国会単独立法の原則 | ||
じゃあ、前回までは憲法41条にいう『唯一の立法機関』の意味するところの1つである国会中心立法の原則について、判例と共に勉強してきたので・・・。 今日からは、その『唯一』の意味するところの2つ目。 国会単独立法の原則について学ぶわね。 既に説明したところだけれど、改めて言うと。 国会単独立法の原則とは、立法は国会の議決だけにより完結し、国会以外の機関の参加を認めないとする原則だったわよね。 |
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そうだったっけ? なんか前回の判例検討が、やたら多かったせいか、微妙に憶えてないんだけどなぁ。 |
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ソレは、あんたが復習を、ろくにしていないからよ。 記憶は反復によって定着するものなんだから、ちゃんと復習してよね! |
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こくこく(相槌) |
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この国会単独立法の原則の例外は、憲法95条ね。 六法で、確認しておきましょ。 憲法95条を見てくれる? |
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憲法95条。 『【特別法の住民投票】 第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。』 |
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この条文は、国が特定の地方公共団体を狙い撃ちにして、不利益を課すような立法をなすことを防止するために設けられているの。 だから、この憲法95条は、国会単独立法の原則の例外となるわ。 原則に対する例外は大事だから、抑えておいてね。 |
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いやいやいや、ちょっと待ってよ。 内閣が、法律の発案することってあるじゃない? 閣法って言うの? アレはいいの? 国会単独立法の例外ってことにはならないの? |
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いい質問じゃないの! 法律の発案権が、内閣にあるのか? という論点ね。 この問題に対しては、否定説と肯定説とがあるんだけれど、通説は肯定説とされているわね。 否定説からは、法律案の提出は国会がこれをなし得るものであり、また、国会のみがこれをなし得るものと解しているわ。 従って、内閣はこれをなし得ない、と解かれるわ。 これに対して、通説である肯定説は、 『内閣に法律発案権を認めることは、法律の発案も立法の一部とみれば、形式的には、国会単独立法の例外になる』 として、否定説の立場を肯定した後に、次のように続けているわ。 『が、法律の発案権は議員にもあるし、法律の成立を決定するものは国会の議決であるから、実質的には、国会単独立法の原則の例外にならないものと解される』 (清宮四郎『憲法T 第3版』有斐閣 205頁) ってね。 つまり、あんたの質問に対して、肯定説の立場からは、法律の発案権は内閣に認められており、また、この閣法は国会単独立法の原則の例外にはあたらない、ってことになるわね。 |
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成程、成程。 | ||
因みに、肯定説の根拠だけど。 @憲法72条前段の『議案』には法律案も含まれる、と解されていること A法律の発案権は国会議員にもあり、しかも閣僚の大半は実際には国会議員であること B国会は内閣の提出した法律案を自由に修正・否決しうること C議院内閣制は国会と内閣の協議を要請すること 等が、肯定説が認められる根拠として挙げられるわね。 |
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こくこく(相槌) | ||
じゃあ、次は、憲法41条にいう『唯一の立法機関』にある『立法』の意味についてね。 ここでの『立法』の意味については、実質的意味の立法を意味するものと解されているわ。 形式的意味の立法とは、内容のいかんを問わず、国会の議決により成立する国法の形式としての法律を制定することをいうんだけれど。 実質的意味の立法では、一般的に、「法規」という特定の内容の法規範を定立する作用を立法として定義するのね。 このあたりの形式的か、実質的か、という問題については、憲法の意味についての勉強のときにも同じような話があったのを憶えている? つまり、内容面が問われているってことに着目して欲しいわけ。 |
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えーっとねぇ。 『法規』の意味が、よくワカラナイかなぁ。 説明して欲しいって思うんだけど・・・。 |
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『法規』というのは、国民の権利・自由を直接制限し、義務を課する法規範をいうと定義されるわ。 この定義は大事だから、しっかり抑えておいてね。 つまり、実質的意味の立法とは、「直接または間接に国民を拘束し、あるいは国民に負担を課する新たな法規範」もしくは芦部先生が言われるように、実質的意味の立法を、より広く捉えて、「およそ一般的・抽象的法規範すべてを含む」ものを意味するという理解でいいと思うわ。 |
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う、う、うん・・・。 まぁ、あたし、教科書、芦部先生のだし、後者で抑えておこうかな。 |
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次の論点は、難しいのよね・・・。 法律の一般性と措置法(ソチホウ) という問題なんだけど。 あ、措置法っていうのは、処分的法律とも言われるわね。 個別具体的な事件に対して制定される法律を措置法(ないしは処分的法律)というんだけどね。 この措置法が問題になるの。 どうして、問題になるんだと思う? |
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うーん、問題にするからじゃない? 気にしなければいいんじゃない? |
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なんて答えをされるんですか・・・。 うーん・・・ 今、明智先輩は、実質的意味の立法とは、「およそ一般的・抽象的法規範すべてを含む」ものを意味するって言いました。 そうなると、個別具体的な事件に対して制定される措置法というのは、一般的・抽象的な法規範とは言えないとも考えられることから問題になるのではないでしょうか? |
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サルは、幸せ者だよねぇ。 問題をそうやって気付かないまま生きていければ、人はみんな幸せかもねぇ。 「知らぬが仏」って言葉もあるもんねぇ。 ただ、試験ではそうはいかないからね。 論点も見つけられないような理解では、論述では困ってしまうわ。 そうね。 ナカちゃんが言ってくれたように、法律の一般性とは、法律が不特定多数の人に対して、不特定多数の事件に適用されることを想定して制定されるものであることが求められるものよね。 だからこそ、平等であると言えるものなのに、個別具体的な事件に対して制定される措置法というのは、狙い撃ちになってしまうことから憲法上認められるのか・・・という問題があると言えるわよね。 |
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あぁ、そういう問題かぁ。 まぁ、OKOK。 あたしは気にしないから。 |
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あんたの気持ちなんて聞いてないから! 憲法上、認められるのか? って視点で考えてよね! この問題に対しては、原則合憲と考える見解と、原則違憲と考える見解とがあるわ。 前者には、法律の一般性説(平等保障説)、形式的法律説などがあるわね。 措置法に関する議論は難しいところだから、あまり踏み込まないけれど、一応、判例の立場は抑えておくことにしましょ。 名城大学紛争調停事件という事件を取り上げるわね。 |
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あ、名城大学って、この前ノーベル賞もらった先生のいる大学じゃない? (更新日2014.11.13。 受賞日2014.10.7) |
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そうね。その名城大学。 あ、でも、タイムリーな話題かと思っているなら、先に言っておくけれど、事件自体は、ソレとはなんの関係もないからね。 そもそも、この名城大学紛争調停事件は、すっごく昔の話だから。 裁判自体、東京地裁昭和38年11月12日のものだしね。 それじゃ、事案を話すわね。 この事件で問題になった措置法は、「学校法人紛争の調停等に関する法律」。 この措置法(以下、「調停法」)は、学校法人紛争の調停一般に関する法律として制定されたものではあったんだけれど、法律の審議過程での衆議院・参議院での質疑内容からも、現実には、名城大学の紛争を処理するためのものとして制定されたものだったのね。 でも、そうなるとよ? 名城大学を狙い撃ちしたような個別的法律ってことになっちゃうわけなんだけど、それって、法の一般性、平等原則の観点からは、問題があるってことになるんじゃない? というわけで、名城大学も、この調停法は特定事件についての行政措置であつて憲法上認められた「法律」とはいえない違憲の法律だと主張して、訴訟を提起したわけ。 この訴訟における判決文は、以下の内容ね。 『かりに調停法の立法の過程において被告と国会の議員団との間に原告主張のような約束があったとしても、調停法はその約束のような学校法人名城大学の紛争という単一の事件のみを規律として成立したものではないことを法文上明白であるから、調停法がそのような法律であることを前提とする原告の主張は理由がないことが明らかである』 として違憲の主張を認めなかったわ。 『法文上明白である』としているのは、調停法が、形式的な一般性を有していたことからの判断なんだけれど、現実問題、名城大学にしか適用されていないということを考えると、合憲という結論には、もう少し理由があってもよかったかなぁ、って思わなくはないところかな。 |
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へぇ〜。 措置法って面白いねぇ。 名城大学にしか適用されていないような法律でも、合憲なんだぁ。 |
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事件にはなっていないから取り上げなかったけれど、オウム新法の通称で知られている措置法として、「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」なんて有名じゃない? この法律だって、現実には、オウム真理教(その後継・分派団体)にしか適用されていないわ。 |
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そんな恐ろしい名前の法律が、適用される団体だらけでは、怖くって仕方が無いです。 | ||
確かに、確かに。 無差別大量殺人を行った団体に適用されるって法律だからね。 |
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この法律も、形式的な一般性を備えているから合憲ってことになるわけ。 原則合憲とする学説の一つである形式的法律説においても、この一般性という要件の重要性は説かれているからね。 |
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成程ねぇ。 いやぁ、光ちゃんが難しいって前振りするもんだから、どんな難しい話が来るのかと思ったけど、そうでもなかったよ? |
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踏み込んでないから、そう思うだけよ。 まぁ、でも学者になるわけじゃないんだし、このくらいの理解があればいいと思っての説明をしたつもりだけどね。 大体、あんた少し難しい話すると、途端にやる気なくす癖に! |
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ウキっ! | ||
あ、そう言えば、ちょい前になるんだけど、掲示板に 『神いわゆるゴッド』 って、あたしを賛美する書き込みあったよ! 羨ましい? 羨ましいでしょ? |
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貧乏神だって神様だからねぇ。 | ||
・・・。 (疫病神だって神様です。) |
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・・・・。 (あたしに貧乏神としての力があるのなら、明智財閥を破産させてやりてぇ!) |