構成要件要素・@主体 | ||
前回は犯罪の成立要件を学んだわよね。 大事な3本柱だから、もう一度復習がてら言うわね。 @ 構成要件該当性 法律上に定められた犯罪の型、すなわち構成要件に当てはまること A 違法性 法的に許されないこと ・(社会倫理)規範に違反すること ・法益を侵害し、または危険にさらすこと B 有責性(責任) 刑罰によって非難できること(非難可能性) だったよね。 今日からは、しばらく、この@構成要件該当性の、構成要件要素について勉強することにするわ。 構成要件要素は、次の7つがあるの。 @主体 A行為 B結果 C因果関係 D故意・過失 E一定の状況 F特別の主観的要件 ただ、EとFについては、基本的にはあまり問題となることは少ないわ。 特に大事なのは、C因果関係とD故意・過失かしら。 ここは、かなり念入りに勉強することにするからね。 |
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光ちゃん、7つも一気にあげられるとピンと来ないんだけど・・・ | ||
上の図でイメージ掴んでみて。 @主体は行為を行ったサル。 A行為はナイフで私を刺したこと。 B結果は私の死亡。 C因果関係はA行為とB結果の間に求められる関係 D故意・過失はサルの主観面 ザックリした言い方すると、故意は「わざと」、過失は「ウッカリ」って感じで今は理解してくれればいいわ。 |
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刺すのを、あたしにしなくってもいいじゃん・・・ | ||
私だって死にたくはないんだからお互い様じゃない? E一定の状況とF特別の主観的要件を入れていないのは、さっきも言ったけど、この2つは毎回出てくる要素ではないからよ。 先に、説明しちゃうと・・・ E一定の状況っていうのは、例えば消火妨害罪のような場合に成立する状況ね。 六法で刑法114条をひいてみて。 |
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刑法114条ね。 『(消火妨害)第114条 火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。』 あ、ホントだ。 「火災の際に」って状況を限定してるよ! |
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消火妨害罪に出てくるようなE一定の状況を、構成要件的状況っていうのよ。 毎回出てこないって言ったのは、そういうことなの。 同じように毎回出てこないものとしてF特別の主観的要件もあるのよ。これも、説明しちゃうね。 大分先になるけど、主観面のD故意・過失を勉強するんだけど、F特別の主観的要件は、このD故意・過失の故意よりも、さらに強い故意が求められるものなの。 抽象的な話しててもピンと来ないと思うから、各論の内容を先取りで教えちゃうことになるけど、 六法で刑法148条1項をひいてみて。 |
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刑法148条1項ね。どれどれ・・・ 『(通貨偽造及び行使等)第148第1項 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。』 ん? 読んでもよくワカラナイんだけど・・・。 |
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通貨偽造罪及び行使罪では、通貨を偽造するっていう故意だけではなくって、その偽造した通貨を行使する目的も必要になるのよ。 例えば、学校の教材にする目的で通貨を偽造しても、行使する目的がないから、同罪は成立しないの。 同罪の成立には、通貨行使目的が求められる、これが、F特別の主観的要件という意味よ。 このE一定の状況とF特別の主観的要件は、他の@〜Dと違って、いつも問題になるわけではないから、説明はこれぐらいにしとくね。 |
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アカン・・・まだやる気だお・・・ | ||
ちょっとぉ。もっとやる気見せなさいよ! 今日はタイトルの通り、@主体までは説明するつもりなんだから! 刑法の主体となる「者」は「自然人」に限る。 これは抑えておいてね。 |
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主体・・・ アイン・主体ン・・・ ホル主体ン・・・ |
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ナニ、そのサムいを通り越して、凍てつく波導のようなギャグは・・・ しかも、主体となる「者」は「自然人」に限るって言ってんでしょ? ホルスタインは牛だから、自然人ですらないじゃないの! 主体となる自然人に、一定の身分を要求する犯罪もあるの。 ここでいう「身分」っていうのは、「属性」と置き換えてもらってもいいわ。 ただ、「身分犯」という言葉はあっても、「属性犯」という言葉はないから気を付けてね。 身分犯の典型例は、公務員の収賄罪(刑法197条)とか、常習賭博者の常習賭博罪(刑法186条)ね。 六法で刑法186条第1項をひいてみて。 |
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刑法186条1項かぁ。 『(常習賭博及び賭博場開帳等図利)第186第1項 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。』 あれ? じゃあ、常習じゃなければ賭博してもOKってことになるね。 これ、知ってると知らないじゃ大違いだね。 よし、そうと分かれば賭け麻雀で一儲けしてやんお! イシシシシシシシシ。 |
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ナニよからぬこと考えているのよ。 刑法186条は、常習賭博罪。 ただ、常習として賭博をしていない者は、その前にある条文、刑法185条の、単純賭博罪があるから、ソッチで裁かれることになるのよ! この賭博罪のように、身分がなくとも罰せられるが、身分があることによって罪が重たくなる身分犯を、加重的身分犯っていうの。 |
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あたしみたいな貧乏人は、一攫千金でも狙わないとやってられないってのに・・・夢もナニもあったもんじゃないよ・・・ | ||
そんな切なくなるようなこと言わないで。 今日の晩御飯は、私がオゴッてあげるから元気出してよ。 |
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肉っ! 肉っ! 肉っ! お肉が食べたいっ! |
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よかった。 サルが元気になって。 それじゃ、その勢いで、法人処罰について、まとめて主体のついての勉強を終わらせちゃいましょ。 |
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あ・・・もう終わりだと思ったのに・・・。 | ||
だから、主体までは今日やっちゃうよって最初に予告したじゃないの。ホラ、コレが最後の論点だからガンバって! 刑法では、処罰する「者」は「自然人」に限られているわ。 だけど、刑法典以外の特別法(特別刑法)では、自然人だけではなくって、法人にも処罰を定める両罰規定を置いているものもあるわ。 |
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うん。ワカッタ。ワカッタ。 じゃあ、ご飯行こう。 |
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まぁ、随分と物分りがおよろしいこと。 それじゃあ、御理解されてみえる木下さんに御質問させて頂いて、よろしいかしら? 法人処罰の理論構成は、どのように考えるのかしら? |
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日本語でOK・・・ |
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ナニ、その変な言い回し? さっきも説明したけれど、特別刑法上は、業務主としての法人を、違反行為を実際に行った自然人行為者と共に処罰することを定めたものがあるわ。 例えば、独占禁止法第95条がそうよ。 カルテルを行った自然人と共に法人(会社)も処罰されることになるのよね。 法人処罰の理論構成は、学説が様々あるところだから、ココでは判例の立場とされているものを説明するわね。 (参照判例 最判昭和40年3月26日 百選T 3事件) 法人も、代表者を通じて罪を犯すことができる、って考えるのよ。では、代表者を通じて法人が犯すことのできる罪とはナニか?ってことよね。 これは、選任監督上の過失とされるものなの。 代表者と法人を同一視して、代表者=法人と捉えてみるわけね。 罪を犯すような代表者を選び、任せた法人には、その選任にあたり過失責任があったとして、代表者の犯した罪を、法人が代表者を通じて犯した罪と同視することで、法人処罰を認めているのよ(同一視理論・同一視説)。 尚、一般には犯罪事実の挙証責任は検察官だけど、法人処罰に関しては、過失が推定されるため、法人側で、無過失であったことを立証しなければならないのよ。 ただ、この無過失の立証は非常に困難で免責が認められたことは殆どないんだけどね。 |
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既にキャパオーバーになっとる相手に、まくしたてるとは容赦ねぇお・・・ | ||
だってサル、ワカッタ、ワカッタって言ったじゃないの。 分かっているなら、説明さえいらないところじゃないの? |
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もぉ、イジめないでよぉ。 それじゃ、ご飯行こ、行こ。 |
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しっかり食べて、明日っからはやる気出してガンバってね! | ||
うんうん。 ん? (待てよ・・・ってことは毎日やる気なくタラタラしてたら毎日ゴチってもらえるってこと?) |
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言っとくけど、今日みたいにタラタラやるなら、私もう教えないから、そのつもりでね! | ||
『ボスケテ』っ! |