犯罪論の体系 | ||
前回は、判例を中心に色々サルも頑張っていたから、少しリラックスする意味で、刑法が得意だって自負するサルに質問しちゃうわね。 ガソリンカーは汽車か? みたいな質問じゃなくって、もっと生活に身近な質問だから、サルのドラマの知識でも答えられると思うわよ。 質問。 サルが結婚して、旦那さんがいるのに、他の男性と肉体関係をもった場合、それって犯罪かしら? |
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あ、それワカル! 犯罪じゃあないんだよね。 |
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すっごくアッサリした答えだけど正解よ。 かつては、刑法183条に「姦通罪」があったけど、現行刑法からは削除されているから犯罪にはならないわね。 但し、民法上の不法行為(不貞行為)にはあたることもあるから、そこは注意してね。 まぁ、サルは不貞行為の前に、そもそも結婚できそうもないから関係ないか。 |
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・・・サラっと、とんでもないこと言ってるよ、この人・・・ | ||
じゃあ、次の質問いくわよ。 私が歩いていたところに、急にサルが襲ってきたの。それで、咄嗟にサルから私は自分の身を守るため、やむを得ずサルを殴ってケガさせちゃったの。それって犯罪かしら? |
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例えが、すっごいイヤな感じだけど、それも犯罪じゃないね・・・。多分、正当防衛ってやつじゃないの? | ||
そう! 刑法36条の「正当防衛」が成立するから例外的に処罰されないのよ。 質問の合間だけど、せっかく条文出てきたから、ついでに六法で、刑法36条の「正当防衛」見ちゃって! |
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刑法36条ね。 『(正当防衛)第36条第1項 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。』 これは、あたしでも知ってるよ! |
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じゃあ、最後の質問よ! サルが10歳って仮定してね。 10歳のサルが、駄菓子屋さんからお菓子を万引きしちゃったの。それって犯罪かしら? |
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あ、あ、あたし・・・ そ、そ、そんなこと し、し、してないお・・・ |
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別に、あんたの話なんかしてないわよ。 仮定の話じゃないの。 え? なんかキョドってるけど、あんた、まさか・・・ |
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(なんだお、ビビらせやがって) そんなことするわけないじゃないの、光ちゃん。 でもま、子供のしたことなんだから犯罪じゃないよね、うんうん。 |
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私、信じて大丈夫よね? でも、サルの答え自体は正解よ。 駄菓子屋さんからお菓子を万引きした以上、それは立派な窃盗罪よ。 そして、万引きという行為には、正当事由も見当たらないわ。 但し、子供には責任がないから処罰されないの。 刑法41条を六法でひいてみて。 |
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ニシシシシシ。やっぱりね。 あ、刑法41条だったね。 『(責任年齢)第41条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。』 ウキっ! 罪刑法定主義万歳っ! |
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なんか不穏当な発言してるんだけど。 サルぅ。私、あなたのこと友達として信じていいんでしょうね? まま、私が今の質問で聞きたかったのは、それぞれの質問は、たしかにいずれも犯罪ではないけれど、その理由が違うってことなのよ。 つまり、犯罪には、その成立のための要件、成立要件があるってことなの。 この犯罪の成立要件は、論述を書く上でもすっごく重要だから、しっかり覚えてね! |
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ウキキっ! バッチこぉーい! |
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犯罪の成立要件は、次の3本柱よ。 @ 構成要件該当性 法律上に定められた犯罪の型、すなわち構成要件に当てはまること A 違法性 法的に許されないこと ・(社会倫理)規範に違反すること ・法益を侵害し、または危険にさらすこと B 有責性(責任) 刑罰によって非難できること(非難可能性) つまり、犯罪とは、構成要件に該当し、違法かつ有責な行為である、って定義されることになるわけね。 この3本柱は、順序も大事なのよ! 犯罪の成立を考察する上で、構成要件該当性、違法性、有責性という@〜Bの順序で考えることが大事なの。 今日の講義は短いけど、それはこの重要な思考枠組みを絶対おさえて欲しいからなの。 |
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えーっと。構成要件該当性、違法性、有責性ね・・・。 あたしの、駄菓子屋の万引きを、思い出せばいいわけか・・・ 窃盗罪にはあたる(構成要件該当性)○ 法益侵害があり、その行為に正当事由なし(違法性)○ でも10歳なんだから責任なし(有責性)× したがって、構成要件に該当し、違法な行為ではあるが責任がないので犯罪ではない! うん、ワカル、よくワカル! |
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ん? 今、あんた、スルーできないこと言ってない? 『あたしの』駄菓子屋万引き? 思い出す? あんた、やっぱりっ!! |
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やだなぁ。光ちゃん。 光ちゃんが例に出した『あたしの』駄菓子屋万引き事案って意味じゃない。 友達のあたしのこと、そんな目で見ないでよ。 |
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そ、そ、そうよね。 ゴメンね、サル。 |
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光ちゃんは、あたしのこと、そんな目で見てたんだ・・・ 今の『やっぱり』って、すっごい傷ついたよ・・・ |
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だから、謝っているじゃない。 ホント、ゴメンね。 |
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精神的苦痛の慰謝料として、今日のあたしの晩御飯は、光ちゃんのゴチだね。 | ||
うん・・・それでサルの気が済むなら、ホントごめんね。 | ||
わーい、許す、許すぅ。 (くっくっく・・・『計画通り』っ!) |