説は、そのようには捉えなかったということですね。

この学説最高裁の見解に照らしても、補助的権能説による理解が通説的理解になると言えますよね。
うーん、確かに、なんともやり切れない事件だねぇ。
しかし、ここで一つ疑問が湧いたね。
この浦和事件が、どうして「浦和事件」と呼ばれているのかが、ワカラナイよね・・・。
犯人の女性も「浦和」。判決を下した裁判所も「浦和」。
一体、ドッチの名前を冠して「浦和事件」なのか・・・という問題が残るよねぇ。
あんた、ホント心底どうでもいいことにしか疑問感じないのね。
一体ドコに喰いついているのよ?

この事件は、別名「浦和充子事件」って呼ばれているのよ。
これで疑問解決よね?
っていうか、つかさちゃんのせっかくの有難い話を、台無しにするような質問は遠慮してくれる? 

ねぇ? つかさちゃん。
いえ。
流石、藤さんです。
思わず流してしまうようなところにまで探究心を忘れない、その姿勢を私も見習いたいです!
  うんうん。
クロちゃん。
精進に努めるんだよ?
  はいっ!
私も藤さんのように頑張ります! 
・・・つかさちゃん・・・サルのように頑張ったら、とんでもないことになっちゃうわよ?
ソレでいいの?

・・・国政調査権の範囲と限界について、まとめようかしら。

@目的上の制約 と A対象・方法の制限 とがあるわ。

@目的上の制約というのは、国政調査は、まず国政調査の目的からして、立法・予算審議・行政監督・議院の自律権に関する事項など、議院が保持する権能を実効的に行使するためのものでなければならない、とされるわ。

A対象・方法の制限については、幾つかの観点(大きくつ)からの制限がかかることになるわ(司法権との関係、検察権との関係、行政権との関係、人権との関係)。

この国政調査権の対象・方法の制限について、それぞれの観点との関係を見ていくことにしましょ。

まずは、司法権との関係ね。

司法権の独立の要請がある以上、現に係争中の事件に介入するなど、裁判官の自由な法的確信の形成を妨げるような調査は許されないことになるわ。

この司法権と国政調査権との関係において、裁判内容に関する批判的調査が認められるのか? という問題があるんだけど。

通説的理解としては、絶対禁止説になるわね。
絶対的禁止説によれば、判決確定の前後を問わず、裁判内容に関する調査は、司法権独立の原則からして一切許されない、という理解になるわね。

他の学説としては、絶対許容説(議院の裁判内容に対する批判的調査によって、裁判官の裁判活動が直接制約されるものではなく、したがって、議院は、裁判内容をいつでも自由に調査・批判することが可能である:支持者は殆どいない学説)、確定判決後許容説(確定判決後の裁判内容に対する調査ならば、裁判官の裁判活動に直接影響を及ぼすものではなく、自由にその内容を調査・批判することができるという考え方)等があるわね。
国政調査権と、司法権との関係を考える上で、重要な判例に、二重煙突事件がありますよね。
東京地裁昭和31年7月23日判決

暖房装置製造販売会社が受注した二重煙突(円筒状の二重亜鉛鉄板の中間に石綿をつめた耐熱耐火用煙突)の製作が完成していないのに、完納済みであるかのように装って、お金を騙しとろうと納入検査調書を変造した行為が、公文書偽造にあたるとして起訴された事件なんですけど。

この事件の暖房装置製造販売会社の顧問弁護士に、現職の法務総裁がいたことから政治問題に発展したんですよね。
会計検査院が、この事件を国政調査権によって調査するわけですが、公訴提起後も継続されることとなった、この国政調査権の運用が問題になったんです。

この問題に対し、東京地裁は次のような判断を示しました。

決算委員会が本件公訴提起後においてもなお引続きその調査を継続し、弁護人主張のような経過を辿るに至ったことは事実であって、かような事例は議院の国政調査制度の歴史の浅いわが国において、議院の国政調査権の範囲限界、とくにそれと捜査権裁判権との関係についての問題点を提示するものとして注目に値するところであ』るとした上で、

捜査機関の見解を表明した報告書ないし証言が委員会議事録等に公表されたからといって、直ちに裁判官に予断を抱かせる性質のものとすることのできないことは、日常の新聞紙上に報道される犯罪記事や捜査当局の発表の場合と同様であって、これをもって裁判の公平を害するとする所論の当たらないことは明らかである

としています。

つまり、国政調査権が、司法権と同一事件の並行調査となるような場合については、調査目的が裁判所と異なり、裁判所への慎重な配慮をもって行われるものである限り許される、という理解になりますね。
二重煙突事件なんて、渋い判例を出してくれて嬉しいわ。
百選掲載判例じゃないし、検討予定には入れていなかったんだけど、その、まとめと理解は、やっぱり大事よね。
ありがとう、つかさちゃん。

じゃあ、次は、国政調査権と検察権との関係についてね。

検察事務は、行政権の作用に属するけれど、検察権が裁判と密接に関連する準司法作用の性質を有することから、司法権に類似した独立性が認められなくてはならないことになるわ。
そのため、
(1)起訴・不起訴に関する検察権の行使に政治的圧力を加えることが「目的」と考えられる調査、
(2)起訴事件に直接関連する事項や公訴の内容を「対象」とする調査、
(3)捜査の続行に重大な障害をきたすような「方法」による調査
は、違法ないし不当
ということになるわね。

そして、このことが問題となった事件が・・・。
つかさちゃん、お願いしていいかしら? 
あ、全然構わないんですけど。
せっかくですから、判例検討ってことにしませんか?
うーん、どうかしら。
あまり事案再現に適した事件だとは思わないんだけど。
でも、そうね。
判決文も長くなりそうだし、移動しておきましょうか。 
  ・・・。
(うわぁ。
 コレ、グリーンマイル宣言だよ。
 イヤだなぁ。)
というわけで。
検討判例は、百選U 177事件日商岩井事件ね。
東京地裁昭和55年7月24日判決) 
私が、判例検討のない勉強会には参加していないせいで、藤さんが、あんなヒドい目に遭っていたのかと思うと申し訳ない気持ちになってしまいました。
・・・心無い言葉は辛いけど、大丈夫・・・あたしは負けないから。 
  あぁぁああぁああぁあっ!
藤さんっ!!! 
勉強会の続きやるわよっ!!
ナニよ、2人揃ってワケのワカラないコントまで始めてっ!

国政調査権と行政権との関係ね。

国会は唯一の立法機関として広汎な立法権を保持すること、そして、議院内閣制の下で国会に行政に対する監督・統制権が認められていることから、行政権の作用は、その合法性と妥当性について、全面的に議院の国政調査の対象となるわ。

でも、そこで「職務上の秘密」について問題になるの。
公務員が職務上知り得た秘密に関する事項についてまで、国政調査権が及ぶのか、という問題ね。

この問題については、限定説 と 比較衡量説 の説があるわ。

限定説によれば、行政権が職務上の秘密を理由に拒否しうるのは、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす場合に限られるべきである、と説かれるわ。

これに対して、比較衡量説によれば、職務上の秘密の範囲は、守秘義務によって守られるべき公益と国政調査権の行使によって得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量することにより決定すべきである、と説かれるわね。

いずれの見解がいいのかは一概には言えないところがあるわよね。
限定説の考え方は基準が明確故にワカリやすいけれど、実際にこの基準で運用するとなると難航が予想されるところよね。
そうなると、比較衡量説かっていうことになるんだけれど、この考え方だと基準がワカリにくい、ということは言えそうよね。
つまり、そんな面倒くさい問題を抱える国政調査権なんか失くしてまえ!
とそういう結論だね?
そんなことは、一言も言っていませんっ!!!
曲解にも程があるわよっ!!

はぁはぁ・・・

えーっと、最後に、国政調査権と人権との関係ね。

国政調査権の行使に際して、基本的人権を侵害するような手段・方法がとられるべきではないことは当然のことよね。
この具体例としては、例えば、証人として喚問され、思想の露顕を求めるような質問を受けた場合には、当該証人は憲法38条黙秘権議院証言法7条にある『正当の理由』を根拠に、そのような発言を拒絶することができるわね。 

・・・っと、ここまでかな。
いやぁ、お疲れ、お疲れ。
長い国会の勉強会が、ようやく終わったねぇ。
誰かさんのせいで、なんだか今日は疲れちゃったけどね!  
ちょっと、ちょっとぉ。
ナカたんの悪口言うのは、やめてくれないかなぁ?
ええぇぇぇっ!?
ど、ど、どうして私の名前が出てくるのですか!? 
竹中さんは学部生ですから、私達に比べて、理解が遅れていることは仕方ないと思います。
それを理由に竹中さんを責めることは、あんまりではないでしょうか。 
ち、ち、違うわよっ!!
私も、そんなこと、これっぽっちも気にしてないわよっ!!  
それじゃ、誤解を招くような発言は止めてよね?
ナカたんを見てみなよ。
ホラ、半ベソかいているじゃないの。
誤解を招く発言・・・だったとは思えないんだけど。  
  自覚のないところが一番の問題だね。
素直に謝るべきじゃない?
おかしいです!
なんだか、よくワカラナイ流れになっているです!
どうして、こんな流れになっているです!?
ホラホラ。
悪いことしたら、ゴメンなさいでしょ?
ホラホラぁ〜。
・・・・それじゃ、御詫びに今日は、晩御飯を御馳走させて頂きます。  
うひょっ!!!
マヂでかっ!?
どんだけ太っ腹なんだお!
流石、明智財閥のお嬢様っ!!
痺れるぅぅぅぅっ!!
御迷惑をお掛けした竹中さんに対して・・・ですけれどね!  
  ん!?
ナカちゃん、今日は一緒にご飯行こうか。
いきなりのお誘いで悪いんだけど、都合いい?  
あまり高くないお店がいいです。
明智先輩には、いつも御世話になっているのに、毎回お出ししてもらうのは申し訳ないですから。 
そんな遠慮はいらないわよ。
ナカちゃん、小食だし、そんな気遣いしなくっていいから! 
オネーさんに任せちゃって! 
あまり安くないお店がいいですぅ。
明智さんには、いつも御世話をしているから、毎回お出ししてもらって当然ですからぁ。 
死ねっ!!!   
  こ、こ、言葉の暴力だお・・・。
いやぁ、驚いた、驚いた。 
むしろ、優しい明智先輩に、そこまで言わせたことが驚きの事実ですよ、藤先輩。
少し反省して下さいです。
ナカちゃん、違う、違う!   
  ふぇっ!?
反省しなくっていいです?
「少し」じゃ全然足りないから!
「死ぬ程」反省してきなさい! 
 
ひ、ひ、ヒドイです!
一体、藤さんがナニを反省する必要があるって言うんですか!?
つかさちゃんも一緒に反省して欲しいわね!  
それじゃ、ナカちゃん、私達は行きましょうか。  
  は、はいです。
  行ってしまわれましたね。 
だおだお。
(飯ゴチのチャンスを失うとは、ちょっとやり過ぎたお。) 
反省・・・って。
一体、ナニに対しての反省を促してみえたんでしょう、光ちゃんは。
  ・・・。
(え? マヂでか? こいつ。)

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