最決昭和52年7月21日
ちょっとこの事件は、当時の時代背景色の強い事件なのよね。
登場人物にも、中核派とか、革マル派とか、少し説明が必要な単語が多いから、事案の理解に必要な部分残して、少し簡略化しちゃうわね。

私がナレーター。
被侵害者グループ(6名)を、サル。
サルのグループを襲撃した侵害者グループ(10数名)を、つかさちゃん。

って配役でいくわね。

ナレーター
サル達のグループは、政治集会を開く目的で、ホールを借りました。
しかし、対立グループ(=つかさちゃんのグループ)の集会開催の妨害が予想されたため、他のメンバーらと共に、白ヘルメット数個、木刀1本、ホッケースティック5本、鍬の柄4本、鉄パイプ10本くらいを、同会場に隠して持ち込んでいました

サルグループ
どうせ、あいつらのことだから邪魔しに来るんじゃね?
第1の攻撃を予期
用心のために準備してきた道具類は、すぐ持てるように、むき出しにして置いておけよ。
さっ! それじゃ、集会開催の準備に取り掛かるぞ!
おうおうおうっ!
俺達を糾弾する集会なんて言語道断じゃねぇーの!
こんな会場も、お前らもボコボコにしてやるよ!
第1の攻撃

つかさグループ

サルグループ
やっぱり来やがったなっ?!
オイっ!
みんなで、あいつら追い返すぞ!!
フルボッコにしてやんよっ!!
  クソ!
準備万端じゃねぇかよ!
やってやらぁっ!!

つかさグループ

サルグループ
こんにゃろっ!
こんにゃろっ!!
各自攻撃中) 
 
  くぅぅぅぅ。
滅多打ちじゃねぇか・・・。
仕方ないっ!
撤退だ、撤退っ!!

つかさグループ

サルグループ
逃げていきやがった。大したことねーなぁ。 
ただ撃退したとは言え、あいつら、しつこいからな・・・。
きっと、態勢ととのえて、また来るな。
第2の攻撃を予期
よし!
あいつらの襲撃に備えて、バリケード作っておこうぜ!
あいつらが来たら、このバリケード越しに攻撃してやろうぜ!
積極的加害意思
  オラオラオラぁっ!
また来たぞぉぉぉっ!!
第2の攻撃

つかさグループ

サルグループ
バーカ!
コッチもお前らが性懲りもなく来ることは予想済みだよ!
バリケードも用意しておいてやったわ!! 
な、なんだよ、このバリケードはよぉっ!
こんな邪魔なもんがあったら、バリケード越しにしか攻撃仕掛けられねぇーじゃねぇーかっ!!! 
仕方ない・・・バリケードの隙間から、鉄パイプでも投げ込んでやれっ!

つかさグループ

サルグループ
バリケード作っておいて大正解だぜ!
よーし! コッチも鉄パイプ投げ返せっ!!
ついでだ!
投げ込まれたもんも、あいつらに投げ込んでやれっ!!
第2の侵害への攻撃
     






・・・そこまでかな。
なんか2人が、あまりにノリノリで怖くなっちゃったんだけど。 
こんな配役を振っておいて、ソレはあんまりだと思いますけど。
ホントホント。
こんな役をあたしに振るなんて、もう無茶ブリってレベルじゃないよね。
鉄パイプが飛び交う世界なんて怖すぎるです・・・。
そして、こんな配役を華麗にこなしてしまう御2人も怖すぎるです・・・。
どうも判例検討の際の配役に悪意を感じずにはいられないですけれどね。

それはそれとして、この事案においては、第1の攻撃と、第2の攻撃とを分けて考える必要があります。

第1の攻撃に対しては、被侵害者グループは、その攻撃を予期しているだけですよね。

しかし、第2の攻撃に対しては、被侵害者グループは、攻撃を予期しているだけではなく、バリケードを築いて侵害グループをやっつけてやろう、という積極的に相手方に対して加害行為をする意思(積極的加害意思をもっているわけです。

この両者の違いを、判例はどう扱っているのか、という点に注目して欲しいと思います。
実は、ここだけの話。
あたしの正体は、ジョン・タイターなんだお!
だから、攻撃を予期するなんて朝飯前の昼飯前なんだお!!
そして、判例がどう答えるのかも、当然知っているんだお!
えーっと、判例は、昭和55年のものですからね・・・。
まぁ、普通に皆さんも御存知だと思いますが・・・。
・・・じょ、じょ、冗談に、そんな返しを入れるとは・・・。
つかさちゃん、ゴメンね。
配役には、ちゃんと理由があるんだけど・・・まぁ、それは後から言うことにして、先に判決文を見ましょうか。

刑法36条が正当防衛について侵害の急迫性を要件としているのは、予期された侵害を避けるべき義務を課する趣旨ではないから、当然又はほとんど確実に侵害が予期されたとしても、そのことからただちに侵害の急迫性が失われるわけではないと解するのが相当であり、これと異なる原判断は、その限度において違法というほかはない。

 しかし、
同条が侵害の急迫性を要件としている趣旨から考えて、単に予期された侵害を避けなかつたというにとどまらず、その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは、もはや侵害の急迫性の要件を充たさないものと解するのが相当である。

 そうして、原判決によると、被告人Aは、相手の攻撃を当然に予想しながら、単なる防衛の意図ではなく、積極的攻撃、闘争、加害の意図をもつて臨んだというのであるから、これを前提とする限り、侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきであつて、その旨の原判断は、結論において正当である。


つまり、第1の攻撃については単に予期しただけなんだから、正当防衛の成立を認めているのね。
でも、第2の攻撃については、積極的加害意思をもって臨んでいることから、急迫性の要件を満たさないことを理由に、正当防衛の成立を否定しているわけ。
チェッ・・・。
それじゃ、さっきのあたしの質問は、正当防衛が成立しないってことかぁ。
積極的加害意思をもって臨んだ場合の取扱いについては、判例の立場である急迫性否定説、そして、学説の多数説である防衛の意思否定説と、その取扱いについては争いがあるところですけれど、正当防衛の成立が否定されるという結論には変わりはないんですよね。
そうね。

判例の立場である急迫性否定説によれば、積極的加害意思がある場合には、自己の法益を侵害される危険が低いため、急迫性が否定されるわよね。

学説の多数説である防衛の意思否定説によれば、積極的加害意思があっても急迫性は否定されないものの、防衛の意思後の勉強会で学びます)が否定される場合があるわね。
 防衛の意思不要説からは、防衛のための行為とはいえないと評価される。)

したがって、つかさちゃんが言ってくれたように、いずれにせよ正当防衛の成立は否定されるという結論になるわね。
私は納得したです。
こんな事案に正当防衛が成立するはずがないです!
・・・。
(正当防衛の名前を盾に、やりたい放題できると思ったお。
 くっそぉぉぉ。世の中甘くないなぁ。 )
ところで、配役の理由についてお聞きしてもいいでしょうか?
あ、そうね。
今回みたいな暴力沙汰の事案で、サルの相手役をナカちゃんにしちゃうと、サルが配役をいいことに、ここぞとばかりにナカちゃんをイジめちゃいそうでしょ? 

じゃあ、私が・・・と思わなくはないけれど、私相手にも、過去の判例検討を思い返すと、やっぱり配役を盾にチョッカイかけてくるのよね・・・。

その点、つかさちゃんにはサルも手を出さないみたいだから安心して任せられるなぁ、って思って。
明智先輩・・・。
まさか判例検討の配役に、そんな心配りをして下さっていたなんて。
そうだったのですか・・・。
でも、それなら言って下されれば・・・。光ちゃん1人で、色々考えられるなんて水くさいですよ。
そうよね。
ゴメンね。つかさちゃんにも、ちょっとイヤな思いさせちゃったみたいだし、次からは相談するようにさせてもらうわ。  
・・・。

(なんか、めっさ、あたしが悪者みたくなっとるお。
 つまり、どうしたらいいんだお?
 判例検討の配役に関係なく手ぇ出せってことなのかお?
 それとも、クロちゃんにも手を出せば公平になるのかお?)
・・・・・。

(反省されるどころか、予想の遥か斜め上行く発想です・・・。
 だ、だ、ダメだ、こいつ・・・なんとかしないと・・・です。) 

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