構成要件要素・D故意 事実の錯誤
態度はともあれ、前回は結構頑張って勉強できたわよね。
その調子で今日も頑張りましょ!

今日のテーマは、故意の中でも、ちょっと難しいテーマとなる事実の錯誤という論点についてね。

事実の錯誤は、故意のところで勉強して、
違法性の錯誤については、責任のところで学ぶからね。
錯誤って言うと、民法総論でも勉強したやつだよね?
錯誤故意が、どう関係するの?
  故意は、いわゆる「わざと」やるってことよね。
でも、そこに錯誤、つまり、いわゆる勘違いがあった場合に、故意を認めていいのか、という問題があるのよ。

この事実の錯誤には、幾つかの類型が存在するから、それぞれの類型毎に理解して欲しいの。
 事実の錯誤の諸類型
   客体
(人違いタイプ)
方法
(打ち損ないタイプ) 
因果関係 
 同一の構成要件
(具体的事実の錯誤)
@ A B
 異なる構成要件
(抽象的事実の錯誤)
C D
1つ目の区別基準は、構成要件が同じなのか、違うのか、でまず区別されるわ。
上の表の一番左側の区別基準ね。

そして、それぞれに対応する錯誤があるってことなの。
まずは客体
これは、相手を間違えた錯誤ってことね。

次に方法の錯誤
これは、打撃の錯誤とも言われるんだけど、撃ち間違えってことね。

それぞれの類型毎に、該当番号を振っておいたから、今日はソレを、一つずつ確認していくことにしましょ。
  こくこく(相槌)
それじゃ、まずは@から説明するわね。

サルが、私だと思ってナイフで刺し殺したんだけど。
なんと、それは私によく似たナカちゃんでした!

コレが、いわゆる同一の構成要件での客体の錯誤の具体的事例と言えるんだけど。 

この場合、サルに故意を認めてよいのか?
という問題ね。
遂に、チビッ子までヤっちまったお・・・。
まぁ、でも普通に考えて殺人罪刑法199条)が成立しないとは思えないなぁ。 
ただ、あたしは光ちゃんを殺そう、という殺意故意)はあったんだけど、ナカたんを殺すつもりはなかったんだよねぇ。
となると、ナカたんに対して殺意故意)はなかったんだから、過失(光ちゃんとナカたんを間違えるという過失)によってナカたんを殺したとも考えられるよね。
ダメです! ダメです!
藤先輩は、人を殺そうと思って、人を殺している以上、そこには故意を認めるべきです!
明智先輩と間違えたとは言え、私を狙って、私を殺しているんだから、そこに故意を認めるべきなんです! 
ウェブ アニメーター
  そうね。
まぁ、サルも言っているけれど、ナカちゃんのように考えるべきよね。

客体の錯誤、いわゆる人違いは、動機の錯誤とも呼ばれるわ。
この動機の錯誤は、故意を阻却しないの。

理由は、ナカちゃんが言ってくれた考え方でいいわ。
その人を狙って、その人が死んだのだから、故意を認めてよい、って考えるのよね。
この考え方を、法定的符合説と言うのよ。

法定的符合説とは、事実と認識とが「法定的に」、つまり同じ構成要件の内部にある限り、故意を認めるとする考え方をいうの。

判例通説の立場は、この法定的符合説がとられているから、ナカちゃんのように考えることが、判例通説の理解と言えるわね。

この法定的符合説から、@の事案を説明すると。
人を殺す意思で、人を殺すことが、刑法199条殺人罪の構成要件である以上、そこに人間違いという動機の錯誤(=光ちゃんなら殺すつもりだったけど、ナカちゃんなら殺すつもりはなかったという動機についての錯誤)があったとしても、それは故意を阻却するものではない、と考えるわけ。
藤先輩は、いつも悪いことばかりしてるです。
  仮定の話の中でね!
実際は、なんもしてないからね!
次は、Aの事案ね。

サルが、私を狙って拳銃を撃ったんだけど、その拳銃の弾は外れてしまい、予想外のナカちゃんに命中してしまい、なんとナカちゃんが死亡してしまいました!

みたいな事例が、同一の構成要件における方法の錯誤の具体的事例になるんだけど・・・。
ちょっと、ここは難しいところだから、次回に細かく学ぶことにするわね。 
藤先輩が、また私を殺してしまったです!
法禁物の拳銃を所持するだけでも悪いのに、人殺しまでしてしまうなんて言語道断です! 
そんなゆゆしき問題を先送りにしていいわけないです!
ウェブ アニメーター
はいはい。
チビッ子は暴れないの、暴れないの。
  チビッ子って言ったです!
今度は侮辱罪を犯しているです!
ウェブ アニメーター
  方法(又は打撃の錯誤は、少し、その場合分けが複雑なところだから、後日に別途検討した方がいいかなぁ、と思ってね。
ナカちゃんの勉強したい気持ちはワカルから、ちょっと抑えてね。
勉強したい気持ちなのかな?
なんか違くね?
  私には、そう見えるんだけど違うのかしら?
まぁ、そんなわけでAについては、改めて次回で。

先にBの説明するわね。

サルが、私を溺死させようと思って、橋から突き落としたんだけど、私は橋から落下して、水面に向けて落ちる途中で、頭部を橋脚に激突させて死亡してしまいました!

まぁ、これがBの類型である、同一の構成要件における因果関係の錯誤の具体的事例として挙げられる教室事案で有名な「はしげた事例」なんだけどね。

このような場合に、サルに故意を認めてよいのか、が問題となるわけよね。
もう完全に犯人役を、あたしで固定しちゃってるよね。
まぁ、別に個人的には構わないんだけど、ナカたんが感情的になるのはイヤかなぁ。

この事案だと、あたしは光ちゃんを溺死させるつもりなんだから、光ちゃんを殺そうとする故意はあったわけか。
ただ、あたしの計画では、溺れさせて溺死させる予定だったんだけど、光ちゃんはトロいから、橋脚に頭ブツけて死んでしまったってわけね。

行為と結果は、あたしの思ったとおりなんだけど、行為と結果との間の因果関係が、あたしの想定外ってことで、因果関係の錯誤になるわけか・・・でもまぁ、過程はどうであれ、殺すつもりで死亡という結果があるのであれば、故意は認めるべきなのかなぁ。
サラッと、私がトロいなんて悪口入れてるんじゃないわよ!
ただサルの考え方は、概ね正しいわね。

重要なのは、行為と結果との間に因果関係があることの認識であって、具体的な因果関係の認識までは必要ではないのよ。

従って、認識した因果経過と、客観的に生じた因果経過が、相当性の枠内であるならば、結果に対する故意を認めてよい、と考えるのが通説的な理解と言えるわね。

人を橋から落として、川で溺死させようとしたのであれば、その橋からの落下中に橋脚に頭を激突させて死ぬことは、相当な結果と言えるわ。
そうであるならば、その結果に対する故意は認めてよい、と考えるべきってことね。
藤先輩が、シリアルキラーになってしまったです!
幾らなんでも殺し過ぎです!
  ナカたんは、騒ぎ過ぎだけどね。
次は、Cの類型よね。

サルが私だと思って殴りつけたら、それは私ではなくって、人形でした!
または、その逆の場合もあるわね。
私の人形だと思って、サルが殴ったら、それは人形ではなくって、私でした!

異なる構成要件における客体の錯誤の具体的事例としては、こんな事例が挙げられるわね。
この異なる構成要件にまたがる錯誤については、また、後で説明するわね。ここも、少し類型が多くって、複雑なところだからね。
  なんか今日、後回しが多いね。
ソレは仕方ないわよ。
まとめて、ここで全部やっちゃうと、もうナニがナニやらになってしまうかも知れないし。

最後にDの類型について説明するわね。

私を狙って、サルが拳銃を撃ったら、その拳銃の弾が、予想外に人形に当たってしまった!

みたいな事案が、異なる構成要件にまたがる方法の錯誤ね。ただ、この問題は、同一の構成要件における方法(打撃)の錯誤と、異なる構成要件にまたがる客体の錯誤の複合問題なのよね。

そんなわけで、この問題については、Cの事案の説明の中で、一緒に説明することにするわね。
というわけで、この問題についても後回しってことになるかな。
あ、最後まで「後回し」で終わってもぉたお。
後回しって言っても、次回と、次々回でやるつもりだから、そんな言い方しないでよね。  
もう面倒だから、この際全部「後回し」という選択もありじゃね?
散々罪を犯しておいて、贖罪は後回しにしようなんて許されないです! 
・・・・。
(このチビッ子。
 さっきから、無辜(ムコ)の私に対して、言語道断だの、シリアルキラーだの、贖罪だの言いたい放題だお。
 この「仏の藤さん」と言われとる、あたしも流石に堪忍袋の緒を緩めてまうお?
 出しちゃう? 出しちゃう?
 伝家の宝刀・木下頭突きを!) 
イヤです、イヤですっ!!
(ダダダダダダっ!)
え?
え?
 
  ・・・。
なんでナカちゃんは、急に走り去ってしまったの?  
  わかんね。
(ひょっこり)
藤先輩が・・・
藤先輩が、私に頭突きをしようと・・・ 
ちょっと、あんたっ!  
  冤罪だお・・・
思っただけだってのに・・・。

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