最高裁平成18年7月13日判決 | ||
判例検討どころか、事案の説明にまで文句を言う不届き千万な方がおみえになるので、判例再現で事案を理解することにしましょうか! それじゃ、原告の精神障害の方を、ナカちゃん。 国をサルで。 私は、ナレーター役で。 配役にも、その不届き千万な方は、何やら御不満なようですが、これなら結構かしら? |
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うわっ! 嫌味ったらしい物言いっ! |
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ナレーター |
(無視っ!) 原告の方は、精神発達遅滞および不安神経症を抱えていました。 |
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うう・・・ 外出先で、他人の姿を見ると、身体が硬直して身動きさえとれなくなってしまうです・・・ これでは、外出することができないです。 |
精神障害を抱える原告 |
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ナレーター |
症状は悪化し、遂に平成12年頃からは、完全に家庭内に引きこもるようにまでなってしまいました。 | |
選挙があっても、こんな状態では投票所に行くことも出来ないです。 あ、でも郵便投票制度があるです。 この制度を使えば、私も投票できるです。 |
精神障害を抱える原告 |
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ナレーター |
公職選挙法は、所定の身体障害により投票所に行けない方のために、郵便投票制度を設けていました(公選法49条2項)。 しかし、当該制度は精神障害の方には認められておらず、原告の方は、郵便投票制度による投票権の行使はできなかったのです。 |
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どうして郵便投票制度は、私みたいな人間には利用できないんですか。 そのせいで、政治に関心があるのに投票できないです! 今年(平成12年)の国政選挙も地方選挙も棄権するしかないです。 |
精神障害を抱える原告 |
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どうして国は、私のような人間のために選挙権行使の機会を確保するための立法措置を講じていないですか! これは、立法不作為です! |
精神障害を抱える原告 |
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ナレーター |
選挙権が国民固有の権利である以上、その行使の機会を確保するための立法措置をとらなかったことは国の立法不作為であり違憲である。 そして、当該立法不作為は、国家賠償法1条1項の違法にあたると原告の方は主張し、自身の被った精神的苦痛の慰謝料を国に対して求める訴訟を提起しました。 |
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ん? 国のあたしの出番は? |
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あ、いたの? まぁ、事案説明済んだんだから、別にいいでしょ? |
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うわぁ・・・ 光ちゃん、相変わらず根に持つなぁ。 |
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グリーンマイル呼ばわりした、サルが悪いんじゃなくって? | ||
ケンカは・・・ ケンカはダメです・・・ |
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立法不作為については、さっきまでの判例検討で規範や要件について見てきたと思うから、いきなり最高裁の判断見ることにするわね。 (※ 段落ちは、管理人編集) (※ 赤太文字算数字は、管理人挿入。引用中略部分あり) 〜中略〜『1.『国には、国民が選挙権を行使することができない場合、そのような制限をすることなしには選挙の公正の確保に留意しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められるときでない限り、国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置をとるべき責務があるというべきである。 〜中略〜このことは、国民が精神的原因によって投票所において選挙権を行使することができない場合についても当てはまる。』 この表現には見覚えあるわよね。さっき検討した在外邦人選挙権事件と同じような表現よね。そうすると、原告の主張は認めてもらえそうに思えるところよね。 『2.しかし、精神的原因による投票困難者については、その精神的原因が多種多様であり、しかもその状態は必ずしも固定的ではないし、療育手帳に記載されている総合判定も、身体障害者手帳に記載されている障害の程度や介護保険の被保育者証に記載されている要介護状態区分等とは異なり、投票所に行くことの困難さの程度と直ちに結びつくものではない。 したがって、精神的原因による投票困難者は、身体に障害がある者のように、既存の公的な制度によって投票所に行くことの困難性に結びつくような判定を受けているものではないのである。 〜中略〜身体に障害がある者の選挙権の行使については長期にわたって国会で議論が続けられてきたが、精神的原因による投票困難者の選挙権の行使については、本件各選挙までにおいて、国会でほとんど議論されたことはなく、その立法を求める地方公共団体の議会等の意見書も、本件訴訟の第1審判決後に初めて国会に提出されたというのであるから、少なくとも本件各選挙以前に、精神的原因による投票困難者にかかる投票制度の拡充が国会で立法課題として取り上げられる契機があったとは認められない。』 でも、2.の しかし以降から認めない流れになっているわ。決め手となっているのは、赤太文字で示したところね。 身体障害者の方と異なり、精神的原因の方の場合は、投票所に行けるか否かの判断ができない点、そして、何よりも、そもそも国会で当該事案についての審議が殆どなされていないという点が大きいといえるわね。 在外邦人選挙権事件で示された要件に照らしても、@の「立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合」という点で、精神的原因の方の場合は、その判断ができない以上、明白な権利侵害を認めることは困難であるといえるし、Aの「国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合」には、国会審議が殆どなされていない以上、正当な理由なく長期にわたってこれを怠ったとは言えないわよね。 〜中略〜 『3.本件立法不作為について、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などに当るということはできないから、本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるべきものではないというべきである。』 3.は結論部分ね。 |
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あうあうあう。 | ||
在外邦人選挙権事件が、従来のあまりに厳しい制約を拡張したものであることから実質的な判例変更とも言われていたんだけど、最高裁は判決文において判例変更ではないとしていたって説明したよね。 本件判決が、在外邦人選挙権事件の後に出された判決であることを踏まえると、最高裁は確かに、判例変更はしていないとも言えるわよね。 つまり、在外邦人選挙権事件が例外的な場合にあたることを示しただけであって、在宅投票制度廃止事件から立法不作為に対する最高裁の姿勢は変わっていないということになるとも言えるわね。 じゃあ、どうして在外邦人選挙権事件は、立法不作為を違憲であるとし、国賠法上の違法を認めたのに、あとの2つは認められなかったのか、という違いを理解することが必要になるわよね。 勿論、本判決での判例検討2.で示したように、規範と要件に当てはめて考えれば自ずと結論を導ける、と考えることも出来るとは思うんだけど、在外邦人選挙権事件では、そもそも選挙権自体が原告らには無かったのよね。これに対して、後の2つの検討判例では、歩行困難・精神的原因により、投票困難ではあったけれど、選挙権自体はあったのよ。 ザックリした表現になっちゃうんだけど、つまり、レベルが違うってことよね。 投票困難なレベルでは、国賠違法にはならないってことよね。 |
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立法不作為が認められると思ったです・・・ | ||
在外邦人選挙権事件の判例検討の際に、この判決で示された規範を書けるようになるといいね、って言ったよね。 そして、その際に、立法不作為を認めるにせよ、認めないにせよ、挙げる規範は、在外邦人選挙権事件の規範を・・・って言ったのは、そういう意味なの。 在外邦人選挙権事件は、あくまでも例外的な位置づけで捉えておくってことでもいいと思うわ。 |
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解りました。 ガンバルです! |
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3つ目だから、アッサリって言ったのに・・・ | ||
あんたの理解は、アッサリだからいいんじゃないの? | ||
くっくっく・・・ アッサリどころかサッパリと言っておこうか!! |
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なんでソレなのに勝ち誇っていられるのよ! | ||
サッパリ味っていいじゃん。 美味しくね? 美味しくね? |
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味ならね! 理解が、サッパリじゃ困るでしょ!! |
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なんの話してるんだお? | ||
その言葉、そっくりそのまま、あんたに返すわよ! |