法令行為・正当業務行為
なんか随分と御無沙汰ですよね?
前回は、塩飴の話題が最後にあったってことは・・・。
実に去年の7月以来ですね!
(2015.1月更新)
言わないでいいよぉ〜。
言わなきゃ誰も気にしてないんだからねぇ〜。
はい!
というわけで、いつものように何事もなかったのごとく勉強会に入りまぁーす。

違法性阻却事由として、今日の勉強会では、法令行為・正当業務行為について抑えることにするわね。

六法で刑法35条を見てくれる? 
刑法35条

『(正当行為) 第35条
 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
半年ものブランクを一蹴っ!
あたし達にできないことを平然とやってのける!
そこにシビれる!あこがれるゥ! 
  痺れないし、憧れませんけど。
刑法35条は、前段後段とに分けられるわ。

前段部分が、法令行為
後段部分が、正当業務行為について、それぞれ定めているわけね。 
  こくこく(相槌)
法令行為が、違法性阻却事由とされる趣旨は、これは法秩序の統一性の見地からね。

法令行為とされるものの中身を見てもらえるとワカルと思うんだけれど、法令行為とされるものには・・・

例えば

通常逮捕
緊急逮捕
現行犯逮捕
などが挙げられるわ。

逮捕は、私人への身体的拘束を伴う行為ではあるものの、法令に根拠のある行為であることから、一定の公務員に課せられる職権・職務行為として違法性が阻却されるわけよね。

他には、親権者の子に対する懲戒行為なども挙げられるわね。
まぁ、一般に体罰は許されない、という考え方は最近は強いわけだけど、親の懲戒としての意味での体罰は、教育的裁量の枠内にあると思っていいとされるわね。
ただ、教育という名の下の暴力を肯定しているわけじゃないから、あくまでも懲戒という範囲でってことにはなると思うけれど。

あとは、競馬競輪などの公営ギャンブル
例えば、競馬法による勝馬投票券の発売がそうよね。
賭博罪があるわけなんだから、競馬や競輪などがギャンブルである以上、構成要件に該当する行為となるところなんだけれど、これも政策的理由から法令に根拠があるため法令行為として違法性が阻却されるわけね。
(うーん、あたしがナカたんをドヅく行為を正当化する根拠は、この中にはなさそうだなぁ。
 まぁ、まだ始まったばっかだし、そのうちソレらしいものが出てくることを期待するかな・・・。)
明智先輩っ!!
藤先輩が、またなんか悪いこと考えているですっ!! 
あんた、いつもどんな視点で勉強してんのよ!
そんな態度だと、もう勉強会してあげないわよ?

えーっと、次は、35条後段正当業務行為ね。
ここにいう「業務」とは、社会生活上、反復・継続して行われる事務をいい、必ずしも職業に限定されないわね。

そして、この正当業務行為に挙げられるものは色々な類型があるところだけど。

例えば、

医療行為、弁護活動、取材活動、宗教活動、争議行為等があるわね。

ワカリやすい例として、医療行為を例にとって説明すると。
お医者さんが、メスで患者さんのお腹を切る・・・。
この行為自体は、傷害罪刑法204条の構成要件に該当する行為になるわよね。

でも、
@患者の同意
A医学的適応性
B医術的正当性

から違法性が阻却される
ってことになるわけ。

この要件を裏返すと、傷病者の同意を得ないで行う治療行為(専断的治療行為)違法といえるわね。
また、患者の自己決定権を尊重して、「説明と同意(インフォームド・コンセント)必要というのが今日では有力とされているわ。
宗教活動が、正当業務行為として違法性阻却されるっていうのなら、以前にやったシャクティーパッド事件のシャクティーパッドも、宗教活動の一環なんだから、違法性阻却されるんじゃない?
ちょっと、その法律構成は考えられないわね。
ここで、正当業務行為として認められているような宗教活動というのは、例えば牧会行為等をいうわ。

ワカリやすい具体例を挙げると、教会の懺悔室で、牧師さん相手に迷える子羊が、自己の罪を懺悔で話したとするじゃない。
その内容が、刑法上、罪に問われるものだったとした場合、それを聞いた牧師さんが、そのことを黙っていることは、犯人を隠匿(刑法103条)することになってしまうわよね。
でも、牧師さんが、教会の懺悔室でその懺悔を聞くことは宗教活動である以上、正当業務行為として、違法性が阻却されるってことになるわけ。 
あぁ。そういうことかぁ。
手塚治虫の『MW』って漫画で見たことあるよ、その話。
判例もあるのよね。
どちらかというと、憲法上の判例として検討すべき判例だと思うから、ここでの紹介は差し控えるけれど、このことが争われた判例では、牧会活動は、正当業務行為として違法性が阻却されているわね。 
医療行為については、難しい問題だとは思うのですが、安楽死や尊厳死の問題についても説明がいるのではないでしょうか?
いえ、私も、あまり抑えてはいないところですので、是非聞きたいと思っているんですけれど。
ほむほむ・・・。
ドクターキリコのやっとることは、医療行為として違法性阻却されるのかって話かぁ。興味深いお。
誰よ、それ?

つかさちゃんの疑問に応えられるくらいの理解が私にもあるのかは、ちょっと自信がないんだけれど・・・。

また後で説明しようかと思っていたんだけれど、少し、この安楽死と尊厳死について話しておくわね。
まず安楽死と尊厳死は違うわ。

安楽死は、その内容からつに大別されるのね。

間接的安楽死
直接的安楽死
消極的安楽死


つなんだけど。
この安楽死の問題について扱った判例百選にあるから、ちょっと見ておきましょうか。
すみませんでした。
医療行為って聞いたときに、咄嗟に疑問が口をついちゃって。

えーっと、百選T 21事件横浜地裁平成7年3月28日判決)ですよね。
そうね。
この判例は、さっき述べた3つのうち積極的安楽死の事案なんだけど。
判決文の中で、安楽死の内容のつそれぞれの定義、そして、それぞれ医療行為という正当業務として違法性が阻却される要件についても言及してくれているからね。

判決文から該当箇所だけ抽出しちゃうと・・・。

安楽死と尊厳死との違いについてだけど、尊厳死については、次のように述べているわ。

治療行為の中止は、意味のない治療を打ち切って人間としての尊厳性を保って死を迎えたいという、患者の自己決定を尊重すべきであるの患者の自己決定権の理論と、そうした意味のない治療行為までを行うことはもはや義務ではないとの医師の治療義務の限界を根拠に、一定の要件の下に許容される

ものであるとしているわね。
そして、尊厳死が医療行為として違法性阻却が認められる要件としてザックリまとめちゃうと、

@死期が間近であること(死期の切迫)
A相手の同意(患者の同意)


を挙げているわ。

次に、安楽死の内容としては、その手段から

延命治療を中止して死期を早める不作為型の消極的安楽死といわれるもの
苦痛を除去・緩和するための措置を取るが、それが同時に死を早める可能性がある治療型の間接的安楽死といわれるもの
苦痛から免れさせるため意図的積極的に死を招く措置をとる積極的安楽死といわれるものがある

として、さっき述べた3つの類型の定義を述べているわ。

次に、それぞれの違法性阻却が認められる要件として

消極的安楽死については
治療行為の中止としてその許容性を考えれば足りる
としているわね。

間接的安楽死については
主目的が苦痛の除去・緩和にある医学的適正性をもった治療行為の範囲内の行為とみなし得ることと、たとえ生命の短縮の危険があったとしても苦痛の除去を選択するという患者の自己決定権を根拠に許容される
としているわ。

そして、本件で争われた積極的安楽死の違法性阻却の要件としては
@患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいること、
 
A患者は死が避けられず、その死期が迫っていること、
 
B患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと、
 
C生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること

4要件を挙げているわね。
積極的安楽死要件は厳しいんだね。
そうね。
違法性阻却されなかったら殺人罪刑法199条が適用されちゃうわけなんだから、現場のお医者さんにとっても深刻な行為と言えるわね。
実際、この横浜地裁では、今言った4要件に照らして、殺人罪を成立させているのよね。

えーっと、まとめるわね。

安楽死のうち、消極的安楽死については、尊厳死と同じ要件で考えることができるわ。
消極的安楽死という表現がされているけれど、その内実から考えれば、尊厳死と同視されうるわけだからね。

次に間接的・直接的安楽死については、
@死期が間近(死期の切迫)
A激しい苦痛(肉体的苦痛)
B相手の同意(患者の同意)

要件として違法性阻却されうるわ。

そして最後に積極的安楽死
これは、今の横浜地裁判決文からワカルように、一般的な安楽死の要件に
C代替手段の不存在
を加えている
わけね。

正直、この問題は議論が多いところだし、深入りすると、いつまで経っても議論の森から出て来れないくらい話はあるところだから、これくらいにしておくけどね。
なにか前倒しで聞いてしまったみたいで、すみませんでした。
でもお陰で、スッキリしました。
ありがとうございます。
や、や、ヤバイお!
代替手段の存在なんか考えちゃいないドクターキリコは殺人罪で捕まってまうお!! 
だから、誰よ、ソレは!? 
手塚治虫先生の名作「ブラックジャック」に出てくる、ブラックジャック先生のライバルです。
ブラックジャック先生は、私は大好きです!
でも、先生の邪魔ばかりするキリコは大嫌いです!
あたしはドクターキリコ好きだもん。
だって格好よくない?
ぶっちゃけ、主人公は、あんな根暗な半分白髪より、ドクターキリコ先生がやればいいって思ってるもん。
キリコなんて、片目だけ眼帯して、「死神の化身」とか名乗っている厨二病患者じゃないですか! 
全然格好よくないです!!
まぁ、お子様にはワカラナイんだよねぇ。大人の男の魅力はさぁ。
  アッチョンブリケ!!

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